無双OROCHI─融合せし世界   作:夕叢白

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世界の終わりと始まり

世界には様々な物語が溢れている。

 

地球の平和の為、世界征服を目論む悪の軍団と戦うスーパーヒーローのお話。

 

未来から訪れた高性能ロボットと共に平和な生活を送る日常譚。

 

どんな願いも叶う丸い玉を集めながら、降りかかる災難に立ち向かう大冒険活劇。

 

皆、人生に一度は妄想した事があると思う。そんな物語の世界が一つに融合し、影響し合い、全く想像もつかない驚天動地のストーリーが展開されたら、どうなってしまうのか?────と。所詮は頭の片隅で考える夢物語に過ぎない、現実的に考えて起こり得る事の無い荒唐無稽な話。仮に実現したとしても、物語の世界で真っ当に生きている登場人物達からしてみれば、傍迷惑な事でしかない。だが、もし夢想が具現する時が訪れたのなら、それはきっと絶対的な存在によって齎される事象ではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

少年は嘆く─────。父が、母が、妹が、目の前で殺された。勇気を出していれば、助けられていたかもしれない。今も隣に家族が寄り添い合っていたかもしれない。全員が一緒だったなら、今、眼前に広がる悪夢に対しても気丈でいられたはずだ。溶解して崩れ去る地下要塞の中で、少年はただ静かに目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

ある日、一つの世界に災いが舞い降りた。天高くに蠢く漆黒の鱗を纏った巨大な蛇、地上を闊歩する灰色の肌をした人型の一団。突如現れた正体不明の軍勢は瞬く間に各国を強襲した。己が前頚部を脈動させながら、口から球体の炎を射出する巨大な蛇。女子供関係なく逃げ惑う市民を手に持つ剣や槍で刺殺する灰色の人型。

 

異形なる者達の予想だにしない襲撃により、対策に追われていた政府は現状の打開案、曰く苦肉の策として化け物との和平を計画、時を置かず実行に移した。日夜、敵の侵攻が激しくなる中、提案を受け入れた侵略者との会談の日が遂に訪れる。各国の官僚が固唾を飲んで敵の代表を待つ中、彼は悠々とその場に姿を現した。妲己(だっき)なる妖艶な女性を侍らせ、大股で会場の中央へ赴き空気を掌握する。()の男こそ、この平和な星を襲った異形なる者達の主、魔王遠呂智(おろち)だった。

 

見る者に蛇を連想させる相貌に装い。更に魔王に相応しき威圧感を兼ね備えている彼は最早、人間にとって絶望そのもの。故に性急な危機感を抱いた人間は判断を誤ってしまった。こんな悪魔と呑気に会話をしている場合ではない、今すぐにこの場で抹殺すべきである。とある国の代表が下した合図と共に、会談の為に設けられた建物が爆破される。内部に大勢の人々を残して四散したその場所で唯一生き残ったのは、魔王とその配下の妲己だけだった。

 

『脆い、詰まらぬ。』

 

「遠呂智様っ、私に良い案があるんだけどぉ...。」

 

 

 

『────善い。妲己、貴様の言を聞き入れよう。』

 

妲己が遠呂智へ近付き、耳元で何事かを囁く。彼女の言葉に一理あった様子の魔王は妲己の意見を承諾する。この日を境に巨大な蛇と灰色の人型の侵攻は無慈悲にも激化、数多の国家が滅亡していった。

 

僅かに逃げ果せた生存者らは地下に要塞を作るも、既に反撃などできる余力はなく、人類が積み重ねてきた幾世紀もの歴史に終止符が打たれる時をただ待つ事しかできない。この星の人類は魔王の軍勢の前に完膚無きまで敗北したのだった。

 

地上が魔王の支配下となってから数ヶ月、化け物の侵略が一区切りした今ならば、地下とは言え、文明の再興が可能なのではないか。生き残った人間はそう考え、先の見えない闇の中に一筋の希望を見出す。だが、その夢が実現する事はなかった。

 

『妲己の言。時空の融合、何と安直か。然し、真の強者と相見えられるのならば...我は力を振るおう。』

 

無数に点在している時空を断片的に繋ぎ合わせ、一つに統合させる。本来、仙界と呼ばれる世界から生み出された小さな脅威に過ぎない遠呂智にそんな神業は不可能。精々が仙界手ずから干渉している時空に影響を与え、異界人を自身の創造した空間に呼び出すのが限界。

 

故に、遠呂智は事前に仙界から派遣された戦士達の力を吸収する手段を講じた。運命の悪戯か、はたまた魔王の采配あってか。天秤は遠呂智の方へと傾き、彼の企みは完璧なまでの成功を収める。仙界を統べる天帝の殺害に仙界より差し向けられた戦士の無力化。今この場に、魔王遠呂智の蛮行を止められる者は誰一人いなかった。

 

『ッ───!』

 

魔王の行使する力が地面を伝い、星を覆う。地下が蒸発し生き延びた者達が悲鳴を上げながら、息絶えていく。宙に暗雲が垂れ込め、魔王を軸として暴風が巻き起こる。

 

「あぁ...この感じっ!ゾクゾクしちゃう。」

 

魔王の身体が光を放ち、やがてその明かりは一度だけ収縮の過程を辿る。途端、凝縮されたはずの光が再び輝きを発して辺り一面が真っ白に染まった。魔王の配下である妲己すら巻き込んだ輝きは星を超え、更に銀河系すら飲み込んで膨張を続ける。

 

魔王遠呂智、かつての平和な仙界にて応龍(おうりゅう)と呼ばれ、仲間から慕われていた頃の面影は今の彼にはもうない。今の彼を彼たらしめているのは、超越者としての絶大な力のみであった。

 

 

 

この日、時空は魔王遠呂智によって捻じ曲げられ、多くの世界が一つに融合した。

 

 

 

 

 

 

 

今、少年が立っているのは果てしない荒野の真っ只中。砂を含んだ風が吹き抜け、タンブルウィードと呼ばれる植物の塊が転がる荒れ果てた大地で地平線を視界に収めながら、彼は黙考する。何故自分がこんな場所にいるのか、此処は何処なのか。思案に耽ること約二分、合点がいったとばかりに手を叩いた彼は今一度辺りを見渡して口を開いた。

 

「あぁ...なるほど、あの世かっ。」

 

何とも達観した考えの持ち主だと評したい所ではあるが、少年の体験を鑑みれば致し方ない部分もある。時間にして数十分前、彼は間近に迫る死の恐怖と戦いながら命を散らしたのだから。

 

剣や槍を手にした灰色の一団や縦横無尽に空を移動する化け蛇が襲ってくる世界。そんな星に留まっていれば、いつの日か死が訪れるのは至極当然であり、遅いか早いかだけの違いしかない。

 

一時的とは言え、ファンタジーな世界で生きたのだ。今更、あの世が存在していた程度の些事で驚くはずもない。確か蛇の方は妖蛇(ようじゃ)と呼ばれていたか、過ぎ去った壮絶な日々に思いを馳せていた少年は何となしに後ろを振り返る。

 

「にしても、随分閑散としてるなぁ。せめて案内人くら...ぃ...。」

 

直後、彼の語尾が徐々に小さくなっていった。それもそのはず、少年から見て二十メートル程の離れた位置、その場所には優に千人は超えるであろう灰色の人型が円陣を組んでいる異様な光景が広がっていたのだ。加えて少年はあの人型の兵隊に見覚えがあった。忘れられるはずもない、少年にとって奴等は()()()()である。

 

「嘘、だろ。何であいつらが...?俺、死んで...ないのか?此処は、あの世じゃないってのかよ!」

 

思い出したくもない情景が少年の脳裏を駆け巡る。人型に追われ襲われ、逃げ続ける日々。追い詰められ、次々と地に伏していく生存者。自分達を庇った両親が槍に貫かれる姿。燃え盛る炎の中で妹が熱さに耐えられずに泣き叫び、少年に助けを求める最後の姿。

 

「......止めろ、止めろ止めろ止めてくれッ...。これは、きっと悪い夢だ...そうに決まってる。」

 

冷静さを欠いた少年は大きな音を立て後退る。その音を耳にして最初に反応を示したのは集団の隊長格らしき灰色の身体に黒い甲冑を身に付けた人型だった。

 

「お、何だぁ?また人間か。やれやれ...どうもこの蛟様には手柄が自分から舞い込んで来てくれるらしいなぁ。...何ボサっとしてる!兵を半分割いて取り囲むんだよぉ!」

 

自らの名を誇張して名乗った(みずち)なる人型は兵に命令を飛ばした後、割り振られた部下と共に槍を構えながら少年の方へ駆け出す。もう一人の方は他の兵に任せておけば大丈夫だろう、そう楽観的に考えながら。一方の少年は未だに目の前の異常事態を受け入れられず、ただ顔を俯かせているだけ。その間にも、灰色の兵は少年を完全に取り囲み、隙間が空かないようにゆっくりと包囲を狭めている。

 

多少性格に難があるとは言え、部隊の隊長である蛟の迅速で豪胆な指揮には目を見張るものがある。だが統率力は完璧かと問われたならば、否と答える他ないだろう。理由は蛟が下す次の命令を待たずに無防備な少年の様子を好機と捉えた一人の兵を見れば明らかである。手柄欲しさに少年の肩口を斬り裂こうとしているその危機的状況は蛟の監督不行届が原因だ。

 

「...ん?お、おいっお前!ちょ、待てって!そいつにはまだ聞く事がっ!」

 

兵の独断専行に気付き、制止の声を張り上げた蛟だが時既に遅し。振り下ろされた刃は止まる事なく少年の肩へ減り込み、鮮血を飛散させながら彼の身体は斜めに切断され────なかった。兵が持つ剣、その鍔の先にあるはずの刃が綺麗に消え去っていたからだ。

 

 

 

「───ったく、子供相手に本気かよ。石田もチャドも見失っちまったし、一体どうなってんだ。」

 

 

 

業物。そう呼ぶに相応しい大剣の刃を自身の肩で休ませ、面倒臭そうに独り言を口にする橙色の髪が特徴的な仏頂面の男が円陣の中────少年の後ろに現れた。蛟は瞠目する、この男は他の兵に包囲させていたはず。まさか全員を倒して此処に来たとでも言うのか、そんな事は有り得ない、あってはならない。抑、気配すら感じさせずにこの中央までどんな手を使って移動した。この人間は一体、何者なんだ。

 

 

 

此処とは別の時空、現世を彷徨う死者の魂を成仏させ、(ホロウ)と呼ばれる怪異を滅する組織がある。彼等の名称は死神、尸魂界(ソウルソサエティ)と呼ばれる空間にて鬼道なる術を学び、死神としての能力を昇華させ、尸魂界にとっての国軍である護廷十三隊に所属する。

 

そして───黒い袴、死覇装を身に纏い、斬魄刀(ざんぱくとう)と呼称される大剣を持つこの男の名は、死神代行黒崎一護。

 

別世界から招かれた、多大なる霊力を内に秘める強き青年が今、融合世界に姿を現した。

 

「悪ィが、一気に終わらせるぞ。」




【参戦作品/キャラクター】

・オリジナル
悠木正人

・BLEACH
(虚圏救出編) 黒崎一護

・無双OROCHI
遠呂智
妲己

妖蛇
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