私は今、初めて自分の意思で、人間を殺そうとしてる・・・化け物の姿をした人間なら何体も殺してきたけど、生身の人間は多分初めてだ・・・その理由は
「退屈・・・ずーっと、同じ部屋に閉じ込められて、ご飯も録に与えられないし、拉致してきた人達を人間と思ってないのかなぁ?それとも、自分達は素晴らしい事をやってきた!なのにお前のせいで全てが無に還った!とか思ってるのかなぁ?ねぇ?どうなの?おじさん」
私は身の丈より大きい槌をおじさんに向ける。すると、おじさんは唸りつつ、こう吐き捨てた。
「化け物め・・・」
私はそれ以上言葉を続けさせない為に、槌をおじさんに振り下ろす。辺りには血が飛び散り、私の頬にも少し返り血が付いた・・・
「そう、私は化け物だよ?・・・けどおかしいよね?その化け物を作った本人がそれを言ってるんだから!こうなる事を予想してないんだからさ・・・どれだけ頭が良くても、それを上回る暴力には逆らえないってねぇ!アッハハハハハハハ!!!・・・はぁ・・・」
私は、頬の返り血を拭い、ペシャンコになったおじさんの横を通り、部屋の奥に行く。そこにあるのは今までの実験内容と、論文、そして、私達、実験体を閉じ込めていた隔離施設。あそこには結構な人数の実験体が居たのだが、殆ど人の形をしていない。多分、私も実験を続けていたらあぁなっていたのだろう・・・そう思うと、昔の私ならゾッとしたのかな?けど、今の私は・・・
「そんな姿になっちゃったらもう人の住むところじゃ生きられないね・・・どの道、このままここに居ても王国軍の兵士達に見つかって殺されちゃうんだろうけど・・・けど、そんなの嫌だよねぇ?拉致されて、実験された挙句、化け物と称され殺される?そんなの願い下げだよねぇ?怖いよねぇ?憎いよねぇ?復讐したいよねぇ?自分達をこんな目に遭わせたこの世界に!・・・え?復讐したいとは思わない?・・・?なんで?なんでそう思わないのかなぁ?この実験は魔王を倒す為に行われてる神聖な儀式?それを踏みにじったお前は悪魔?」
この人は何を言ってるんだろう?分かんないなぁ・・・分かんないけどさぁ・・・
「そんな風に思ってるなら、自分がどうなるか分かってるんだよねぇ?」
私は手に持ってた槌を先程まで話していたゴミに振り下ろす。何度も何度も・・・息絶えて、そこに居たという痕跡すら残らない様に、何度も何度も何度も・・・執拗に振り下ろす。その場にいた他の異形種には、一撃で逝ける様に、一撃で頭を潰し、脳ミソまでもをペシャンコにした。
「はぁ・・・ここはもういいやぁ・・・ん?これは・・・催促書?・・・へぇ・・・最近勇者が産まれないから、勇者を作ってしまおうという実験かぁ・・・勇者かぁ・・・どんな悲鳴を上げてくれるのかなぁ?ここの人達みたいにぎゃー!でも化け物めー!でも面白いんだけど、聞き飽きたんだよねぇ・・・催促してたのは・・・メドゥイン・・・かぁ・・・」
そこに書いてあった王国の名前、その名はかつて私が生まれ育った国の名だった。その国が催促状を出しているという事は、拉致、人体実験、人身売買等も許容してる事になる・・・
「人間って何処までも自分の利益しか考えないんだなぁ・・・」
私はそんな事を吐き捨てながらその場を後にし、近くの森に入っていった。
同時刻、とある冒険者のパーティは研究所に程近い森に現れた魔物討伐に勤しんで居た・・・
「こいつがフォレストローパーで間違いないよな?」
1人の男性冒険者がそう尋ねると、僧侶の女性が
「間違いありません、消える前にローパーの葉を採取してしまいましょう。」
と、答えた。このパーティは4人構成であり、男性2人、女性2人のパーティである。職業は、男性1が勇者、2が魔法使い、女性1が僧侶、2が盗賊と言った意外とバランスの良いパーティである・・・フォレストローパーの討伐が終わり、ギルドに戻ろうと勇者達が腰を上げた時、出逢ってしまった・・・最悪の悪魔に・・・