ISーインフィニット・ストラトスー White of black (凍結)   作:蒼京 龍騎

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キバのsupernova聴いて気分がノッていた&推しが出せるので早めの投稿。



原作第二巻
overd wepon


ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

 

第八話 overd weapon

 

 

「おい黒騎!!!聞こえてないのか!?おい!!」

俺は目の前にいる友人に声をかけるが、返事の代わりにフシュゥゥゥゥという低い咆哮が返ってくる。

クラス代表によるクラス対抗戦の最中、会場に突如として『無人IS』が奇襲。

しかし、俺にとって家族のように大切な親友、黒騎が駆るラインバレルがそれを破壊、直後に暴走し対戦相手の鈴を攻撃したのだ。

俺も、聞いた時には信じられなかったが直接目で見たことにより信じざるを得なかった。

『織斑くん、鈴さんを連れて退却を!!ここは私たち教師に任せてください!!』

地を滑走するように移動しているISに乗ってきた山田先生が通信をかけてくる。

「で、でもあいつは!!」

だが、俺は逃げる気になれない。何故なら、、分かってしまう。

今の黒騎は、恐ろしく強い。教師だけでは負ける。

そういった確信があった。

「……オリ、ムラ」

「ッ!!黒騎!?無事なのか!?」

指をギギギと動かしながら、黒騎が言う。

だが……

「シロ……キシィィィィィィ!!!!!!」

叫びながら、地を蹴って黒騎が駆るラインバレルが俺に向かって加速してくる。

「黒騎っ!!俺だ!!一夏だ!!わからねぇのか!?」

必死に呼びかけ、叫ぶも、向こうが止まる気配はない。

段々と俺に近づいてきて、目の前まで来ようとしたところで。

「何やってるんですか!!!」

俺の目の前に山田先生が割り込んで、巨大なシールドを前面に展開する。

ガァン!!と音を立てて黒騎がシールドへ突っ込む。

「ドケェ!!!ザコドモガァ!!!!!」

しかし、黒騎が尋常ではない力でシールドを殴り、山田先生が構えているシールドがどんどんひしゃげていく。

「逃げてください!!早く!!」

「わ、分かりました!!!」

血気迫る様子で言われ、言われるがまま眠っている鈴を持ってアリーナの出口へ向かう。

このまま鈴を医務室へ連れて、その後に黒騎を………

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

「ぐわぁぁぁぁぁっ!?」

「ッ!?先生!?」

出口へ着いた瞬間、複数名の教師の悲鳴が同時に聞こえた。

その中には、山田先生の声も含まれる。

「……鈴、ここで待っててくれ。ちょっと行ってくる」

このままじゃマズイ。そう直感した俺は出口の壁に鈴をゆっくりともたれかからせる。

手に<雪片弐型>を展開してアリーナの内部へ向かって思いっきり加速する。

「………まじ、かよ」

アリーナの中の光景を見て、俺の口から出た言葉がそれだった。

先程までISに乗っていた十数人ほどいた教師たちが、全員ISを解除し地に伏せ倒れている。

それも、俺がアリーナの出口へ鈴を連れて行っている間に、だ。

「………これ、勝てるか?」

今更だが、勝てるかどうか怪しくなってきた。

相手は、熟練のIS乗りでもある教師たちを一斉に相手取り、その上ISが展開不能になるほどのダメージを全員に与えている。

素人同然の俺では、まず絶対に勝てない。

……でも、俺がやらないと皆に被害が及ぶかもしれない。

そこで、俺の腹は決まった。

「……黒騎、これはお前の意思でやってるわけじゃないってことは何となくわかる。けどな」

俺は<雪片弐型>をラインバレルに向け。

「ちょっと歯を食いしばっとけ」

俺より圧倒的な敵に対して、宣戦を布告する。

その言葉に反応するように、ラインバレルが体を震わせて俺の方を見る。

「……ハカイ、スル。シロキシ………!!!!」

ドォン!!という音を立ててラインバレルが地を蹴り俺に向かって加速する。

「来い!!!」

一回転し、ラインバレルが俺に向けて蹴りを繰り出して来るがそれを<雪片弐型>で真っ向から切りかかる。

ギィン!!と蹴りが<雪片弐型>にぶつかり、斬撃と蹴りが拮抗し止まる。

「ッ!!!!」

その蹴りの重さに、一瞬よろけそうになる。

一度、黒騎とは模擬戦で戦ったことがあるのだが、蹴りの強さがその時よりかなり強い。

まるで……怒りに身を任せて暴れているかのように、強力で荒々しい。

それが、今の黒騎の戦い方が、気に入らない。

「こんなの…お前の戦い方じゃないだろ!!!!」

<雪片弐型>に思い切り力を乗せ、蹴りを押し返す。

「目を覚ませ!!!黒騎!!」

「………シロキシ……ハカイ……やめ、ろ……」

瞬間。ラインバレルが頭を抑えると、怒りに染まりきった声以外に、苦しげな黒騎の声が聞こえた。

やはり、自分の意思で動かしているわけではないようだった。

「黒騎!!!今止めてやるからな!!!」

「……一夏……【零落白夜】を、ラインバレルに……俺が抑えていられる間に……!!!」

どうやら意識が少しながらも戻っているようで、必死でラインバレルを抑えてくれているようだった。

「わかった!!!ちょっと歯を食いしばっとけよ!!!!」

言われた通りに、【零落白夜】を発動させるため、<雪片弐型>へエネルギーを貯め始める。

だが……

「オレノジャマヲ……スルナァァァァァァ!!!!!」

ラインバレルが拘束を振り払うように手を振り回してから空へ向けて叫び、俺へ向けて再び加速してくる。

「しまっ……」

今は<雪片弐型>にエネルギーを送るため静止している。こんな状況じゃ避けられない。

気づけば、目の前にラインバレルの拳が…ああ、俺死んだな。

「やめてッ!!!!」

ガキィン!!!と目の前に『黒のIS』が割り込んで来てラインバレルの拳を俺の代わりに受け止める。

「黒、騎……っ!!!」

その割り込んで来たパイロットを、俺は知っている。

「ッ!!!ボードウィーク……!?」

ライラ・ボードウィーク。黒騎のルームメイト。

「お前、避難したんじゃ……!?」

「黒騎が暴れてるって、聞いたから………止めに来た!!!!」

ライラがラインバレルを睨みながら叫ぶと、ラインバレルの腕を掴み身動きが取れないようにワイヤーブレードを射出して自身ごとラインバレルを拘束する。

「【零落白夜】を使って!!早く!!!」

「は!?お前も巻き込まれるぞ!!!」

【零落白夜】は一撃必殺な分、制御が効かない。

もしこのまま放てば、確実にライラが巻き込まれる。

「いいから!!!早くしないと拘束が……くっ!!!」

「ハナセッ!!!!コノクソアマガァァァァァ!!!!」

ラインバレルが全身をバタバタと動かし、拘束から逃れようともがく。

普通なら脱出不可能な程の拘束だと思うのだが、いかんせん機体自体の力が尋常ではない。

ライラが気を抜いてしまえば、すぐに外れてしまいそうなほどラインバレルが暴れる。

「………ッ!!!すまねぇ!!!!」

そう叫びながら、<雪片弐型>に最大までエネルギーを貯め【零落白夜】を発動する。

巨大なエネルギーの刃が、<雪片弐型>から展開される。

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

雄叫びを上げながら、その刃をラインバレルに向けて振り下ろす。

「コノ……ヤクサイガァァァァァ!!!!!」

【零落白夜】の刃が、ラインバレルとライラを切り裂く。

それによって両方のエネルギーがゼロになったようで、ラインバレルとライラのISが解除される。

「「黒騎!!!」」

二人同時に黒騎の元へ駆け寄る。

「……気絶してるみたい」

「……だな」

さっきまで暴れていたというのに、黒騎は安らかにすぅすぅと息をして気絶していた。

「ボードウィークさん、ありがとう。君が居なかったらヤバかった」

あの時、ライラが割り込んで来てくれなければ確実にやられていただろう。

そう思い、感謝の言葉を言わずにはいられなかった。

「ライラでいいよ。そして、私からもお礼を言わせてもらうね。ありがとう、黒騎を止めてくれて」

「親友を止めるのは親友の役目だろ、だから礼はいらないぜ」

そう返すと、ライラは笑顔を浮かべて黒騎の方を向く。

「……良い友達だね。黒騎の友達は」

どこか儚げに、ライラが呟く。

 

その後、後からやってきた先生方が黒騎を医務室へ運び、俺らは怪我をしていなかったので教室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

────なんで私を憎むの?

 

────テメェらに、人生を、妻を、俺自身を奪われたからだ。だからテメェらが憎い。

 

────やったのはあの馬鹿達だよ。私はただ使われただけ。嫌だったけど、従うしかなかった。

 

────殺されたいのか、クソ餓鬼が。やった時点でテメェも関係者だ。ブッ壊す。

 

────壊してくれてもいいけど、まだやめて欲しい。『時期』が来たら殺してもらいたいけど。

 

────テメェの願いなど聞かねぇ。必ず、殺してやる。必ずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「────ッ!!!!」

目が覚める。

まず目に映ったのは、真っ白な天井。

背にはふかふかの感触。

どうやら、俺は学園の医務室のベッドの上で横になってるらしい。

カーテンが閉められているせいで、周りを見ることは出来なかったが。

昨日は……確かラインバレルが制御不能になって………途中で目が覚めたら鈴を攻撃していて……そして一夏の【零落白夜】で……!!

「あ、起きた?」

聞いたことがある声と共に、カーテンがシャァァと音を立てて開く。

「……何の用だ」

そこには、現IS学園生徒会長であり最強である更識楯無がいた。

以前の怪我は完治しているらしく、腕や足に包帯は見えない。

「いや、ちょーっと言いたいことがあってね。まぁすぐ終わるから気楽にしてて」

楯無はそう笑いながら言うと、近くにあった椅子を俺のベッドの横までずらして座る。

「………君のラインバレル、正式に『封印』することが決定したから。今君が遠隔で呼ぼうとしても呼べない場所に置いてあるから、もう二度とラインバレルには乗れないと考えてちょうだい」

「………は?」

は?待て?封印?まさかラインバレルが鈴を────ッ!!!

「……その様子だと知らないようね。それじゃあ君が寝ている間に起こったことを見せてあげる」

楯無がポケットからスマホを取り出し、しばらく指を走らせた後俺にその画面を向けてくる。

それは、ちょうど俺が気絶したと思われる部分から始まった。

ラインバレルが鈴を殴り飛ばした直後、ラインバレルの白色の部分が黒に変わり、黄金の放熱板からは血のような粒子を放っている。

目のツインアイにはバイザーが下ろされ赤い単眼へと変化し、口元の装甲が展開して禍々しい口が開く。

「………アマ、ガツ」

自然と、俺の口から言葉が出ていた。

俺の目に映る今のラインバレルの姿は、本編では圧倒的な存在感を見せつけ、パイロットである主人公を乗せながら暴走した形態であり、とあるスパロボシリーズでは敵として登場し猛威を奮い、何人ものプレイヤーを驚愕させ『経験値泥棒』のあだ名を付けられるほど暴れた……ラインバレルの本来の形態。

【ラインバレル・アマガツ】。それがその形態の名前だった。

「……へぇ、この形態アマガツって言うんだ」

「なぜ……なぜアマガツがラインバレルに………!?」

知らない。なんでラインバレルにアマガツが?まさか本編みたく………俺の親父の脳載っけられてる訳じゃないよな……?

映像に目を向けると、ラインバレルは無人機を圧倒的な力で蹴る。

シールドバリアーによって並大抵のことでは傷つかない装甲が簡単にひしゃげ、アリーナの端まで蹴り飛ばされる。

そこからは、もう虐めの領域だった。

無人機の腕と下半身を引きちぎり、投げ捨ててから頭を強く握り、無人機の胴体部分の装甲を引っペがして露出したコアを握りつぶした。

そのあとは、俺の見た通りだった。

ラインバレルが鈴を攻撃し、その途中で一夏とライラが乱入し協力してラインバレルを止めた。

「………ふざ、けるな」

まず出た声が、それだった。

親父、なんでこんなシステムをラインバレルに………!!!!

「……まぁ、これが封印するに至った理由。文句は受け付けないわ。もう決定したから」

「………ああ」

俺は力なく、そう返すことしか出来なかった。

 

 

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

「え?そう?ハヅキのってデザインだけって感じじゃない?」

「そのデザインがいいの!!」

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

あの事件からしばらく経った日、俺は相変わらず肩を落としながら和気藹々としている教室の中で一人通夜ムードで居た。

ラインバレルが封印決定になった。仕方の無いことだなと思っていたのだが……ライラまで居なくなったから寂しい。

なんとそのしばらくの間にライラが別の部屋に行ってしまったのだ。部屋が空いたらしく、そこへ移ることになったらしい。だから今の俺のLPはゼロ。死にそう。

流石にマズイと思ったのか、学園から俺専用のものとしてのラファール貸し出されたが……悪いけど傷口に塩塗ったくられた気分になった。

今日は一夏やライラから質問攻めに合うかもと思っていたのだが、二人とも空気を読んでくれているのか誰かから教えられたのかは分からないが何も聞かずにただおはようとだけ挨拶はしてくれた。

だが………あったものが無いっていうのは、非常に辛い。

「……騎」

ラインバレルは形見でもあった。だからそれが無いのは、寂しい。

「黒騎、ねぇ黒騎」

「……なんだ」

「元気出して、私にできることがあったら協力するから」

ああ、前言撤回。女神がここに居た。この子のおかげで大概のストレスはどうにでもなる。

「……すまない、大丈夫だ」

俺は姿勢を正して、正面の黒板を向く。

「諸君、おはよう」

教室の扉が開き、千冬が教室へと入ってくる。

「「「おはようございます!!」」」

それまでザワザワとしていた教室が一瞬で静まる。

「今日から本格的な実践訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各自気を引き締めるように。各自のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れた者は代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。それでもないものは、まぁ下着でも構わんだろう」

待て待て。水着は、マズイ。ここに男子二人居るのを忘れてないか?

と、俺は心の中で千冬にツッコむ。

ちなみに本編でもあったように、学校指定のISスーツはタンクトップとスパッツをくっ付けたようなやつだった。

まぁ、俺は【Dーゾイル】の効果でそんなの着なくとも大丈夫なんだがな。(ISは壊れるらしいから全然大丈夫じゃないけどな)

「では山田先生、ホームルームを」

「は、はいっ」

一通り重要な報告をし終えたのか、千冬が山田先生へバトンタッチする。

「ええとですね、今日はなんと『転校生』を紹介します!!しかも二名です!!」

「え……」

「「「ええええええっ!?」」」

いきなりの転校生紹介に、クラス中が一気にざわつき始める。

ふーん、転校生か。………ん?転校生?……ゑ!?

え!?ちょっ!?おまっ!?今日だっけ!?転校してくんの今日だっけ!?

俺は予想外の事態に感情が大暴れする。

顔はどうにか平然を保てているが、手の方は制御が効かず机の中でひたすらガッツポーズをとっている。

そりゃそうだろう。だって推しがいきなり自分のいる学校に転校してくるとなったら誰だってこうなるだろ。

そんな風に静かに暴れていると、教室のドアが開く。

「失礼します」

「……………」

クラスに入ってきた二人の転校生を見て、ざわめきがピタリと止まる。

フォォォォォォォォォ!!!!シャルロットダァ!!!!!ホンモノノシャルロットダァァァァァァ!!!!!

俺は入ってきた内の一人を見て、心の中で大狂乱する。

────シャルロット(俺の推し)が、学校へ来たからだ。

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

シャルルがにこやかな顔で言ってから一礼する。

「お、男……?」

一夏がそう呟くが今の俺には聞こえない。

ああ……笑顔がマブい。心撃たれる。ズキューンと。

既に知っているかもしれないが、俺はシャルロッ党である。本編でのシャルロットの可愛さに心撃たれた党の一員である。

初めはこうやって男としてIS学園に来るんだよな。ってか男装してるけど俺からすりゃ十分可愛い。この時点で俺がこうなってるなら……うん、女子に戻ったら軽く死ねるな俺。

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方が二人いると聞いて本国より転入を──」

アア~脳が溶ける。シャルロットボイス最高。

語彙力は死んだ。ここにいるのは(語彙力)ランク(下から)1、三七城黒騎だ。

「きゃ……」

「はい?」

『きゃぁぁぁぁぁぁ────っ!!!!』

「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!」

クラスの女子たちが歓喜の叫びを上げたので、俺も女子に便乗してバレないように雄叫びを上げる。

「男子!!三人目の男子!!」

「しかもうちのクラス!!」

「美形!!守ってあげたくなる系の!!」

うんうん、今の言葉を言った女子とはいい酒が飲めそうだ。

「地球に生まれてきてよかった~~~~」

この瞬間だけ、俺はこのクラスの全員と酒を飲みながらシャルロット談義をしたい気分になった。まぁ俺含む皆、年齢のせいで飲めねぇけどな!!!(泣)

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

うっとおしそうに千冬がぼやく。だが残念ながら今の俺らの気分の高揚は誰にも止められんぜ!!!フォォォォォォォォォ!!!!!

「み、皆さん静かに!!まだ自己紹介が終わってませんから~!!!」

おっと、そうだ。この後はシャルロットと同時に転校してきたあの軍隊少女の紹介があった。

俺はその少女、ラウラ・ボーデヴィッヒに目を向ける。

────うーん、やっぱ原作通り軍人って感じだな。

目に光がないような、そんな冷たい目をしてる。

「……………」

当の本人は、無言のまま後ろで腕を組んでいる。クラスの女子たちを下らないものでも見るように見下しながら。

「……挨拶をしろ、ラウラ」

「はい、教官」

いきなり佇まいを直して素直に返事をし、千冬に敬礼をするラウラにクラス一同がぽかんとする。

敬礼をされた千冬はさっきとはまた違った面倒くさそうな顔をした。

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私の事は織斑先生と呼べ」

「了解しました」

両手を伸ばて体の横につけ、足をかかとで合わせて背筋を伸ばす様は、本当に軍人だった。

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

「…………」

教室に再び静寂が訪れる。クラスメイトらは続く言葉を待っているようだったが、多分いくら待っても出てこないぞ。

「あ、あの、以上……ですか?」

「以上だ」

わーお、一気にお通夜ムードへ変わりやがった。

山田先生が笑顔で聞くが、返ってきたのは無感情な即答。いや冗談抜きで山田先生可哀想。もう泣いちゃいそうになってるし。一夏、慰めてやれ。(無茶ぶり)

そんなことを考えていると、ラウラとバッチリと目が合った。

「!!貴様らが────」

つかつかと、ラウラが一夏へ向けて歩き出す。

 

バシンッ!!!

 

ラウラが一夏の頬に、思いっきり平手打ちをかます。

うおっ!?ちょっと待て!?今の痛そうな音したぞ!?本編じゃあまり痛さが分からなかったがこれは痛いって音したぞオイ!?

「…………」

「う?」

訳が分からないといった様子で、一夏がぽかんとする。

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

「…………ッ!!!いきなり何しやがる!!」

我に返った一夏が叫ぶも、無視するように席へ………あれ、今度は俺の方へ?なんか嫌な予感が…構えとこ。

案の定、俺にも平手打ちをかまして来そうになったのでラウラの腕を掴んで止める。

その際ラウラが怒りを現すように顔をしかめ、俺を睨む。

「……認めない。認めてたまるか。貴様があの人の一番弟子であるなど」

───どうやら、あの事件で俺も攫われたからかラウラのヘイトは俺にも向いてるらしい。

まぁ、知ったこっちゃねぇがな。

「大人しく席へ座れ。ラウラ・ボーデヴィッヒ」

俺も少しだけ怒りを顕にして、ラウラを威嚇すると「ふん」と鼻を鳴らして掴んでいた俺の手を振りほどき、席へ戻っていった。

「あー……ゴホンゴホン!!ではHRを終わる。各自すぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!!」

その言葉を聞いた瞬間に俺は席から立つ。早めにクラスから出ないとクラス内にいる女子と着替える羽目になってしまう。それだけは回避せねば。

確か今日は、第三アリーナの更衣室が空いてた気が……

「おい三七城。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

「……へ?」

え、今千冬さんなんと仰った?あれここ原作じゃ一夏じゃ………(’ω’)ファッ!?

ええい!!何か知らんがこれはチャンス!!!男は攻めるのみィ!!!!

「君が三七城君?初めまして。僕は──」

「すまないが挨拶は後だ。先に移動するぞ。でなければ女子と着替えることになる」

俺はシャルルの手を取り、教室を出る。

フォォォォォォォォォ!?!?柔けぇ!!めっちゃ柔けぇ!?

やばいやばいやばい、一旦冷静にならねぇと!!

「男子は空いているアリーナで着替えることになっている。これから実習の都度移動することになるから、早めに覚えておいた方がいいぞ」

「う、うん……」

そわそわと、シャルルが落ち着かなさそうにしている。

「どうした、不調でもあるのか?」

「いや、大丈夫…」

「ならいい。不調があればすぐ言え」

「わかった……」

このまま階段を降りて一回へ。そのままの速度で廊下を突っ切らないと────

「ああっ!!転校生発見!!」

「しかも三七城君と一緒!!」

そう、既にHRは終わっており廊下には各学年の情報収集係のような女子が群れを成しているからだ。

だが……今日はいくらなんでも多すぎる。道が塞がってて通れねぇ。

「者ども出会え出会えい!!」

ホントなんでIS学園にはユニークなキャラが沢山いるんだろうな。これが世界最難関の入試を突破してきた人達だとは思えねぇ。

「三七城君の金色メッシュの黒髪もいいけど、純粋な金髪っていうのもいいわね」

「しかも瞳はアメジスト!!」

「きゃああっ!!見て見て!!ふたり!!手!!繋いでる!!」

「日本に生まれて良かった!!ありがとうお母さん!!今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!!」

「残虐鬼帝×純粋貴族……攻めと受け……鼻血出そう」

きゃいきゃいと騒ぐ女子達を見ながら、俺の心は絶望していた。

駄目だ終わった。どう足掻いても通れねぇ。この後千冬からの出席簿ストライク&地獄の補習を食らうことになる………もう駄目だ、おしまいだぁ………

────とでも、言うと思ったか?この程度想定の範囲内だぜ!!!!

「ジェネレーター出力再上昇。オペレーション、パターン2」

「え?今なんて言ったの……わっ!?」

本来なら駄目だが、今は緊急時(?)だ。致し方ない。

俺はシャルルの首と膝裏に腕を添えて持ち上げ、俗に言うお姫様抱っこをして壁に向かって走る。

「ち、ちょっと三七城君!?」

シャルルが顔を真っ赤にしていた。それがクッソ可愛くて鼻血が出そうになったが堪えて壁に向けて走る。

「少し黙っていろ。舌を噛むぞ」

そのまま【Dーゾイル】の力を使い浮遊し、壁に足裏を着けて最短距離を征くため走る。

「「「…………え?」」」

シャルル含む女子がぽかんとしながら俺を見る。

残念だが、俺は死にたくないんでね。質問を聞いてる暇などないのさ。

そう心の中で呟き、俺はアリーナへ向けて全力で走る。

その道中でも様々な妨害に遭ったが、何もかも【Dーゾイル】の力で突破してやった。

特に遅れることはなく……いや、むしろ【Dーゾイル】の力を使ったおかげでいつもより五分近く早く来ることが出来た。

「着いたぞ。今から下ろす」

「は、はい……」

顔を赤くしながら何故か敬語になっているシャルルの返事を聞いてから、ゆっくりと下ろす。

どうせ更衣室近いし、もうここで挨拶済ませておこう。着替えてる最中じゃダメだしな。

「さて、それではここで軽く挨拶させて頂こう。俺は一年一組所属、三七城黒騎。呼ぶ時は気軽に黒騎とかみなしーとかでいい。専用機を持ってたが、諸事情により今は持っていない。だから今乗っているのはラファールだ。以後、よろしく」

「よ、よろしく。僕のこともシャルルでいいよ、黒騎」

「了解した、シャルル」

そう名前を呼ぶと、シャルルが更に顔を真っ赤にする。

その顔を、外では平然として心の内では「可愛い…( ゚ཫ ゚)ゴフッ」と吐血しながら数秒見た後に更衣室の入口のパネルを操作する。

いつも通り圧縮空気が抜ける音を響かせながら、ドアが斜めにスライドして開く。

「……ふむ、まだ時間に余裕はあるな。着替えに五分ほど使っても有り余る」

時計を見ると、まだ授業開始十五分前だった。今から着替えても十分間に合う。

「さて、では早速着るとしよう」

制服のボタンをプチプチと開けていき、それをロッカーにしまってからTシャツも脱ぐ。

「わあっ!?」

綺麗な悲鳴ありがとうございます(ΦωΦ)グヘヘ…

そう、これはあえてわざとやった。推しの悲鳴を直に聞きたかったから。悔いはない。

「……?どうした、着替えないのか?それともやはり体調が優れないのか?」

シャルルの悲鳴に対して、俺はそう聞く。

「い、いや、き、着替えるよ?体調も大丈夫だから、とりあえずあっち向いてて……ね?」

「?了解した」

俺は頭にハテナを浮かべながらシャルルの言う通りにシャルルとは反対の方を向きながら着替える。

…………うん、めっちゃ視線感じる。これでもかってくらい感じる。

からかいたくなったので、学校指定のISスーツのジッパーを上げようとしたところでシャルルに声をかける。

「シャルル、先程から俺を見ているようだが……面白いものでもあったか?」

「え!?み、見てないよ!?何を言ってるのかな!?」

必死に反論するように、声を大にして言葉を返してくる。ああ、最高。

「……そうか。ではそういうことにしておこう。では俺らは早めに行くとしよう」

「そ、そうだね!!うん、それがいいと思うよ!?」

さっきのことでかなり焦っているようだ。おかしな口調になっている。

ああ………これが『仰げば尊死』ってやつか…………

「授業開始五分前にきっちりと来るとは、真面目だな」

第二グラウンドに着き次第、千冬からそう言われる。まだ生徒はあまり来ておらず、俺とシャルル、その他一夏と箒、セシリアと鈴、更にラウラを含め数名といったぐらいだ。ちなみに専用機持ちは皆ISを展開している。

「織斑先生、俺とシャルルもISを展開していいですか?俺の場合今日がラファールでの初陣となるから、ある程度慣らしておきたいです」

そう、実は今日がラファールを初めて使う日だ。それまでは一切展開してない。何故かと言うと………鬱ってたからね。しょうがないね。

「周囲を見ろ。もう既に展開している奴がいるだろう」

俺は千冬からの返答をOKの合図として受け取り、ブレスレットの形で待機形態になっているラファールを掴み、纏った自分をイメージする。

すぐさまラファールが体に纏わさったが……違和感が凄い。

なんというか、ラインバレルとは違って完全な一体化じゃなくて、感覚がISと俺で混じっているというかなんというか……その上視界になんかHUD(ヘッドアップディスプレイ)みたいなの表示されてるし……纏った時点で既にラインバレルと完全に違うことがわかる。

「………ん?」

ふと、視界の右上にある表記が目に入った。

そこには、『限界稼働時間』の文字の下に5:00と書かれたパネルのような表示があった。

よく聞いてみると、ラファールからフシュゥゥゥと熱を放出するような音も聞こえる。

────あー、これが束さんの言ってたある程度使うとぶっ壊れるってやつか。ラファールにこんな表記出る訳ないし、こんな排気音も出さない。教科書でそう紹介されていたから、おそらく確実だ。

「どう?初めて量産機に乗った感想は」

<ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ>を纏ったシャルルがそう聞いてくるが………悪い感想しか言えねぇ。ラインバレルが俺に合いすぎてた。

「……やはりラインバレルと比べると違和感が凄いな。あいつは近距離特化に対してこのラファールは武装からして射撃特化型らしい。纏った時点でかなり違和感を感じた」

どうにかマイルドに言えることができた。

「へぇ、黒騎の専用機って近距離特化なんだ。武装はどんなのがあるの?」

「刀二本とレーザーブレードカノン一本、圧縮転送フィールドにオーバーライドだ」

「え?レーザーブレードカノン?圧縮……なに?」

「……もう一度言うぞ。圧縮転送────」

「よし、そろそろ時間だ。全員並べ!!」

千冬から大声で号令があったので、俺らはすぐさま列を作って並ぶ。

「では、本日から格闘及び射撃を含む実践訓練を開始する」

「「「はい!!」」」

一組と二組の合同練習だから、人数はいつもの倍ぐらいいる。出てくる返事もいつもより大きく感じる。

「今日は戦闘を実演してもらおう。今日はちょうど衣替えをしたばかりのやつと新しく来たやつがいるからな。────三七城!!デュノア!!」

「りょうか……は?」

え?今千冬なんと申した?俺が実戦?待て待て、俺今日初めてラファール纏ったんだけど?

「わかりました」

シャルルは普通に返事をする。

「いや、待ってください。俺は今日ラファールを纏ったばかりで……」

「つべこべ言うな。この実戦で慣らせばいいだろう」

やばい、千冬が鬼に見えてきた。いや元から鬼畜教官だったか。

「……わかりました」

力なく、そう返すことしか出来なかった。

「それで、対戦相手は誰ですか?」

「ああ。対戦相手は────」

シャルルが千冬にそう聞いた直後。

キィィィィン……と、空気を切り裂くような音が俺の耳に響く。

「ああああーっ!!ど、どいてください~っ!!!!」

ふと空を見上げると、一夏へ向かって加速しているISが一機……あ、墜落した。

咄嗟に白式を展開した一夏と、墜落したIS、山田先生の駆るラファール・リヴァイブが数メートル後方へ吹っ飛ぶ。

見ると、一夏が山田先生を押し倒すような体勢で……山田先生の胸を鷲掴みにしていた。

原作読んでた時も、正直このシーンは俺にとっては刺激が強すぎたというか……見てはいけないものを見ている感じだったからページ開いた瞬間にこの絵面が絵で出てきた時は顔真っ赤にしてすぐ閉じてたな。あの頃の俺は初心だった。

山田先生が顔を真っ赤にして何か言っているが、よく聞こえない。(ISの音の収集機能をオフにしてるから当たり前か)

直後、一夏が何か身の危険を感じ取ったのかその場から飛び退く。

すぐさま、一夏がいた場所にレーザーが通過した。

「ホホホホホ……。残念です。外してしまいましたわ……」

一夏に対してレーザーを放った張本人、セシリアの顔を見てみるが……うん、原作通り怖い顔してるな。顔は笑ってるのに殺意が溢れ出てる。

「…………」

今度はガシーンと、何かと何かが合体したような音が聞こえた。

次は鈴の方を見る。

先程のガシーンは、どうやら甲龍の武装である双天牙月を連結した時の音らしい。

鈴は合体させた双天牙月を、迷うことなく一夏の首元めがけてブーメランの要領で投げる。

その速度がかなり早く、一夏も間一髪のところで回避出来たが勢い余って仰向けになる。

だが、投げられた双天牙月は本当にブーメランの如く一夏へ向けて戻ってくる。一夏は仰向けになっているので避けられない。

「……俺の射撃の腕を試すとしよう」

俺はボソリと呟き、拡張領域から六十口径リボルバーの<グナー>を右手に呼び出す。この銃はアメリカのコルトスミス社製実弾銃器で、装弾数が五発と少ない代わりに威力と命中精度と安定性、整備性が極めて高くメインウェポンが弾切れした時のサブアームとして名高い…らしい。

そんな<グナー>を構え、双天牙月の刃に照準を合わせる。

なんとも便利なことに、視界のHUDっぽいやつに今銃口がどこを向いているのか的なアシスト機能が付いている。

刃が俺の方に向くタイミングを見極め、引き金を引くと少しの反動と共に大口径の弾丸が<グナー>の銃口から放たれる。

その際山田先生が少し起き上がり、俺と同じく双天牙月めがけて銃弾を放つが俺の方が早い。

大口径の弾丸が双天牙月の刃の部分に当たり、その上山田先生が放った弾丸も当たり弾かれるように双天牙月が地面へ落ちる。

「……存外、やれるものだな。俺も」

正直外すかもと思っていたのが、意外と当てられる。というかリボルバーがすごくしっくりくる。まるで────前世から握っているかのように。

<グナー>をクルクルと回し、腰の横のホルスターにしまうような動作をしながら拡張領域へとしまう。

周囲を見てみると、他の生徒たちが唖然として俺の事を見ていた。

「え、すごっ。二人とも動いてる刃に当てたよね今」

「しかも弾丸が切れないように滑らすような弾道で………」

「実は刀より銃の方が合ってたんじゃ……」

皆そう言ってるが俺的には刀がしっくりしてたって言うか刀の方が強いんだが。

「さて、山田先生も来たからそろそろ模擬戦を始めるぞ。三七城、デュノア、準備はいいな?」

千冬が場の雰囲気を戻すように言う。

「大丈夫です」

「できています」

その言葉に、俺とシャルルは返事をしてから首肯する。

正直負ける気しかしないが、やぶれかぶれ、ヤケクソ八卦六十四掌だ(?)。

俺は両手にそれぞれ、この機体のもう一つの武装である四七口径LMG<ガルム44>を呼び出し、構える。ってかこのラファール、武装が<グナー>二丁と<ガルム44>二丁しかない。あと<グナー>と<ガルム44>用の弾倉それぞれ4つ。なんだこの貧乏武装。

対するシャルルは手に五五口径アサルトライフル<ヴェント>一丁と名称不明のSMG一丁、その上大型の物理シールドの中にパイルバンカーが仕込んである。更に拡張領域にはまだまだ武装が………幾つか俺に分けてくれねぇかな。俺のラファール拡張領域が腐るほど余ってるから。

「では、はじめ!!!」

合図と共に、俺とシャルル、山田先生が空へ飛ぶ。

「まぁ、勝てるよう努力はしよう。シャルル、俺は後衛をやる。慣れんラファールで前衛は無理だ」

「分かった、じゃあ僕が前衛だね。が、頑張ろう、黒騎」

「い、行きますよ!!三七城君!!デュノアさん!!」

いつも通りの言葉とは反して、山田先生の目付きがいつもとは違う目付きになる。

歴戦の戦士のような、鋭く冷静な目へと。

俺は後方でひたすら弾幕を張ることに徹することにして、シャルルは俺と山田先生に挟まれるようなポジションにつく。

俺はまだラファールに慣れてねぇから、後衛の方が何かとやりやすい。弾の無駄も減らせるし。

<ガルム44>の照準を山田先生に合わせ、引き金を引く。

<グナー>よりかは軽い反動が連続して起こり、幾つもの弾丸が山田先生へ向かって飛ぶ。

だが、俺がどこを狙って撃っているのかが分かっているようで、山田先生は弾丸をひょいひょいと躱している。当たる気配がまるでない。

「……回避ルートを先読みして撃つか」

「わかった。僕がショットガンで逃げ道をある程度塞ぐから、精密射撃をお願い」

「了解した」

ならば次の手段。シャルルが山田先生へ近づき、ショットガンをサブマシンガンと入れ替える形で呼び出して撃つ。

散弾がシャルルのショットガンから発射され、山田先生は左上に避ける。

「今」

俺はその隙を見計らい、右手の<ガルム44>を弾速が早い<グナー>に切り替え山田先生に向けて放つ。

目論見通り、<グナー>の弾丸は山田先生の生身の部分に直撃しSEを削る。

大口径だったこともあったのか、SEの減少を視認できるほどには減った。

「素晴らしいコンビネーションですね!!デュノアさんが前衛、三七城君は慣れないラファールだから後衛、良い選択です!!さっきの射撃も良かったですよ!!デュノアさんが私の逃げ道をショットガンで制限して三七城君が精密射撃!!」

弾丸を当てられた山田先生は、感嘆といった様子で興奮しながら俺らがやったコンビネーションを喋る。

「黒騎が上手く僕に合わせてくれたからです」

「シャルルが上手く誘導してくれたからだな」

シャルルと俺が同時にお互いを褒める。

「ですけど……そのコンビネーションには欠点がありますよ!!!」

そう指摘しながら、山田先生のラファールが俺に向かって加速してくる。

「『後衛が近づかれれば終わり』という点です!!」

山田先生が腕に細い筒のような銃…グレネードランチャーを展開して俺に向かって撃ってくる。

急いで右へ避けようとした、が。

「ぐっ!?」

逃げた先にグレネードランチャーから放たれたと思わしきグレネード弾が飛来していて、俺の目の前で炸裂し爆風と衝撃でよろける。

おそらくだが、俺が逃げるルートを予測して先に撃っていたようだ。

「しまっ……!?」

気づけば、もう最初に山田先生が放ったグレネード弾が俺の目の前にある。

視界が爆炎の炎に包まれ体に衝撃が走る。

「………」

気づけば俺は墜落しており、上では山田先生とシャルルが撃ち合っている。

だが、シャルルもまともにグレネードを食らい俺と同じように墜落してくる。

「……やはり教師。強いな」

「……だね」

「さて、これで諸君にもIS学園教員の実力は理解できただろう。以後は敬意を持って接するように」

ぱんぱんと手を叩いて、千冬が唖然としていたクラスメイトらの意識を戻す。

「専用機持ちは織斑、オルコット、デュノア、凰、ボーデヴィッヒ、ボードウィーク、三七城……は修理中だったな」

ボキリ。俺の精神に9999のダメージ。俺は即死んだ。

「では八人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。ただし三七城は特例としてデュノアのグループに入れる。いいな?では分かれろ」

あ、ありがてぇ………俺とラファール共に復活(リヴァイブ)ッ!!!!

前言撤回、千冬様マジ優しい。死ぬほど助かった。

千冬が言い終わった瞬間に一夏とシャルルに二クラス分の女子が詰め寄って行った。

「織斑君、一緒に頑張ろう!!」

「わかんないところ教えて~」

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」

「ね、ね、私もいいよね?同じグループに入れて!!」

………これが敗北者の気分か。存外、辛いものだな。泣きたくなるよ。

今の俺は、一夏とシャルルに群がっている女子達とは離れ一人ポツンと取り残されてる状態。泣いてもいいか?俺はいつでも泣けるぜ?

そんな状況に、千冬は呆れたような表情を浮かべ額を指で押さえながら低い声で告げる。

「この馬鹿どもが……。出席番号順に一人づつ各グループに入れ!!順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!!」

流石にそう脅されれば動かないはずもなく、大慌てで女子たちがそれぞれの専用機持ちの元へ歩いていく。

俺もシャルルの元へ歩いていき、二分とかからず専用機持ちグループが出来上がった。

「最初からそうしろ。馬鹿どもが」

大きくため息を漏らし、うなだれる千冬。本当にお疲れ様です。

「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は『打鉄』が三機、『リヴァイブ』が二機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」

山田先生がいつもの十数倍しっかりとしている。さっきの戦闘で気が引き締まったんだろう。きっちりとした先生らしい。いつものドジな感じが完全に抜けている。

班員の一人が『リヴァイブ』を取りに行き、帰ってきた所を見計らってシャルルが声を出す。

「さて、じゃあ早速始めるよ。まずは────」

だが。

「「「よろしくお願いします!!!」」」

と、大声を上げて班の女子たちがシャルルにお辞儀&手を差し出すということをいきなりやったのだ。

「……?え、えっと?」

もちろんお辞儀された上、手を伸ばされているご本人困惑中。

そのまま、場の空気が固まる。一切動く気配がない。

よし、ここは俺が一つここの雰囲気を律してや────

スパーン!!!

「「「いったああっっ!!!!」」」

女子たちも悲鳴が見事にハモった。一列だから余程叩きやすかったんだろう。頭を抑えながら顔を上げた女子たちは、やっと目の前に出席簿を持った修羅がいることに気づいたらしい。

「やる気があってなによりだ。それならば私が直接見てやろう。最初は誰だ?」

「あ、いえ、その……」

「わ、私たちはデュノア君でいいかな~……なんて」

「せ、先生のお手を煩わせるわけには……」

「なに、遠慮するな。将来有望なやつらには相応のレベルの訓練が必要だろう。……ああ、出席番号順で始めるか。デュノア、お前は三七城にラファールについて色々教えてやれ」

ひぃっ、と小さく悲鳴を上げる女子たちの声が聞こえた。

……ん?待て、千冬の言葉通りならこのままいくと俺とシャルル二人きりで訓練………いやご都合展開すぎだろォ!?待て待て!?今日はご都合展開が多い気がすんだが!?いや気がするじゃねぇガチだこりゃ!!!

「わかりました。それじゃあ黒騎、とりあえず向こうに行こう。そっちの方が広いからね」

「あ、ああ……」

俺にとって都合の良すぎる展開が多すぎて、もう神様が何か仕込んだんじゃないかって思えてしまう。

とりあえずその考えをどうにか振り払い、シャルルについて行く。

「そういえば、まずラファールってどんなISかは知ってる?」

移動している最中にシャルルがそう聞いてくる。

授業で習ったから、それぐらいならわかる。

「確か、万能性に富んでいる機体のはずだ。豊富なパッケージに、豊富な武装。それにより武装次第で距離や役割を選ばない戦闘ができる。機体自体も安定性と操縦性が良好で、世界シェアは三位」

「うん、まあ大体そんなところだね。今の黒騎の武装は完全に射撃型の武装ラインナップらしいけど、初めからそうだった?」

「ああ。正直ブレードの一本だけでも欲しいところだったが、貸してもらっている立場だからそんな我儘を言える訳ないしな。まぁ、いざとなったら備え付けの物理シールドで殴るとしよう」

「ず、随分とアグレッシブだね」

若干引き気味にシャルルが言う。やべ言葉の選択ミスったな。

「まぁな。こう見えて学園の女子たちからは『鬼帝』と呼ばれている程だからな。ラインバレルがあった時の話だが」

「おにみかど?」

「鬼の帝王だな。イギリス代表候補生に入学初日に喧嘩を売られたから、その喧嘩を買って戦い完全勝利した際にこの異名が付けられた」

「────え!?代表候補生に勝ったの!?」

先程から一転、シャルルが目を光らせながら俺の方を向く。

なんか……守りたい、この純粋な目。

「一応言っておくが嘘ではない。まぁ、ラインバレルあってこその勝利だったがな」

「凄い……まだISに乗って一、二ヶ月ぐらいでしょ?」

「そうだな。だが俺とラインバレルは相性が良くてな、俺が思った通りに動いてくれる素直なやつだったから、勝てただけだ」

話していると、急にシャルルの足が止まる。

何事かと思ったが、目的の広い場所に着いたらしい。

「着いたね。それじゃあ、まず簡単な視界に映っている画面について説明するね。これは────」

と、シャルルの解説が始まるので俺は真剣にその話を聞く。

……うん、予想はしてたけどめっちゃわかりやすい。

「ここの集音機能ってものはね、周囲の音を拾ってくれる機能で一定の範囲の音を聞き取りやすくしてくれるんだ。簡単にいえば補聴器の高性能版だね」

俺でもわかりやすいように例えを用いて説明してくれる。その上不必要な情報が入っていなくて短く、理解しやすいように言葉が纏められている。

改めてやっぱスゲーイ…………

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各自格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!!」

気づけば、午前中の実習が終わっていた。

集中していたせいか、あっという間に感じた。

「あ、もう終わりの時間か。どう?僕の解説分かりやすかった?」

終わった瞬間にシャルルが聞いてくる。

「上から目線になるが、完璧というレベルで良い。将来この学園で教師をやればいいのではないかと思えるほど分かりやすかった」

「そ、そうかな…」

あはは、と照れ気味にシャルルが微笑む。やべぇ気を抜いたら尊死する。

改めて千冬の方を見てみると、千冬が指導していた女子たちが「も、もう堪忍してください……」といったような顔をしながら横たわっていた。南無三。

「さて、俺はそろそろ更衣室で着替えるとしよう。シャルルも着替えるか?」

俺はラファールを解除しながら、シャルルに聞くが。

「え、ええっと……僕はちょっと機体の微調整をしてから行くから、先に行って着替えて待っててよ。時間がかかるかもしれないから、待ってなくていいからね」

「…了解した、では先に着替えている」

そう返すと、俺はラファールを待機形態に………?

ふと、視界の右上の表記のことを思い出す。

それに目を向けると────

「……?どうしたの?」

止まっていた俺が気になったのか、シャルルが声をかけてくる。

「……ああ、なんでもない。少々欠伸をしていただけだ」

俺は適当に理由を言ってからラファールを待機形態に変え、更衣室に向かう。

更衣室で手早く着替えを終え、更衣室前の壁に背を付ける。

 

「────なぜ、稼働限界時間の数字が『減っていない』?」

 

誰も居ない廊下で、俺は呟く。

 

 

 

 

 

 

「────だぁぁぁぁぁぁっ!!!!コアの方が言うことを聞いてくれないー!!!!助けてクーちゃーん!!!」

「……?どうしたのですか、束様」

「いやね?くーちゃんに渡す機体のボディは完成したんだよ。────けどこの機体の脳ミソであり心臓でもある<無銘>のコアが全く動いてくれない!!!初期化してやろうとも思ったけどいざやったらコア側から拒否されるし!?ドユコト!?」

「……私に聞かれましても……」

「いやーそれにしても、まさか開発者でも分からないイレギュラーが発生するとはねー」

「……恐らくの話になりますが…この機体、いや、<無銘>は三七城黒騎にしか反応しないのでは?」

「………それだァァァァァァっ!!!!!」

「……???」

「そうだ!!!産みの親の私でダメなら、<無銘>を使っていたあーちゃんの子供のくーちゃんなら!!天才なのにそれは思いつかなかった!!!ナイス、クーちゃん!!」

「……それで、どうやって三七城黒騎にこれを触れさせるのですか?」

「うーん、学園からくーちゃん引っ張り出してきてもいいけど……できるなら派手にやりたいし……あ!!!いい方法があった!!学園に転入してきた二人の内一人のISに芸術の欠片もないシステムが載ってたんだった!!

 

 

──────どうせだから救世主を喚ぶための生贄になってもらおう!!」

 

 

 




いかがだったでしょうか。
はい、ラインバレル封印決定。
チートを野ざらしにする訳ないじゃないか!!!アッハッハッハッ!!!!!
ラウラと同じような感じにはさせねぇよ!!!!検査なんていらねぇ!!!即封印じゃ封印!!!
ネクストからノーマルへ乗り換えて貰うぜぇ!!!ヒャッハー!!!!!
(これを書いた日の作者は異常なまでにテンションが高かったんです。許して)

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