空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

29 / 29
Library Of Liberty

伍.とりあえず戦力をかき集めて、皆で光の木を完成させよう

 

その図書館は世界において最も偉大なる建造物であった。

ランプと呼ばれる光源が実り、何億という本が収められている図書館・・・。

 

むかしむかしのことでした。

どのくらい昔かというと、心の光が薄れつつあった時代です。

そんな昔の時代に、一人のお医者さんがおりました。

彼はこの世界の人間ではなく、彼もまた苦しんでいました。

そこでお医者さんは自分が救われ、そして皆も救われるために奔走しました。

 

一人の男が本を手に取って、彼の子孫たちのために朗読を始めた。

子供たちの全員が羽根が生えていて、包帯を巻いていて、そして水色の髪だった。

全員が静かに自分たちの祖先である男の朗読を聞いていた。

 

彼は多くの友を得ました。その中には、英雄チョルチンもいました。

しかし、ほとんどの友がお医者さんの苦しみに気づかなかったのです。

三人の少女だけが、彼の苦しみに気づいていました。

一人はお医者さんを憎むがゆえに計画を彼のためだけにあると思い、

一人はお医者さんを愛するが故に計画の実行を望みませんでした。

三人目の少女は、妹の病気でそれどころではありませんでした。

とにもかくにも、お医者さんは計画に旅立ってしまいました。

いずれ光の塔が経つ場所を、守護騎士ムラミャが二年間守り続けました。

その二年間で、お医者さんは多くの人間を作り、死なせてしまいました。

幻想体を閉じ込め、そして数百万年を繰り返したのです。

 

男は後になって、その事情を知ったのだ。

その二年間は男にとって悪夢のような復讐の日々だった。

男にとっても、優心にとっても悪夢だったに違いない。

 

とうとう、お医者さんはやり遂げました。

牢獄は地上に飛び出し、そして世界に光の種を蒔いたのです。

ですが、先ほどの二人の少女、ミータとカノギはそれを許しませんでした。

それぞれ理由は違いましたが、その光の木がおぞましいものだと思ったからです。

数百万年と、その間に死んだ人々のことを考えれば、少女たちの意見ももっともです。

少女たちは特別な力を持っていて、守護騎士ムラミャに勝ってしまいました。

そうして、世界は三日間の光の後に四日間の闇を迎えてしまいました。

 

やさしいハープの音が響き渡る。

男は久しぶりに奏者に顔を見せようと思った。

 

闇が去ったあと、世界中に幼い不安定な種が蒔かれました。

その種のせいで、ネジレになってしまう人々が現れ始めました。

そこで立ち上がったのは、英雄チョルチンです。

 

子供たちがごくりと唾をのんだ。

あの、英雄チョルチンがいよいよ登場だ。

子供たちはかっこいい話を望んでいた。

ふだん、男は彼の残念な部分ばかり話すからだ。

酒癖が変な方向で悪く、すぐにインターナショナルを歌いだすとかそんな話ばかりだ。

いくら脚色されていても、たまにはかっこいい部分を聞きたかった。

だって、人は残念な部分だけでなく、いい部分も含めて人なのだから。

 

チョルチンはこれまた特別な力を持つホムホムと共にカムイハマに向かいました。

なぜなら、そこがお医者さんの故郷であり、そして光の木が立った場所だからです。

二人は最初にムラミャに会いました。その時、彼はひどく人間不信になっていました。

そんな彼からチョルチンは情報を上手く聞き出して、ミータとカノギのことを知りました。

彼はその名前を覚えておきました。そして、最初の戦いが彼を待っていました。

 

そこから繰り広げられたのは、鉄雄の後悔の一つである戦いだ。

後に、鉄雄はつむぎという少女にボコボコにされたそうだ。

子供たちはよくそんな話を聞かされるのだ。

でも、どんなにかっこいい人にも罪と後悔はある。

そんな教訓話でもあったから、子供たちは熱心に聞くのだ。

 

最凶の堕天使カショーの・・・

 

男はつい笑ってしまった。

すると、近くの鏡から黒い羽根が飛んできた。

男も子供たちも全員伏せた。

 

「・・・あいつは少しやんちゃなんだ。話を続けよう」

 

気を取り直して、男は朗読を再開した。

 

三人はネイツメ書房に集まりました。

そこで、ケコと会いました。

チョルチンは彼女からミータとカノギについてさらに聞きました。

話を聞いて、チョルチンは頭にきました。

その足で、二人を殴りに行こうとしたのです。

賢きホムホムは彼を宥めて、時を待つことを説きました。

 

「よく考えたら、女を殴っちゃいけないって法律は今も昔もないよな。

やっぱり、殴りに行っておけばよかったかなあ・・・」

 

お酒を飲みながら鉄雄がそう言っていたのを、男は思い出した。

まあ、すぐに妻のかこにぼこぼこにされてしまったが。

 

「今月は飲まないって約束したはずですよね?

じゃあ、鉄雄さんが泣くまで本の角で殴るのをやめませんよ。

女が男を殴っちゃいけない法律もないんですからね」

 

「ぎゃあああああ!」

 

その時、男は大爆笑した。

もう一人の友、九郎と共に・・・。

 

「おや、帰りが遅いと思ったら・・・ここで道草食ってましたか」

 

「あっ・・・ヨヅル、これは違うんだ」

 

その友もまた、妻に引きずられていったが。

 

「ふゆぅ・・・レナちゃん家で待ってるのに、なにしてるの?」

 

「ちょっと来い。説教の時間だ」

 

・・・男自身は妻の親友二人に引きずられていったが。

そうこうしている間に、絵本はいよいよ名場面だ。

 

チョルチンは話し合いの最初に言いました。

できるかぎりの戦力を集めて、皆で光の木を立てよう、と。

思うことはあれど、彼はいったんミータとカノギを赦すことにしました。

そうすることによって、彼は復讐の円環を断ち切ったのです。

 

このことを知った時、男はチョルチンのことを羨ましいと思った。

彼は、別の選択をすることができたのだから。

 

こうして、新しい戦いが始まりました。

戦いといっても、敵はいませんでした。

まったくもって、新しい戦いだったのです。

チョルチンは特別な力を持つ少女たちに融和を呼びかけました。

最初の時こそ、少女たちはチョルチンを信頼できませんでした。

円環を断ち切るのは、どうしても勇気がいたからです。

でも、そんなときに立ち上がったのがイルォハという少女、

お医者さんの苦しみを知ってた三人目の少女です。

彼女が最初に円環を断ち切ったのを皮切りに、融和が始まったのです。

 

男も命拾いすることができた。

らんかに殺されそうだったが、結菜が止めてくれたのだ。

それから、男もまた彼女たちに加わった。

・・・まあ、最初は道徳の再勉強だったが。

 

お医者さんが残した多くの発明や資料をもとに、チョルチンは新しい方法を選びました。

来た人の人生を書き記していく図書館を立てたのです。

 

それは実に奇妙な方法であった。

訪れた者は、とある機械で記憶を読み取られるのだ。

すると、それだけで本が完成し、光の種もどういうわけか手に入れられるのだ。

最初、九郎は人を本にするのかと勘違いしていたが。

 

「いや、だってラオルだとそうしてたし・・・」

 

まあ、誤解は解けたからよかったのだが。

 

図書館はみるみるうちに成長していきました。

しかし、天使はそれを許さなかったのです。

彼らは円環を断ち切ることを許しませんでした。

光の木が完成すると、他の惑星にまで伝わっていくのが原因でした。

彼らは宇宙の現状維持を望んだのです。

宇宙は実はもろく、何かあったら耐えられないから。

天使は以前よりも多くの特別な力を持った少女たちを図書館に差し向けました。

 

あの時は実に大変だった。

以前から危惧されていた問題がついに表面化したのだ。

ミラーズを通して、世界中から少女たちが集まったのだ。

それでも、鉄雄は円環を断ち切ろうとした。

 

そこでチョルチンは剣を捨てました

そして、沈黙を貫きました。

少女たちはそれで悟ったのです。

天使に騙されていたことを。

何しろ、天使が伝えたチョルチンは悪い人間だったから。

 

本当のことを言うと、まだ鉄雄たちを信じることができない魔法少女はいた。

だが、そこで立ち上がったのは村宮だ。

彼は人を信じることの尊さを説いたのだ。後の妻であるちかと一緒に。

 

ますます、図書館に人が増えました。

そして、ついにその時はやってきました。

図書館は光を放ち、新たな光の木が完成したのです。

四日間、世界は光に包まれ、その後に闇がやってくることはありませんでした。

めでたしめでたし・・・。

 

そうそう、これはまったくの蛇足というか余談だが・・・

絵本のタイトルの案にはこのようなものがあった。

 

(まどマギ世界の)二十世紀人、(まどマギ世界の)未来で英雄になる

 

まあ、当然ボツになったのだが。思いついた九郎はヨヅルに尻を叩かれた。

そして、本当はもう少しだけ続きがあるのだ。

光の木が立った後、ほむらにそっくりな少女が現れて言ったのだ。

 

「これ以上の逸脱は許されないわ。

あなたたちは円環で回るだけの存在だから。

もうこれ以上、宇宙に予測不能な要素を与えないで」

 

おかげで、神浜市はもっとボロボロになってしまった。

だが、人々は前に進むことができたのだ。

ほむらにそっくりな少女は本人に倒された。

 

「はい、ほむらちゃん、お説教だよ~」

 

「や、やめて、まどか!いやあああ!」

 

そのまま、まどかそっくりの女神に連れていかれた。

これでおしまいだ。

子孫たちを家に帰らせた後、男はハープの奏者に会いに屋上に向かった。

屋上にはきれいな泉が湧き出ていて、それが図書館の水源でもあった。

 

「久しぶりだな、栗栖」

 

「あら、朗生くん。久しぶりね」

 

そこには数百年前と変わらない栗栖アレクサンドラがいた。

あの時代から生きている者たちは、今でも当時の言語と名前で話す。

男・・・朗生は彼女の隣に座った。

 

「もうそろそろ眠りについてたもんかと思ってたよ」

 

「そういうあなたもどうして眠らないの?」

 

「そうだな・・・」

 

彼は丘の上にある墓地を見つめた。

屋上は見晴らしがよく、カムイハマを一望できるのだ。

かつて神浜と呼ばれた都市は、今ではのどかな田園都市だ。

 

「理由はお前と同じだと思うぞ。

レナを覚えていられるのは、俺だけだから」

 

「私もそう・・・先生を覚えていたいから。

もう、顔も声も忘れちゃったけど、それでも覚えていたいの」

 

二人は人間のようには死ねなかった。

天辺をめざしていたネオマギウスは一歩上の段階に行ってしまったのだ。

そして、朗生はネジレの影響がずっと残り続けた。

なにしろ、子孫にまで羽根が生えているくらいだ。

まあ、望めば永遠の眠りにつくことはできるのだが。

藍家ひめなはそうしたのだ。

彼女はかつての恋人をよみがえらせることに成功した。

そして、彼が天寿を全うすると、彼女もついていった。

 

「・・・あら、二人ともこんな場所にいたんですね」

 

「おっ、かこ、久しぶりだな」

 

魔法少女はもともと不老不死に近かったが、

光の種の影響でもっと近づいてしまった。

まあ、大半はやめてしまったが。

人間に戻ることも優心の技術で可能になったのだ。

レナだってそうした。ほむらだってそうした。

ただ、かこは朗生たちと同じ理由で魔法少女であり続けた。

そして、今でも館長であり続けている。

 

「最近はどこ行ってたんですか?」

 

「ゆまのところに会いにな。

杏子も相変わらず元気だったぞ」

 

「それはよかったです。

あっ、今から鉄雄さんの墓参りに行くんです。

お二人もどうですか?」

 

屋上には小さな林がある。

その一番奥に、鉄雄の墓があるのだ。

三人でささやかな散策道を進む。

墓の前では九郎が昼寝をしていた。

おおかた、ヨヅルから隠れているのだろう。

まあ、ご愁傷さまというべきか。

ヨヅルもまた彼のそばで眠っていたのだから。

起きたら面白いことになるだろう。

鉄雄の墓はどちらかというと、記念碑に近い。

墓碑には遥か昔の詩人の詩が刻まれていた。

 

 

失くしてしまったのです。

何をどこで失くしたのかも知らないまま

両手がポケットをまさぐり

道へと出向いていったのです。

 

石と石と石とが果てしなくつらなり

道は石垣をたばさんで伸びていきます。

 

垣根は鉄の扉を固く閉ざし

道の上に長い影を垂らして

 

道は朝から夕暮れへと

夕暮れから明けがたへと通じています。

 

石垣を手探っては涙ぐみ

見上げれば空は気恥ずかしいぐらい青いのです。

 

ひと株の草もないこの道を歩いていくのは

垣根の向こうに私が居残っているためであり、

 

私が生きているのは、ただ、

失くしたものを 探さねばならないからです。




これで、この物語はおしまいです!
今まで本当にありがとうございました!
さて、ラオルも無事に完結しましたね。
まさか、プロムンがあんな結末を用意するとは・・・!
まあ、さすがにエターになると困るので、
この物語はここでおしまいです。
次回作まで待てませんし。

あなたはどれを選択しますか(ストーリーには関係しません)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。