機動戦士ガンダム 流星の軌跡   作:紅乃 晴@小説アカ

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一人称にするか、三人称にするか迷走気味…


第一話 レーン・フーという男

 

 

 

レーン・フーという人間は、ジオン・ズム・ダイクンと親しい家柄に生まれた青年だった。

 

ガンダムという作品に触れ、目が覚めたらコロニーの中にいたなんて誰が信じるだろうか?

 

両の手に簡易的な拘束具を付けられたまま、密閉型コロニー内に建設された滑走路の前でタキシングする〝ドップもどき〟の元へと連れてゆかれる。

 

経緯としては実に合理的だった。

 

地球航空戦略にて使用するドップの試作機のテストパイロットを務めろ。しかも命令を下したのはザビ家のキレ者のギレンときた。

 

ははーん、さては確実に殺しに来てるな?

 

いわゆるこれは前世にある数多くの小説で見ていた転生という類のものらしい。あるいはかなり現実感のあるギレンの野望の夢か。

 

どちらにしろ、混乱する思考とは別に感覚は冷静だった。

 

目の前にあるドップもどきは、アムロたちが地球に降りた際に交戦した機体とは形が随分と地変わっていて、まさにエンジンに翼とコクピットを載せたような粗末な出来であった。

 

航空力学なにそれ美味しいの?と言わんばかりの形をしていて、空力で飛ぶというよりエンジン出力に物を言わせて機体を飛ばすような形をしていると言っても過言ではない。

 

そんなもののテストパイロットに、ダイクン派と親しく、さらに遺児とも親しかった人間をあてがうとは、ザビ家とはまったくもって腐っているな。

 

 

「では、テストパイロット。搭乗を」

 

 

銃を片手に言うセリフじゃあるまい。ほぼ強制に近い中、施されていた手錠を外され、ヘルメットを渡される。

 

初期型ドップという棺桶に乗せられ、心の中で十字を切った。この転生なのか、はたまたリアルな夢なのか分からない世界で、自分は与えられた命を散らせようとしている。

 

すでに捕らえられているという転生のスタートラインから、ドップの基本的な操縦マニュアルを叩き込まれて横流しに連れてこられたのだ。

 

もはや恐怖よりも開き直りの方が強い。

 

通信機でどやされるまま、スロットルを上げてコクピットの真下にあるエンジンを唸らせる。

 

うむ、振動が尋常じゃない。

 

機体をコントロールして滑走路の端から徐々に速度を上げてゆく。ガタガタと震えるコクピットの中。

 

飛行経験なんてこれっぽっちもない。

 

それでも、ドップのランディングギアが地面と離れる際は、不思議と振動や不安は無くなっていた。

 

エンジンの出力のまま、揚力なんて無視して舵という機能しか持たない翼を操る。ぐいっと機体を上に持ち上げる。コロニーの中心部に向かえば向かうほど、気流は複雑になる。

 

機体の揺れも大きくなるが、それでもドップもどきは鮮やかに軌跡で飛び始めていた。

 

 

 

 

なんとなく…。

 

そう、感覚が語りかけてくるような気がした。

 

この世界ではないどこかで、MAという棺桶の中で機体を操った〝誰か〟と同じように。

 

 

 

 

 

 

 

今までゲームでしか操縦したことがない飛行機が、まるで自分の手足のように動く。

 

ひらりと機体を翻して予定コース内を一周。

 

格納したランディングギアを再び展開して難なく滑走路に着陸する。銃を持った監視官が待つ格納手前まで戻ってくると、その監視官を押しのけて技術員たちが押し寄せるように出迎えてくれた。

 

なんでも、この機体はコンピュータシュミレーションによって設計された機体であり、本来なら地上でのテスト飛行が予定されていたが、ギレン総帥が反対意見を一喝して払いのけて、コロニー内でのテストを断行したとか。

 

間違いなく墜落すると誰もが予見したが、それを鮮やかに飛ばしてしまったのだ。

 

この機体から得られた数値データはとても貴重で有意義なものだと技術者たちが万歳三唱で喜ぶ中、やっとコクピットに辿り着いた監視官に連れられて、急造されたテスト飛行場を後にした。

 

後日、ジオン軍の高官に呼び出されたレーンは、正式にドップ製造のテストパイロットとして任命され、その日付けでジオン軍の非正規パイロットとして雇用されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジオン脅威のメカニズムとはよく言ったものだ。

 

試作3号機となったドップコクピットから這い出したレーン・フーは、その常套句を言った奴らを心底恨んだ。

 

寝そべるレーンをそっちのけで、ジオニックやツィマッドから出向してきた技師たちがこぞってレーンが操縦したドップの飛行データを見ている。

 

試作1号機と、2号機。こちら共にレーンは飛ばして見せたが、オートパイロットに載せ替えて飛ばしたところ、滑走路から数メートル上昇した段階で姿勢を崩し墜落した。

 

レーンの操縦データなども入力したオート機能であったが、エンジンに翼とコクピットを生やしたようなドップの出来損ない相手には意味がなかったようだ。

 

近頃、技師たちから「あんな機体を飛ばしてるフー技術少尉がおかしいんじゃないか?」とまで言われる始末である。まったくもって心外だ。

 

そもそも、機体が偏りすぎなのだ。

 

空力を生かそうとすればストールして落ちるし、エンジンの出力にものを合わせれば機体が安定しない。どっちつかずなので、真ん中を狙うが墜落のオンパレードとなる。

 

絶妙なバランスの上で飛ばさないと綺麗に空に上がることすら困難なのだ。

 

こんなものを地上で飛ばすとなれば、自殺行為も可愛く見える。

 

しかし、コロニー育ちのジオン技師たちに地球の空力学を学ぶ機会など皆無だった。

 

地球連邦からすれば、大気内での運用を想定した戦闘機の技術など門外不出の機密扱いだろうし、それを宇宙にあるコロニーに委託するほど愚かな思考もしていない。

 

むしろ、航空力学の知識ゼロでここまで形にした技師たちの腕の良さが誉められるべきだろうと思える。

 

史実では宇宙世紀0075年。

もうMSのテストも佳境を迎えている時期だ。

 

地上支援を目的にした空母や戦闘機や開発は急務であるが、やはり地上におろしてテストするしかないという。そうジオンの技師たちが結論つける中、つぶやいた。

 

 

「いっそ、地球連邦の戦闘機一機でも鹵獲すればいいんじゃないの」

 

 

 

うんざりした様子で言ったレーンの言葉に、技師たちは顔を合わせて閃いたようだった。

 

つい最近。

 

月の裏側に向かってMSのテスト部隊が出発したという情報が流ればかりであった。

 

 

 

 

 

 

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