旧・兎は星乙女と共に   作:二ベル

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ロキ「エニュオって誰や」
ヘルメス「誰だい?」
ディオニュソス「誰なんだろうね?」
アストレア「・・・・誰なのかしら」


18階層にいる大まかな人物
・リヴィラの愉快な皆さん
・アミッド(迷宮の宿場街にて登場しているため)
・アスフィ
・【タケミカヅチ・ファミリア】
・アリーゼ、ベル




迷宮の宿場街(ダンジョン・ローグタウン)
ローグタウン


 

 

 

「―――わ、私は確かに【ディオニュソス・ファミリア】だったのです!副団長です!!」

「は、はぁ」

「だというのに、いつの間にか私は【ペニア・ファミリア】にっ!!そもそも、ペニアとは誰ですか!?」

「知りませんよ!?」

「ステイタス更新の直前に、ディオニュソス様と葡萄酒(ワイン)を飲んで・・・・ああぁぁぁ!」

 

 

頭を抱え、『何が一体どうなっている!?』と混乱する目の前の妖精に、少年は『うっわーやっべー』というような何ともいえない顔で見るしかなく、というか、『どうしてステイタスを更新する時にお酒を飲むんだろう、手元が狂ったらどうするんだ』という疑問が浮かび上がって仕方がなかった。

 

「そもそも、どうしてステイタスを更新する時に飲酒なんて・・・・」

「そうだ、それなのです・・・! 今思えばおかしいんです。今までも仲間達が殺される事件があった!『27階層の悪夢』のことではなく、街中でです!!彼女達は首をへし折られていたそうですよ!?」

「ひえっ」

「そんなことが可能なのは、Lv2以上の冒険者・・・だがしかし、我々が他派閥に喧嘩を売ったなどという話も聞いたことがありません!!そしてその葡萄酒を飲んだ後、私はたまたまその時酔いが浅かったために何か違和感を感じて混乱を起こし・・・」

「結果、偶然見回りをしていたアリーゼさんに保護されてここにいる・・・と」

「ええ、その通りです。私は一体どうすれば・・・・いえ、恐らくは私だけではないのでしょう。ああ、考えただけでも気持ちが悪い!!恩恵を偽り、この身を、この心を弄んでいたなどと・・・!!」

「お、落ち着いてくださーい!?」

 

 

両肩を抱き、腕を摩る彼女を必死に少年は宥め、『お風呂沸いたみたいだし、入ってきたらどうですか?』と促し、彼女もまた『そうですね、少し気分を変えてきます』と狐人のメイドに案内されていった。それにすれ違うようにして、ヘトヘトと玄関を開けてアリーゼが帰還した。

 

「た、ただいまぁ・・・」

「お、おかえりなさい、アリーゼさん」

「あぁ~ベルぅ~癒してぇ~」

「むぎゅぅっ!?」

 

アウラと話を終えて、長椅子(カウチ)に、輝夜の隣に座る少年へとアリーゼはダイブ。少年はその豊かな胸に顔を埋め、そのまま押し倒され、輝夜を巻き込んで倒れた。

 

「・・・・重いんだが」

「むーーむーむーーー!!」

「うへぇ~ベルの髪はとっても素敵ね~」

「お、おい!団長!?おいっ!!」

「むー・・・・」

「あれ、ベル?」

「団長・・・とりあえず退いてはいただけませんか?ベルも美女に挟まれてさぞ嬉しいことでございましょうが、もうすぐで天に昇ってしまいますよ?」

「あ、えと・・・すいません」

 

 

漸くアリーゼが離れると少年は目を回しており、輝夜はまだ若干機嫌が悪いのか少年をぽいっとアリーゼへと首根っこを掴んでパス。それを受け取ったアリーゼは申し訳なさそうに少年に膝を提供した。

 

 

「それで?収穫は?」

「うーん、微妙ね。ただ、ダイダロス通りに行ってみたんだけどいなかったわ」

「いない?」

「ええ。ペニア様、『武装したモンスター』の時には出て行けって言っても聞いてくれなかったのに、今じゃダイダロス通りをひっくり返しても出てこないわ。というか、いないのよ」

「では、神ディオニュソスは?」

「それに関してはいたわ、普通に。それで『眷族がまた殺されてしまった。有益な情報があれば教えて欲しい』って言われたわ。とりあえず『何かあれば、伝えるように心に留めておきます』とだけ言っておいたわ」

「確か・・・神ロキ、神ディオニュソスは会合を定期的にしているんでしたっけ?稀に神ヘルメスがいたと聞きましたが」

「ええ、アストレア様も一度誘われたけどベルに止められたらしいわ。正解だったかも」

 

少年の頭を撫でながら、目の前の机に置かれている恐らくは少年のだろうカップに入った紅茶を淹れて口にして言うアリーゼに、もうその光景にも慣れてしまったのか特段咎めることもなく当然の様に会話する輝夜。【アストレア・ファミリア】において、『怪物祭』から始まった一件の黒幕はおおよそ神ディオニュソスであると今回のアウラの件でほぼ確定してしまった。しかし

 

「しかし、だとしたらあの神はわざわざ『嘘』をついて小芝居をしていると?言ってはなんだがあの貴族風な神は、エレボス以下だろう?それに、神ロキにすぐに『エニュオ』だとバレるのでは?」

「私もそれには同意見ね。エレボス・・・・いえ、リオンを泣かせてた時は『エレン』って名乗っていたのかしら?まぁ、あの神様ほどではないと思うわ。」

「では・・・素面(しらふ)ではない、と?」

「私はそう思うわ。あとは・・・そうね、アウラが言っていたのもそうだけど葡萄酒(ワイン)が気になるわ。『武装したモンスター』の一件の時に会った時、ペニア様、手に持ってたし・・・何かある気がするのよ」

「・・・・忍び込むか?」

「難しいわね。輝夜、そういうの得意だっけ?」

「いや、私も無理だ。ベルのスキルをすり抜けて気付かれないようにはできるが・・・侵入となると別だ。」

「ううーん・・・アリーゼさん・・・?」

「あ、起きた?ごめんねぇベル」

 

目が覚めたベルがアリーゼの顔を見ようと仰向けになると、アリーゼは前髪を掻き分け顔を覗かせベルの額に手を優しく置いた。少年は帰って来た姉の顔を見て頬を綻ばせほんのり汗の香りがするが別に嫌悪感などなく、背中に腕を回して抱きついた。

 

「・・・・難しい話?」

「まあ、難しいといえば難しいわね。・・・・ねえ、ベル?」

「ん?」

「貴方の知り合いに、『侵入』とかが得意そうな子っていたりする? あとはお酒に詳しい子とか」

「んー・・・・お酒なら、リリだけどリリはお酒嫌いだって言ってたしなあ・・・・頼めば何とか・・」

「ああ、あの子確か元【ソーマ・ファミリア】だったわね」

「侵入・・・できるのかはわからないけど、命さん、できそう」

「【タケミカヅチ・ファミリア】のあいつか。ふむ・・・あいつなら可能かもしれん」

「じゃあ命ちゃんが引き受けてくれるなら、あの子にもしもがあった時すぐに救援できるように周囲に隠れておく必要があるわね」

「何をするの?」

「ちょっと葡萄酒(ワイン)を盗ってきてほしいのよ」

 

 

□ □ □

 

「い、いただきます・・・」

 

【アストレア・ファミリア】の食卓に、未だ頭の整理がついていない少女が混じっていた。

何なら、都市でそれなりに有名な白兎の浴衣姿に頬を染めてチラチラと見ては『駄目ですこのようなこと!私は他派閥の者・・・いや、私はそもそも誰の眷族ッ!?』と醒めていた怒りの炎が再び燃え上がり、エルフにあるまじき自棄食いに走っていた。

 

「大丈夫かなあの人」

「放っておけベル。お前のこうも無防備な姿を見て興奮しているだけだ」

「そんなに僕って無防備?」

「良いことじゃない、身内なのに警戒されるほうがショックよ。あ、そうだアストレア様」

「・・・なにかしらアリーゼ?」

「彼女は暫く、うちで預かるってことで構わないですよね?」

「それは構わないけれど・・・でも、狙われているのではないの?」

「それに関してはライラに死体を偽造してもらいました。私が彼女を助けた時に魔法を使ったので、それに『巻き込まれた』ということで焼死体を」

「・・・・神に嘘は通じないのよ?」

「たぶん、問題ない気がするんです」

「あの子を新たに眷族にするつもりはないわよ?なんと言うか、合わなさそうだし」

「はい、それで構いません」

 

 

なんだかおっかない話がチラっと聞こえたが、少年は聞こえなかったことにした。

要は保護したエルフさんの身の安全のために、エルフさんには死んだ事になってもらうということらしいのだ。・・・すげぇや【アストレア・ファミリア】そんなことまでできちまうなんて!!

 

 

「ベル、口が汚れているぞ」

「あ、ごめんなさい。」

「いいかベル、あのエルフには手を出すな、いいな?」

「輝夜さんは僕を信用してない・・・?」

「しているが・・・念のためだ」

「僕、そんな節操なし?じゃないよ?」

「ああ、そうだ。お前はそんな男じゃないことくらい、よく知っている。すまない、野暮なことを言ったな」

「お詫びに今日一緒に寝て良い?」

「・・・ああ、いいとも」

 

 

今日は左隣に座っている黒髪の姉とそんな約束をし、頭を撫でられ心地良さそうに瞳を細める。

その光景を見て『あぁ~』となるのは他の姉達で、『っ!?』となるのは居候のエルフの少女だ。

しかし、そんな少女の戸惑いなど知ったことではないのだ。ここは【アストレア・ファミリア】女傑たちのファミリア。一匹の子兎を愛でるファミリア。年季が違うのだ、色々と。

 

 

「それでアストレア様、ディオニュソス様と同郷の神様って知ってますか?聞いて回りたいんですけど」

「あら?彼が怪しいってこと?」

「今のところは。」

「なるほど。ええっとヘスティアやヘファイストス、デメテル、ヘルメス、アポロン、アレス、アルテミスとかかしら・・・?」

「ふむふむ・・・」

「まさか貴方連日動き回るつもり?倒れるわよ?」

「いえ、明日はベルとデートなので」

「あら?そうなの?」

「たまには一緒にダンジョンに行こうと思って。まあとりあえずは無理しない程度に聞いていきます。さすがに、アポロン様とかオラリオにいない神様には聞けませんけど」

「そう。まあ・・・無理しなければ私としては言うことはないわ。」

 

 

■ ■ ■

 

 

「なるほど、それで自分に白羽の矢が立った・・・と」

「ええ、他派閥の子に危険な真似させるのもどうかと思うんだけど・・・何か問題が起きた時は助けるから、手を貸してもらえないかしら」

 

 

それは翌日のこと。

アリーゼとベルはバベル前のベンチで【タケミカヅチ・ファミリア】の一団がやってくるのを待っていた。やってきたところに声をかけ、一団の中の1人、ヤマト・命に【ディオニュソス・ファミリア】にある酒蔵より葡萄酒(ワイン)を数本拝借してほしいと依頼していた。

 

 

「ううむ・・・わかりました、ベル殿には春姫殿の件と温泉の件で借りがあるので、やってみせましょう!」

「いいんですか?本当に?」

「ええ、問題ありませんよ。自分、『忍』ですから」

「! 実在したんですか、シノビ !? 」

「ええ、汚い忍であります!」

「じゃあその、後日、お願いするわ。周囲では私達が隠れているし魔道具も提供するから安心して」

「はい!」

「それじゃ、せっかくだし一緒にダンジョン行きましょうか!」

「おや、今日はお2人はオフだからあの()()殿()()()()()()に座っていたのでは?」

「貴方達を待っていたのよ。貴方達こそ、今日はやけに武装を手入れしてきてるみたいじゃない?」

「アリーゼ殿、今日か明日はゴライアスの再出現ですよ?我々も漸く自分達だけで18階層まで行ける様になったのです!であるならば、階層主戦にも参加したい!」

 

極東の冒険者達はやる気に満ちていた。

少年はふと、『そういえば輝夜さんが命さんたちをシゴキに行って来る』と言って出かけることがあったなーというのを思い出しその成果が今の彼等なのだと思うとやっぱりファミリアの姉はすごいんだなあと感慨にふけっていた。

 

 

■ ■ ■

 

ダンジョン18階層

やはりというべきか、ベルと行動を共にしているお陰で戦闘はなくピクニック感覚で18階層へとあっという間に到達。彼等彼女等はやはりというべきか、『モンスターに無視される』という妙な感覚を何ともいえない顔で味わっていた。

 

 

「ふと思ったのだが、ベル・クラネル聞いてもいいか?」

「? どうしたんですか、桜花さん?」

「お前はこうもモンスターとの遭遇率・・・いや、戦闘数が少ないのなら、経験値(エクセリア)を稼ぐのも難しいのではないか?アドバイザーがいるなら聞いているだろうが『適正レベル』というものもあるはずだ」

「ああ・・・それは、『誘引』でモンスターを呼び寄せて戦うか、適正階層より下を潜ったりとかですね。」

「ちなみに現在の到達階層は?」

「27」

「・・・・・はぁ。」

「桜花さん、どうして溜息を?」

「いや、お前が噂になっていた『階層主に突撃した阿呆』だと今、理解した」

「うっ」

「あらベル、やんちゃね~その前は『モス・ヒュージ』の強化種に突撃したのに」

「はうっ、で、でも!24階層辺りからは僕に気付くモンスターもいるから、こうして安全にはいけないんですよ!?」

「そういうことじゃない」

 

そもそも『モンスターと1対1で戦って勝利する』ではなく『多対1』を当然としているのがおかしいのだ、と桜花は少年に呆れ顔で言う。しかし少年にとってはLv1の頃からこれなのだから仕方がない。仕方がないのだ。

 

一団は、『とりあえず貴方達テント持って来てないなら、宿探すわよ!テントのことを忘れるなんて貴方達もまだまだね!』というアリーゼの発言により恥ずかしながらも宿を探す事にした。

 

ダンジョン18階層【迷宮の楽園(アンダーリゾート)】に存在する冒険者達の街リヴィラ――

『世界で最も美しい「ならず者達の街(ローグタウン)」』とも呼ばれる、この街には絶えず活気と喧騒がこだましていて

 

「あぁん!?ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ!?」

「ふざけるも何も、それが今の相場だ。それ以上はビタ一文出せねぇなぁ」

 

血気盛んに、賑わっていた。

 

 

「あー良い子のベルはああいうの見ちゃだめよー、ほら宿探すわよ、宿ーあぁ~良い宿はないかしら~」

「アリーゼさん、何も腕を組まなくても」

「いやー。せっかく久しぶりに2人なんですもの、私だってベルが欲しいわ」

「【タケミカヅチ・ファミリア】の人達もいるから2人きりじゃないですよ?」

「別に、私達はゴライアスを倒しに来たわけじゃないし?いいのよ、その辺は・・・ってあれ?」

「どうしたの?」

「いや、ほら・・・見覚えがある髪だなーって」

 

アリーゼの指差す方向に視線を向けると、見覚えのある水色の髪をした女がおりこちらもまた何か言い争っていた。

 

『ふざけるのもいい加減にしなさいっ!』

『買う気がねーなら帰った帰った。こっちは別に売れなくても構わねーぜ?』

 

「あれ、この声・・・・モールスさん?」

「ボールス、よベル。それだと何処かの暗号?みたいになっちゃうわ」

 

行ってみましょ、と腕を組んだまま連れ歩かれ、言い争っている2人の元へと向かう。

そこにいたのは、リヴィラの頭目であるボールスと、普段とは違った露出が多めな格好のアスフィだった。

 

「どれだけ馬鹿げた値をつける気ですか! 相場の三倍以上でしょう!」

「欲しいやつには高く売る。リヴィラ(ここ)の作法は知ってんだろ?」

「それにしては法外でしょうに!いったい私が何をしたというんですか!」

「何してるんですか、そんなに騒がしくして」

「・・・・ベル・クラネル?それにアリーゼまで」

「おう【夢想兎(トロイメライ)】、水晶飴(クリスタルドロップ)ならねーぞ?って・・・げっ【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】・・・【アストレア・ファミリア】かよ!?な、ななな、何もやましいことはしてねえよ!?なぁ!?」

「リヴィラはとってもいい街です!」

「おい兎! 今はそれ、やめろ!」

「へえ、あんた私のベルに何か教えたわね?」

「ひぃ!?か、勘弁・・・ひいやあああああああああああああ!?」

 

 

哀れな男の悲鳴が、木霊する。

リヴィラは今日も、賑やかだ。




・18階層
・ゴライアス
・人工迷宮
・神




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