空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

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(まどマギ世界の)二十世紀人、(まどマギ世界の)二十一世紀に転生する

時は七十年代初頭、大学生の田中鉄雄(ノンポリ*1)は学生紛争で総括*2されてしまった!

 

「そういうわけで、あなたには転生してもらいます」

 

鉄雄ははっきりと自分が死んだということを理解できていた。

 

「・・・えっと、輪廻転生というやつか?

てっきり、俺はご先祖様のいる黄泉の国に行くもんかと」

 

「あの世も複雑なんですよ。色々と。

私も生まれてから間もない新人の神様なのでよくわかんないんです。

とにかく、あなたには転生という判定が下りました。

別の世界かどこかの時間に転生してもらいます」

 

「そうか・・・来世は理論武装しなくてもいい世界がいいな。

そうだな、二十一世紀がいいな。未来は少しマシになってるだろ」

 

「未来の世界ですか・・・藤子不二雄の漫画の世界はどうですか?」

 

「いや、漫画じゃなくて現実の二十一世紀で」

 

漫画の世界は理想的だが、おそらく進歩についていけないだろう。

現実だったら、そこまで派手に進まないと鉄雄は確信していたのだ。

 

「現実ですか・・・少し上司に連絡しますね」

 

彼女はモールス信号の発信機を打ち始めた。

数分後に、気送管らしきものから箱が落ちてきた。

箱の中には、三十センチの赤い水晶が入っていた。

 

「鉄雄さん、冬眠許可が下りました。

封印措置を施すことで、二十一世紀までの冬眠が可能となります。

それでよろしいでしょうか?」

 

「・・・ああ、大丈夫だ。おやすみ、女神様。ありがとう。

そうそう、俺を殺した奴らに関してだけどさ・・・。

ちゃんと、罪を償わせた後で幸福な人生を送れるようにしてくれ。

俺だけこうして来世で幸せになるのは間違っているような気がするし・・・。

確かに殺されたのはムカつくけどさ、お願いだよ。

あと、親父たちの幸せとかもお願いな」

 

「・・・わかりました」

 

そして、封印は施された。

 

「それにしても、現世は怖いですね。

ファイルを見る限り、この人は正気だったのに。

いえ、正気だったから殺されてしまったのでしょうか?

既存の宗教と先祖に敬意を払うことができていて、

出自関係なく接する寛容さと自分の確固とした政治的意見を持っていて、

なおかつ、自分を殺した人間たちの幸せを願うほどに慈悲深くて・・・。

生まれる時代がもう少し遅ければ、長生きできたかもしれませんね。

そもそも、この人の出身宇宙自体がまずかったですね。

異星文明、魔女、魔法少女・・・平和とは程遠い世界ですから」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

時は二十一世紀、昔は新人だった女神も今や多忙を極めるキャリアウーマン!

愉悦を求める邪神たちが一般人を殺して転生させるのも彼女の忙しさに拍車をかけていた!

 

「ああ、クソッたれどもが!どいつもこいつも転生かよ!

異世界転生、リリなの転生、鬼滅転生、ジョジョ転生、マギレコ転生!」

 

堪忍袋の緒が切れそうな彼女を天使が宥めた。

 

「女神様落ち着いてください!」

 

「・・・すまなかったわね」

 

「それに、マギレコ転生を選んだ人ぐう聖だったじゃないですか!韓国人でしたけど」

 

「・・・まあね。昔はもっとぐう聖とやらがいたのにね。

あの頃は誰も異世界転生なんて知らなかったもの。

願いもささやかなもので、ドラえもんと友達になりたいとかだったわ。

それがどう?今だとチートやらハーレムやら・・・。

しかも、前世で関係のあった人間たち全員の不幸を願うこともあるし。

はあ、二十世紀の時の方が良かっ・・・」

 

女神は最初の仕事のことを思い出した。

 

「・・・いえ、最悪だったわね。

腹に満たされもしないイデオロギーとやらで他人を殺してたんだから。

そういえば、もう二十一世紀になったのね。

そろそろ起こしてあげるべきかしら?

事実は小説よりも奇なり。まったく、進歩しすぎたのよね。

適応できるか不安だけど・・・仕方ないわね」

 

彼女は書類がたくさん溜まった机から水晶を引きずり出した。

大きさはずっと三十センチのままだが、中に鉄雄が入っているのは変わらない。

彼女が魔法陣を刻むと、水晶は光を放ちながら崩壊していった。

そして、鉄雄が起き出した。

 

「ふわあ・・・もう二十一世紀?」

 

「ええ、二十一世紀よ」

 

「あっ、女神様。おはよう・・・なんだか疲れてない?少し休んだ方がいいんじゃ?」

 

「いえ、大丈夫よ。とりあえず、二十一世紀に関して簡単な説明をするわね」

 

女神はスマートフォンを取り出したが、鉄雄には奇妙な板にしか見えなかった。

 

「ソ連は二十世紀終盤で崩壊して、アメリカがイニシアチブを握ったわ。

でも、そのせいで逆に中小国が不安定になってしまった。

技術はタケコプターやらどこでもドアみたいに進みはしなかったけど、

コンピューターという技術が大幅に進化したのよね」

 

女神はスマホを操作してみせた。

 

「これ一つにカメラ、テレビ、新聞、電話、様々な娯楽・・・。

色々なものを詰め込めることが可能になったわ」

 

「へえ・・・未来人は本当に賢い(スマート)ですな」

 

「使い方はそうとも言えないわよ。あなたの方が賢く使えるんじゃないかしら?」

 

「女神様、餅は餅屋だ。二十一世紀の人が上手く使えるに決まってる」

 

「さあどうだか?餅屋は餅の作り方を知ってるけど、食べ方を知ってるとは限らない。

それどころか、とっても不味い食べ方ばかりしている愚者かもしれないわよ」

 

女神は悪態をついた。

 

「・・・口悪くなったな」

 

「ここ最近、ほっっっっっんとうに忙しくてね。

まあ、あなたに使う時間だけならあったのが奇跡なくらい。

そうそう、政治思想に関してだけど、共産主義は当然崩壊よ。

クマムシ並みになぜか生き永らえているけど。

それ以外には・・・人権思想がさらに拡大したことね。

女性がさらに地位向上して下手に口応えしたら死よ。

まあ、あなたのファイルを見る限りは適応できそうだけど」

 

「わかりましたっと。じゃあ、今から転生ですか」

 

「ちょっと待って。準備するから」

 

二人の近くに穴が開いた。

 

「飛び込む前に、転生特典を言ってちょうだい」

 

「特典?なんじゃそりゃ?」

 

「・・・そうだった。あなた、最近のムーブを知らないんだったわね。

今では転生する人に能力とかのプレゼントをするのよ」

 

「学力とか運動神経とか?」

 

「そうそう、そんな感じ。あと、必殺技とかもね。

まあ、学力とか運動神経を増やす必要はないと思うわ。

深い意味はないけど、何か必殺技があったほうがいいんじゃない?

深い意味はないわ。何度も言うけど、深い意味はないわ」

 

鉄雄はしばらく考え込んだ。

 

「じゃあ・・・真空斬り*3で。子供の時から一回はやってみたかったんだ。

もちろん、人に対して使う気はないけど」

 

「・・・そうですね。予算不足だから難しいわ(適当)。

その代わりに、この刀をあげましょう」

 

彼女はドラえもんのひみつ道具である電光丸を彼に渡した。

まあ、鉄雄が死んだとき電光丸はまだ登場していなかったのだが。

 

「この刀は二十世紀の漫画だけでなく、二十一世紀の必殺技も出せるようにしてあります。

問題は、別の宇宙の二十一世紀の必殺技も出せるようになっていることです。

下手に人前で使ったら、色々と言われるかもしれません。

まあ、そもそもの話、その時点で銃刀法違反で御用になるんですがね」

 

「いや、すっごくありがたい。かっこいいし。

これから毎日、何かお供え物をするよ」

 

「いえ、当然のことをしたまでです。

それでは、良い人生を・・・」

 

「じゃあ、また百年後くらいにな、女神様!」

 

彼は穴に飛び込んでいった。

 

「・・・女神様、よろしいのですか?

あの男性の出身宇宙というか戻っていった宇宙は・・・」

 

「ええ、マギアレコードとかいう作品の宇宙よ。

当時は作品自体がなかったから私も知らなかったけど。

まさか、あんな作品の出身だったなんて」

 

「・・・大丈夫なんですか?

真空斬りなんてしょぼい必殺技だと自殺そのものですよ?

ただでさえも二十一世紀の必殺技はインフレを起こしてるというのに。

火力主義的な魔法少女やおっかない魔女、そして世界観を無視する転生者・・・」

 

「だから、あの刀を渡したに決まってるじゃない。

性能は抜群よ。映画と違って電池切れにはならないし、

最近の漫画のラスボスにすら対抗できるほどの設定にしたんだから。

あの宇宙には転生者がたくさんいるけど、そいつらも問題ないくらいよ。

愉悦勢の邪神どもにはいい薬になるんじゃないかしら?

最近のマナーのなってない転生者たちも痛い目に遭わせたいし。

あははははははははは!ざまあみろ!」

 

(・・・うわあ)

 

さすがに天使もドン引きした。

*1
特定の政治意見を持ってないとされる学生のことを指すが、どうしてノンポリなのかも理論武装しないといけなかったらしいよ。だから、あくまで自分の意見はあるけど学生紛争側に積極的に関わらなかった人たちという方が正しいね!

*2
知らなかったら検索してみよう!

*3
赤胴鈴之助に登場する必殺技。鬼滅よりも過去の漫画なので風の呼吸のパクリではない

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