無双OROCHI─融合せし世界   作:夕叢白

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死神代行 黒崎一護

見渡す限りの褐色、乾涸びた大地の上に黒崎一護が大の字で倒れている。今、彼の脳裏に浮かんでいるのはこの場で目覚める前の記憶。黒崎一護、石田雨竜、茶渡泰虎の三人は破面に連れ去られた井上織姫を救出する為、浦原喜助の手を借り虚圏へ突入、敵の拠点となっている虚夜宮を目指して白い砂漠を駆けていた。異常が発生したのはその直後だった。

 

「黒い渦...そうか、あれに吸い込まれて...。」

 

虚夜宮への道中、真っ白な砂漠の虚空に突如として出現した黒い渦。辺りの空間を侵蝕して拡がるそれに抵抗する間もなく引き寄せられ、黒崎一護は気を失った。

 

「っ!石田、チャドっ大丈夫か...って、いない...?」

 

一護の記憶に間違いがなければ、石田雨竜に茶渡泰虎もあの異常現象に巻き込まれている。この場合、藍染惣右介の罠によって分断されたと考えるのが自然であり、やはり一護本人も早速その結論に至っていた。

 

「うだうだ考えてても埒が明かねぇ。」

 

仰向けの状態から勢いをつけて立ち上がり、一護は目を閉じる。どれだけ遠く離れていようと霊圧で二人の位置を特定する事さえできれば、最終的に合流は可能だ。きっと二人も同じ事を考えているだろうと踏んだ一護は霊圧感知を研ぎ澄ませ、慣れ親しんだ仲間の居場所を探っていく。そうして数分後、彼の表情には焦りの色が滲んでいた。石田雨竜、茶渡泰虎の両名共に全く霊圧を感じ取れなかったからだ。その結果が示す意味は一つ、彼等は既に─────。

 

「んなわけねぇだろ...。」

 

何処かにいるはずの石田と茶渡を想像し、一護は拳を握り締める。彼の危惧する最悪のケースは織姫同様、二人が敵の手に落ちてしまった場合である。元より一人で織姫救出に向かおうとしていた一護には、ある程度の自信があった。しかし、あの藍染惣右介と破面相手に救出対象が三人ともなれば、失敗する可能性は高い。脳裏を過ぎる真っ暗闇の未来から少しでも目を逸らそうと、一護は周囲を注意深く観察する。そうして、ようやく気付く。灰色の肌をした人型の軍団が自分を包囲するべく、数十メートル先から刻々と迫ってきている事に。

 

「クソ、早速お出ましかっ。」

 

そこからの行動は非常に迅速であった。背から斬魄刀の斬月を引き抜き、いつ接近されても相手を仕留められるよう、最大限に警戒を強める。何度も修羅場を乗り越えてきた黒崎一護に油断は一切ない。そんな彼とは裏腹に灰色の軍団は途中で隊を二つに分け、大半の兵は一護とは反対方向へ走っていく。どうやら軍団の指揮官が別のターゲットを発見したらしい。一護方面に割かれた軍団の中には副官らしき人型がいる事から、それなりに統制の取れた相手なのは確実。見見うちに周囲は灰色へ染まり、此処に黒崎一護包囲陣が完成した。そして、軍団の中からおどろおどろしい兜を身に着けた特徴的な人型、百々目鬼(どどめき)が姿を現す。

 

「人間......か、お前。」

 

「敵に会って最初に言う台詞がそれかよ...別の何かに見えるってのか?」

 

「我が主は想像以上の混沌に満ちた世を生み出したのでな。そこに人ならざる存在が紛れ込んでいたとしても、不思議ではない...と思ったまで。人間よ、我はお前を...滅す......。」

 

百々目鬼の発言に違和感を覚えた一護が口を開くより前に、百々目鬼は腕を彼の頭部へ向けて構える。この距離は百々目鬼にとって必中の領域、その攻撃方法は縦横無尽に伸縮する腕を利用した籠手による打撃。初見で彼の一撃を見切った者は誰一人いない。故にこそ、百々目鬼は慢心していた。自身を勝利へ導くはずの一手が、失着であると気付けない程度には。一護の頭部へ向かって伸びる超速の腕、常人では知覚する事すら叶わない必殺の一撃。だが、今此処に居るのは常識の埒外に位置する死神代行の青年。戦況は黒崎一護たった一人によって、覆される。

 

「月牙天衝ッ!!」

 

全ては一瞬の出来事だった。月牙天衝(げつがてんしょう)、自らの霊力を高密度の斬撃として放出する黒崎一護の技の一つ。それは周囲にいた人型を一斉に吹き飛ばし、百々目鬼の体勢を大いに崩した。風圧に弾かれた腕は中空を舞い、体全体が仰け反る程の余波に百々目鬼は暫し発心状態へ─────しかし、一護の容赦のない追撃により意識は強制的に現実に引き戻される。

 

「くっ、恐ろしい戦鬼よな...!」

 

瞬歩(しゅんぽ)という高速移動術を使った一護は百々目鬼の真横に姿を現し、斬月を頭上高く構えた。至近距離からの月牙天衝、黒崎一護必中の領域に捕らわれた百々目鬼にもはや逃れる術はない。一護はこの時確実に彼を戦闘不能に追い込もうとしていた。斬月が振り下ろされる僅か数秒の間に、百々目鬼の胸中には様々な思いが渦を巻くように駆け巡る。

 

 

 

何故、この人間は人並み外れた力を持つのか。

 

 

 

何故、自分は負けるのか。

 

 

 

何故、まだ終わりたくないと強く願うのか。

 

 

 

そんな数々の思いや疑問が百々目鬼の中で浮かんでは消え、最終的に彼は思考を放棄した。斬月の刃先に霊力が集中しており、既に考えるだけの時間的猶予はない。次の瞬間にはあの濁流の如き斬撃が自身を襲うだろう。だが、そうはならなかった。突如、黒崎一護が百々目鬼とは反対の方向に走り出したからだ。彼の姿は瞬く間に掻き消え、その場には呆然としながらも改めて生を実感する百々目鬼だけが残った。

 

 

 

 

 

 

 

この世にヒーローなんて都合の良い存在はいない。魔王の軍勢を打ち負かす英雄だって現れなかったし、頑張った人達が報われる奇跡も起きなかった。目の前に転がっている希望も、いつかは絶望に変わる。だから、俺はもう信じない。

 

「───ったく、子供相手に本気かよ。石田もチャドも見失っちまったし、一体どうなってんだ。」

 

信じたくないのに、希望は倦まず弛まず俺の前に舞い込んでくる。期待を裏切られ続けて擦り切れそうな心の隙間に甘い蜜を注いでくる。

 

「悪ィが、一気に終わらせるぞ。」

 

この希望は虚像か実像か、精神を摩耗してしまった今の俺には判断できない。でも、もし真の希望であるなら、この運命に文句は山ほどあった。




【参戦作品/キャラクター】

・オリジナル
悠木正人

・BLEACH
(虚圏救出編) 黒崎一護

・無双OROCHI
遠呂智
妲己

百々目鬼
妖蛇
伏犠
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