空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

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水名見物

新西区をまた通るのは少し辛かった。

だが、さっきよりかはマシになっていた。

鉄雄とかこは電車に乗って水名大橋を渡った。

見えてきた水名区は1970年代よりかはマシに思えた。

あの時代特有の軽薄さはなくなっていたのだから。

でも、どこか伝統に固執している気概も見られた。

 

「・・・まあ、これはこれでいいのか?」

 

「何か水名区に思い出でもあったんですか?」

 

「・・・恥ずかしい話だが、学生紛争ってのはファッションも兼ねてたんだ。

お嬢様たちに良いカッコ見せようとあそこでデモもしてたな」

 

「鉄雄さんもそれに参加してたんですか?」

 

「いや、俺は見物を兼ねて散歩してた。

まあ、親しくていていた人はたくさんいたんだけどさ。

会っても、お互いわかんないだろうなあ・・・。

俺はこんな姿だし、あっちはあっちで年を取っただろうし」

 

「・・・」

 

駅を出ると、余計に伝統的だと思えてしまった。

瓦屋根や煉瓦造りの建物が以前よりも増えている。

誇りとかに対する執着ともいえる。

 

「道行く人の何人かが生気抜けてるのは参京区と変わんねえな」

 

「まあ、全世界がそうなってると思いますよ」

 

駅から出ると、あるものが目についた。

それは人力車だった。

よっぽど伝統性を前面に押し出したいらしい。

これでは1970年代と根が何も変わってない。

 

「・・・とりあえず、歩いていくか」

 

「それがいいですね」

 

二人は古き良き街を歩いていく。

水名城跡や美術館を見物していった。

こうしてほっとできるのは神浜に来てから初めてだった。

最近はネジレと戦ったりしてばっかりだった。

全てが終わったら、もっとほっとできるのであろう。

全ての光が完全に蒔かれた後の世界・・・。

もちろん、耐え切れずにネジレみたいになる者もいるだろう。

だが、それすら抑制する何かを手に入れる者だって現れるはずだ。

 

「はわわ~・・・すごく立派な刀です~」

 

なんか変なのに絡まれてしまったが。

少女は背中に背負った刀に擦り寄ってきた。

 

「・・・かこさん、この子は誰だ?」

 

「刀剣アイドルとして知られる史乃沙優希さんです。魔法少女でもあります」

 

「あっ、すみません!沙優希、刀を見るとついつい興奮しちゃって・・・」

 

「いや、まあ大丈夫だ」

 

沙優希と別れて、見物を再開する。

それにしても、水名区の女性たちは1970年代よりかは自由なようだ。

まあ、まだ因習は残っているかもしれないが。

工匠区はどうなのだろうか?あそこもまた買い物に行ってみるのもいいかもしれない。

しばらく歩き続けてると、今度は行き倒れている少女に出会った。

 

「・・・この飽食の時代に行き倒れなんてな。お経は唱えてやるか」

 

「ぐう・・・まだ、私、生きていますよ・・・」

 

「そうか。かこさん、どっかその辺の喫茶店で休憩を兼ねて、

この子に何か食べさせるとするか」

 

「は、はい!」

 

二人は少女を近くの喫茶店まで運んだ。

そこは鉄雄が学生時代(前世)によく足を運んだ喫茶店の一つだった。

その喫茶店の雰囲気は1970年代のままであった。

店主も質の良い料理を早めに持ってきてくれた。

 

「・・・なんか、君に似た学生がいたような気がするが」

 

「気のせいだ、店長さん」

 

「そうか・・・やっぱり私もボケ始めたか」

 

鉄雄は彼のことをよく覚えていた。

1970年代のとき、この喫茶店の店主はアルバイターだったのだから。

アルバイターから店主までよく出世したものだ。

 

「・・・すっごくおいしいです!

なんか、全部市販のもののはずなのに!」

 

「ま、まあ空腹は最高の調味料だからな。この店、ずっとやり方変えてねえのかよ

 

少女はあっという間に完食した。

 

「ありがとうございます!私、若菜つむぎです!

最近、ずっと断食状態に近くて・・・」

 

「ダイエットか?下手なダイエットはDieにつながるからやめておいたほうがいいぞ」

?

「・・・違うんです。私が常連だった店が、潰れてしまったんです。

ウォールナッツっていうんですが・・・」

 

「・・・ああ、あの店か」

 

鉄雄は罪悪感を感じた。

あの日、自分が来なければ、あの少女は生きていられたのではないのか。

そうやって横になって考えることがあるのだから。

早めに逃げたおかげで、犯人が見つからないまま、迷宮入りしそうだが。

それどころか、世間ではむしろまなかの方にバッシングが集まっていた。

冷蔵庫に二人分の人肉が見つかっていたし、まなか自身もネジレに近かったから。

 

「・・・私、どうすればいいのかわからないんです。

まなかさんのしたことは確かに許されないし、私も許さない。

でも、いくらなんでも殺されるのはおかしいです・・・」

 

だが、あそこで殺していなければ鉄雄たちのほうが殺されていただろう。

それだけじゃない。彼女まで美食にされていたに違いない。

結局、それはそれで、これはこれなのだ。

その後は気まずい沈黙が流れたまま、結局彼女とは別れた。

二人は再び、水名区を歩き続けることになった。

 

「・・・鉄雄さん」

 

かこは新西区でしたように鉄雄の手をぎゅっと握ってくれた。

 

「・・・責めたけりゃ、責めていいぞ。

結局、俺も加担したのは確かなんだからな」

 

「いいえ、私には鉄雄さんを責める資格なんてないです。

鉄雄さんたちはできることをやっただけなんですから」

 

どうやら、心の底からの安息は優心の計画を完成させない限りは許されないようだった。

二人は夏目書房にそのまま徒歩で帰っていった。

 

「なるほど、まどかとかこをイチャイチャさせるのもいいわね!」

 

「ええ、私も新しい境地に目覚めることができそうです。

ありがとうございます、ほむらさん」

 

「いいえ、礼を言うのこちらのほうよ。

最初は私以外の子がまどかと〔規制済み〕するなんてと思ったけど・・・。

これはこれで捗ることに気づけたわ」

 

店のカウンターで二人の少女が鼻血を流しながら握手を交わしていた。

そんな二人をかこは魔法少女に変身して空高く吹き飛ばした。

 

「・・・しばらく、一人にしてください」

 

「・・・」

 

かこは店の奥に行く。突然の性的関心を向けられた恐怖からか、彼女の泣く声が聞こえた。

鉄雄はやれやれと思いつつ、店のパソコンに入っていたエロゲーのデータを消去した。

かこを決して怒らせてはいけないと思いながら。

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