「それでそれで、私思ったのよ!その記事に載ってる子の二つ名が私の魔法と名前が同じだ!これは運命だ!って」
「は、はぁ・・・」
「きっと私達お友達になれると思うの!」
「そ、そうでございますね?」
目をキラキラとさせながら、自分の魔法名と同じ『トロイメライ』という二つ名を持つ人物がいることに運命を感じこれがまた
「あの、タルヴィ様・・・我々は何か、勘違いをしているのではないでしょうか・・・?」
「 え ? 」
その言葉と共に、僅かな沈黙が広間を支配した。
オロオロとタルヴィが狐人の少女――春姫を見つめ返すとブンブンとゆっくりと首を横に振られ『私ではございません・・・』と申し訳なさそうに謝罪された。
「え、じゃ、じゃあ本物の【トロイメライ】は!?」
「今は外だ」
「今は外ですね」
「今は外で調査中ね」
「今はお外でございます」
満場一致で『外にいる』と言われ、タルヴィもその他の愉快な仲間達も先ほどまでいた白髪の少女?のことなのだと理解した。
「まずその記事とやらに特徴や名前は書いてなかったのでございますか?」
「えと、『髪が腰に届くくらい』『背が低い』あとは・・・あったかな?」
「いや・・・なかったはずだ。名前の記載は・・・すまねえ、お嬢の角で記事が破れちまったからわからねえ」
「え、私のせい!?」
「いえ!ウスカリ様のせいでございます姫様!」
「はい、ウスカリ様のせいでございますタルヴィ様!」
「だいたい全部ウスカリ様のせいですタルヴィ様!!」
「ウスカリ様が悪い!タルヴィ様!」
「き、貴様等ぁああああっ!?」
目の前ではじまるトンチキ騒ぎを遠目に【アストレア・ファミリア】の面々は、一足先に調査に出た少年が早く戻ってくることを願うばかりであった。
「ベル様1人で大丈夫でしょうか?」
「あいつが『大丈夫』と言ったんだ。大丈夫だろう」
「あの子も少しずつ男の子するようになったのよ、成長だと喜びましょう」
■ ■ ■
森の中、泥のようなスライムのような怪物を倒しながら進む人の影が1つ。
「やっぱり
目深にポンチョのフードを被り、リューの覆面で口と鼻を覆い、視界に入った怪物を槍で薙ぎ払い奥へ奥へと進んで行く。
「リューさんが『念のためつけていなさい』って覆面くれたけど・・・正解だったかな。進めば進むほど禍々しいし、吐き気がする。あとは・・・空気が悪い。空は・・・ギリギリ見えるから大丈夫かな?」
かつて泉だったはずの場所は確かに沼になっており、ボコボコと音を立てて泡を吹いており、物を投げ込んでみればそれを獲物と勘違いしてか飛び出してくる始末。
「沼そのものが怪物だけど・・・何だろう・・・進めば進むほど、強さが違うというか・・・」
沼を辿るように進んでしばらく、今までとは少しだけ違った反応を感じて少年は『誘引』を試してみた。すると現れるのは、今まで現れていた小型ではなく大型。でかい上に臭く、動くだけでそのヘドロのようなものが飛び散っていた。
『ォオオオオオオオオオオオオッ!』
「いやいやいや・・・・」
少年はそのあまりの臭さに『あれ、実はこれ、姉たちに押し付けられたんじゃね?汚れたくないから押し付けられたんじゃね?』と少しばかり疑惑の念を抱いた。槍を握り締め
「アルテミス様・・・あとで綺麗にしますから許してくださいっ!!」
全身泥まみれになって横たわる女神アルテミスを脳裏に浮かばせ少年はヘドロの怪物へと突撃。
1、
『ォオオオッ!?』
2、
『ォアアアッ!?』
3、
『――――ッ!!』
槍撃による三段突きによるオーバーキル。
聖火が泥を焼き、修復を許さず怪物は消滅する。
ベルは飛び散った泥を槍を回転させて払い除け、考察。
「感触は・・・・うーん・・・スライムと戦ったことがないからわからないけど、それなのかなあ?ゴブリンとか普通の怪物とは違うというか、けど、液体を斬ってるとも言いがたいというか。手ごたえがあるようなないような?沼そのものを聖火で焼けたらいいんだけどさすがにそこまでできるならスキルの範疇越えてるし・・・いや、
『おいおいマジかよ・・・・君ってやつは、神が嫌いなんじゃなかったのかい?おもっくそ神に影響されたスキルでてるじゃないか・・・あれかい?君はツンデレってやつなのかい?』
よくわからないことを、【月休2日のバイトのプロ!!】というタスキをかけながら『じゃが丸君』の売り子をする女神ヘスティアが言っていたことをふと思い出す。『つんでれ』とは何なのか?と聞いてみれば
『あー・・・そうだなあ・・・アフロディーテにでも会うことがあればわかると思うぜ?あの子は歩く『ツンデレ』みたいなもんだし?『べ、別にあなたのためにじゃが丸君を買いに来たわけじゃないんだからネ!』ってさ』
神様達は時々、仲がいいのか悪いのかよくわからないことを言う。治療院でお手伝いをしている時も
『ねえ聞いた?この間、ディアンケヒト様とミアハ様が一緒に飲みに行ってたらしいわよ!?』
『嘘でしょ!?天変地異の前触れじゃない!?』
『理由は!?』
『兎君が治療院に来て患者が激減したから!』
『『『あ~』』』
『「言っておくが、借金の免除だけはせんからな!・・・また自棄酒に付き合え!」って言って帰って来たらしいわ』
『仲がいいのか悪いのか・・・』
( あれは僕が悪いのかな・・・ )
「ええっと・・・本来『魔石』がある位置・・・胸当り?をついてもそれっぽい感触はなし。というか、
ボコボコ、ボコボコ、と音を立てる沼の前で呑気に一人口を動かす少年。
ギルド長が寝込んだ原因は自分にあると言うのに、その原因が公開されてないがためにエルフたちは『
「『誘引』しながらもう少し奥まで行ってみようかな。何かわかるかも。進めば進むほど強くなってるし。」
そうと決まれば膳は急げといわんばかりに、『誘引』『誘引』『誘引』の連発。
振り向けば泥の津波と言わんばかりの大型の怪物達が追ってくる。
視界に行き止まりが見えたあたりで振り返り、唱える。
「―――【
■ ■ ■
「臭い」
「とても臭います、ベル」
「一体どこで泥んこ遊びをしてきたのかしら・・・」
「すごくその・・・自然な?臭いをされておられます・・・」
「ひ、ひどい・・・あんまりだ・・・」
数分前、【沼の王】を倒す方法を考えていた際
『ベルの【
『却下よ輝夜。それだと【生命の泉】ごと蒸発しかねないわ』
『『『『オラリオやべぇ・・・』』』』
『では、【サタナス・ヴェーリオン】では?』
『―――【沼の王】そのものには有効かもしれないけれど、出てこないことにはねえ』
ガチャ。
扉が開いた音。
あ、帰って来たんだよかったよかった。もしかしたら攻略法とか閃いてるかも?何だかんだあの子はできる子だし?と思っていた矢先、開いた扉から風と共に異臭が入り込み全員が鼻を抑えた。さらには、少年の姿。泥こそ消えてはいたが、臭いだけは落ちなかったらしく本人もまたあまりの異臭にフラフラしていた。
『た・・・ただいま・・・おえっ』
ウスカリに風呂場へと案内され、臭い消しまで渡され、それはもう長いこと丹念に女神アストレアが必死に『ああ、今までの苦労が・・・』などと嘆きつつも洗い上げすっきりとして広間に戻ると全員が消臭作業に明け暮れていた。
「その・・・えと・・・すいません・・・」
「すごいわ、今までこんな臭いを持って来た人いたかしら?ウスカリ、どう?」
「いえ
「俺は目が見えないんだ。それ以外の器官まで潰されたらたまったものじゃねえんだが・・・?」
「うぐっ・・・・」
「ベル、報告を」
「はいっ、リューさん」
歓迎ムードはどこへやら『きったねえもん持って帰ってきやがって』的な感じになってしまい少年は非常に申し訳なさそうに正座していた。心なしか、小柄な体がさらに小さく見えていた。
「えと、沼そのものが怪物みたいなもので奥に進めば進むほど大型になって強くなってるみたい・・・・なんですけど・・・えと、リューさん、質問、していいですか?」
「? どうぞ」
「
「―――いえ、完全にないと言うわけではありません。繁殖によってその『魔石』を少しずつ、少しずつと分け与える形になるためその『魔石』は小さくなっていきますが完全にないとは言い切れません。」
「なぜそんなことを?」
「えと・・・行き止まりが見えるところまで大型を複数引き連れて向かってみたんだけど、どれも手応えがあるようでなかったから」
「そりゃそうさ。お前さんが倒したのは所謂触手、雑兵の類だ。【沼の王】だけが『魔石』を持ってるんだが・・・」
「なら、たぶん1つだけ反応してたやつかな・・・」
「何?」
騎士が慌しく地図を持ってきて広げると、ベルは自分が進んだ方向を北へ北へとなぞっていく。そこにいるものだけが唯一、ベルに反応をしめしており他の雑兵に関しては『誘引』しなければ出現すらしなかったという情報も追加した。
「この場所は・・・!ベルテーンに言い伝えられている【生命の泉】、その『源泉』の位置と合致する!」
「ってことは・・・敵の核はやはり『源泉』の底に隠されてるってことか?」
「ベル、お前では倒せなかったのか?」
「【
「ふむ。となると・・・」
「タルヴィさんの『毒の結界』とやらが必要ということでしょうか?ちなみに、彼女のレベルは?」
「永遠に1だ。」
「はい?」
黙って見守っていたヴェーラがタルヴィのレベルについて、説明をしていなかったと口を開いて説明する。
曰く、
・タルヴィは成長できない。
・血の配合で造り出す弊害で巫女達は必ず『魔法』と一緒に『スキル』を発現させる。
・効果は【成長途絶】。
・タルヴィの能力は一切動かない。【ランクアップ】も無理。
・害にしかならない『レアスキル』。
・故にタルヴィは過剰なまでに守られてきた。
とのこと。
「では正直者のヴェーラ。仮に、タルヴィちゃんが『ランクアップ』できたらどうかしら?」
「・・・・?」
「その【沼の王】を倒せる?倒せない?」
「そりゃぁ・・・いや、わからねえ・・・。結界の効果範囲が広がれば源泉を『掌握』できる、かもしれねえ。威力が上がれば【沼の王】の組成を狂わせられる、かもしれねえ。」
「じゃあ、2段階、『ランクアップ』させましょう。確実性を増すために。国の防護はベルの魔法でしてもらうから大丈夫でしょうし。」
「いやいや、まて、『ランクアップ』させるってどういう意味だよ」
「春姫の魔法の効果『
「・・・・・わからねえ、『未知』だ」
「そう。なら、やりましょう」
ヴェーラが目を見開いて固まり、アストレアが少年と少女に指示を出すと魔法の登録作業を開始。騎士達も慌しく動き回り、することがないタルヴィは輝夜達と静かに茶を啜った。