空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

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この小説においてほむほむはクーほむです。


時は世紀初め、世界は光に包まれた!

あれから二年の月日が流れた。

鉄雄も今では見滝原中学校の二年生だ。

本来は思春期真っ盛りだが、鉄雄にはもう関係のない話だ。

 

「・・・ふーん、そんなことがあったのね」

 

親友(チョルチン)も元気でやってくれてるといいんだけどな」

 

最近、新しい友人ができた。

彼女の名前は暁美ほむら、魔法少女だ。

魔法少女や魔女に関しては二年前に優心から聞かされた。

彼女の方も転生者のことは今までの経験で知っているらしい。

二人はいつものようにカフェでくつろいでいた。

鉄雄にとって居心地はさほど良くないが。

昔のヤニ臭さが染みついた喫茶店の方が好みだった。

神浜市の喫茶店はどこもそんな感じだった。水名区は例外だったが。

とにかく、そういった喫茶店で夏目書房という古書店で買った本を読んでいた。

あの古書店は残ってくれているのだろうか?

 

「最近、まどかは神浜市に行ってるそうじゃないか。

お前も付いていかなくていいのか?」

 

「言ったでしょ。もうどうでもよくなったって。

何度もまどかは死んでしまって、何度も転生者が邪魔してきて。

もう何かするのが馬鹿らしくなってきたのよ」

 

「・・・なんか、同類がすまないことをしたな」

 

「いえ、いいのよ。あなたはマシだから」

 

彼女によると転生者は基本的に下心を持って近づく場合が多いらしい。

その例外に入るのは鉄雄や優心くらいだろう。

 

「そもそも、あなた本当に転生者なの?」

 

「まあな。前世での生まれと育ちは二木市。

通ってた大学は神浜市立大学で、学生紛争に巻き込まれて死んだ」

 

「そこからして普通の転生者とは違うのよ。

アイツらは別の世界から来てるのよね。

私はその世界を創造世界と呼んでるけど・・・。

あなたはこの世界で死んで、またこの世界に生まれ落ちた」

 

「そういうことになるな」

 

「だから、私も気づけなかったの。

あなたにとっては完全に生まれ育った世界であって、

アニメの中の世界ではないという認識で振舞っていたんだから。

私たちのことをフィギュアのように見ていなかった」

 

鉄雄はこれまでのように懸命に生きていたのだ。

フィクションではなく、この世界を現実だと思って生きていたのだ。

その真面目さゆえに、ほむらでさえも彼を転生者だと見抜けなかったのだ。

 

「気づいたときはすごく驚いたわ。

もっと驚いたのは、あなたが何の疑問もなく生きていたことだけど。

どうして、自分の世界がフィクションだとわかっていながら平然としていられるの?」

 

「こちとら形而上学が流行った時代に育ったんだぞ?

別にこの世界がフィクションだからといえ、創作者の世界だって同じかもしれんだろ。

それに、この世界だって多くのフィクションを生み出してるじゃねえか。

まあ、一種の相互作用みたいなもんだと考えればショックは和らぐんじゃねえか?」

 

そう言いながら、スマホを覗く。

すっかりスマホなしでは生きられなくなったが、節度は保っている。

気になっているのは、神浜市を襲っている災害だ。

 

「・・・これも魔女とやらの仕業か?」

 

「そうね。ワルプルギスの夜に違いないわ。

今頃、まどかたちは物量戦を挑もうとしているだろうけど無駄でしょうね。

アレはそんな作戦で倒せるほど甘くないわ」

 

ああ、参京区は今頃は大変なことになっているだろう。

あの万々歳とかいう店も大丈夫なのだろうか?

というか、そもそもこの時代まで残ってくれているのか?

 

「転生者がいるんじゃねえか?」

 

彼女は鼻で笑った。

 

「何度も奴らが返り討ちに遭ったのを見てきたけど?」

 

「駄目みたいだな・・・俺の真空斬りでも絶対無理だな」

 

「巴マミにすら勝てないわよ?」

 

外はだんだんと暗くなっていった。

それは完全な暗闇ではなく、うっすらとした明かりの灯った暗闇だった。

 

「いよいよ近づいてきたのか?まどかたち・・・負けちまったのか」

 

「いえ、こんなの体験したことがないわ」

 

薄暗い空がだんだんと光り始める。

遥か南東の方向に巨大な光の柱が立っている。神浜市の方向だ。

その光は眩しくなく、ほのかに暖かった。

二人はカフェの外に出ていた。店員や他の客も同じだった。

誰もが空を見上げていた。

空が完全に光で満たされると、光の粒が降り始めてきた。

その粒は一人一人の心に沁み込んでいった。

過去と未来、実体と幻想、精神と肉体、空間と時間の境が徐々に崩れていってるようだった。

その先はよく空虚だと言われるが、何もない事ではないと鉄雄は知っていた。

 

「・・・親友(チョルチン)、会いに来てくれたんだな」

 

この光が何のために現れたのか、鉄雄は知っていた。

人類を治すための光の種だ。そして、優心自身でもあるのだ。

世界中で、人々がこの光の木を見上げているに違いない。

鉄雄は忘れかけていた昭和の暖かさを胸に取り戻しつつあった。

おそらく、そうなっているのは彼だけではないだろう。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

巨大な光の木が神浜市の中心に現れた。

温かさを持ったまま、いかなるものに遮られることなく真っ直ぐ伸びていった。

そして3日間、昼夜を問わず光のみであった。

心を照らす光の中では、忘れられていた懐かしさと遭遇する。

人々はもう道に迷うこともなく、前へと進んでいける気がした。

ちなみに、ほぼ中心地にいたワルプルギスの夜は弱体化して倒された。

そして・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで、光など無かったかのように、

4日間、世界のあらゆる光を飲み込んだ闇が続いた。

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