今回はネイチャ主観にしてみました。
独白だからね、主役がメインじゃないと……。
掲示板を見る。
1着は3番、トウカイテイオー。2着は8番、ビワハヤヒデ。
そこから3と1/2バ身離れて7番……アタシの、番号。
「凄かったよっネイチャ! おめでと~」
「あーうん。ありがとう、タンホイザ。……やっぱり、また3着か」
二度あることはなんとやら。まさかこんな形で実感してしまうとは。
悔しさでいっぱいになる。全力で、本気で、必死で1番を目指したのに、勝てなかった。
精一杯を出し切って、ギリギリでタンホイザに抜かれるのを防ぐのが限界だった。
……優勝は、遠かった。
ライスシャワー、ウイニングチケット、メジロパーマー……他にもG1を優勝した名ウマ娘たち。
そうそうたるメンツでこれだけの成果を出せただけでも立派なんだろう。
だけど、やっぱり、悔しくて。
「勝ちたかったね、ネイチャ」
「そうだね。アタシも勝ちたかったな」
タンホイザと一緒に、悔しさをこぼす。
──さて。敗者としての未練はここでおしまい。
勝者の同期ウマ娘として、奇跡の復活を遂げたウマ娘にすることは唯一つ。
「行こ、タンホイザ!」
「っ、うん! テイオーにおめでとうを言わなくちゃね!」
「ウェイウェイ! その話、うちらも一枚噛ませてよ!」
「……へ?」
……どっから聞いていたのやら。
いつの間にか後ろにいたパーマーとチケットも一緒になって、テイオーに抱きつきに走った。
ウイニングライブ、控室。
「それにしても、見事なレースでした」
「凄かったぞ! ネイチャもタンホイザもよく頑張ったな!」
「あはは、3着だったけどね……」
「それでも、ネイチャさんとタンホイザさんの奮戦は讃えられるべきですよ」
カノープスの皆が健闘を讃えてくれた。
悔しさがなくなるわけじゃないけど、誰かに認められたって事実が心を癒やす。
「ターボも走りたかったなー! ねぇねぇ、来年はターボも出られる?」
「そうですね……その時にならないと分かりませんが、みんなに愛されているターボさんならきっと出られますよ」
「ホント?! よーし、がんばるぞー!」
「勝負服も着ているし、ほんと、元気だね。ターボは」
勝負服を着込んだぐるぐるお目々のウマ娘、大逃げで有名なツインターボ。
彼女の元気さには元気づけられるし、同時に少し疲れもする。
いつだったか、彼女のせいでチームルームが悲惨なこともあったっけ。
「トウカイテイオー、一年ものプランクがあるとは思えない勝利でしたね」
「……そうだね。あれこそ”絶対”って走りなんだと思うな」
「”絶対”ですか?」
「そうそう。なんというか、”何が何でも絶対に勝ってやる!!”って意気込んでいると言うべきかな。精神が肉体を凌駕している状態。ほら、オールカマーのターボとか、春天のライスとか。あのテイオーはまさにそうだった」
”レースに絶対はない”
ウマ娘界隈でよく聞く言葉だ。
一番人気のマックイーンが事実上の最低人気のダイサンゲンに破れたあのレース。アタシが初めて走った有馬記念での大番狂わせなんか良い例だ。
どんなに強いウマ娘でも突然の故障でレース中止になることもある、どんなに人気薄のウマ娘でも色んな条件が組み合わさればどんな強者相手でも勝ちの目はある。
だから、レースに絶対はない。
トレセン学園に入ってすぐに痛感することの一つだ。
──だけど、偶に”絶対”というモノが生まれる。
さっき上げたレースなんかが好例だろう。ライスシャワーや桜花賞を優勝したウマ娘が参加する中、ターボはトレーナーから教わった”秘策”を見事に成功し、”諦めない”ということをステージ上のテイオーに見せつけた。
ライスシャワーの天皇賞(春)も良い例だ。私よりも一緒に走ってたイクノやタンホイザの方が分かると思うが、あれほど強烈な気力を放つウマ娘を私は見たことがない。もはやあれはウマ娘ではなく鬼とでも形容すべき存在だったと思う。
──だから、テイオーが勝つのはある意味必然だったのだ。
絶対の意思で、絶対の走りをして、絶対の願いを持つ相手に、善戦しか出来ないアタシが勝つのは到底無理だったのだ。
「だけど、さ」
制服に着替え終えたタンホイザが口を開く。
「悔しいよ、私だって勝ちたかったもん」
「そう、だね。アタシも一着取りたかったなぁ……」
ちらりと見える真っ赤な泣き跡。それを見てしまったら、必死に蓋をしたあの感情が噴き上がる。
悔しい、悔しい、悔しい!
アタシだって1番を、G1という大舞台での1番が欲しいっ!
その為に必死に頑張ったのに!
アタシはまだ、悔しいと思えた。
あんな走りを見せつけられてもまだ悔しい思えたんだ。
……なら、アタシはまだ勝てる。
あんなキラキラを捕まえられるチャンスはまだある。
必死に努力して、諦めずに前を向き続けて、あの輝きに手を伸ばし続ければきっと。
あんな風に輝けられるはず。
「──ナイスネイチャさん、ライブの準備お願いします」
「はーい、今行きまーす。……それじゃ、行ってくる!」
席を立ち、チームのみんなを見渡す。
「うん、観客席で見てるよ~」
「ウイニングライブ、楽しんできてください」
「ターボも見てるぞ! ネイチャ!」
「それでは、行ってきてください。貴方のライブはそれこそ誰にも負けませんから」
……なんだそれ、3着ばかり取ってるからライブは完璧だとでも言いたいのか。
だけど、そうだね。
ウイニングライブに参加した回数だけなら今回の有馬記念に参加した中でも1番。それも、去年と一昨年と同じ舞台でさらに三回目の3着。私にとってもはやおなじみだ。
なら、テイオーにもハヤヒデにも負けない最高のパフォーマンスが出来るはず。
そうすればきっと、あの輝きにも触れられる。そう、思うから。
まだ誰も居ないステージ、こんな1着は大して嬉しくない。
だけど、ライブでの1番は譲らない。そんな決意を胸に、ハヤヒデとテイオーの到着を待つ。
数分も経たずにメンバーが揃った。テイオーが1番最後だったのは少し意外だったけど。
打ち合わせも早々に終わり、あとは幕が上がるだけ。そこから先は最高のステージの始まり。
「──レースでは負けたが、ここでも負けるつもりはない」
「なーに言ってるんですか。アタシだって負けるつもりはないんだから」
「ふふん、ボクってば最強のウマ娘だから。──ここでも勝つから、絶対に」
そうだ。アタシだって負けたくない。負けたくなかったからここに居るんだ。
──だから、今までで1番のパフォーマンスを。
みんなに、今まで応援してくれたファンの為にも、チームの仲間たちにも。
そして、自分自身の為にも。
……そうだ、投げキッスなんてどうだろうか。きっと、盛り上がるに違いない。
そんなことを思いながら少し笑う。
テイオーも、ハヤヒデも笑っていた。
幕が上がる。
さあ、ここからは最高のライブのお時間。
「──きっと、その先に行けるから。絶対に……!」
──後日、カノープスの部室にて。
ライブ映像を見せられて顔を真っ赤にするナイスネイチャの姿があったのは言うまでもない。
ネイチャで三冠取りたいのに中々勝てない。
差しネイチャの楽しさは尋常じゃないのでおすすめです。