そのシレンと対峙したとき、アオは理解した。
この男は自分自身に対して怒りを抱いているのだと。
彼は彼女たちに対しては優しいのだが、常に表情は険しかった。
「・・・皆さん、これは試練です。
僕が司る感情は激怒・・・分別できる理性をなんとか保っています。
今はただ、あなたたちに倒されるのを待つのみの存在です」
「・・・テメーは何に対してそんなに怒ってんだよ?」
樹里も一歩近づいて訊いてきた。
「僕のしでかした全てのことについてです。
僕は彼女たちを裏切らせてしまった。
僕は村宮くんがあんな目に遭うのを防げなかった。
僕は世界中の人がねじれになるのを黙ってみるしかなかった。
僕は朗生くんが幻想体になるきっかけすら生んでしまった。
そんな僕の罪に対して怒りを抱いているんです」
「けっ、そんなことでいちいち怒りを抱いていたらおかしくなるぜ?
もっと気楽にやれよ、優心さんよ?」
「気楽にやりたくても、あの永遠の繰り返しはそれを許さないんです。
ねえ、皆さん。僕が何をやったかは恐らく知らないでしょう。
でも、外で二年が経つ間、僕の世界でどれほどの歳月が流れたと思いますか?」
アオは知っていた。彼の書いた記録用紙を読んでいたから。
結菜だって、それを読んで知ることができた。
樹里も間接的には知っていた。
そもそも、PROMISED BLOODの全員が何をしでかしたかを知っていた。
だからこそ、らんかはこう言うことができた。
「アンタ、独りでやろうとするからそうなるんだよ。
独りで考えて、独りで実行して、独りで後悔する・・・。
格闘ゲームとか、相手がいないとつまんないじゃん。
少しは人に頼ったほうがよかったんじゃないの?」
「でも、あのシナリオは過酷すぎるんです!」
「そこなんだって!アンタ、もっと人を信じろよ!」
らんかはシレンの胸倉を掴み上げた。
「鉄雄のことを信じてないから、こんなことしてるんでしょ!
こんな回りくどいマネとかして、そこまで他人が信じられないの⁉」
そんな彼女の言葉に、シレンはハッとした表情になった。
「・・・ありがとうございます。
僕は、彼という快く信じ任せられる相手がいたというのに・・・」
シレンは調子を取り戻したようだ。
「さあ、かかってきてください。あと、朗生くんをその調子でなんとかしてください」
「は?やだなんだけど?」
「そんな・・・クリフォト抑止で人間として維持ができるはずで・・・」
「あれ、もう維持とかってレベルじゃないと思うけど???」
魔法少女とシレンの戦いが始まった。
相変わらず、シレンは本気では戦わなかったが、強敵だった。
それでも、最終的に樹里がトドメをさした。
「優心先輩そっくりの人が殺されちゃったの・・・」
御園かりんは茫然としていた。
「うん?優心とかいう奴と知り合いだったのか?」
「・・・やっぱり、私何も見なかったの。
別に十七夜さんが怖いとかいうわけじゃないの、うん」
「ちょっと話、聞かせてもらおうじゃねえか」
「何も知らないの!村宮くんがぼこぼこにされたなんて知らないの!・・・あっ」
かりんは焼かれることなく、即座に拘束された。
神浜の魔法少女が駆けつけてきたが、戦っている場合ではない。
樹里たちはかりんを引きずって、即座に逃げ出した。
ともかく、重要な情報源だというのは確かなのだから。
問題は、結菜たちがボコボコにされた状態で帰ってきたことだろうか?
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