階層中央付近の大草原において、漆黒の巨人が暴れまわっている。凄まじい叫び声はリヴィラにまで届き、
「―――ボールス! ボールスッ、いますか!?」
「ア、アンドロメダ!? お前、一体どこから現れやがった!? ていうか、今、空から・・・?」
「んなこたぁどうでもいいんです! ボールス、街の冒険者とありったけの武器を集めなさい、あの階層主を討伐します!」
『リヴィラの街』の冒険者の中でも実力者、買取所の主人にアスフィは半ばヤケクソのようになりながら指示を出す。眼帯をしている大男の主人は、慌てて唾を飛ばした。
「と、討伐ぅ!? 馬鹿言ってんじゃねえよアンドロメダ、オレ等の財産をはたいてまであの階層主を相手にする必要がどこにある!? こんなもん、逃げるが吉だ!」
「退路はもう絶たれました! 南の洞窟は崩れ、私達は事実上この階層から脱出不可能です!」
「【ガネーシャ・ファミリア】はどうしたよ!?」
「現在暴走中の階層内のモンスターに対処していて階層主にまで手が回りません!」
口答えするなとばかりに叫び返すアスフィの反論に、目を見張る眼帯の店主。土煙が上がっている南端の方角へ振り返ると、彼はすぐに愕然とした。
「あれが通常の
アスフィが視線を飛ばす方角、闇と同化したような黒いゴライアス。その太い腕を振り回し、今もなお地響きを引き起こす巨人の脅威は、ここからでも十分に伝わってくる。
「これは憶測ですが、今の階層の幽閉状態とあの
「・・・ちくしょうめ」
アスフィの説明に、観念したように大男はうなだれた。
間を置かずその凶暴な人相を振り上げ、腕の動きとともに大声を張る。
「話は聞いてたな、てめぇ等ァ!? あの化物と一戦やるぞぉ! 今から逃げ出しやがった奴は二度とこの街の立ち入りを許さねえ!」
号令が下され、他の者も腹をくくったようだった。街の復興作業をしていた冒険者達も走り出し、武器を持って続々と大草原へと向かっていく。にわかに準備で忙しくなる周囲を見渡した後、アスフィは広場の手摺に歩み寄った。
「私も行きますか・・・!」
巨人を一度見据えたあと、手摺に手をかけ、彼女はためらいなく崖下に飛び降りようとして―――
「あーすーふぃーぃー!!」
「んぬぁっ!?」
アリーゼに飛びつかれた。
ズザザザァ・・・!とアスフィは顔面から地面を滑った。
それを『うわぁ・・・』という顔で見る少年と聖女。
「ア、アリーゼ!?急に飛びついては危ないではないですか!?というか、いたんですか!?とっくに帰っているとばかり・・・!」
「こっちはベルとデートのつもりで来てたのよ!?せっかくアミッドちゃんも入れて3人で水浴びしようとしたら、こんなことになるし!」
「え、あの、私を入れないでもらえませんかアリーゼさん?」
「と、とりあえず離れてください!あ、ちょっ、どこを触っているんですか!?」
「スキンシップよスキンシップ!それより、状況は!?」
セクハラをしてくるアリーゼを何とか引き剥がし、アスフィはボールスにしたように状況を説明した。
「アミッドさんアミッドさん」
「何ですかベルさん?」
「綺麗な女の人同士がイチャイチャしてます・・・」
「焼きもちでも妬いているんですか?ベルさん?」
「本拠でもお姉さん達がお胸触りあってることあるけど、挨拶なんですか?女性限定の」
「そんなわけないでしょう」
何か言っている気がするがアスフィは無視を決め込んだ。
戦場である大草原では地獄絵図が広がっており、逃げ遅れた者からその太腕に殴り飛ばされ宙を舞う。直撃を避けたところで結果は同じで、人の体が紙屑のように吹き飛んでいった。
それを傍目に、アスフィは一度ベルに目を向けると顔色が良くない事に気がつきアリーゼをもう一度見て
「何があったのです。アレは何です!? 私は・・・いえ、アリーゼ、貴方は知っているのではないのですか!? そこの少年と何か関係があるのでは!?」
そのアスフィの声にビクッと肩を揺らす少年。
アリーゼは目を閉じ、すぐにいつもの様に笑って見せた。
「いいえ、ベルは関係ないわ。ベルは悪くない、ただ悪ーい神様がいたってだけよ」
「―――神? 神と言いましたか?」
「ええ、言ったわ。」
「どこから?」
「あら、私達はその『場所』を知っているじゃない」
「――――はぁ。わかりました、もう何も言いません。しかし・・・」
「ん?」
「Lv.6であるアリーゼには、とことん働いてもらわなくてはなりませんよ。」
「そうでしょうね、わかってるわ。」
2人は18階層の東端を、『出入り口』がある場所を見つめて小声で
「彼は狙われているのですか?」
「似たようなものかしら」
「まずくないですか?」
「うん、まずいわ。何とかしてよ、アスえもん」
「それ、やめてもらえません?」
「空を自由に、飛びたいな~はいっ♪」
「『
などと現実逃避じみたやり取りをした後、アスフィはすぐに飛び立った。
そのやり取りが何を意味するのか、見ているだけの2人にはよくわからなかったが、アリーゼなりの『緊張の解し方』なのだろうと察した。飛び立ったアスフィを見送ったアリーゼは再び優しげな顔になってベルの元にやってきて頭に手を乗せてくる。
「アミッドちゃんは怪我人の手当てをお願い。【ガネーシャ・ファミリア】が周囲のモンスターを討伐してくれてるから、護衛もしてくれると思うわ」
「ええ、もちろんです」
「アリーゼさん、僕は?」
「ベルは・・・」
アミッドと一緒にいさせるべきだろうか?『うあああああっ』と絶叫が次々に打ち上がる中、思考するアリーゼに少年は抱きついた。
「ベル?」
「僕も・・・一緒がいい」
「?」
「アリーゼさんと、一緒がいい。置いていかれるのは、嫌」
「・・・・体は、平気なの?」
「うん・・・・大丈夫。」
少年の瞳を見つめてみるも、とてもいつものような快調そうには見えなかったがそれでもその瞳に力が篭っているのを感じてアリーゼは一度、深呼吸をして微笑みを返した。
「わかったわ、ベル。一緒に戦ってくれる?」
「―――はい!」
「よしっ、じゃあまずはベルは私の魔法を登録したあと、アミッドちゃんをシャクティのところまで連れて行って頂戴!その後すぐに合流!」
「はいっ!」
2人は魔法の登録作業をそそくさと済ませ、アリーゼはすぐに崖から飛び降りて周囲のモンスターを蹴散らしながら
「―――え」
「えと・・・行きましょう。」
「あの、何故、抱きかかえて・・・?」
「いやでした?『お姫様抱っこ』は女の浪漫ってアリーゼさんが言ってたんですけど」
「いえその・・・ベルさん、本当に大丈夫なんですか?無理、していませんか?」
「すこし頭がぼんやりするけど・・・大丈夫です。僕は、大丈夫。寂しい夢を見ただけだから」
「夢・・・?ベルさん、貴方は・・・」
『お義母様が本当に死んだと、理解できているのですか?』、そう少年を見つめながら言おうとして聖女は一気に体が浮遊感に囚われたことで言葉を失っていた。
「え」
あろうことか少年は聖女をお姫様抱っこしたまま、アスフィ、アリーゼのように崖から飛び降りたのだ。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』
「いいいいやああああああああああああっっ!?」
こっちは散々あなたを心配しているのに、扱い、酷すぎませんか!?と必死に訴えるように聖女は少年にしがみ付いた!
しかし少年はそれについてはよくわかっていないのか表情をとくに変えることなく、抱えている腕に力を込めて聖女を落とさないようにより一層抱きしめた。
『ちがう! そうじゃない! もっと抱きしめて! ではありません!!』
そう叫びあがりたかったが、そんな余裕はなくやがて地面が見えてきて少年は聖女の声にならない悲鳴を気にすることなく木々を蹴り、ぴょん、ぴょん、ぴょんっと地面に着地し勢いそのままにダダダダ・・・!と疾走。両腕を使えないために極力モンスターとの戦闘を無視して
「【
魔法でモンスターを一掃。
危機一髪の冒険者を救助し、見覚えのある麗人を漸くみつけてスピードを落とした。
「シャクティさーん!」
「―――【
ひゅーひゅーと聖女は少年に胸に顔を埋めるようにして力強くしがみ付いていたが、そこには触れないほうがいいのだろうと大人の接し方をもってしてシャクティは少年に目を向けた。少年の身に何か起きたのか、少し瞳が淀んでいるような気がしたが特段付き合いがあるわけでもない彼女ではよくわからないことだった。
「アミッドさん、もう大丈夫ですよ?」
「ふっ、ひっ、ひぅっ・・・」
「アーちゃん?」
「『アーちゃん』って何ですか・・・おやめなさい・・・っ」
「あだ名で呼んであげると喜ぶってアリーゼさんが」
「変な教育ばかり受けないでください・・・!」
「立てますか?」
「あ、あの、赤ん坊をあやすみたいに揺すら、ないでく、ださい・・・さすがに恥ずかしいので・・・」
何だこの2人は、いつからそういう仲なんだ?といいたくなる状況を見せ付けられる【ガネーシャ・ファミリア】団長は近づいてくるモンスターを倒しながら口を開いた。
「貴様たちは、イチャつくために私のところに来たのか? 喧嘩を売っているのか?」
「「イチャついているんじゃありません!!」」
「仲良くしているんです!」
「ベルさん、あなたと言う人は、この件が終わったらお説教ですからね!?」
「な、なんで!?」
「だいたい、女性を抱えて飛び降りるなど・・・正気ですか!?」
「だ、だって・・・アスフィさんにアリーゼさんが飛び降りたら、続かなきゃいけないって、『ノリが大事』ってロキ様が・・・!」
「んぁああああああああっ!?」
少年から下ろされた聖女は、未だに飛び降りの恐怖というか感覚が抜けていないのか足をプルプルさせながら少年にしがみついて抗議するも少年は『僕、悪くないもん!』という態度。だめだ、この子ガチで悪気がない・・・!と諦めの叫びを上げた。少年はそんな聖女の背中を優しく摩ってからシャクティの顔を見て怪我人はアミッドが担当するから護衛してほしいと頼み、駆け出していってしまった。
「ベルさんには・・・女性の扱い方をお勉強させるべきでしょうか・・・?」
「貴様たちはいつからそういう仲なんだ・・・?」
「・・・・・」
「まあいい、我々は周囲で暴走しているモンスターの討伐を優先させている。団員達にも数名で護衛をさせよう、怪我人を頼む」
「・・・ええ、承りました」
■ ■ ■
散り散りとなっていく無数の小さな影に、ゴライアスは追いかけるのを止め、血のように赤い眼球を凶悪にぎらつかせ、巨人は背を軽く反る。
そして次の行動で、巨人のモンスターは口内を爆発させた。
『―――――アァッ!!』
大音声とともに放たれたのは、衝撃波だった。
最も遠く離れていた1人の冒険者のもとに着弾し、草原が爆ぜ、彼は声も上げられないまま吹き飛んでいく。糸の切れた人形の様に地をごろごろと転げまわっていく姿に、冒険者達は荒肝を拉がれた。
「は、『
『恐怖』を喚起し束縛する通常の威嚇とは違い、魔力を込め純粋な衝撃として放出される巨人の飛び道具。その効果範囲は
『オオオオオオオオオオオオオッ!』
ただでさえ周囲では階層主の叫び声によって召喚されたようにモンスター達が暴れまわっているというのにこのゴライアスの攻撃で、凍り付いてしまう冒険者が出てしまっていた。
武器を抜き応戦せざるを得ないならず者達へ、ゴライアスは冷酷に進行を再開させる。『
「―――ッ!」
「―――させるわけ、ないでしょッ!」
しかしそこへ、真っ赤な炎を纏い爆走してきた冒険者がいた。
赤いポニーテールをなびかせるアリーゼだ。彼女はゴライアスの死角、真横から突撃し、速度を上乗せした渾身の一撃――振りぬいた剣を敵の左膝へ叩き込む。爆弾でも爆発したかのような爆音が響き渡り、支柱である足を強打されたゴライアスの攻撃は、獣人の冒険者から大きく逸れた。
地面を粉砕した余波で吹き飛ぶ冒険者を脇に、18階層にとどまっていた【タケミカヅチ・ファミリア】の桜花、命が恐れを激しい表情の奥に封じ込め、アリーゼに続く。
「おおおおおおお!」
「ハァアアアアア!」
斧と刀、それぞれの得物で左膝を攻撃した彼等は、次の瞬間瞠目する。
手首を打ち抜く硬質な手応え。桜花の戦斧は刃が欠け、命の刀にいたっては刀身が折れた。強固な金属鎧をも上回る階層主の体皮に、かすり傷しか残せない。
「早く離脱しなさい! 死ぬわよ!」
アリーゼの鋭い呼びかけが驚愕抜けきらない2人の耳を射抜く。
「【聖火を灯し天秤よ、彼の者に救いを与えよ】――【
はっと体を揺らす桜花と命が振り向くと――己の左手から右手に抜けていく桜花達をゴライアスの視線は追尾し、目端を裂いた怒りの形相で睨みつけていた。巨人はぐっと腰を捻り、その極腕を大薙ぎに振るう。
「――【
それを2人の前に駆けて追いついた少年が魔法の砲撃で弾いた。
「~~~~~~~っ!?」
「ベル殿っ!?」
巻くように放たれた右腕の
「【贖えぬ罪、あらゆる罪、我が義母の罪を、我は背負おう。】」
燃えている拳を振り払い、ゴライアスは開いた口を少年に照準させる。
それを少年は、自分に照準が向けられているのを察知して走り出しながら詠唱を紡いでいく。
「【箱庭に愛された我が運命はとうに引き裂かれた。我は貴方を憎んでいる。】」
「へ、並行詠唱!? ベル殿、いつの間に!?」
「それより、あいつの魔法、あんなに威力が高かったのか?」
「た、確か普段は加減していると聞いたような・・・」
なぜ、魔法を使ってゴライアスの拳が燃えているのかと問われればそれは
「やっぱり・・・『複合起動』とは言わないけれど、可能なんじゃないかと思ってたのよね」
さすが私のベルだわ。やばいわ、マジやばば・・・と語彙力をどこかへ、
「【
そこで漸く魔法が完成する。
効果範囲はゴライアスを中心とした周囲のみ。
階層全体を包み込むことはできていないが、それでも十分な広さだ。
次にアリーゼが7Mにも及ぶ体躯の背中を瞬く間に蹴上がり、巨人の後頭部を強襲しさらに剣を振り切った反動を利用してゴライアスの頬を蹴りつけ、すぐに地上へと退避する。
「アリーゼさん!」
「ベル! すごいわ、魔法の威力、もしかして全力?」
「す、少し・・・だけ!」
「無理しちゃだめよ!」
「う、うん! それより、このゴライアスって変?」
「そうね!固いし、動作が速いわ。通常のとは違う。」
間合いを取る中、隣にやってきた少年とともにゴライアスを睨みつけて様子を窺った。
17階層に出現するゴライアスはLv.4相当。けれど現在相対している固体は訳が違う。防御力に、本来持ち得ない飛び道具の『
「あれの
「Lv.5・・・アリーゼさん、厳しい?」
「んー・・・いくらLv.6って言っても、油断はできないわねぇ」
ベルとやり取りをとぎらせることなく、アリーゼはただ1人、撃破の糸口を探し出そうとした。
「逃亡は無理。アレに背を見せたり、戦意に少しでも綻びが生じた瞬間から、とって食われるわ。」
「・・・・」
赤髪の女冒険者は少年に霍乱を主体にするように伝え、敵の脚を幾度となく連携し狙った。
『ゥゥ―――オオオオオオオオァアアアアアアッ!!』
Lv.4であるベルの攻撃とLv.6のアリーゼの攻撃はゴライアスが唯一『痛撃』と見なす威力を備えていた。特にベルが攻撃した場所は、焼け爛れ修復が遅れていた。さらに遅れて、自分の視界を飛び交う人間から小瓶が投擲され、それが頬に命中した瞬間、大爆発した。
「オオオオオオ!?」
「ちょっと、火傷だけとか勘弁してくださいよ・・・。せめてあの2人と同じくらいのダメージをですね・・・」
中層級のモンスターならば1つで爆砕してのける
( いえアリーゼはともかく、ベル・クラネルがそもそもおかしいんですけどね。 )
巨人のモンスターは『
「アリーゼ! ボールス達から来る援軍が一斉射撃の準備を行います。貴方達はゴライアスの注意を引き付けておいてください!」
「わかったわ!それじゃあ、3人で、アレの意識を分散させましょう!」
「というか、何故貴方は手加減しているんですか!?様子見ですか!?」
「危ないからに決まってるでしょ!? 私のスキル、『炎』限定なのよ!?武器のローンもあるし!?」
「だまらっしゃい!!あなたの男に出してもらえばいいでしょう!?」
「だ、駄目よ!!年下の子にそんなことさせられないわ!」
「―――格好いいところを見せればより一層惚れてもらえると思いますよ」
「わかった、やるわ!じゃあアスフィ、囮よろしくね!」
「え」
『よおおしっ、てめー等! アンドロメダが囮になるから心置きなく詠唱を始めろぉ!』
「え、ちょっ!? ―――ボォールスゥ!? 話聞いてました!?」
『聞こえねえぇえなぁぁあぁ!?』
「後で覚えてなさあああい!」
泣く泣く、強制的に一番危険な囮役を課せられたアスフィは、
「ベル。輝夜のスキルは知ってる?」
「えっと・・・【剣乱舞闘】だっけ?『装備重量が軽ければ軽いほど』っていう」
「そ。じゃあ、私のは聞いてたりする?」
「ううん、聞いてない・・・と思う」
「ふふん、じゃあ見せてあげるわ。」
「?」
「貴方の英雄の凄いとこ。」
そう言うとアリーゼは剣を両手で握り下段で構えて瞼を閉じる。
すると付与魔法の炎が一気に弱まり、けれど熱だけが上がっていく。
次にはもやもやとした歪み・・・陽炎が彼女の周囲に発生し、ベルは思わず後ろに後退してしまう。
「最大は危ないし私が
「大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫。貴方が前に持ってた『英雄羨望』の炎限定版って言えばいいかしら。限定されてるし危ないから普段は使わないんだけど・・・特別よ?」
歪む、歪む、景色が歪む。
周囲の草木は見えない炎にでも当てられたのか、引火しはじめる。
「ボールス達の攻撃の後にしかけるわ。」
『囲めーッ、囲めぇーッ!!」
移動を続ける冒険者達がゴライアスを取り巻いていく。勝手知ったる仲間でもない彼等は緻密な連携はもとより捨て、互いの邪魔にならない間合いを確保した上で各々の行動に走った。エルフを始めとした魔導士達が数箇所に固まり、『魔法』の詠唱を開始する。限られた者の足もとに咲き誇る多種多様の
長文詠唱による強力な砲撃の準備が着々と進められていく。
美しい呪文を紡ぐ間無防備になる彼等を庇うのは大盾をもったドワーフ達。
『―――アァッ!』
不穏な空気に気付いたゴライアスが『
「いつだったか修得したスキルなんだけど・・・
魔導士達の詠唱が完了したのか、ボールスの大声が響いた。
『前衛、引けえぇっ、でかいのぶち込むぞ!』
それと同じくして、アリーゼの準備も終わりを告げるように静かに瞼を開けた。
「そのスキルの名を、【
白い炎が、彼女を包み込んだ。
【
・付与魔法『アガリス・アルヴェシンス』使用時限定。
・一定時間の戦闘行為の禁止。
・禁止時間分の威力増加。『一撃』or『禁止時間の半分の時間分付与魔法の威力を上げる』
・魔力と体力を大幅消費。
・最大時間はレベルに依存。
・体温も上がるため冷却が必要。