空、風、星、そして光の種   作:ryanzi

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そして料理少女は泣きながら調理する

その味を知るようになるのは避けられない過程でした。

 

 

 

ウォールナッツの中は普通に綺麗だった。

1970年代の時よりもずっと綺麗になっていた。

それでも、一瞬一瞬、死臭が鼻を突いた。

まあ、オムライスが出されたら、その匂いで覆い隠されたが。

鉄雄の前世よりもずっと進化しているようだった。

 

「死ぬ前にもう一度は食べてみたかったんだ」

 

「よかったじゃない。死んだ後に食べることができて」

 

「冗談じゃねえぞ」

 

卵のこちらまで溶けるようなやわらかさが絶妙だった。

鶏肉も申し分なく肉汁が溢れ出ていた。

これ以上のグルメレポートを作者に求めないでほしい。

とにかく、この絶品オムライスを作ったのは十四歳くらいの少女だった。

彼女の父親はどこかに出かけているのだろうか?

 

「これは確かに死んだ後でも食べに行きたくなるわね」

 

「だろ?本当に最高なんだよな」

 

だが、食べ終わるとまた死臭が鼻を突く。

まるで、この店で誰か人死にが出てしまったかのようだ。

あまり深く詮索はしたくなかった。

別に鉄雄は正義の味方というわけではない。

ただ、光となった親友(チョルチン)との約束のために動いているだけだ。

できるものなら、死体など見たくはないのだ。

絶品オムライスを食べたというのに。それに、ここは思い出深い場所だ。

 

「・・・まどかだったら見逃さないでしょうね」

 

「アイツだったらな。でも、俺だったら見逃すぞ。

というか、ここには女の子一人だけだったじゃないか」

 

「・・・あの子、魔法少女だけど?

まどかからもらったデータによると胡桃まなかというそうよ」

 

「へいへい、一般人の俺にはわかりませんよーだ」

 

それと同時に、まなかは魔法少女姿に変身した。

鉄雄も刀の柄に手をかけた。

・・・あまり、見た目が変わってないようにも見えたが。

 

「・・・どうして気づいたんですか?」

 

「そりゃ嫌な臭いがするし・・・ゲバ棒でぐちゃぐちゃにされたことあるからな」

 

「そうね、まどかが串刺しになったときとかによく嗅いだ臭いね」

 

「あなたたちが常人離れした体験をしたことはよくわかりました」

 

だが、鉄雄に戦う気はなかった。

 

「・・・俺たちも別の目的があるからな。

ちゃんとオムライスの代金は払うから、見逃してくれねえか?」

 

料理店が嫌うのは食い逃げだ。

よく当時の大学生が食い逃げをしていたが、末路は言うまでもない。

 

「駄目です。まなかはもうお腹が減ってるんですから。

お金なんて何の足しにもならないんです。早く料理させろです」

 

鉄雄は一瞬、まなかの言うことが理解できなかった。

だが、だんだんと意味が飲み込めてきた。

 

「・・・うわあ、がたがたがたがた」

 

「ふざけてる場合じゃないわよ」

 

「そうですよ、ふざけないでくださいよ。

まなかが一生懸命調合した睡眠薬がどうして平気なんですか?

そっちの魔法少女に効かなさそうなのはわかってましたが」

 

鉄雄はぞっとした。まなかは何としてでもこちらを食おうとしているのだ。

 

「こちとら催涙弾を巻き添えで何度も食らってるんだ。

今更、睡眠薬なんぞ平気なんだよ。

・・・なあ、本当に見逃してくんねえか?

こっちは親友(チョルチン)との約束があんだよ」

 

「チョルなんとかの約束が何だか知りませんが、こっちは腹ペコなんです!」

 

「他の肉食べりゃいいじゃねえか」

 

「・・・駄目なんですよ。まなかはもう他の食べ物だとお腹を満たせないんです。

あの一週間以来、いくら食べても空腹のままだったんです」

 

あの不安定な光の種は色々な弊害を生んでしまったようだ。

ここで、少し話を脱線させよう。

あの一週間から、自殺者の数は変わらなかった。

しかし、その割合が変わったのだ。

いじめの被害者よりも、いじめの加害者の方が自殺するようになった。

光の種を植えられてから、自らの闇に直面することが多くなったのが原因と思われる。

いじめをしようとした瞬間には自らの醜悪さを思い知るシステムができてしまった。

おかげで、いじめの数は減ったというのに、自殺者の数は変わらなかった。

弊害がとにかく生まれてしまったのだ。

 

「そんな時、先輩が・・・先輩が化け物に変わってしまったんです」

 

「化け物?魔女化のことか・・・それはご愁傷さまで」

 

「いえ、魔女ですらありませんでした。というか、神浜ではもう魔女化なんて起こりません」

 

「・・・そうなの?」

 

「そうみたいね、まどかもそう言ってるわ」

 

ほむらは基本的にSNSでまどかから情報を得ている。

頼りになるのはわかるが、食事中にいじるのは勘弁してもらいたかった。

昭和人としては、どうしても食事中に別のことをするのは耐えられないのだ。

それはそうと、魔女化が起こらなくなるとは初耳だった。

 

「もう魔女化が起こらないはずなのに・・・思えば、先輩の様子はおかしかったです。

やけ食いしに来るのはいつものことだったんですが、表情が怖かったんです。

そしたら・・・先輩は、先輩は・・・」

 

まなかは口を押えて、吐くのをこらえた。

優心の言う通りだ。不安定な光の種のせいで、人間性を失う者が現れてしまった。

 

「・・・もしかして、その先輩を食ったのか?」

 

「・・・はい。その時、まなかもすごくお腹が空いて死にそうだったので。

その時の先輩の味は決して忘れられません。そして、お父さんの味も・・・」

 

「・・・さっきのオムライスにも入れたのか?」

 

「いえ、それはさすがにやっていません。入れたのは睡眠薬だけです」

 

料理人としての矜持はまだ残っているようだった。

いや、睡眠薬を入れた時点で少し怪しいが。

 

「まなかのやったことが悪い事だってもちろんわかっています。

これは誰かの責任ではなくて、まなか自身の責任なんです。

この罪は、まなかだけで背負うつもりなんですから・・・!」

 

すると、彼女の服、武器と思われるフライパンが光を放ち始めた。

次の瞬間、彼女は多数のプロパンを背負って、周りには何十個もの椅子が浮かんでいた。

フライパンは金色に輝く炎を纏っていた。

だが、彼女自身は人間としての姿を保っていた。こんなのは優心から聞いていなかった。

 

「・・・すいません、お客さんにこんなことをするのは悪いことだってわかってます。

この罪はまなかだけで背負います。だから、どうか料理になってください」

 

まなかは涙を流しながら鉄雄たちに攻撃を始める。

鉄雄は刀を取り出し、自分に向かってきた攻撃を全て弾く。

刀が勝手に鉄雄の体を動かしてくれていた。

ほむらは時間停止で全ての攻撃を避けていた。

 

「・・・ねえ、この子からも光の種は取れるんじゃない?」

 

「そうかもな・・・ううっ、殺人か。

やられる方にはたまったもんじゃないって知ってたけど、

今回の人生ではやる側に回ることになるのか・・・」

 

「あなた以外の転生者は無慈悲にやってたけどね」

 

二対一だ。しかし、勝てる気がどういうわけかしなかった。

これが光の種の力を引き出した結果なのだろうか?

どうやら、人によって人間性を失うか新しい力を引き出せるかどうかが変わるらしい。

とにかく、今の二人にとっては強敵だ。

 

「あら、どうやらお困りのようね?」

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