兎は星乙女と共に   作:二ベル

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レフィーヤさんはベル君と仲良くなりたい。


ベル(あの人やばい)

レフィーヤ(どうしよう、警戒されてる)


妖精 vs 兎 100番勝負

 

「――――あのぉ、ベル?」

 

「? なんですか、山吹さん?」

 

「あの、その・・・・山吹っていうの、もうやめてください。リヴェリア様からもお許しが出ましたので。」

 

「・・・・えっと、ヤベーヤさん?」

 

「レフィーヤです!」

 

「それで・・・えと、どうしたんですか?」

 

「ええとですね・・・ちょっと耳を貸してください」

 

 

精霊郷からの帰り道。

各々は目的の『霊薬実(タプアハ)』を入手し、オラリオへ向けて早朝から移動していた。

盗賊がやってきたことは、ベルの魔法の音に気がついたリヴェリアが察していて儀式が終わった後にテントのある場所まで来たところ、木が数本吹き飛ばされて広場のような空間ができており、これには長老が『なんじゃこりゃぁぁぁ!?』と混乱。事情を説明し、盗賊が夜空の星になって飛んで行ったこと、そしてドラゴンによって木が焼けてしまったため燃え広がらせないために木を吹き飛ばしたことをドラゴンの死体を見せて理解してもらった。

 

『えっ・・・・なんでフィルヴィスさん上着脱いで肌着になってるんですか・・・しかもなんか湿ってません?』

 

『・・・・うぅ』

 

『な、何があったんですか!?』

 

約1名だけ様子がおかしかったが、盗賊を追い払って郷を守ってくれたということでベルも霊薬実(タプアハ)をもらえることができ、現在は5人で草原を歩いていた。そこに、やはりというかフィルヴィスの様子に違和感を感じたレフィーヤがベルに耳打ちで聞いてきたのだ。

 

 

「あの・・・儀式の間に、盗賊が来たことはわかりました。でも、どうしてフィルヴィスさんは、そのぉ・・・頬を染めているんですか?」

 

「・・・・」

 

 

チラッと後ろに振り返ったところ、最後尾を歩く彼女の頬は確かに赤くなっていて目が合うと凄い勢いで反らしている。少年はすぐにレフィーヤの顔を見て

 

 

「フィルヴィスさんは精霊だから、いろいろ大変なんですよ」

 

「へ?」

 

「大変なんですよ~」

 

「ど、どういう意味ですか!? というか、何があったのかを聞いているんですよ!?」

 

「―――そんなに気になるんですか?」

 

「あ、当たり前じゃないですか!? もしかして、あの時、フィルヴィスさんじゃなくて私があなたと見張りをしていてら、私がああなってたってことじゃないですよね!?」

 

「・・・・・・・」

 

「ちょっ、何で黙るんですか!?」

 

 

さてどう説明したものか・・・と少年は少しだけ思案。

面倒だから黙っておこうと思っても、少女は『逃がしませんよ?』とでも言うかのように手首を握ってくる。逃走すればきっと、また、泣かされるに決まっている。少年は溜息をついて、少女にジトーっとした視線を向けて口を開く。

 

 

「襲われたから、おしおきしただけですよ。」

( うん、これなら問題ないよね )

 

「おしおき・・・ですか? どんな? 」

 

「む・・・えと、えとぉ」

 

「私とあなたの仲じゃないですか。隠し事はなしですよ?」

 

「僕とレフィーヤさんの仲・・・僕達って、どんな関係なんですか?」

 

「え」

 

「え?」

 

 

瞬間、生まれる沈黙。

少女はわりとガチでショックをうけての沈黙。

少年は、わけもわからずショックを受けている少女にたいする困惑。

すると少女はプルプルと震えだす。

 

「え・・・レフィーヤさん?」

 

「と・・・」

 

「?」

 

「と、友達・・・じゃないんですか? 私達って・・・」

 

「え」

 

「え!?」

 

 

え、僕達友達だったんですか?というわりと素の『え』を少年は放つ。

少女は驚きのあまり、そのまま『え』と驚きの声を上げた。

しかし、しかし仕方がないのだ。

 

天界に帰った敗北者たる神々よ! ご照覧あれ!!

これが、『友達だと思ってたら、全然そんな風に思われてなかった』というシチュエーションである!! 抱腹絶倒するがいい!!

 

 

少女はさらにプルプルして、両腕で少年の右腕にしがみ付いた。エルフにしては豊かなその双丘が形を変えているがそれを意識することさえないほどに少女は、少女の目は絶望に染まり、さながら『この世の終わり』のような状態に陥っていた。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「だ、だだ、大丈夫じゃないです!!」

 

「ええっと・・・」

 

「ど、どうしてですか!? い、一緒に階層主倒したりしたじゃないですか!! お胸を触りあった仲じゃないですか!! 」

 

「・・・・追いかけてきて」

 

「ひっ!?」

 

「・・・・叫び声を上げて」

 

「はうっ!?」

 

「・・・・押し倒して馬乗りになって」

 

「ふぎゅっ!?」

 

「一方的に、お触りされただけですけど・・・・」

 

「きゃんっ!?」

 

 

少女は、己が少年に行った所業を語られ雷に打たれたように体をビクビクと震わせた。

少年は一度少女から視線を外し空を見上げた。

 

(いい天気だなぁ・・・今頃春姫さんが洗濯物干してるのかなぁ・・・)

 

風が心地よく肌を撫で、少女の、少年の着ている衣装を揺らす。

右腕に少女の温もりが衣服越しに伝わってくるが、それもまたこの良い天気の前では心地よさに一味追加する程度だった。

 

というか、意外と胸、あるんだな。と一瞬思った。

 

 

「まぁ・・・ファミリアでの鍛錬以外では、賭博場(カジノ)で一暴れしたり、モスヒュージの強化種とか17階層で未開拓領域を見つけてその中にいた【穢れた精霊】でしたっけ?それを倒したり、アンフィス・バエナに突撃したり、ベルテーンで泥沼みたいな化物を倒したり、ゴライアスと戦ったり、えっと・・・まぁ、いろいろありましたからね。」

 

「ん?・・・えと、もしかして、ランクアップ前だったりします?」

 

「アミッドさんのお胸も・・・あんなにして・・・『まじヤベーヤ』って思いました。」

 

「はうっ」

 

 

「あの2人は腕を組んで何をやっているのでしょうか」

「おおかた、レフィーヤがまた何かやらかしたのだろう」

 

 

「ど、どうすれば許してもらえますか・・・?」

 

「どうって言われても・・・・レフィーヤさんは僕をどうしたいんですか?」

 

「お、お互いを高めあっていける関係になれたらなぁ・・・なんて」

 

「お互いを高めあう・・・?」

 

 

何だそれは。

どこに向かうんだ貴方は。

 

少年はよくわからない言葉に困惑した。そんな関係性など知らないのだから。レベルが追いつた姉に対しても、経験という培ってきたものでは勝つことなど出来ない。ゆえに、レフィーヤの言う言葉がよくわからなかった。

 

 

「えと、つまり?」

 

「ラ、ライバルです!! そして、友人です!! 一緒に旅までしたんですから!! お胸も触りましたし!!」

 

「僕は触ってないですけど・・・・」

 

 

「彼女、神ロキみたいになっていませんか、リヴェリア様」

「散々少年に対して前科を作って、謝罪はしたがどうしたものかと迷走したか?」

 

「さ、触りたいんですか!? そ、それはちょっと・・・」

 

「いや、いいです」

 

「なっ!? 魅力がないってことですか!?」

 

「魅力・・・・」

 

 

ジトー・・・この人、会うたびに僕泣かされてるというか追い回されている気がするしなぁ・・・と少年は彼女との思い出を振り返りながら、未だ右腕に抱きついたままの彼女を見つめる。

 

髪の色は山吹色。

瞳の色は青。

妖精。

 

 

「綺麗・・・」

 

「っ!」

 

「すんすん・・・」

 

「な、なぜ嗅ぐんですか!? 」

 

「良い匂い」

 

「そ、それはど、どうも・・・」

 

「魅力・・・あるんじゃないですか?」

 

「ぎ、疑問系・・・」

 

 

がくり、と少女は肩を落とした。

いや、まぁ、私が悪いんですけどね・・・と小さく呟いたが、それは少年の耳には届かなかった。

 

「ベル、【千の妖精(サウザンド)】。少し昼食にしましょう。イチャイチャしてないで手伝ってください。」

 

「イ、イチャイチャしてません!! 仲良くしようとしてたんです! ね!?」

 

「リューさんも、綺麗だよ?」

 

「ど、どうも・・・」

 

「無視!?」

 

「ほら、はやく行きましょう。オセーヤ・ウィリディスさん」

 

「レフィーヤです!! あなた、私に対して遠慮なさすぎじゃないですか!? 言っておきますけど、私の方がお姉さんなんですからね!?」

 

「え」

 

「え」

 

 

まじかー・・・・。とその日初めて、少年は間抜けな声を出し少女は年下として扱われていた事にショックを受けていた。

 

 

「無理もないだろう、レフィーヤ。」

 

「フィ、フィルヴィスさぁん・・・」

 

 

シートを広げ、精霊郷を出る際に儀式を行っている間、外で守ってくれていたという話を聞いたエルフが作ってくれたサンドイッチを食べる。耳をへにょっとさせて落ち込むレフィーヤにフォローを入れるのはフィルヴィス。

少年は当たり前の様に、リューとリヴェリアの間に座っていた。

 

 

「24階層のことを蒸し返すのはさすがにどうかと思うが・・・あれ以降も何かとあったのだろう?」

 

「うっ」

 

「良い関係を築く前に、彼にとっては良くないイメージが根付いているのではないか?」

 

「そ、そんなぁ・・・い、いえ、わかってるんです。私が悪いということくらいは。」

 

「なぜそうまで友人・・・いや、ライバルになりたいんだ?」

 

「そ、それはそのぉ・・・何かと関わることもありますし・・・悪い思い出のままでいられるのも嫌じゃないですか」

 

「まぁ・・・そうだな」

 

「・・・・ところで。」

 

「ん?なんだ、改まって」

 

 

自分達の目の前で、『霊薬実(タプアハ)』をどうするかを話し合っている3人を見つめながら、レフィーヤは少年にもはぐらかされたフィルヴィスの身に何があったのかを聞く事にした。

 

 

「何があったんですか? テントに行ったら、2人は寝てるしフィルヴィスさんは上着を脱いで肌着でしたし」

 

「・・・・熱かっただけだ。」

 

「何で一緒に寝てたんですか?」

 

「テントが1つしかなかったんだから、仕方がないだろう? 気がついたら、彼が隣で寝ていたんだ」

 

「じゃあそのぉ・・・今朝からあの子をチラチラ見ては頬を染めているのは何でですか?」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

フィルヴィスは、どう話をそらそうかと悩んだ。

むしゃむしゃとサンドイッチを頬張るフィルヴィス。

レフィーヤもむしゃむしゃとしながら、『そんなに言えないことを・・・?いつの間にそんな仲に?』と思い口を開いた。

 

 

「もしかして・・・」

 

「?」

 

「い、いやらしいこと・・・してたんですか? 私達が儀式している間」

 

「ぶっほぉ!! げほっ!? ごほっ!!」

 

「フィルヴィスさん!?」

 

 

そ、そんなに動揺するほど!? というくらいフィルヴィスは咳き込み、耳を赤くした。

レフィーヤはすぐに水筒から水をコップに入れ、フィルヴィスに手渡し背中を摩る。

 

「あ、あの、その、す、すいませぇん!?」

 

「や、やめろ!! 変に気遣うな!! 私は彼と、お前が思っているようなことはしていない!!」

 

「じゃ、じゃあどうしてそんなに!?」

 

「『いやらしいことしてたんですか?』なんて聞かれたら誰だってこうなる!!」

 

「ご、ごめんなさぁい!!」

 

「私はただ!! 彼に襲い掛かって!!」

 

「襲った!?」

 

「んぁあああああっ!!」

 

「お、落ち着いてくださぁい!!」

 

 

フィルヴィスは、昨晩の『おしおき』を思い出して悶絶!!

レフィーヤは『襲った』というフレーズに動揺!!

2人のエルフの少女は、せいだいにポンコツを起こしていた!!

 

「何をやっているのだあの2人は・・・」

 

「ベル、彼女と何かあったのですか?」

 

「えと、支援を頼むって言われたから魔法をかけたのに、急に襲い掛かってきたから」

 

「襲ってきた・・・」

 

「魔法の効果が切れるまで押さえ込んで、それで、おしおきしたんです」

 

「おしおき? 何だそれは」

 

「ベル、あなたまさか・・・」

 

「耳をスリスリしてました」

 

「あぁ・・・ベル・・・」

 

「あと、フィルヴィスさんのお胸をチェックしてました」

 

「さ、最近の若い子はその・・・そういうことも早いのか?」

 

「い、いえそのリヴェリア様・・・たぶんそういう意味ではないかと。そうですよね、ベル?」

 

「えっと・・・フィルヴィスさんは精霊なんです。だから、気になって」

 

「はぁ・・・ベル、いいですか?」

 

「その・・・・クラネルの指捌きは・・・すごいぞレフィーヤ」

「え?」

 

「?」

 

「だからといっておいそれと女性の胸に触ったりしてはいけない。そうでしょう?」

 

 

「【アストレア・ファミリア】の女傑達に教え込まれたのか、覚えてしまったのかはわからないが・・・まるで新しい世界を知った気分だった」

「ごくりっ。」

 

「うん。」

 

「今後そういうことはやめるように。」

 

「別に僕、誰でもいいって訳じゃないよ・・・アリーゼさんに怒られる。」

 

「具体的に何があったかと言えばだな・・・その、耳を・・・愛撫されたとしか言いようがない」

「何してるんですか!?」

「いや・・・私が悪いんだレフィーヤ。彼を怒らないでやってくれ。襲い掛かった私が、返り討ちにあったにすぎない。」

「か、返り討ち・・・」

 

 

「信じてますよ、もちろん」

 

「はぁ・・・さすが付き合いが長いな、お前達は。」

 

 

「フィルヴィスさん」

「ん?どうした、レフィーヤ」

「私は冒険者です。」

「そ、そうだな・・・。」

「あの子よりも年上なんです。だから、威厳・・・はないかもしれませんが、これ以上悪い関係にはなりたくありません。だから、行ってきます」

「は?」

「見ててください、私の冒険を!」

「あ、こら、おい!?」

 

フィルヴィスが精霊とはどういうことだ?と思わないでもないが、リューはリヴェリアに誤解されないようにするのに胃をキリキリさせた。

 

 

「ベ、ベル!」

 

「?」

 

そこに、食事を先に追えたレフィーヤが声をかけてきた。

彼女はなにやら顔を若干赤くしているが、どこか決意をこめた目をして、杖を両腕で抱いてベルの真正面にやってきた。

 

 

「どうしたんですか?」

 

「わ、私と勝負です!!」

 

「いやです」

 

「ぬぁっ!?」

 

 

即答。

一刀両断されたように、レフィーヤはふらりっと後ろに倒れそうになった。

もう少し悩んでくれても・・・と思わないでもない。まさか、即答で拒否されるなんて思ってもいなかったのだ。

 

「レフィーヤ、食事中だぞはしたない。」

 

「そうですよ、『ギョウギワリーヤ・ウィリディス』さん」

 

「ちょっと!!それは流石に無理がありますよ!?っていうか、何笑ってるんですか!!」

 

「リヴェリアさん、お義母さんのこと、教えてください!」

 

「ん? 何が知りたいんだ? 偉業のことなら、メレンに行ってみろとしか言いようがないが」

 

「ま、魔法! スロットって3つなんですよね?」

 

「ああ・・・そうだな。」

 

 

リヴェリアの口から、教えられるのはこれまたとんでもねぇ魔法だった。

魔法を無効化する魔法であり、超短文詠唱。

轟音で全てを滅する彼女の最終奥義ともいえる3つ目の魔法。長文詠唱だがしかし、彼女は、アルフィアは並行詠唱など当然で唱え始めたらまず止めるのはほぼ不可能という滅茶苦茶ぶり。それを聞いた少年は瞳を輝かせ、義母がすごいことを再確認。リューとリヴェリアとしては複雑な心境だが・・・少年が知りたがっているのなら仕方がない。

 

 

「僕も使えたらなあ・・・」

 

「もうスロットが埋まってしまっています。仕方がありませんよ。何より、他者の魔法を受け継ぐということがまず有り得るのでしょうか?」

 

「有り得ないで片付けるのは早計だろう。下界は未知に溢れているというし・・・」

 

「リューさん、今度メレンに連れて行ってください」

 

「そうですね・・・すぐにとは言えませんが、アリーゼとアストレア様と相談してみましょう」

 

「はいっ!」

 

「くっ・・・その笑顔が眩しい・・・!」

 

 

拒否され無視されたレフィーヤは、悔しいながらもベルの義母がどれだけ規格外なのかをちょこっとだけ知ることができて、『こわぁい』と思うしかなかった。しかし、しかし彼女はここで諦めなかった。諦めが悪いエルフなのだ。このまま少年に変なあだ名を付けられて、悪印象だけを抱かれ続けるのはとてもじゃないが、我慢ならなかった。なんとか、なんとか仲良くならなければ・・・!奮起する。

 

これが後に、『妖精 vs 兎 100番勝負』へと発展する。

 

 

「ベ、ベル!!」

 

「?」

 

「む、無視しないでください!!」

 

「寂しいんですか? えと、ここ、座りますか?」

 

「え、いいんですか? わーい!」

 

 

お馬鹿だった。

このエルフはお馬鹿だった。

少年もポンコツだが、山吹色もポンコツだった。

保護者2人は溜息をつき、フィルヴィスは青空を流れる雲を眺めていた。

 

「って・・・そうじゃないんですよ!?」

 

「あの、耳元で叫ばないで・・・」

 

「あぅ、ごめんなさいぃ・・・」

 

「そんなに勝負がしたいんですか? 【フレイヤ・ファミリア】じゃないんだし・・・平和が一番ですよ?」

 

「あんな派閥と一緒にしないでください!! っていうか、知ってたんですか。興味ないと思ってました」

 

「ないですけど・・・フレイヤ様が僕に会いに来るんですもん。ベンチに座ってたら、隣に座って頭触ってきたりするんです」

 

「貴方、気をつけないと食べられますよ。ほんと。・・・・っていや、それもどうでもいいんです! 勝負内容は何でも構いません! このまま貴方に悪印象を抱かれたままなのは嫌なんです!!」

 

「むぅ・・・」

 

「そ、それとも・・・」

 

 

何か、何かきっかけを・・・!何としても、きっかけにしてここから友人関係に・・・!と必死なエルフは彼の地雷をあえて踏み抜いた。

 

 

「リ、リヴェリア様の後釜として教育を受けている私に、あなたのお義母様の魔法が敗れるのが怖いんですか?」

 

「よし、殺りましょう」

 

「ベ、ベル!?」

 

「レ、レフィーヤ!? なぜ挑発する!? 馬鹿なのか!?」

 

「ふぅ・・・もう、好きにしろお前達。だがしかし、殺しはなしだ。あと少年・・・いやベル。霊薬実(タプアハ)は預かっておいてやるから少し離れてやるんだ」

 

「はい。ほら、行きますよ。『戦闘民族・ウィリディス』さん」

 

「原型すらなくなった!? レフィーヤですってばぁ!! あ、待ってくださーい!!」

 

 

リヴェリアはもう、『どうにでもなーれ』と思い旅の疲れを癒すかのように紅茶を啜り、空を流れる雲を見上げた。ああ、あの雲、なんか、あいつ(アルフィア)みたいな形してるなー、まぁ、勝負事なら好きにすればいいさ。そうやってお互いを高めていけばいい。うん、お前達の未来が楽しみだ。と優しい微笑みを浮かべた。

 

 

 

花びらが舞う草原にて、漆黒のドレスを揺らめかす白髪の女装させられている少年と、山吹色の少女は向かい合う。

 

 

「勝負内容は?」

 

「そうですね・・・今回は、急ごしらえなので・・・」

 

「決めてなかったんだ・・・」

 

「うぐっ・・・し、仕方ないじゃないですか、貴方が私を無視するから・・・」

 

「レフィーヤさん、だって、怖いし」

 

「うっ・・・泣かせちゃったことは謝りますからぁ・・・。その、今回は模擬戦にしましょう、手っ取り早いですし。あ、もちろん加減してくださいね?私も加減するので。大怪我したら大変ですし」

 

「わかりました。」

 

「では、いきます! 負けたら罰ゲームですからね!!」

 

 

ひゅう~っと風が音を奏でる。

2人の間には、偶然にも着陸していた鳥が1羽いた。

 

『決闘の合図かい? へっ、まかせなお嬢ちゃんたち』

 

とでもいうかのように、その鳥はブワッと花びらが待った瞬間、2人の間を突っ切るように飛び去った。それを合図として、少女は杖を前に詠唱を始めた。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の(ゆが)―――】」

 

「【福音(ゴスペル)】」

 

 

ゴーン。

 

と鐘の音が鳴り、山吹色の少女は後方に吹き飛ばされて転がっていった。それが止まると、頭が地面、尻が空を向き、目を回して気を失っていた。

 

 

「きゅぅぅぅぅ・・・・」

 

「白・・・」

 

「ベ、ベリュが3人いりゅぅ・・・」

 

「レフィーヤさん、下着、丸見えですよ」

 

「きゅうぅぅぅぅ・・・灰色髪の女性が見えましゅぅぅぅ」

 

「その、えと・・・僕、超短文なんだから、突っ立ってたら駄目だと思うんです・・・」

 

「うきゅぅぅぅぅ・・・・」

 

「えと・・・じゃあ・・・・罰ゲーム・・・耳、触りますね」

 

 

 

その日、暫く気を失った山吹色の少女は少年に耳を蹂躙され、オラリオに到着するまでおんぶされることになった。

 

 

意識が戻った頃に―――

 

 

「超短文詠唱の魔法持ち相手に棒立ちとは、考えなしかレフィーヤ!」

 

とリヴェリアに叱られた。

 

 

なお、彼女はその日を境に、少年もなんだか申し訳なく思ったのか恥かしがりながらも『友達になってあげます・・・サミシガリーヤさん』となぜか哀れみの目を向けられたが少女としてはもう目的を果たせたのでどうでもよかった。それ以上にやばかったのは気絶している間に見た夢の中、雪原の中で大量の深紅(ルベライト)の瞳の兎に全身を舐めまわされるだけでなく、灰色髪の女が現れて

 

 

『私の息子を苛めたな?』

 

『ひぃっ!?ち、ちがうんです、おばさま!?』

 

『【私はまだ24だ(ゴスペル)】』

 

『ふぎゃぁっ!?』

 

 

恐ろしい目に合う夢を見て、少年におんぶされながらガクブルと震えた。




アルフィアさんは享年24です。

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