〜Aポイント〜
こちらでは既に予期されていたギガント級の伏兵と当たっていた。ただ、予想だにもしないことが起きていたのだ。ありえない数のミドル級の伏兵による奇襲だ。
「結構厳しいかもッ…!」
アルテアは密かに悲鳴をあげていた。
「確かにな!信じられねぇ数のミドル級が群がってやがる!しかもリジェネレーター付きときた!」
楪がアルテアになにかを伝えにきたのか近寄ってきた。
「数で押されてるのがものすごく腹がたつのだけれど?!なんならセインツでノインヴェルトを決めてしまった方がいいのかしら?!」
アルテアが叫びながら尋ねる。
「ああ!その方がいいかもしれねぇ、なッ!」
大きく振り払いながら同意する。しかし
「駄目よ!」
梨璃と夢結が飛んできた。
「いまセインツの皆さんやアールブヘイムが離脱してしまうと一気に押しつぶされてしまいます!」
アルテアは歯をくいしばる。
「…そうね。今私たちが一人でも欠けたら一気に潰れるわね」
夢結は冷静にヒュージを捌きながら提案する。
「そこで提案なのだけれど、一柳隊で処理しようと思うの。どうかしら?」
楪は驚いて思わず反論した。
「夢結や梅がいるからってそれは無茶だ!どうにかしてここを乗り切った後に…」
「いえ、任せるわ!」
「ッ?!お前本当に言ってんのか?!」
楪がアルテアに確認する。
「本当よ!梨璃も言ってるでしょ?!今私たちが抜けるわけにはいかないって!悔しいけどこのまま疲弊しきって押しつぶされたら元も子もない!だったらレギオンとしての規模が小さい一柳隊が向かう方がいい!」
アルテアなりに考えた結果だった。
「なら3分以内だ!それ以上は多分保たねぇ!」
楪は飛び去っていった。
「直感だけどあのギガント級が司令塔になっていると思われるわ!アレを潰せばこのミドルの群体も纏まりを失うでしょう!そうすればこっちのもんだわ!さ、わかったら行きなさい!」
アルテアは早く行くように促した。
「はい!一柳梨璃、行きます!」
梨璃はギガント級ヒュージに向けて飛び去った。夢結も後に続こうとCHARMの切っ先で円を描いた。
「夢結」
アルテアが呼び止めた。夢結は顔だけ向けた。
「…頼んだわよ」
アルテアが静かに呟いた。
「ええ。任せてちょうだい」
そう返すと夢結も飛び去った。
アルテアは力強く微笑んだ。
「一柳隊に次ぐ!バイザーに表示されているポイントA34に集結しギガント級討伐に当たって!討伐は今から3分以内に!抜けたところは一人一人の仕事量を増やして補いなさい!」
上空でアルテアの指示を聞いていた梨璃がCHARMを持っていない方の手で握りこぶしを作りグッとする。
「とにかく臨機応変にやるしかないわ。できるわね、梨璃?」
梨璃に追いついた夢結が尋ねる。
「もちろんですお姉様!」
梨璃の気合も十分だとわかったところであA34に到着した。
「梨璃さ〜ん!」
楓と二水とミリアムが一緒になって集結した。
「楓さん、二水ちゃん、ミリアムちゃん!」
神琳と雨嘉、梅と鶴紗が一緒になって続々と集結してきた。
「時間がありませんので一息に決めてしまいましょう!」
ギガント級に向けて進撃を始めた一柳隊。すると梨璃の身体からマギが溢れ出てきた。
「行くよ、カリスマ!」
梨璃の宣言と共にギガント級から奪ったマギを皆に分ける。
「わたくしのテスタメントでカリスマの範囲を広げます!」
神琳が効果を広げたことにより更に効果が高まった。
「じゃあ雨嘉からだナ!」
「はい!」
梅の指名で雨嘉はノインヴェルト用特殊弾を装填した。
「行くよ神琳!」
一発目が放たれた。最初は神琳だ。
「雨嘉さんのマギ、受け取りました!」
軽やかなステップと共にマギスフィアを受け、間髪入れずに次に回す対象を選択した。
「次は鶴紗さん!」
鶴紗に超高速パスが回る。
絶妙にタイミングが悪かったのかギガント級の陰に隠れている。鶴紗は一瞬迷った。そこでファンタズムを使用し先読みでのパスを行った。そこに写っていたのが
「梅様!」
縮地で高速移動して鶴紗の射程圏内に出てくるのだ。
「もらったゾ!」
鶴紗の先読みパスに対応した梅は一度、BZのミリアムに回す事とした。
「ミリリん!」
かなり巨大化したマギスフィアはミリアムの元へ届く。
「受け取ったぞい!」
二水へのパスコースが開けているのを確認したのでミリアムは
「二水、行くぞ!」
マギスフィアはギカント級の真横を通り抜け二水の元へ届く。
「頂きました!」
二水はレアスキル鷹の目でミリアムから受け取りやすい場所に移動していたのだ。
「楓さんっ!行きますよーっ!」
迷わず楓にパスを回す。
「ナイスパスですわ!」
そんな楓のパス相手は決まりきっている。
上にいる楓は下の梨璃に向けてジョワイユーズの砲身を向けた。
「梨璃さん!わたくしの
マギスフィアが梨璃の元へ到達する。
「受け取りましたよーっ!」
そしてフィニッシャーはもちろん一柳隊エースにして梨璃のシュッツエンゲル、夢結だ。
「お願いします、お姉様!」
かなり高速でマギスフィアがヒュージ直上の夢結の元へ届く。ちなみに梨璃はパスが上手い。
「いいパスよ、梨璃!」
そのまま一気に切り込む。
「はぁぁぁぁっ!」
掛け声とともにヒュージにマギスフィアの魔力を宿したブリューナクで綺麗な一筋の光、文字通り一閃が決まりギカント級ヒュージが爆散した。
「流石ですお姉様ーっ!」
夢結は梨璃の頭を撫でてうっすら微笑んだ。
「よく頑張ったわね、梨璃」
「ありがとうございます〜」
少し照れる梨璃とはよそに、夢結はアルテアたちを案じるように空を見上げた。
〜その頃〜
「あいつらやったな!ミドルの群れが散り散りになり始めたぞ!」
楪がCHARM構え突撃態勢をとる。
「しかもリジェネレーターが消えているわ!」
椛も突撃態勢を取る。
「ええ!エデン隊、ミドル級群体を刈り尽くしなさい!突撃ッ!!」
アルテアの号令と同時に猛者達が一気に突撃を敢行した。
ー十数分後
『こちら修復班。エリアディフェンス修復準備完了です』
アルテアはその報告を聞くとすぐさま
「撤退ーッ!」
と命令をかけた。ヒュージは刈りつくされそこには残骸と荒野があった。
全員の撤退を確認したアルテアはエリアディフェンス起動の命令を出した。
アルテアは力が抜けたようにペタッと座り込んでしまった。
「みんな、よくやったわ。今日はもうなんと言われようと休みなさい。以上よ」
エデン隊に所属するリリィに短く賛辞を送った。
「お疲れ様、アルテア」
横にペタッと座ってきたのは椛だ。
「いやー本当にお疲れさまだ」
楪もペタッと座り込んだ。
3人はみなさーん、と叫びながら近寄ってくる梨璃に目を向けた。
「今日のMVPが来たみたいね」
「なんであんなに元気なんだ?」
「流石、夢結のシルトね…」
それぞれ想い想いの言葉をこぼして、3人は笑いあった。
〜ニアギガント級討伐班〜
イギリスの無人地域を象徴する広がる草原に佇む人影は25。スルーズのヘッドライナー9人とアークランドのメンバー16人全員だ。
『引きつけ、お願いします来春卿』
エレミアからの直前に挨拶があった。
「任せときなさい!そっちこそ頼んだよ!」
『お任せください!』
急造混成レギオンではあるがアークランドはカッスルのトップレギオンだ。ベテラン揃いだろうからおそらく問題はないはず、と来春が考えていると。
ガンシップから轟音と共に一筋の輝く光の槍が大地に突き刺さった。命中したのかヒュージと思しき咆哮と本体が地面に這い上がってくる。
『状況開始ッ!』
エレミアの号令と共にスルーズはニアギガントに半ば体当たりのように肉薄し地面への退路を失わせる。倒れ込んだニアギガントは触手を使い積極的に攻撃を仕掛けるスルーズに応戦していた。
「はいはいこっちよ〜」
風華がちょっとばかり煽ってみせる。
「いえいえ!こっちです!」
グレースがニアギガントを翻弄する。
ニアギガントは応戦してもスルーズを振り払えないからか、大量のミドル級を放出した。
「やっぱりね!プランB発動!」
来春達は事前にこうなることは予測していた。
『アークランドAZ班!スルーズと共にミドル級を引きつけなさい!』
的確な指示のもと動くアークランドは完璧な動きを見せていた。
エレミアはノインヴェルト用特殊弾を装填すると最初のパス相手に向けて発射した。弧を描くような奇跡を描いて余裕のあるパスだ。アークランドは最初からロンドパスを想定した布陣を展開しているのだ。
フィニッシャーの副主将メリーが砲撃形態にCHARMを高速変形させると
「では、僭越ながら」
と一言挟んで最後の一撃を放った。
ニアギガントは問題なく討伐されたが一番最初のビームが開けた大穴が若干焼け焦げていたのでスルーズとアークランドは急いで消火作業に移ることになった。
〜作戦終了後フギン船内〜
ヒースロー空港にフギンは着陸しており、船内食堂では盛大に祝いの宴が行われていた。お祝いムードかと思われたが、それどころではなく…
「疲れましたね、お姉様…」
「私もよ汐里…」
ティシア率いるカナン隊所属だったレギンレイヴ、通称水夕会の『不動劍の姫』こと六角汐里とそのシュッツエンゲルである『百合ヶ丘の恋人』こと谷口聖である。
「そういえば汐里、またCHARM壊したんだって?」
聖が好物とする麺類であるうどんを二人してズズッと吸い込む。
「え、えへへ。中々CHARM遣いの荒さが治らなくって…」
「また工廠科の方達に怒られちゃうわよ」
聖は汐里の鼻をツンとつついた。
「ほーんと怒られちゃうよ?」
「あっ、来春様!」
二人が立ち上がろうとするので来春は手で抑えた。
「よく立っていられますね、来春様?」
聖が疲労を精一杯表す。
「まぁ一撃離脱しかしてないからね」
来春は笑って流す。
「正直な話、御台場迎撃戦より厳しかったですよ」
「それ全員口を揃えて言うね」
すると汐里も溜息をつく。
「単に強いヒュージと相対するならまだしも、リジェネ持ちミドルが多数押しかけてそれを単に処理すると言うのがもう堪らなくしんどくて…」
「そういうことです…」
来春はなるほどと頷く。
「でも一週間後に予定されているハドリアヌスヒュージネスト殲滅及び7大アルトラの一角ヴォーディガーン殲滅計画はおそらく、まさに死線を掻い潜るといった状況になると思うよ。しかもね」
「しかも?」
聖は嫌な予感がしたのか恐る恐る尋ね返す。
「北極にネストを作っていた筈のアルトラ級が動き出していて、正に一週間で10体にも上るアルトラ級を撃滅しなきゃならないんだよね」
それを聞いた汐里が目を回し始めた。
「撃滅はしたいですけど、あまりに無茶では?」
「無茶でもやらなきゃ。南極戦役の死闘を再現するわけにもいかないからね」
来春はケーキをパクッと食べる。
「ま、心算だけはしといてね」
来春はその場から立ち去っていった。
「一週間は訓練と休憩、ね」
「そうですね〜」
〜ブリッジ〜
「シグルドリーヴァからの報告です。グランサムラボでは未だにリリィへ過剰強化をかけているとのことです。ラボの警備にも強化リリィが駆り出されてるようなのです」
強行偵察特務レギオンシグルドリーヴァからの情報に耳を傾けていた来春はうっすらと不気味な笑みを浮かべていた。
「作戦決行は三日後。絶対に潰す」
スルーズのメンバーに加え、鶴紗もその場にいた。
「G.E.H.E.N.A.絶対に許さない…」
大体GEHENAのせいです。