空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

22 / 29
私は私

「・・・優心と大違いね。

アイツもよくこんな妹を愛せたわね」

 

結菜は溢れ出る殺意を滲ませながら、そう言った。

優心は出るかもしれない犠牲に胸を痛めていた。

手記からはそれがよく読み取ることができた。

そして、どんな結果になったとしても妹である灯花の幸せを願っていた。

だが、灯花は違った。彼女は犠牲など何とも思っていなかった。

 

「優心さんも可哀そうっすね・・・こんな妹を持ってしまって」

 

ひかるも呆れながら言った。

そのころ、鉄雄はあることを思い出していた。

 

「あっ、地雷を踏まないようにアドバイスしとくの忘れてた」

 

「踏むとどうなるの?」

 

ほむらは訊いた。

 

「たぶん、あの様子だと怒り狂うと思うぞ」

 

鉄雄の読みはもっとひどく当たってしまった。

二木市の魔法少女たちは突然の殺意に圧倒されてしまった。

灯花は表情をとても険しくしていた。

その瞳には、小学生が抱くものとは思えないような憎悪が籠っていた。

 

「・・・どいつもこいつもあのクソばかり贔屓しやがって」

 

口調も、今までとは違い、余裕ぶったものではなくなっていた。

一瞬、彼女の輪郭があやふやになったように見えた。

 

「なんのデータもエビデンスも提示しないくせに、

ぼくはじんるいのびょーきをなおしたい、とかほざいて、

そんな空っぽの言葉に大人どもは信じてた!」

 

彼女はぎゅっと手を握りしめていた。

そこから、血が流れていた。

 

「姉さまも!ねむも!ういも!パパも!

あのバカ民俗学者も!その娘も!

みーんな、みーんな、あのクソに騙されてた!

それで、みーんなネジレになる運命になった!

わたくしも、あのクソにネジレにされる運命なんだよ!」

 

二木市の魔法少女たちは察した。

こりゃあかん、地雷踏んじまった。

彼女たちは傷つけられる痛みを知っていたのに、

敵を前にそれを忘れてしまったのだ。

 

「・・・もういい。あのクソには地獄を見てもらうから」

 

彼女はボディにマッチが刺さった大砲を生成し、

服はスカートから炭や灰にのようなスーツに変わり、

そして口元にはたばこをくわえるようにマッチをくわえていた。

 

「くふふ・・・兄さま、きっと泣きわめくだろーなー。

わたくしが何もかもを燃やしちゃって、兄さまの夢を地面に叩き付けちゃうんだから。

別にいいもん、わたくしはわたくしのやりたいようにやるもん。

わたくしは”里見優心の妹”じゃなくて、”里見灯花”だもん」

 

二木市の魔法少女たちは悟った。

こりゃあかん、もうおしまいだ。

結菜でさえも、たくさんの冷や汗を流していた。

灯花はネジレたわけではなさそうだった。

 

あの子は、間違いなくE.G.Oを引き出せるだろうから。

 

あの手記にあったE.G.Oとかいうのを引き出したのだろう。

研究室の書類にすらそれの存在は示唆されていた。

そこからは地獄だった。

大砲から放たれた火球で吹っ飛ばされ続けたのだ。

立ち上がるたびに吹っ飛ばされ、逃げようとしたら吹っ飛ばされ、

立ち上がれなくても吹っ飛ばされ、気が付けば阿鼻叫喚の地獄だった。

 

(地獄ってのは、これほど熱いのねえ・・・)

 

もはや息も絶え絶えの結菜の視界に現れたのは、天使だった。

 

「だ、大丈夫⁉」

 

よく見ると、それは天使ではなく環いろはの妹の環ういだった。

 

「だ、大丈夫よ・・・敵に心配されたくなんてないわ」

 

「あちこち火傷してるじゃん!無理しちゃ駄目だよ!」

 

彼女はスカートの裾を破って、包帯代わりにした。

そんな彼女たちに、灯花は砲口を向けた。

 

「・・・うい、あなたも兄さまの味方だったね。

ごめんね、うい。恨むなら、兄さまを恨んで」

 

彼女が火球を放とうとすると、何かが彼女を貫いた。

一言でそれを形容するなら、それは爪だ。

 

「安心しろ・・・ソウルジェムに傷はつけていない。

恩人の妹を、そう簡単には殺しはしないさ」

 

男はそう言うと、灯花から丁寧に爪を抜いた。

 

「先生、治療を頼みますよ」

 

「ずいぶんとざっくりとやったなー。まあ、これくらいは大丈夫や」

 

先生と呼ばれた魔法少女が痛みに喘ぐ灯花を担架に乗せた。

 

「・・・すまんな。これが俺のやり方なもんで。

俺の名前は九郎・・・あの男に名前をもらった」

あなたはどれを選択しますか(ストーリーには関係しません)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。