ほぼタイトルくらいしか記憶に無いです。
でもそういうのをチラッとネタにして出したりするのは好きです。
カチャカチャ・・・ギュッ、ギュッ、と音が鳴り、
儀式の会場から離れた、郷の外側に、テントが1つ立てられた。
木漏れ日が差し込んでいた神秘的な森は既に暗くなり、闇が森を覆っていく。
キュポッ・・・キュポンッ! コトリ。 コトリ。
空の瓶を木の枝の間、窪みに差し込んでは、どうしてだか小さな精霊がその中に入って行きちょっとした明かり代わりになってテントの周辺を照らしていく。
「―――夜の森って、結構暗かったんだなぁ・・・リューさんにいてもらえばよかったかも。」
「おい」
キュッポン。
シュッ!!
「―――これをテントの中に吊るしておけば、仮眠するときも安心。帰るときに出してあげればいいよね。」
「おい」
「
暗い森の中で、精霊の優しい輝きに照らされて、テントの前に椅子を置き調理セットを置きお湯を温めながら1人そんなことを言う。空を見上げようと視線を上に向けても、何も見えずただただ闇だけが広がる。そこに『黒い神様』は見えてはいないが、やはり少しばかり不安で、一番近くにおいてあった小瓶を自分の膝元に持ってきて灯りを見つめる。
「精霊って・・・ランタンより明るさ低いんだね。」
「おい」
なぜ森の中で、黒いドレス姿にエルフ耳の少女がテントを立てて野営しているかと言えば、長老が少女・・・否、少年にびびり、ちびり、その背後に、『謎の灰色髪の瞼を瞑った美女』の姿を幻視したとかしてないとかで
『お前、ちょっと儀式終わるまで、不埒な輩が来んように見張りをしとれ。な?』
と言われてしまったのだ。
「いや、まぁ・・・いいんだけどね? 毎回、僕が怒ると『背後に誰かいる』って反応されるの・・・さすがに怖いなあ」
「おい! いい加減、無視するのをやめろ!! クラネルっ!!」
森に響いたのは、少女の怒鳴り声。
『さすがにベルを1人置いておくわけには・・・この子は暗い場所だと使い物にならなくなる・・・』
というリューの発言で、エルフ'sは緊急会議を開始。
『リヴェリア様は参加してください。ここは、あの子を泣かせてしまった責任もありますし私が』
『いや、しかしだな・・・』
『リヴェリア様は参加してください。ですが、山吹。あなたは今、あまり信用ならない。また泣かせるのでは?次はついにあの子の操に手を出すのでは?』
『な!? そ、そんなことしません!! 私は誇り高きエルフですよ!?』
『 【我が名はヤベーヤ・ウィリディス! 山吹族随一の馬鹿魔力の持ち主! 】という自己紹介を今後使ってみては? 』
『ちょ、や、やめてくださーい!?』
『ええい、うるさいぞお主ら!! 参加するならさっさとせんか! 第一、もう1人外に留守番させるならそこでユニコーンに触れ合えず膝を抱えとるやつにさせればよいじゃろう!!』
『フィ、フィルヴィスさーん??』
『ああ・・・そうしよう、私は・・・外にいるとしよう・・・』
そんなこんなで少年を1人にしないためにもう1人見張り役を立てたのだが、それが、フィルヴィスということになった。しかし少女としては、先ほどから1人でテキパキと・・・意外なほどに野営の準備をする少年に驚いては、相手にされていない気がして、ついムッとしてしまったのだ。おい、こっちを見ろ、と。
「―――どうしたんですか。まだ落ち込んでるんですか、『ケガレタ・シャリア』さん」
「おいっ、お前は変なあだ名をつけないと死ぬ病気にでもかかっているのか!?」
「だって、ずっと『汚れてる』って言ってるじゃないですか。もうそれ自己紹介の域ですよ」
「ぐっ・・・・」
「そんなことより・・・はいっ、出来ましたよ。ご飯です」
「あ、あぁ・・・ありがとう。」
オラリオで販売されている『お湯を注ぐだけで食べられる』という食品を購入し、それにお湯を注ぎ出来上がったところでそれをフィルヴィスに手渡し少年もまた蓋を開けて麺をすすっていく。
「「いただきます」」
ちゅるるっ・・・じゅるっ・・・ずぞぞぞっ!!
暗い森の中、そんな音が響いていく。
会話は特になく、少年はフィルヴィスの顔をジーっと見つめながら麺をすする。
特に意味もなく、少年はフィルヴィスの胸元を見たり、赤い瞳を見たりして、麺をすする。
じゅるるっ・・・ちゅるんっ・・・・じゅるるっじゅぼっ!!
ぶっほぉっ!!
そんな少女のような、あどけない顔で見つめられていることに、視線を泳がせながら同じく麺をすすっていたフィルヴィスは耐え切れず、麺を噴出してしまう。少年の顔に。
「ふぎゃっ!?」
「げっほっ、ごほっ!!・・・ああ、すまない、大丈夫かクラネル!! しっかりしろぉ!!」
「いーーーーーったい、目がぁああああっ!!」
「あぁぁ・・・す、すまない!! ほ、ほら、このハンカチを使ってくれ!! しかし、お前も悪いんだぞ!? ずっと私のことを見て!! 食べにくいだろう!!」
ジタバタと顔を抑えて転がる少年にハンカチを手渡し、フィルヴィスはアタフタ。
ダラダラと『やってしまったぁ!!』とでも言うかのように汗が流れる。
少年は受け取ったハンカチで顔を拭き、涙目になりながら手を差し伸べてくるフィルヴィスの手を取って再び椅子に座る。
「し、仕方ないじゃないですか、フィルヴィスさんのことが気になるんですから!!」
「な・・・・はぁあ!?」
「初めて会った時から、気になってたんです!!」
「な・・・なな、お、おまっ、お前は・・・な、何を言っているんだぁっ!?」
「そ、それに、ロキ様が『美人さんと可愛い女の子は、おかずになってご飯何杯でもいけるんやで~』って言ってたから、味変わるのかなって!?」
「だからお前は何を言っているんだぁ!?」
少年は思っていたままのことをそのまま口にした。
フィルヴィスは訳も分からず顔を爆発させた。
真っ暗闇な空の上で、邪神エレボスが『くく・・・そういうところだぞ』とほくそ笑んだ気がしたが、少年としては、『黒い神様』のことを知りたいと思ったことなど一度もないので、どうでもいいのだ。暗闇広がる、精霊の決して強くもない輝きの中、少女が暫くアタフタした。
■ ■ ■
うふふふふ・・・・あははははは・・・うふふふふっ
妖精達が精霊達と輪になって、笑いあい、踊りあいはしゃいでいる。
それを、3人の妖精が眺めていた。
彼女達がいる場所は、少年と現在絶賛大混乱中の少女が野営している森の中とは少し違って空を見上げれば穴を空けたように開けていて真上に綺麗に輝く満月があった。
「賓客は精霊です。自我が薄く、純粋な彼女達を楽しませるには・・・我々も、子供のように楽しまなくてはならない。そういうことなのでしょう。」
「わ、わかりました・・・・! う、うふふふ~・・・」
「・・・ぎこちないかと。」
「あはははは・・・・」
「・・・不自然かと。」
「純粋にって言われると・・・変に意識しちゃって・・・」
「意識する必要はないと思います。きっと、心の赴くままに・・・楽しめばいい」
「そ、そうですか? じゃ、じゃぁ・・・そうですね、せっかく御伽噺の国に来たんですし、リヴェリア様のためにも、自分達のためにも、楽しみましょう」
「ええ、郷に入っては郷に従え・・・輝夜が言っていましたね。」
2人もまた、周囲のエルフに習って思い思いにその光景を、宴を楽しむ。
すると訪れるのは精霊。
御伽噺に綴られていた世界に入ってしまったと錯覚するほどまでに、美しく神秘的な光景がより一層広がっていく。
「そ、それより・・・あの2人、大丈夫でしょうか?」
「さぁ・・・ベルは1人にしなければまあ問題ないでしょうが。」
「フィルヴィスさん・・・大丈夫でしょうか」
「彼女は貴方の様にベルを泣かせたりといったことは今のところないですし、大丈夫でしょう」
「うぐっ・・・や、やっぱり私があっちに残っておくべきだったんじゃ・・・」
「泣かせるつもりですか? これ以上、前科を増やしたいと?」
「ち、違いますよ!? しゃ、謝罪をして・・・な、仲直りをですね!?」
「仲直り・・・友人だったのですか?」
「ラ、ライバルになれたらなーなんて・・・その、お互いを高めあえたら素敵じゃないですか」
あの子が貴方を意識しているところは、今のところ見覚えがないのですが・・・とはいえなかった。別に仲良くなりたいという想いは間違っていないし、彼女の考えもまた、間違いではないのだから。しかし、だがしかし・・・
「ライバルですか・・・ふむ」
「だ、駄目ですか? や、やっぱり【アストレア・ファミリア】に許可を貰いに行く必要があるんですか?」
「なぜ許可がいる・・・? 」
「じゃ、じゃあ・・・何か問題でも?」
おろおろ、おずおずとレフィーヤはリューに問いかけるもリューは微妙な顔。
「あの子は別に・・・そこまでダンジョン探索に精を出しているというわけでもありませんし・・・そもそも・・・」
「そ、そもそも?」
「あの子とライバルになりたいのであれば、それこそあなたは長文、超長文を並行詠唱かつ高速詠唱を完璧にしなくてはならない。」
「うっ」
「あの子は超短文で、強力な魔法がある。おまけに、そもそもあの子は前衛だ。まぁ・・・・スキルと魔法を考えれば、前衛、中衛、後衛とどちらも対応できますが。」
「きゅぅ~・・・・」
「今のあなたとあの子が戦った場合・・・」
「戦った場合?」
「一瞬であなたは意識を刈り取られるでしょう。なにせ、
「うぎぃ・・・」
「まぁ、私もリヴェリア様も・・・彼女に散々痛めつけられた。貴方がベルを意識して高みを目指すのであれば別にそれは、悪いことではありません」
―――頑張りなさい。
優しく微笑むリューの瞳に、レフィーヤは一瞬、ドキッとしながらも脳内ですぐにシミュレーションを行っていた。
( 帰ったら模擬戦を申し込んでみましょうか・・・ )
今の自分が、少年とどこまで渡り合えるのか。それを知るためにも、一度戦ってみるのもいいかもしれない・・・と帰った後の楽しみが出来た瞬間である。
「エルフの慣習を離れて久しいが・・・たまにはこういうのも悪くない・・・か」
「何をぶつくさ言っておる? 独り言が多いのは、年寄りの証拠じゃぞ。」
「―――【木霊せよ――
「え、詠唱・・・!? ババアで怒ったのか!?」
「【我が名は、アールヴ】―――【ヴェール・ブレス】!」
ゴーン、ゴーン。
と鐘の音が、森の奥から聞こえてきた。
それに振り返るのは、その音の正体を知る者のみ。
「これは・・・ベル?」
「敵・・・でしょうか?」
「恐らくは。」
「念には念だ。防護魔法を展開させてもらった。あの子が魔法を使っているということは良からぬ賊が現れたのだろう」
「応援に行くべきでしょうか?」
「いえ・・・必要ありません。」
「いいんですか?」
「ええ。あの子が、少なくともオラリオの外の輩に負けるとは思えない」
■ ■ ■
「落ち着きました?」
「あ、あぁ・・・はぁ・・・お前はいつもこうなのか・・・?」
「?」
「いや、なんでもない・・・それより、お前、小瓶に精霊を入れて拠点周りに設置しているが大丈夫なのか?というか、怒られないか?」
「大丈夫ですよ、蓋、開いてますし。自分達で入っては出てるみたいですし」
そう言われてテントの周りの精霊の入っている小瓶を見てみれば、どれも蓋が開いていて精霊達はまるでシフト交替制で働いているかの如く、入れ替わったりしていた。
「な、なぜ自分から入っていくんだ・・・?」
「ヘスティア様の孤児院にあった御伽噺に載ってました。」
「ど、どういう話なんだ?」
「んー・・・そこまで詳しく読んでないんですけど、その瓶に入れた精霊は生命力を回復させてくれるとかなんとかで、瓶に入れるのは様式美らしいんです」
「よ、様式美・・・・」
「深く突っ込んではいけませんよ。」
「ま、まさか精霊達も自我が薄いにも関わらず・・・様式美に従っていると?」
「恐らく」
まぁ実のところ少年はその御伽噺を信じているわけでもなく、『ついやってみたくなった』からやっているだけなのだが。食事を終わらせ、ゴミをまとめて再び椅子に座る。
「そういえばお前は、野営とか・・・その、教えられたのか?」
「お姉さん達がしているのを、見てたので。」
「なんていうかその、意外だった。」
「『覚えておいて損はない』って言われたので」
じぃー・・・・と少年は膝を抱えて頬を乗せて隣に座るフィルヴィスを見つめる。
『なんなんだこいつはぁ・・・』と、頬を少し染めてたじたじになり内股でモジモジとするフィルヴィス。
チラッと視線を向けると少年は、ニッコリと微笑んで、さらにフィルヴィスは混乱する。
( 何なんだこいつは!? )
「フィルヴィスさん」
「にゃ、にゃんだ!?」
こいつ、今度は何を言うつもりだ!?
少女は思わず身構えた。隣の少年は相変わらず膝を抱え、頬を乗せて見つめてくるだけで特に表情は変わっていない。それが余計に少女の胸をざわつかせる。精霊達が『いったれ!』とでもいうかのように少年の周りを、拠点の周りをブンブンと回る。
「胸」
「・・・ん?」
「綺麗ですね」
「・・・・は?」
フィルヴィスは思った。
▶こいつぶん殴ってやろうか。
ベルは思った。
▶前より雑音というか、変な反応を感じなくなった。多少だけど。それでも割れている感じがするけど。
「フィルヴィスさん」
「な、なんだ」
今度は何を言うつもりだ?
フィルヴィスは身構える。少年は相変わらず見つめてくる。
「ファミリアの人、また亡くなったって聞きました」
「!」
「アリーゼさん達が巡回していても、どうしてもそういう悲しい事件は0にはできないって」
「・・・そうか。すまない・・・」
「何がですか?」
「いや・・・私のせいだろう・・・きっと。お前だって知っているだろう?
「・・・正直どうでもいいです。それは」
「・・・・何?」
「
「・・・・何が言いたいんだ?」
「
「・・・・・」
「んー・・・・たとえば、僕が、人殺しの子供で、親は闇派閥にいた。って言ったら、フィルヴィスさんは僕と戦いますか?」
「! そ、それは・・・子は関係ないだろう!?第一お前は、その時いたのか!?」
「いませんよ?」
「なら、お前に罪はないだろう!? それを責めてくるやつがいたとしたらそいつらは――」
お前の何を知っているんだ!と声を張り上げようとして、言葉が途切れる。
目の前の少年は『当事者でもないのに偉そうなことを言うのは違う』とそう言った。だから、フィルヴィスの身に何が起きてどうなったかなど、少年にとってはどうでもいい、とそう言っている。フィルヴィスは思わず立ち上がってしまい、拳に力を入れてしまっていたがだらり・・・と力を抜く。そうしてもう一度椅子に座った。
沈黙が生まれる。
少しして少年は小瓶に入っている精霊を見つめながら、また口を開く。
「フィルヴィスさん」
「・・・・」
「フィルたん」
「やめろ。なんだ?」
「フィルヴィスさんって・・・外だと御淑やか?なんですね」
今日はやけに絡んでくるな。
いやらしい目付きでみてくるわけでも悪意を持って近寄ってくるわけでもないから、余計に無碍にできない。それどころか、24階層の一件の際、少女は少年に助け舟というか唯一少年の状況についていけてないことに気がついて気を遣っていたが故に微妙に懐かれていた。
「フッ・・・お前は一々私をおちょくりたいのか?」
「? 思ったことを言ってるだけですよ」
「じゃあ何が言いたいんだ」
「うーん・・・いや、やっぱりいいです。」
「はぁ・・・そうか。」
再び沈黙。
耳を澄ませば、妖精たちの笑い声が聞こえてくる。
少年は何をしているのかよくわからず、少女の方を見る。少女は溜息をついて、説明する。
「精霊はいわば客人だ。自我が薄い精霊達を楽しませるためには、自分達もまた子供のように楽しむんだ。歌ったり踊ったり、はしゃいだりとな。」
「へぇ」
「きっと、今頃あちらでは神秘的な光景が広がっているのだろう」
少しばかり冷えてきて、少年が気を利かせて湯を沸かせ安物ではあるが紅茶を渡してくる。
それを受け取り、一息。
「なあ、クラネル」
「・・・なんですか、フィルヴィスさん」
「お前は何故、文句も言わずに見張りを引き受けたんだ? あの長老の物言いは腹が立つが、追い出されたわけではないだろうに」
「何故って言われても・・・・何かが近づいてきているって感じたからですよ。それに、僕はヒューマンだし・・・僕がいたことで悪影響が出るならって思って」
「何かが近づいてきている・・・? モンスターか?」
「そこまではちょっと・・・。」
「リヴェリア様に報告は?」
「リヴェリアさんのことだから、きっと何かを感じ取ったら防護魔法を展開してくれると思います。だから、大丈夫ですよ」
ズズ・・・と落ち着いた表情で紅茶を啜り、一息ついて、コトリ。とカップを置く。
少年は、ぐーっと腕を伸ばして背筋を伸ばしフィルヴィスの胸元を見つめる。
「なぁ・・・思うんだが、異性の胸を凝視するのは失礼じゃないか?」
「フィルヴィスさんは・・・精霊みたいなものでしょう?きっと」
「・・・・!」
「何かはよくわからないけど・・・」
少年はゆっくりと手を、フィルヴィスの胸にむけて伸ばしてくる。それをフィルヴィスは、勢い良く立ち上がり、腰にかけている短剣に手をかけて少年を睨みつける。睨みつけようとして、気がついたら、いつの間にか真っ暗な森の天井を見ていた。
「――――!」
( 早い・・・! )
足払いをされ、少女は黒髪を広げて大の字になって地面に仰向けになっていた。
それを馬乗りに近い状態になるのは少年で、そのままそっと、フィルヴィスの胸の谷間―――心臓のある場所に手を添えた。
「くっ・・・! き、貴様・・・!」
「―――綺麗ですよ。フィルヴィスさんは」
「だ、黙れ!」
「治るといいですね。これ。でも、前より雑音が気にならなくなってるし・・・うん、なんとかなるといいですね」
「・・・・っ!」
「フィルヴィスさんは綺麗な精霊。それもいいんじゃないですか? オラリオにもいるんですし。冒険者をしている精霊なんてそれこそいないでしょ?」
「お前は・・・ほんっとうに・・・やりづらい・・・嫌いだ私は、お前が」
「僕は・・・・好きですよ。」
「んぬぁっ!? す、好きって・・・お、おま、お前ぇ!?」
「? フィルヴィスさん、優しいし」
ほら、立てますか?と、自分で足払いして馬乗りになっておいてそのことなんて棚上げにして、少年は少女に手を差し伸べる。少女は何故だか抵抗することもなくその手を取り、立ち上がる。耳を澄ませば、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。少年に目を向けると、こくり、と頷く。
「賊・・・か」
「はい。」
「わかった。リヴェリア様達の邪魔をさせるわけにはいかない。早急に処分する」
「はい、頑張りましょう・・・」
フィルヴィスは短剣を抜刀し、少年は武器も持たずに前を見据える。
『この先に、隠れ里がある! エルフ共は殺っちまって構わない、連中が抱えているお宝を探せぇっ!!』
「下衆め・・・」
「あっちのほうが汚れてません?」
「・・・・・」
「フィルヴィスさん」
「・・・なんだ」
この少年には勝てない。
フィルヴィスは理解してしまった。けれど少年に声をかけられれば素直に返事してしまう自分がいる。フィルヴィスはこれが最後だと言わんばかりに、厳しい目で少年を見つめると少年は瞼を閉じて口を開いた。
「別れはちゃんと告げておかないと、辛いですよ」
「・・・・・」
「黙っていなくなるのは、卑怯だ」
「・・・・・」
「レフィーヤさん、友達なんでしょう?一緒にお風呂にはいるくらいには」
「・・・おい待て、私はまだ一緒に入っていないぞ」
「『まだ』?つまり、予定はあるんですね! ユリーヤ・ウィリディスさんが喜びますね! やったね、フィルたん! 友達が増えるよ!」
「おいヤメロぉ!!」
賊の姿が漸く見えてきて、少年がフィルヴィスの前に立ち、口を開いた。
『お前達が来るのを待っていた』と言わんばかりに。
「お前1人でやるつもりか?」
「はい。・・・・たぶん、大丈夫です」
「そうか、では、私は見ている」
「はい。―――【
ゴーンッ
ゴーンッ
と魔法による砲撃が放たれた。