「へえ、お前も優心に会ったことがあるのか」
「ああ、
まあ、一回しか会ってないのに親友ってのもおかしいが」
「まあ、アイツは変わった魅力があるからなあ」
かこが夏目書房を訪れると、鉄雄と青年が話していた。
青年のことを、彼女は知っていた。
「・・・朗生さん、どうしてここに⁉」
「あれ、かこさん、知り合い?」
「知り合いも何も、私の通ってる学校の上級生です!
・・・二年間、どこに行ってたんですか?
みんな、心配していましたよ」
朗生の顔が少し悲しげなものになった。
「・・・すまんな。ようやく、やるべきことを終えたから。
いや、何かに終わらされたといったほうがいいのか?」
鉄雄はこの場ではあまり詮索しないほうがいいと察した。
朗生という青年はよく見れば、修羅場をくぐり抜けたような表情をしている。
これはしょっちゅう学生と衝突していた機動隊員と同じ顔だ。
あの時代、彼らは命がけで学生たちに臨んでいたのだから。
「・・・まあ、その話は今はよしておこうぜ」
朗生も鉄雄の気遣いを察してくれたようだ。
「俺は今、優心というやつを探してるんだ。この剣を返したくてな」
彼は腰につけていた剣を手に取った。
それは包帯でぐるぐると巻かれて、羽飾りがついていた。
ネジレと似ているようで似てないような気配を発している。
だが、とにかくそれが優心の作ったもので間違いないのは確かだ。
こんな武器は優心にしか作れないだろうから。
「・・・アイツは長い一人旅の途中だ」
朗生はまたしても鉄雄の気遣いを察してくれた。
「そうか・・・まあ、そう長くは生きれないと思っていたが。
でも、今の世界だったら、アイツも生きられたのかもな・・・」
朗生はこの先、何も知らずに済むだろうと思った。
英雄に祭り上げられるのを、優心は好みそうにないから。
今、世界が(恐怖心からとはいえ)優しい方向に向かってるのは優心のおかげなのだ。
ニュースで二木市が壊滅したと知ったときはさすがに驚いたが。
前世の故郷が壊滅すれば、誰だってそうなる。まあ、死人が出てないだけ何よりだ。
「さて、俺はどこに行こうかね?
アイツが旅の途中なんじゃ、直接返しにはいけんし」
「・・・里見メディカルセンターという場所がある。
そこが優心の家だったから、そこに行けばいい。
ただし、妹さんは兄を憎んでいたから、地雷を踏まないように」
「そうか、ありがとう。じゃあな・・・」
彼は店から出て行った。
「そうそう、その刀、すっごく良さそうな気配がするぞ。
大事にしろよ。多分、お前の命をこれから何回も救うと思うから。
優心の剣が俺を何度も救ってくれたようにな」
彼の姿が完全に見えなくなったのを見計らってから、かこが話し始めた。
「・・・朗生さんの家族は、全員殺されてしまったんです」
「やっぱり重い背景があったか」
「その時、朗生さんは友人の家に泊まってたから難を逃れたんですが・・・。
そのあと、彼は犯人に復讐するってどこかに消えてしまったんです」
あの表情からして、復讐は終わったようだが。
どこか不完全な形であったのであろうが。まあ、本人もこれ以上は望んでないようだ。
過度な復讐はその後の報復も生むのだから。
別に鉄雄は復讐が悪いこととは思ってはいなかった。
人類史は復讐の歴史ともいえ、良くも悪くも多くのものを残したのだから。
「・・・とにかく成功したようだな。
まあ、俺たちがとやかく言うことじゃないのは確かだ」
「・・・朗生さんの気持ち、少しはわかるような気がします。
私たちも同じような目的でチームを組んでいたから」
「ああ、ななかのチームか」
ななかの一派は最近解散したのだ。
彼女が多忙になったからだ。
彼女の高弟たちが光の影響を色々と受けたからだ。
中にはネジレたのもいるくらいだ。それは鉄雄たちが倒したが。
華道のことはよくわからないが、ななかだけが後継者となったらしい。
もともと復讐対象が消えたのもあって、チームは解散となった。
この前、彼女が店に来たのもそれを伝えに来たからだ。
まあ、ほむらと一緒に悪ノリして、ひどい幕切れとなったが。
「アイツぐらいかね、この状況で得をしたのは」
それはそうと、困った事態に鉄雄たちは直面していた。
「鉄雄~、やっぱり駄目だわ~」
華宵がそう泣きついてきた。
人工妖精でいくら探しても、彼の拠点は見つからないのだ。
とりあえず、三人で輪になって話し合うことにした。
ほむら?彼女はずっと筵で正座させられているが?
この前のことをまだかこから許してもらえていないようだ。
「・・・よく考えてみたら、端にあるとも限らないんだよな。
あくまで、トランサーと状況が正反対というものなんだからな」
「そういうことよね・・・となると、どこかの工場かしら?物理科学という方面で考えれば」
「では、工業地帯のどこかにテルミナスがあるということでしょうか?」
三人はファウンデーション(銀河帝国の興亡)を読んでないとわからない会話を始めた。
ほむらにとって、それは苦痛だった。
一般人が椅子に拘束されてアイドルオタクたちの談話を聞くようなものだからだ。
そして、鉄雄はある地区の存在を思い出した。
「・・・工匠区じゃねえか?あそこ、ある意味では工業地帯だし」
「確かにそこら辺はホーリエにも探らせてなかったわね」
「鉄雄さん、グッジョブです!」
「まだ安心はできんぞ。問題を解くのは俺たちだからな。
まったく、優心もハリ・セルダン並みに難しい問題を出しやがるな」
やっぱり、ほむらには彼らの言語が理解できなかった。
「・・・そういえば、手記には書かれてないの?」
華宵の疑問はもっともだった。
「いや、優心は具体的な場所とか計画は書いてなかったんだよ。
おそらく、詳細な情報はそこで手に入れろってことだろ」
ともかく、あとはホーリエの報告を待つのみだ。
そして、今度は正解だった・・・らしい。
やはり工匠区にあったようで、車両基地の中だとか。
ただ、問題があったそうで・・・
「なんですって?中が見れなかった?
変な縄が結界みたいな役割を果たしてる?
さらに、その場所自体にガラの悪い魔法少女がたむろしてるって?
会話から察するに、神浜の外から来て、神浜の魔法少女を憎んでるっですって⁉」
とにかく、状況がマズいのはわかった。
もし、いつもの三人で行ったら、ほむらは誤解で攻撃されるかもしれない。
華宵は魔法少女と間違えられるかもしれない。
そうなると、最善策は・・・
「えー、こちら華宵航空工匠区行き。
ただいまより、降下を始めるわよお!」
「ノリノリだな」
華宵は抱えていた鉄雄を離した。高度十メートルから。
「私は魔法少女じゃないから攻撃しないでね~」
彼女はそう言いながら遠くに避難していく。
鉄雄はさらっと着地することに成功した。
1970年代では、こうした度胸試しは普通だった。
「さて、この建物か」
彼はそのまま建物の奥深くにあるというドアを目指した。
魔法少女たちは何も仕掛けてこなかった。
おそらく、まだ警戒段階にあるのだろうか。
まあ、一般人にはそう簡単には手を出せないのもあるだろう。
そして、ついにたどり着いた。
ドアには一つの絵が描かれていた。脳に刃が刺しこまれている絵だ。
そして、ドアノブは縄で結ばれていた。
その縄にはネームタグが付いていた。
Gordian Knot
ゴルディアスの結び目、つまりはそういうことだ。
鉄雄は刀でその縄を断ち切った。
すると、ドアはあっさりと開いた。
中は思ったよりも広い研究室だった。
そして、あらゆるものに優心の息吹を感じられた。
奥にはもう一つのドアがあった。
開けると、今度は上品な執務室だった。
壁にはこんなものが書かれていた。
もちろん、さっきの脳に切り込みを入れる絵も。
おそらく、ロボトミー手術を意匠に入れたのだろう。
ある意味では、人間の病気を治そうとした優心らしいと言える。
「あら、こんな部屋があっただなんてね」
・・・魔法少女たちも接触を試みてきた。
執務室は設計チームのメインルームをイメージしております
あなたはどれを選択しますか(ストーリーには関係しません)
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壱
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弐
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参
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肆
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伍