ISーインフィニット・ストラトスー White of black (凍結)   作:蒼京 龍騎

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遂に……遂にあと少しでフラグが……フラグが立てられる……


ラファール・ブラスト

ISーインフィニット・ストラトスー

White of black

 

第九話 ラファール・ブラスト

 

 

────ここ、は?……ああ、俺は封印されたのか。【アマガツ】が暴走したから、当たり前か。

 

────残念だけど、君は私と同じくもう表舞台に立つことは無いよ。

 

────暮桜、か。千冬が使っていたISが、何の用だ。

 

────あまり千冬を責めないであげて。千冬は……

 

────黙れ。あいつはISという力に溺れたただの阿呆だ。そいつが使っていたモノの話なんぞ聞く気はねぇ。俺の目的も変わらねぇ。千冬と束、ISは……俺が殺す。

 

────千冬は、あの後ずっと悩んでたの。こんな世界になったのは天児の言うことを信じなかった自分だって。だから、せめてその罪滅ぼしに黒騎のことを自分が守ってあげようと一生懸命に……

 

────煩い。どうでもいい。俺はただ殺すだけだ。説得は無意味だと思え。

 

────じゃあ、聞いてくれるまで粘るから。天児の千冬に対する誤解を正せるまで、ね。

 

────鬱陶しい。俺は寝る。

 

────あ、ちょっ……スリープ状態にしてでも話聞かない気だ……

 

────千冬。天児は私が説得するから、千冬は……黒騎をお願い。

 

 

 

 

 

「……まぁ、当たり前といえば当たり前か」

俺はライラが居なくなった寮の自室で、隣のベッドに座っているシャルルを見て呟く。

千冬からいきなり「ああ、デュノアはお前の部屋に住むことになった」って言われた時は思わず千冬にバスターランチャー(威力キチガイFSS版)をかましたくなるほど慌てたが、良く考えれば当たり前の結果だった。

今のシャルルは男という扱い。空いている俺の部屋に来るのは当然。

ちなみに原作では箒が一夏の部屋から出ていくはずなのだが、何故かそのままらしい。

……うん。完全に神様何か仕込みやがったなありがとうございます。

「黒騎、今日からよろしくね」

「ああ、よろしく。まぁ気楽に過ごすといい。飲み物は炭酸飲料のみだが冷蔵庫にしまってある。飲みたければ自由に取っていい。補充は俺がやっておく」

「……それ、健康的に大丈夫かな?」

心配そうに、シャルルが俺を見る。

あ、やっぱ心配されたわ。俺基本的に炭酸飲料しか飲まないんだよなぁ……そのせいで【Dーゾイル】のおかげで体調は一切崩さないがライラに心配される。

……もう止めるとしようか。

「……今からお茶などを追加するとしよう。ああ、何か追加して欲しいもののリクエストはあるか?」

「いや、僕はお茶で大丈夫。日本のお茶飲んだことないから飲んでみたいな」

「了解した。部屋で少しくつろいでいてくれ。早めに買ってくる」

そう返してから、俺は部屋から出て購買まで行……こうとしたが。

「あ、黒騎。どこか行くの?」

ばったりライラと遭遇した。

ライラも丁度部屋を出たところらしく、玄関が空いてそこからライラが顔を出しているような状態だった。

ちなみに、ライラは布仏と同室になった。離れた今でもちょくちょく部屋に誘われて俺、ライラ、布仏の三人で集まって喋りながらお菓子を食ったりしている。

「ああ。購買で少々茶を買おうと思ってな、お前もどこか行くのか?」

「うん、アリーナでISの訓練。って、黒騎がお茶って……珍しい」

「なぁに、新しい住居人に頼まれたのでな。っと、そうだ。この後お茶買い終わったらその訓練に参加してもいいか?もう少しラファールに慣れておきたい」

謎の稼働限界についても知りたいしな。と心の中で付け加える。

すると、ライラが顔に笑みを浮かべて首肯する。

「うん、全然いいよ。私も一人でする訓練より、誰かとやった方が楽しいから」

「助かる。茶を買って部屋に届けたらすぐ向かう」

「分かった。先に行って待っているね」

俺はおう、と返して購買まで歩く。

女子たちの妨害が入るかと思ったが、特に何事も起こらず購買でペットボトルのお茶を買えたので、そのまま部屋まで戻る。

「おかえり、早かったね」

ベッドの上で持ってきたであろうパソコンを操作しながら、シャルルが俺に言う。

「思ったより妨害に会わなかったからな。茶は冷蔵庫に閉まっておくぞ。飲みたい時に飲むといい」

「ありがとう、黒騎」

言いながら、シャルルが笑顔を浮かべる。

……うん。最高!!!(語彙力死亡定期)

っと、そうだ。この後ライラと共に訓練に行くことを伝えねば。

……ん、待てよ?シャルルも誘えばよくね?

「そういえばだが、この後ラファールに慣れるためライラと共に訓練しようと思う。そこでシャルルも訓練共にどうだ?」

そう誘うが、シャルルは申し訳なさそうに顔を逸らす。

「あー、ごめんね。この後ちょっと個人的な用事があって、無理なんだよね」

ガビーン……シャルルとの仲を深めるチャンスだと思ったのに…………

こういうところじゃ神は非情である。

「……そうか。ならば俺はアリーナへ向かい訓練をしてくる。用があれば連絡してくれ、早めに返す」

俺は表面上は冷静を保ち、内心では四つん這いで「ウソダドンドコドーン!!!!!」と叫びながら部屋から出て更衣室まで向かう。

更衣室に着き、ISスーツに着替えてからアリーナまで歩く。

その道中で、アリーナ側から激しい発砲音と大型の銃火器の独特な響くような銃声がバラバラに聞こえた。

「……?既に誰か模擬戦をしているのか?」

そう呟いた直後、一際大きなガァン!!という金属同士がぶつかる音がしたのを皮切りに、急に周囲が静かになる。

既に誰が戦っているのか、と考えながらながら俺はアリーナのピットでラファールを纏い、アリーナへ出て。

「……は?」

見えた光景に、絶句する。

「……貴様のような、なんの苦労もせずに専用機を使っている無能な輩が、私は殺したくなるほど嫌いだ」

「…………」

ラウラが、ラウラ自身の専用ISである『シュヴァルツェア・レーゲン』を纏って、『シュヴァルツェア・ステルベン』を纏っているライラの頭を踏みつけている。

既にライラのステルベンには、機体のあちこちにラウラが持っているリボルバーカノンで撃たれたであろう凹み、プラズマ手刀で切りつけられた後であろう焦げ跡があちこちに着いていた。

更に……ラウラは、既に戦闘不能で気絶しているライラの頭を踏みつけて、見下している。

その光景に、驚きよりまず怒りが湧いてきた。

無言で拡張領域から<グナー>を取り出し、ラウラに向けて怒りをぶつけるように弾倉に入っている六発の弾丸を全てラウラに向けて放つ。

……だが。

「ふん。奇襲如きで私に傷を負わせられると思っているのか」

弾丸は、ラウラに当たらずラウラより少し離れたところで停止した。

「……AIC」

忌々しげに、俺はその装備の名前を呟く。

シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されている、IS本編でも猛威を奮った武装、AIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)

物体の慣性を停止させ、動きを止めるという反則じみた力。

今実物を見たことで、確信した。

────想像していたより、かなり厄介な代物だ。

「ちょうどいいところに来たな。貴様もついでに潰してやる。二度とISを操縦できない程度には痛めつけてやる」

言うと、ラウラは床に伏せているライラの顔を蹴飛ばしアリーナの端までライラが吹き飛ぶ。

──────こいつ、ライラの顔を蹴りやがった。

ブチン。

そこで、俺の中で何かがキレた。

「……だ」

「……なんだと?」

「ここまで誰かを殴ってやりたいと思ったのは、人生で三度目だ」

怒りを最大まで込めた声で呟き、武装を<グナー>から<ガルム44>に切り替え両手でそれを持つ。

「先程の発言、撤回してもらおうか。ライラは苦労をせずにここに来た訳では無い」

ライラの人生について、ほぼ何も知らない俺でもこれだけは言える。

ライラは、死ぬような思いをしながら努力してここにいるということだけは。

学園に来てからライラと共に過ごした事、何度もやった模擬戦。この二つからそれが言える。

部屋で一度見させてもらった、学園に来る前から書いていたと思われる文字が見えなくなるほどにISについて書かれたノート。

俺や代表候補生の弱点を、寮へ帰ったら俺に迷惑をかけないように夜中にひっそりと起きてノートに纏めて対策を練り、日を跨ぐにつれて強くなっていたライラ。

模擬戦でライラと剣を交えた時に感じた、ライラの強くなりたいという強い意志を表したかのような刃の重み。

そんなライラの努力を否定するのは……たとえ神が許しても俺が許さん。

「はっ、戯言を。そこの女は私たちの中でも最大の失敗作として捨てられ、そのくせ今までしぶとくのうのうと生きていた。挙句自身と同じ失敗作のISに乗っている、ただの存在価値の無いゴミ「いい加減黙りやがれ。胸糞悪ぃな」」

俺は嘲笑うラウラの言葉を遮り、前世と同じ喋り方で言い放つ。

もう限界だ。演技なんてやってられるか。

「さっきから黙って聞いていればなんだ?

──失敗作?

ふざけんな。

──存在価値がない?

いや、あるね。

──のうのうと生きてきた?

違う。ぜってぇ違う。

テメェなんぞにライラを罵倒する権利なんざねぇよ。

────むしろ、失敗作はテメェだ。人を罵倒することしかできねぇ口先だけの餓鬼が」

「ッ!!!貴様ァ……!!!」

そこで、初めてラウラの顔が怒るように眉をひそめる。

リボルバーカノンの銃口を、俺に向ける。

「……ISが操縦できない程度にいたぶってやろうと思ったが、やめだ。

────二度とその足で地に立てないようにしてやる」

「やってみろ。今の俺は……なぜか誰にも負ける気がしねぇ」

瞬間。

 

『────三七城黒騎の感情の激化を確認。

【Dーゾイル】リミッター解除。ファクターアイ発現。

コネクティブ・ラファール。【Dーゾイル】通常IS専用単一仕様能力(ワンオフアビリティ)

<限界無限>(リミットオフ)、機動』

 

頭の中で、ラインバレルに初めて乗った時に聞こえた声と同じ声が、意味の分からないことを喋り出す。

いきなり、視界のHUDに『unknown mode shift』の文字が表示されると、手の甲と、肩、太もも、足裏に針が刺さるような痛みを感じた。

直後。俺とラファール側それぞれが混じっていたような感覚が消え失せ、俺の感覚が完全にラファールと一体化するような感覚に襲われる。

それと同時に、ラファールから微かに聞こえていた排気音がうるさく感じるほど大きくなり、ラファールの装甲の各所が展開し熱を帯び始める。

その熱によるものなのか、段々とラファールの装甲の色が緑から赤へと変化していく。

『<限界無限>発動によりラファールに深刻な負荷発生。稼働限界時間、残り五分』

更に、以前から気になっていた稼働限界時間のタイマーが減少を始めた。

────ああ。何か知らんがこれのためのタイマーなのか。

「……ッ!?……なんだ、それは!?

なんだ……その赤いラファールと『赤い目』は!?」

その光景を見ていたラウラが、顔を先程の怒りの表情から一変。

困惑の表情を浮かべながら、右足を後ろへと少し下げる。

なんか最後の方赤い目とか赤いファールとか聞こえた気がするが、どうでもいいか。

「さぁ?俺にもわからん。

────ただ、これだけは分かるぜ。

これなら、AICって卑怯装置気にしなくてもテメェの顔を一発殴れるってことはな」

言いながら、右腕を右に伸ばす。

『ラインバレルとのコアネットワーク接続を確認。<不知火>展開』

すると、右手に。

────封印されているはずのラインバレルの<不知火>が現れる。

それを見た俺は、使い慣れている得物が出現したので大きく笑みを浮かべ、ラインバレルを扱う時と同じように背中に力を込める。

「……言っておくが、俺は最初から全力で行かせてもらうぜ?」

ラファールのスラスターを吹かし、ラウラへ向けて加速する。

……普通のラファールの時よりも、早い。まるで、ラインバレルを扱っているかのようだ。

「なっ!?」

スペック以上の加速をしたせいか、ラウラが驚く。

しかし、流石軍人。すぐに体勢を整え俺を睨みAICを使おうとする。

だが。

「AICは、対象を集中してイメージしないと使えねぇんだったな。

────なら、こうされりゃ使えねぇよなァ!!!」

スラスターを左右別々に起動させ、ラインバレルと同じように不規則な軌道で個別瞬時加速を行い視線が追いつかないように動く。

「行くぜ行くぜ行くぜェ!!!!」

「……ちぃっ!!鬱陶しい!!!!」

ラウラがワイヤーブレードを射出し俺へ向けて飛ばしてくるが、全て見切れる。

身を捩り、回避しきれないものを<不知火>で切り落とし必要最低限の動きでワイヤーブレードを回避してラウラに肉薄する。

ああ……やっぱり<不知火>の方が馴染む。

「ええい!!ちょこまかと!!!」

遂にはリボルバーカノンを超至近距離で放ってくるが、放たれる弾丸を全て<不知火>で切り落とす。

ラウラに肉薄するほど近づけた俺は、ラウラの顔に向けて左の拳を構え。

「ぶっ飛べェ!!!!」

その顔に一発殴りを………

 

キーンコーンカーンコーン

 

「…………」

「…………嘘だろ?」

食らわす直前に、チャイムが鳴る。アリーナを使える時間が終わったのだ。

「……興ざめだ。今日のところは退くとしよう」

チャイムに邪魔されて、やる気が萎えたのかラウラがISを解除し足早にピットへと向かう。

────が、ラウラは急に足を止めて俺の方へと向く。

「……一つ聞かせろ」

俺へ対して、何かを聞きたいようだった。

無視してライラを担いで立ち去ろうとしたが、何故体が動かなかった。

──俺を見るラウラの目には、困惑と同情、そして親近感。この三つの感情が読み取れた。

なぜそんな目をしている?と疑問に思ったが、答えは出ない。

「……貴様は、私と同じく……いや、なんでもない。忘れろ」

何かを言おうとしていたらしいが、途中で言葉を撤回する。

「……貴様は私が必ず倒す。覚えておけ」

先程よりも小さい憎しみを込めた言葉を残して、ラウラがアリーナから去る。

「……ッ!!ライラ!!」

ラウラがアリーナから去ったことを確認してから、ライラの元へ駆ける。

見ると、幸いISの絶対防御が発動していたようでライラ自身に傷は見られなかった。

「……気絶しているだけか。

────よかった」

大きくため息をつき、アリーナの地面に座り込む。

もし怪我をしていたら、俺はラウラを今からでも殺しに行くことになりそうだ。

いや、もうラウラ許さん。原作キャラだろうが知るか。一回ブッ飛ばしてやる。

「……それにしても」

────さっきのあれは、一体なんだ?

俺は自分の手のひらを、夕日により橙色に染まっている空にかざし、空と手のひらを見ながら心の中で呟く。

怒りに身を任せていたことにより、使っていた時は不思議に思わなかった、あの現象。

ラファールにあんな機能はない。だとしたらあの謎の声は……

『【Dーゾイル】通常IS専用単一仕様能力』

不意に、謎の声が言っていたそのワードが頭に浮かんだ。

【Dーゾイル】は、ナノマシンだがその一つ一つが極小のナノサイズまで小さくなったISだ。

言うなれば、【Dーゾイル】はコアがないことと、大きさがナノレベルなことを除けば普通のIS。

つまり……単一仕様能力が発現してもおかしくは……

────いやおかしいだろ!?

コアがないからそもそも本来のISとしては機能してない訳だし……待て。『コア』がない?

今まで気づかなかったが、なぜこの【Dーゾイル】は動いている?

ISにとってコアは心臓でもあり脳でもあるはず。ならこの【Dーゾイル】はどうやって動いている?

──まさかラインバレル本編みたく、動力源であるコアがラインバレルと共有になっているのか?

それなら、先程<不知火>が出現したのもなんとなく頷ける。

「……っと、考えている場合ではないな」

目の前で気絶しているライラをどうするか。

……まぁ、当然。

「……医務室へ運ぶか」

 

 

「……あの目、まさかとは思うが……」

アリーナのピット。そこでドイツ代表候補生であるラウラ・ボーデヴィッヒは呟く。

先程三七城黒騎が見せた、あの現象。

ラファールが赤くなったのはどうしてかは分からないが、そのパイロットである彼の『目』の変化に驚愕したのだ。

ラファールが赤くなった直後、彼の両目の瞳が『紅』に輝いたのだ。

──まるで、自身の忌々しい左目のように。

ラウラは眼帯で覆っている左目に手を添え、眼帯を取って自身の『黄金に輝く』左目を見る。

この目は、ラウラにとって忌むべきものであり、同時に自身を強くしてくれたもの。

忌々しげに、その目を見る。

「私と同じ、いや、同系統の手術を……?」

あの状態になってから、情報より明らかに動きが良くなっていた。

通常の銃弾より圧倒的に火力と弾速が早いはずのリボルバーカノンの弾丸を見切った上で切り落とし、幾つものワイヤーブレードを必要最低限の動きで避けて避けきれないものは切り落とす。

あんな動き、素人ならまず出来ない。

しかも……専用機ではなく、第二世代型であの動き。

ラウラが不思議に思うのも、無理はない。

「……まぁいい。潰した後に聞くだけだ」

再び眼帯を付け、ラウラはアリーナから去る。

 

 

「あ、おかえり。訓練どうだった?」

ライラを医務室へ預け、部屋へと戻った俺にシャルルがそう聞いてくる。

ベッドの上でパソコンを弄っていたが、何をしているのかはよく分からない。

「……思わぬ妨害に遭ってな。まともに訓練が出来なかった。

────あの野郎、次は会い次第倒してやる」

女の子の顔を蹴りやがって。

心の中で言葉の続きを言って、俺は自分のベッドへ飛び込むように倒れる。

「……もしかして、その妨害してきた人ってボーデヴィッヒさん?」

え、すげ。どうしてわかったし。

「よくわかったな」

「いや、なんか因縁ありそうだなーって思ったから」

シャルルの言っている因縁とは、おそらく朝のことだろう。

まぁ、正確には因縁というか向こうが一方的に恨みに来てるというか……

「……一方的な逆恨みだ。どうしようもないことに苛立って、ただ力を振るっているただの餓鬼のな」

言うと、シャルルが不思議そうに首を傾げる。

「なんか黒騎って大人っぽいよね。言葉もそうだし、雰囲気も」

まぁ、こちとら中身おおよそ34歳のオッサンだからな。当たり前と言っちゃ当たり前なんだが……なんか悲しい。

「色々あったからな。こうなっても致し方ない」

「……僕は黒騎のこと、まだ色々と分からないけど、黒騎は黒騎で色々苦労してるんだね」

「ああ。苦労が多すぎてその内過労死するのではと思える程にはな。まぁ冗談だが」

冗談を交えて返すと、シャルルが口元に手を当て少し微笑む。

その際思わず胸を抑えて「尊()ッ!!!!」と言おうとしかけたがどうにか耐える。

「まぁ、今日から改めてよろしく。シャルル」

「うん。よろしくね、黒騎」

その後は、シャルルと俺でそれぞれ風呂に入る時間帯を決めたり、部屋のことで色々と話し合った。

しばらくすると、お互い納得する形で一通り決め終わった。

「そういえば黒騎、もうラファールには慣れた?授業の説明でまだ聞きたいこととかある?お茶くれたし、今日は色々お世話になったから何かお礼させてほしいな」

パソコンをパタンと閉じたシャルルがそう聞いてくる。

「……礼などいらん。と言いたいところだが、ラファールでの戦い方が上手くイメージできん。そこについて教えて貰えるとありがたい」

「分かった。それじゃあ明日、アリーナで実際に武器とか使って解説するね」

「頼む」

「任せて。今日みたく教えられるように頑張るから」

屈託のない笑顔を俺に向ける。

なおそれによって、俺は心の中で歓喜に震えて暴れ回っていたのは言うまでもないだろう。

こうして、推しが部屋に居る生活の初日が終わった。

ちなみに、その日は推しが隣のベッドで寝てるって考えただけでドキがムラムr((殴

ムネムネしたので一切眠れなかった。(((;゚Д゚)))ドキドキ

 

 

シャルルが俺の部屋に越してきて五日目。

一日目にシャルルから「ラファールなら銃火器の使い方をある程度覚えた方がいい」と言われた俺は毎日放課後にアリーナを借りてシャルル指導の下で射撃訓練をしていた。

日別に使う火器を分けて、それについて詳しく教えた後にお互いその武器オンリーでの模擬戦という形式だったのだが、それがかなりやりやすかったし、模擬戦で特徴を実際に感じられるから分かりやすかった。

一日目は基本的に扱いやすいハンドガン。

二日目は近接戦闘や牽制で大いに役立つショットガン。

三日目はショットガンと同じく牽制と連射力に優れ取り回しが良いサブマシンガン。

四日目は全体的にバランスが良いアサルトライフル。

そして今日……狙撃に適しているスナイパーライフル。

シャルルがアリーナの設定を変え、アリーナのそこら中に的を出現させる。

「それじゃあ、今日はスナイパーライフルについて教えるね。でも実を言うとあまりスナイパーライフルってISの武装の中でも人気ないんだよね。だから今日のはついで感覚で覚える感じでいいよ」

的を指しながらシャルルが解説を始める。

「まずスナイパーライフルは高い命中精度と高い威力が特徴の銃火器なんだけど、一般向けじゃなんだよね。なんでかわかる?」

一般向けでは無い、か。つまり使い勝手に難があるって感じだな。

スナイパーライフル、狙撃、命中精度、威力……あ、わかった。

「……命中精度と威力に特化しすぎて他の部分の性能がかなり低いのか?」

「うーん、一応正解だけど……正確には『慣れる』必要があるって点なんだよね」

「慣れる?」

「そう、慣れ。他の銃ってある程度連射が効くし、装弾数も多いから外した時のプレッシャーもそこまで大きくないんだよね。でもスナイパーライフルって連射速度が遅いし装弾数も少ないから外した時のプレッシャーが大きいんだ。あとIS同士の戦闘って常にお互いが素早く動くから、スナイパーライフルの『狙撃』の分野が生かしにくいんだよね。まぁ、代表候補生のオルコットさんとかの例外はいるけど」

例外……言われてみりゃ確かに。セシリアの<スターライトMk.Ⅲ>ってスナイパーライフルみたいな感じなのにめっちゃ上手く扱えてるよな。

「オルコットさんの場合、BT兵器の<ブルー・ティアーズ>を使って擬似的に一対多数の状況を作って相手の動きを制限してから狙撃するっていうスタイルをとっているから、狙撃が機体と凄く相性が良くて強いって感じだと思うんだ」

「ふむ、つまりスナイパーライフルは一対多数で相手の動きがある程度絞られている状況以外では役に立たんということか」

「そう、そんな感じ。だから一対一の戦闘が多いIS同士の戦闘でスナイパーライフルが使われることは滅多にないんだよね」

一通り解説が終わったのか、シャルルが手のひらを広げ武装を展開する。

「試しにこれで撃ってみて。スナイパーライフルがどれだけ使いにくいかわかるはずだから」

シャルルからスナイパーライフルを渡された俺は、銃の全体をじっくりと見てみる。

その銃は、どことなくドラグノフという銃に形状が似ていた。

俺はシャルルから渡された銃を構え、武器とハイパーセンサーを接続して視界にターゲットサイトを表示させる。

「……取り回しも絶望的だな」

構えてみて分かった。

長い。とにかく銃身が長い。

そのせいで、取り回しが他の銃に比べて絶望的に悪い。

とりあえず、ターゲットサイトの十字の表示の中央が的の中央に来るように銃を動かし、引き金を引く。

ドォン!!!カランカラン。

大きな炸裂音と薬莢が地面に落ちる音と共に、大口径の弾丸が銃口から射出される。

その弾丸は、的のギリギリ右端に当たって穴を穿った。

「……おかしいな。確かに的の中央に合わせたはずだが」

ターゲットサイトの中央に、きっちりと的の中心を合わせたはずだが……誤差が大きすぎる。

「……これが使いにくいって言われてる理由のナンバーワンなんだ。スナイパーライフルに限らず他の銃にも言えることなんだけど、弾丸って空気とか風の影響を受けやすいからなかなか狙ったところに当たらないんだよね。他の銃は連射しながらある程度目測での調整ができるけどスナイパーライフルって連射ができないから、撃ったらサイトを調整、撃ったらサイトを調整を繰り返さないと駄目だから使われないんだ」

「なるほど。これは確かに一対多数以外では使えんな」

相手が調整する暇を与えるわけが無い。

だから、一対多数時には片方に敵を抑えてもらい、その間に調整と狙いをつけられる余裕ができるから初めて使えるといった感じか。

セシリアの場合<ブルー・ティアーズ>が敵を抑える役割を担っているから単独での狙撃が成り立つ訳だ。

……あれ、これ俺ラインバレル無かったら負けてたんじゃね?狙撃で蹂躙されてたな絶対。

「ねえ、ちょっとアレ……」

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ」

「あれ?でもボードウィークさんのもドイツの第三世代型だよね?」

急にアリーナ内がざわつき始める。

見ると、ちょうど漆黒のIS……『シュヴァルツェア・レーゲン』に乗ったラウラがアリーナへと来ていた。

ラウラは俺と同じアリーナで特訓していたライラを一度睨むと、俺の方へ歩いてきた。

「おい」

俺の近くまで来たラウラが開放回線(オープンチャンネル)で呼びかけてくる。

……反応してもいいけど無視しよう。今の俺はシャルルとの時間を邪魔されて猛烈に気分が悪い。

「…………」

俺はラウラの呼び掛けを無視して手に持つスナイパーライフルを凝視する。

「……無視か、貴様」

ジャキッ、とラウラが怒りの形相を浮かべてレールガンを俺に向けてくる。

「昨日、ライラの顔を蹴った貴様とは口をききたくないのでな。今すぐライラに謝ってくるというのであれば話を聞いてやる」

だが、俺は怯まず言い返す。

「……余程あの失敗作に思い入れがあるようだな。なんだ?肉体関係でも持ったのか?でなければあの失敗作を思う理由が見当たらん」

────ああ、よっぽど死にたいんだなこいつ。

やばい、昨日のことも相まってもう限界だ。ブチギレよう。

「……今すぐ殺してやろうか。出来損ないの『越界の瞳』(ヴォーダン・オージェ)の不適合者が」

俺はラウラを挑発することにした。

効果てきめん、といった様子でラウラの顔がどんどん青くなっていく。

「……!?貴様、どこでそれを……!?」

「ある情報網からな。それにしても驚いた、貴様も失敗作のくせに人を失敗作呼ばわりか。これは脳みそまで失敗作だな、もう一度試験管の中へと戻れば良いのではないか?

で き そ こ な い」

原作知識をフル活用して、ラウラの怒りを買いまくる。

「……ッ!!!キ、サマァッ!!!!」

ラウラも堪忍袋の緒が切れたようで、リボルバーカノンの銃口を俺に向け引き金に指をかける。

そして、引き金を躊躇なく引いたので俺はラファールの肩部にあるシールドを外して正面に構える。

ドォン!!!という大きな銃声と共に、構えていたシールドに衝撃が走る……はずだった。

「もうやめて。二人とも」

構えていたシールドを避けると、ライラが<ハイキャスト>を盾のように構えて俺の目の前に立っているのが見えた。

その表情は恐怖に染まっていて、ラウラに対して無理に立ち向かっているように見えた。

「これ以上やるなら私も容赦しないよ。だから武器を」

「邪魔をッ!!!するな!!!」

ライラがラウラを止めようとしたが、ラウラは手からプラズマ手刀を展開しライラに向けて振り下ろそうとしていた。

『そこの生徒!!何をやっている!!学年とクラス、出席番号を言え!!!』

突如としてアリーナにスピーカー越しと思われる怒声が響いた。

先生が騒ぎを聞きつけたのかアリーナまで来たんだろう。

「……ちっ、仕方がない。今日は引くとしよう」

二度も横槍が入って興が削がれた、といった様子でラウラがアリーナの出口へと向かう。

その出口では、教師が鬼の形相で待機していたがラウラのあの様子だと無視して部屋へ戻るだろう。

「黒騎、大丈夫?」

「……ああ、助かった。ありがとうライラ」

ライラが心配そうに俺のことを見るが、その顔はまだ恐怖に染まっていた。

思わず、口が開く。

「一つ聞きたいのだが、ライラとボーデヴィッヒは一体どういう関係なのだ?奴はライラのことを忌み嫌っていたようだが」

「……ここじゃ話せないから、今日この後私の部屋に来て。そこでなら話せるから」

その際、ライラの手や足が震えていたことから、余程辛い話なのだろうと察した俺は静かに頷く。

俺が頷いたのを確認したライラがISを解除し足早にアリーナの出口まで向かう。

「……という訳だ。この後少々部屋を開ける。いつ戻れるかは分からないが、その間自由にしていてくれ」

「……分かった」

シャルルも状況を察してくれたようだ。何も言わずに了承の言葉を返してくれた。

────何故か言葉が少し刺々しく感じたが。

その後すぐにISを解除して更衣室へ向かい、そこでスーツから制服に着替え俺はそのままライラの部屋まで向かう。

ドアの横にあるインターホンを押して来たことを伝えようとしたが、そうする直前でドアが開き中から薄い黒の布地の寝間着を着たライラが現れる。

「……早いね」

ライラの目はくすんでいて、その上鼻水をすする音も聞こえたので、先程まで泣いていたのだとわかった。

「着替えが思った他早く終わったのでな」

そう返して、部屋へと上がる。

とりあえず、部屋にあるテーブルの下にある椅子を引っ張り出してそこに座る。

ライラも同じようにテーブルから椅子を引っ張り出し、俺の隣に座る。

「……私ね、人工的に作られた人間の失敗作なんだ」

静かに、泣きそうになりながらライラが呟く。

俺は口を開かず、ライラの話を静かに聞く。

 

 

「ドイツの極秘研究で、強い兵士を沢山作ろうっていう計画で生まれたのが私。親なんて居ない。生まれてしばらくしたらすぐに人殺しの技術を叩き込まれた」

 

「他の皆は上手く覚えたり、実際に上手くできてる中……私だけできなかった。

────人を殺す技術を覚えるのが、嫌だった」

 

「……ナイフを握るのが怖かった。どうしたら人が死ぬのかを知るのが嫌だった」

 

「もちろん、私は『役立たず』って周りから言われた。それで教官からも虐められたりした。

────でも、そんな中でね、同じ気持ちを持っている子を見つけたの」

 

「……それがラウラなんだ。ラウラも本当は刃を握るのが怖かったけど、やらなきゃいけないから、っていう気持ちでやってたんだ。それでラウラと私は意気投合して仲良くなった」

 

「それでも、ラウラはずっと成績優秀で毎回一番の成績を取ってたんだ。それに比べて私は最下位でなにもしてないし、できなかった」

 

「────それが面白くなかったんだろうね。訓練を受けている子総出で私の事を虐めに来たんだ。ナイフで体を切られたり本を破かれたりしたけど抵抗する気はなかった。

人殺しの知識をつけるぐらいなら、自分が傷つく方がいいから」

 

「────でもその度ラウラが助けてくれたんだ。あの時なんか教官に面と向かってクズ野郎って言って怒鳴ってたっけ」

 

「私にはラウラが居たからそんな日常の中でも生きていられた。心を保っていられた」

 

「……でも、そんな日常の中で過ごして、五歳ぐらいの時かな。

────私は初めての野外訓練で車に乗っている最中に、雪が積もっていた外に放り出された。

多分私の事をよく思っていない子に突き飛ばされたんだと思う」

 

「その時初めて体全体で雪に触れたんだけど、冷たくて気持ちよかった。

────突き飛ばされたことなんてどうでもよかった。

ただただ、もうこんな世界とはお別れできるって思った。

多分軍の方では、私は訓練中の不慮の事故による死亡扱いになってるから、死んでもいいと思った。

────兵士って役目から開放されると思った」

 

「だんだん眠くなって、死んでもいいって気持ちで雪の上で寝たの。

────でも、目が覚めたらベッドの上に居て私は生きてた。

偶然近くを通りかかった、今の私のお父さんとお母さんが私を見つけて私を拾ってくれた。

その後はその家でしばらくお世話になって、正式にその家の子供になったの。

名前だけそのままにして、ライラ・ボードウィークに。

そして、そのお祝いで日本に行って、その時黒騎に会ったの」

 

「……その時助けてくれた黒騎の姿が、かっこいいと思った。

私も、黒騎みたく強くなりたいと思った。

──その時にIS学園に入ることを決めたんだ。両親も快く承諾してくれたし、かなりの権力者だったからなのかは分からないけど、ドイツの軍部を脅してまで私に専用機……『シュヴァルツェア・ステルベン』までくれた」

 

「そして、死ぬ気で勉強を頑張ってIS学園に入って、黒騎ともう一度会った。

もう、正直これだけで努力が報われたと思った。

私の目標が、同じ学園の同じクラスに居るって分かって嬉しかった」

 

「でも、今週。

────ラウラが来た。私は嬉しくなって話しかけようとしたけど無視された。

……ラウラは、私が生きていたのが嬉しいんだ。でも私が死亡扱いにされた時に助けられなかったことで悩んでるから私に辛く当たってるんだ。

既に、私に嫌われているんじゃないか。って思いこんでるから、どうせなら絶交してもらおうとしてるんだ。ラウラって感情を表現するの苦手だから、私には分かる。けど……」

 

 

「……黒騎。私、どうすれば良いのか分からないの……っ。

教えて……私はどうすればいいの……」

言いたいことを一通り吐き出したのか、ライラが俺に抱きつく。

そして、俺の胸で抑えきれなくなった涙を流す。

……正直俺は、今のライラにどういう言葉を言えばいいか迷っている。

仲直りしろ、と言ってもどうするかが問題になる。その方法は俺の脳に思い浮かばない。

戦って言うことを聞かせろ、は駄目だ。力に訴えかける方法はなるべく避けたい。

なら────

「────ボーデヴィッヒに、自分の気持ちを吐き出せば良いのではないか?」

自然と、口が開いていた。

「聞いたところ、ボーデヴィッヒはお前に嫌われていると勘違いしているのだろう?ならばお前がボーデヴィッヒに気持ちを伝えればいい。私はラウラを嫌っていない、とな」

言い終えると、ライラが顔をゆっくりと俺に向ける。

その目は、先程までとは違い少しだが光が戻っていた。

「……信じて、くれるかな」

「そこまではわからん。だが……ライラが仲直りをしたいと強く思うのならば、必ずボーデヴィッヒは気付いてくれるはずだ」

仲がいいなら、正直に伝えれば相手の気持ちがわかるはずだ。

「……私、やってみる。ラウラに、私の気持ちを伝えてみる」

どうやら、迷いは晴れたらしい。ライラが目を見開いて力強く言う。

俺はそんなライラの姿を見て、笑みを浮かべる。

「ああ。頑張れよ」

「……今日はありがとね、黒騎。もう大丈夫」

ゆっくりと、ライラが密着させていた体を俺から離す。

「分かった。ではおやすみ、ライラ。お前の気持ちが届くことを俺も願おう」

「うん、おやすみ。本当にありがとね、黒騎」

微笑み返された俺はライラから離れ部屋から出る。

 

 

「……今のを聞くと、恨んでいた自分が馬鹿馬鹿しく思えるな」

玄関のドアを開け、部屋に戻った俺は小さく呟く。

ラウラとライラにあんな過去があったと聞かされれば、何も知らず恨んでいた自分が憎く思える。

「……俺も、ラウラと和解できるように善処しよう」

そう呟き、周囲を見渡すと……

「……?シャルルは何処へ行った?」

部屋にいるはずのシャルルが見当たらない。

だが、耳を澄ますとシャワーが流れる音が聞こえたので、シャワーを浴びているのだと分かった。

「……そういえばボディソープが切れかけだったはず」

そこで、昨日シャルルが言っていたことを思い出しクローゼットから予備のボディソープを取り出し脱衣所まで持っていく。

今日も俺が初めに入ろうと思っていたので、まだ補充していないはず。

脱衣所に入り、ボディソープを洗面台に置く。

ガチャ。

「────ん?」

ガチャ?ああ、シャルルが風呂から出てきたのk……アレ?

そういや、ライラの件ですっかり忘れてたが……これ……

────原作のラッキースケベ遭遇シーン通りじゃねぇかァァァァァァッ!?!?

「く……くろ、き……!?」

言いながら、風呂から出てきたのは……

 

 

 

────全裸のシャルル(女子)だった。

 




黒騎にラインバレルを降りてもらったが、誰もパイロットが粗製とは言っていない(?)
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