無双OROCHI─融合せし世界   作:夕叢白

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死神世界

嗚呼────なんて理不尽な光景だろう。

 

倒壊した建物に押し潰され、痛みに喘ぎながら息絶える人々。魔王の手先に抵抗して寿命を縮めた勇敢な人々。

 

それら全てに俺は見て見ぬ振りを貫き通した。生き残る方法が、それしかなかったから。

 

 

 

悠木正人(ゆうきまさと)、今はもう呼ばれる事のない俺の名前だ。魔王遠呂智が現れたあの日、当たり前のように享受していた平和な日々はいとも容易く崩壊した。破壊の限りを尽くす灰色の人型に追われ、家族と共に逃げ回った最初の頃、避難所に指定された学校が安全だと楽観していたあの時、救助を求める人々で溢れ返った避難所での人型による殺戮は今でも鮮明に思い出せる。

 

頭の中で何度も繰り返される当時の行動、やり直したい、忘れられない。当たり前だ、俺の家族も避難所で殺されたのだから。あの日から自分は藁にも縋る思いで願った、アニメやドラマで語られるヒーローの登場を。でも結局、魔王の軍勢を打ち負かす英雄は一人も現れやしなかった。この地獄は創作の出来事じゃない、目の前にある現実なんだから仕方ない。皆が皆、大切な人を失っている中で他人の為に命を張れる程、吹っ切れている者はいない。だから俺も、次第に希望を抱かなくなった。

 

長期間、人型の目を掻い潜り生き残ったとしても、親を失った子供は物乞いをするか強者に頼って生き長らえるしかない。俺の場合は後者だった。腕っ節の強い生存者と組み、他のグループから物資を略奪。又は頭の切れる生存者と組み、巧みな弁舌で交渉を有利に進める。組んだ大人には高確率で見捨てられたが、対策として自分から裏切る回数も増えていく。

 

弱肉強食、人間同士で争っている場合ではないというのに皮肉な状況である。そんな裏切り合いに慣れた頃、俺は妙な集団を発見した。一団には老若男女と国籍問わず様々な者が入り交じっていたが、武器は一切所持していなかった。無法者となりつつある俺からして見れば、相手側は格好の獲物。脅して食料でも奪ってやろうと警官の亡骸から盗んだ拳銃を手に一団へ接近するも、気付けば俺の意識は横合いから放たれた拳にあっさりと刈り取られていた。どうやら最初から勘付かれていたらしい。今となっては襲撃が失敗に終わって良かったと思っている。何故なら、俺は彼らに心を救われたから。

 

他者を家族として扱う非武装集団、慈しむ心を忘れないといった理念を掲げて活動するこの団体に身を置く事となった自分。地獄の中で心の拠り所を得られたのだから、つくづく俺は幸運な男だ。失ったものは取り戻せないが、俺は確かにまた築き上げていった。知人に友人、義理だったが、家族すら。此処でなら、まともな人間として生きていける。文明の再興だって可能だ。

 

 

 

─────心の底からそう思えたのに。

 

 

 

 

 

 

 

仙界───その全てを統べる天帝を失った仙人達は魔王遠呂智の配下の一人である平清盛(たいらのきよもり)が指揮する軍勢に苦戦を強いられていた。魔王に力を奪われた戦士は数知れず、太公望(たいこうぼう)女媧(じょか)神農(しんのう)と言った高名な仙人までもが前線から離脱している。現在まで平清盛の軍を押し止められているのは偏に伏犠(ふっき)素戔嗚(すさのお)の奮戦があってこそ、彼等が立ち上がらなければ今頃仙界の地は火の海と化していたのではないだろうか。然し如何に荒事に向いている二人とて、何時かは体力の限界が訪れる。この戦況が長引くようなら、何れは撤退せざるを得ないだろう。

 

風雲急を告げる戦場、その中心で数人の部下を自身の護衛に付けながら灰色の人型、妖魔(ようま)を次々と斬り伏せる伏犠がいた。彼の持つ武器、大仙将剣と名付けられた大剣の斬撃は凄まじく、その威力から発生した衝撃波で多くの妖魔が遠くに吹き飛ばされている。だが彼の実力の一端を間近で目撃したにも関わらず敵の士気は一向に下がらない、寧ろ上がってすらいた。

 

「くっ...この妖魔共、清盛の妖術で強化されておるのか。」

 

伏犠の指摘は間違っていなかった。遠呂智に力を分け与えられた事により、新たな能力に目覚めた清盛は以前より洗練された妖術を巧みに使い兵を強化している。高みへと至った清盛の能力は連戦で疲弊している仙界軍にとっては厄介極まりない。さりとて援軍は期待するだけ無駄、反対側の素戔嗚との合流は敵を連れて行ってしまう為に危険が伴う。四面楚歌の現状を打破するには敵の本陣を制圧するしかない。

 

「分の悪い賭けじゃのう...。」

 

妖魔軍の本陣は少なく見積もっても数十メートルは先にある。だが撤退の二文字は頭にない。ならば敵陣を突っ切るしかないが、正面突破に失敗すれば全滅は必至。逆に成功したとて、伏犠の部下が生き残る保証はない。仙界の行く末を考えれば、こんな場所で優秀な人材を失うのは余りに忍びなかった。どうにか全員を生還させる方法はないものかと思索に耽る伏犠だったが、部下の様子を窺おうと周囲に目を配ったその時に彼の思考は中断された。

 

伏犠の部下は仙界の盾となるべく教育された生粋の戦士。断固とした強い意志の宿った視線、それを互いに交差させている彼等の覚悟は最初から固まっているも同然だった。元より絶望的な戦力差の中に部下を巻き込んだのは伏犠自身、ならば指揮権を持つ隊のリーダーとして彼等の犠牲を背負い戦い抜く責任が彼にはある。

 

勝ち取らなければならない、この戦の完全勝利を。

 

 

 

「儂らはこれから、敵本陣を目指す。」

 

伏犠の中で渦巻いていた迷いが消え去る。今より彼を突き動かすのは、決して途切れる事のない闘志のみ。死に体に成り果てようと敵の総大将、平清盛の首だけは刈り取ってやろう。

 

仙界の存続の為───これから散っていく同胞の為───今。

 

「全員、突撃じゃあッ!!」

 

勇猛なる戦士達の長い戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

伏犠らが敵陣へ突撃したその頃、仙界が存在する世界とは別の時空、尸魂界管轄下の日本、空座町の浦原商店地下には死神代行である黒崎一護とその仲間が集まっていた。彼等が一堂に会しているのには重大な理由がある。尸魂界を裏切った大罪人、藍染惣右介が率いる虚の上位種、破面(アランカル)に黒崎達の仲間の一人である井上織姫が連れ去られてしまったのだ。

 

その事態を重く見た護廷十三隊総隊長の山本元柳斎重國は死神による井上織姫の救出を禁じた。尸魂界から協力を受けられない以上、単身で敵地に乗り込み織姫を救うしかないと腹を括る一護だったが、仲間を助けようと動き出したのは彼一人だけではなかった。滅却師(クインシー)と呼ばれる一族の最後の生き残り、石田雨竜。黒崎一護の親友の茶渡泰虎。織姫に関する急報を聞いて一護の元へ駆け付けた二人。全ては大事な友人を取り戻す為に、破面の拠点がある虚圏(ウェコムンド)と呼ばれる空間に三人は潜入しようとしている。

 

虚圏への入口、黒腔(ガルガンタ)を開くのは元死神の浦原喜助。短時間しか維持出来ないそれは漆黒の裂け目となって浦原商店の地下空間に現れた。裂け目の内側は暗闇が支配しており、奥の様子を視認する事はできない。されど黒崎達に怖気は一切感じられず、彼等の双眸から読み取れるのは不退転の覚悟のみ。道を開いてくれた浦原に視線で感謝を示した一護が入口へ向かって最初に飛び込む。彼に続いて石田と茶渡が飛び、全員が暗がりに消えた事を確認した浦原は黒腔を閉じた。

 

同時に浦原喜助の身体に未知の悪寒が走り抜ける。特別、彼の周りで何かしら異常が起こっている訳ではない。彼の心境を代弁するならば、単に嫌な予感がしたと言うだけの漠然とした不安。何の根拠もない抽象的な表現ではあるが、浦原が僅かに感じ取った寒気の原因は藍染の霊力に匹敵、又は凌駕するのではないかと思える程のものだった。

 

「......気の所為っスね。」

 

片手で帽子を深く沈め、考え過ぎだと一蹴した浦原であるが、未知の力を観測したのが彼だけとは限らない。天に立つと宣言したあの男、藍染惣右介が気が付かないはずはない。

 

 

 

虚夜宮(ラスノーチェス)、藍染と破面の拠点となっているその場所は高い壁に囲まれており、外側には白い砂漠が広がっている。浦原の開けた黒腔を通り虚圏へ侵入した黒崎一護らの動向は既に把握されており、問題が発生したのは配下の破面達を集めた藍染が会議を開こうとした時だった。感じた事のない気配。

 

死神や滅却師、この世に存在するどの権能にも属さない未知の力、その濁流の如き余波が虚夜宮を揺らした。ある者は冷静に傍観を決め込み、またある者は藍染の禍々しい霊圧を模倣したような力に騒ぎ立てる。そんな渦中に在って尚、藍染惣右介は確かに感じ取っていた。

 

黒崎一護を含めた三人が虚圏から完全に消え去った事実を。これから此方側で起こるであろう、未知の現象の到来を。然し藍染に慌てる様子はない。何故なら彼の計画は一つや二つのイレギュラーで頓挫する程、脆い作りではないからだ。

 

故に、藍染惣右介は恐れていない。




【参戦作品/キャラクター】

・オリジナル
悠木正人

・BLEACH
(虚圏救出編) 黒崎一護

・無双OROCHI
遠呂智
妲己

妖蛇
伏犠
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