空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

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最後の復讐

常盤ななかは調整屋の前に立った。

 

「・・・それで、どうして付いてきたんですか?二人とも」

 

志伸あきらと純美雨も彼女についてきていた。

もう、チームはとっくに解散したというのに。

 

「ボクもみたまにカチンときたからね」

 

「ななかにだけ危ない橋は渡らせないネ」

 

「巻き込まないためにチームを解散させたはずなんですが・・・仕方ないですね」

 

三人とも、ネジレを他の魔法少女よりも積極的に狩っていた。

だから、他の魔法少女よりも強いし、ソウルジェムも濁りにくくなった。

まだ十七夜には敵わないが、それでもみたまなら何とかなると思ってた。

三人は調整屋に踏み込んだ。これが最後の復讐だ。

 

 

メルという子がいる。その子はとっても占いが好きだ。

僕のこともよく占ってもらっている。

不安なのは、その的中率だ。ほぼ当たるのだ。

でも、未来というのは意外と変えれるらしいのだが。

そこで、自戒のためにも占ってもらった。

悲惨な未来が待っているようなら、それを避けるためなのだ。

もちろん、計画のことを上手く伏せたうえで。

・・・彼女が見た未来はあまりにも暗いイメージだった。

 

「三人の少女が下水道に流されている」

 

失敗するということか?それとも、成功しても未来は暗いということか?

ともかく、親友(チョルチン)たる鉄雄に後は託している。

後は・・・三日後のシナリオ開始を待つのみだ。

敷地の護衛は村宮に任せている。僕はシナリオを遂行するだけだ。

この研究所とも永遠におさらばだ。

 

 

最後のレポート(鉄雄訳)に書かれた内容から、優心は計画失敗を知っていたのかもしれない。

だが、それはあくまで自分の失敗によるものと思い込んでいたのだ。

実際はそうではなかった。彼は裏切られたのだ。信じていた人間に。

裏切られたのは彼だけではない。村宮という男もそうだろう。

鉄雄たち曰く、彼は北養区の山中で人間を避けながら暮らしているらしい。

よほど、残酷な裏切りに遭ったといえる。

 

「・・・いい人ほど、馬鹿を見るんだね」

 

笠音アオはそう呟いた。

 

「そうだな」

 

鉄雄はそっけなく返事した。

 

「俺もまともなことを言ったら、殺されたしな」

 

「・・・どうして、人を信じてられるの?」

 

「生きるためには信じるしかないんだ。

まあ、妥協と言ったところだ。前世のころからわかってたさ。

民青も革マルも妥協していたところはあったし。

・・・お前の姉さまも妥協と言うのを知るべきだと思うんだけどな」

 

「割り切ったの?」

 

「ああ、割り切ったさ。割り切るしかないんだ。

アメリカだってそうしたからな」

 

彼は読んでいた新聞を彼女に見せた。

アメリカは新自由主義を捨て去る覚悟のようだ。

カナダやスウェーデンのような人に密着した福祉システムの採用が為された。

もはや高層マンションで隣人のことを知らないというのはありえなくなった。

崩壊したのは新自由主義だけではなかった。

韓国の財閥資本主義でさえも崩壊の兆しを見せつつあるのだ。

イカロスの翼の羽になるのが幸福ではないと理解したのだ。

 

「妥協、これこそが最も人類史で演奏された美しい音楽だと俺は思ってる」

 

「でも、それって諦めとも言うんじゃないのかな?」

 

「諦めることが必ずしも悪いこととは言えないな。

スウェーデンはフィンランドの奪還を諦めて国内改革に成功した。

オランダ、スペイン、ポルトガルも同じような感じだ。

戦争を諦めて、平和と金を得ることができた。

ムガル帝国とかっていうインドに存在した国も諦めで生まれたんだぞ。

昔の領土の奪還を諦めて、ヒンドゥスタンを手に入れたんだからな。

お前の姉さまも・・・一応は俺たちと手を結ぶという妥協をした。

優心に復讐するという目標をいったんは諦めてな」

 

「でも、諦めてばっかりで意味なんてあるの?」

 

確かにアオの言うことはもっともだ。

だからこそ、もう一つ大事なポイントがあるのだ。

 

「ただ一つ、自分が大事だと思ったことは決して掴んで離すな。

俺は死ぬ直前にそうしたし、今回も親友(チョルチン)の遺志を貫くつもりだ」

 

「・・・強いんだね」

 

「そうか?」

 

 

僕は知っているのだろうか

僕が死に就く日にも

君は僕の心の奥深くに入り

僕と共に整然と横たわらんことを。

 

 

「・・・やっべ、剣を返しに行くの忘れてた。

こっそり、病院前に置いていくとするか・・・うん?」

 

夜明け前、朗生は三人の少女が水路に浮かんでいるのを発見した。

彼はそこに自分の末路を見出したような錯覚に陥った。

なぜか本能的に彼女たちが復讐者だったとわかったのだ。

復讐を望んだ者たちの末路が、これなのか。

 

「仕方ねえ、返すのは明日にするか」

 

彼は遺体を引き上げて、近くの土手にこっそりと深く埋めた。

本当は面倒なのでゴミ箱に捨てたいのだが、まだ倫理観はギリギリ残ってた。

この剣を地面に斬りつけるだけで、だいぶ深く斬れるのだ。

 

「・・・ご愁傷様で。まあ、災害に巻き込まれたもんと思って成仏しろ」

 

墓標は作らなかった。面倒事になるし、復讐者に墓標など必要ないのだ。

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