Zバスターズ
「んぅ・・・・」
「―――あ、レフィーヤさん起きました?」
「―――ベル? なんで私、貴方におんぶされてるんですか?」
「意識を失ったからですけど」
「・・・・・」
「・・・・・」
「はっ!! そ、そうでした!? 詠唱したら、雪原の中にいて、怖い女の人に、それはもう追い詰められる夢を!?」
「大丈夫ですか?」
少年の背中で意識を取り戻したレフィーヤは、何が起きたのか記憶を再生する。
ステップ1.【決闘を申し込んだ】
ステップ2.【鳥が合図のように飛び立ったので、詠唱を始めた】
ステップ3.【なぜか雪原の中にいた】
ステップ4.【大量の兎に全身を舐めまわされた。】
ステップ5.【漆黒のドレス、閉じた瞼の美女に徹底的に追い詰められた】
ステップ3の時点で急に景色が変わっているが、思い出した出来事に少女はガクブルと体を震わせた。おんぶゆえに、少年の手は少女の太ももあたりに触れているが、密着しているが故に、エルフにしては大きい胸が当って形を変えているが、そんなことは些事だ。少女はとにかく体を震わせた。
「よ、よくも私の胸を好き放題してくれたなって・・・引きちぎられるかと・・・ガクブル・・・」
「大丈夫じゃなさそう・・・」
「ベル、【
「目覚めたけど、目覚めなかったほうがよかったかも・・・」
「【
「うっ・・・そ、そうですね。すいませんベル・・・その、えと、罰ゲームはどうしましょうか」
「え」
「え?」
少女は知らない。
もうすでに罰ゲームは終わっている事に。
意識が途切れる間際『じゃあ罰ゲーム、耳、触りますね』と言っていたはずなのだが、強過ぎる夢のせいで頭から消えてしまっていた。
故に――
「おかわりがほしいんですか?」
「い、いりません!! ちなみに、何したか教えてもらえませんか?」
「えっと・・・まず、レフィーヤさんの下着が丸見えだったので」
「なっ!?」
「とりあえず隠しておきました。」
「あ、ありがとうございます・・・・」
「それで、レフィーヤさんの耳をしばらく触ってました。」
「み、耳・・・あの、舐めたりしました?」
「さすがに、リューさんじゃないんだし・・・けふんけふん」
「お姉さん相手ならしてたんですか!? っていうか夢の中で兎に全身舐められたんですけど!? そういうことですか!?」
「チョットヨクワカラネーヤ・ウィリディス」
「その変なあだ名やめてください!! 雑です!!」
少女は理解した。
これがフィルヴィスがいっていた少年の指テクなのだと。
夢に現れたあの兎達、そして全身を舐められた、アレはまさしく現実の耳をスリスリ、もみもみ、きゅっきゅっとされたのだと。レフィーヤは体温を急上昇させ少年が姿勢を低くして降ろしてもらい、自分の耳を触って異常がないかを確認。
「こ」
「こ?」
「ここ、この、こんのぉ~・・・・・
「むっ・・・・罰ゲームをするっていったの、レフィーヤさんじゃないですか」
「うっ・・・で、でもぉ・・・ってあれ?」
「どうしました?」
「なんか、オラリオ静かすぎませんか?皆さん」
オラリオの市壁、その門まで近づいた5人は違和感を感じ取った。
「門番がいないな」
「それどころか誰も並んでいない・・・?」
「妙だ・・・普段ならこんなことはない。」
迷宮都市に入ってくる者達は総じて検問を受ける。しかし、今日、今現在それはない。どころか、誰1人としていない。もうすでに日が傾きかけた夕方頃、夕日を照らす門は虚しく沈黙を貫いている。
「どちらにせよ、入ってみるしかあるまい。」
「は、はい・・・リヴェリア様!」
そうして門をくぐり、5人が見た景色は、あまりにも普段の迷宮都市の日常とはかけ離れていた。露天は破壊され、さながら廃墟のような光景が広がっていた。
「無人・・・だと・・・? まさか、そんな、オラリオは・・・」
「「「「滅んでるぅうううう!?」」」」
5人は動揺した。
精霊郷に行っていたら、まさかのオラリオが廃墟に様変わり!!
「
「お、落ち着きなさいベル!! さすがにあの女神もここまではしない! はず・・・だ!」
「ベル、そしてリオン。お前達おちつけ。何か、何か原因があるはずだ・・・まずは生存者を探すぞ」
「と、とは言ってもどちらへ!?」
「わ、我々が廃墟に行っている間に、オラリオが精霊郷に・・・!?」
「逆ですフィルヴィスさん!!」
「はっ!?」
5人はすぐさま行動を開始。
何があったのかをしるためにも、生存者を探さなくてはならない。
1人の少年は美神を疑い
1人の金髪エルフは闇派閥を疑い
1人の王族は娘の安否を憂い
残りの2人は、耳を押さえて走っていた。
【アストレア・ファミリア】本拠、星屑の庭。
「だ、誰もいない・・・春姫さーん!! アストレア様ー!!」
「アリーゼ、輝夜、ライラ、ノイン、ネーゼ!?」
「無人ですね・・・何かをしている最中って感じでもありませんし・・・」
「大方、出払っている最中に何かが起きた。と考えるべきか」
「荒らされた痕跡もありませんし・・・」
「ベル、大丈夫です。私達の恩恵が消えていない以上、アストレア様は無事のはずです」
「う、うん・・・」
本拠には誰もおらず無人。
壁にかけてあるボードには、誰が巡回に出ているか、誰が迷宮に潜っているかを記すようにマグネットが張られており、輝夜、ネーゼ、リャーナ、アスタが迷宮に。それ以外は巡回ないしはオフだった。目ぼしい手がかりもなく、次は【ロキ・ファミリア】の本拠、黄昏の館に向かう。
5人は都市内を駆け回る。
ストリートを走っていると見えるのは、どれもこれも建物の入り口を塞ぐように設置されているであろうバリケード。そして、
『ウアァァア・・・』
目元に隈をつけた様子のおかしい住人達。中には冒険者らしい格好をしたものまでいた。
「な、なんですかあれは!?」
「おい馬鹿レフィーヤ! ベルのお陰で気付かれていないというのに、なぜ大声を出す!」
「す、すみませんリヴェリア様!! ですが、仕方ないですよこんなの!!」
「くっ・・・仕方ありません、昏倒させます!」
レフィーヤの声に気がついた周囲の住人達は、呻き声のような声を出しながら、襲ってくる。
それを全員で素手、もしくは杖によって打撃し眠らせる。
しかし
『ウワアァァァ・・・』
『ウガアアアア・・・』
「効いていない!?」
「くっ・・・状況が分からない以上、怪我をさせるわけにもいかない!逃げるしか!」
「彼等だけではない、他にもあちこちにいる!」
「・・・リヴェリアさん、一度吹き飛ばします!」
「むっ・・・ええい仕方ない! やれ、ベル!」
「【
近づいてきた複数の謎の集団を吹き飛ばし、5人は走る。
吹き飛ばされ倒れている者達を横切り、ふとレフィーヤが振り返ると、もそもそと立ち上がり、再びこちらに向かってくる。
「え、嘘でしょう!? なんで立てるんですか!?」
「か、加減したけど立てるはずない!」
「ええい、今は走れ! 撒いて再びベルのスキルで気付かれないようにするしかあるまい!」
「・・・・・」
「リューさん?」
「その、先ほどの暴漢達の中に、我々の派閥の者が・・・あれは・・・マリューでしょうか・・・」
「そ、そんなぁ!?」
■ ■ ■
「結局、【ロキ・ファミリア】の本拠も無人でしたね。この騒ぎで出払ってしまったんでしょうか?」
「可能性としては捨て切れないが・・・」
「迷宮に潜っている可能性はあるでしょう。」
「どうしましょう。今のところ、生存者は道中にいなかったわけではありませんがバリケードのせいで中には入れませんでしたし」
「こういう場合は・・・人の多いところに行くべきでは?」
「ギルド?」
「それもあるが・・・
「ふむ場所そのものも大きい・・・行ってみるか」
フィルヴィスの提案から、次の目的地はカジノに。
道すがら追われている民間人を見つけては保護し、バリケードがしかれている建物に入れさせていく。
「しかし、気絶させようにもああ立ち向かってこられてはな・・・」
「ええ、加減が難しい」
『いやあああああああああっ!!』
「! 悲鳴!?」
「あっちです、あちらの路地裏の方から!」
女性の悲鳴が聞こえ、5人は路地裏へと駆け込んだ。そこには、女魔導士。
バリケードがしかれている建物のドアを何度も叩いて助けを求めていた。
『早くバリケードの中に入れて!』
『だ、駄目だ! 満員なんだよ! 他の場所に行け!』
バリケードの中にいた者から突き飛ばされ、彼女は尻餅をついてしまう。
『そ、そんな・・・お、お願い、入れてっ、入れてぇ!』
「くっ・・・! ベル、彼女を背負いなさい! 彼女を
「わ、わかった!」
『ウアアアアア・・・・』
『い、いや、いやああああああああ!?』
「【
『ギャフッ!?』
「・・・え?」
「背中に乗ってください! ここは危ないです!」
女性に迫る謎の住人達を魔法で吹き飛ばし、少年はすぐに女性を背負い、屋根に飛び移り、遅れて5人も屋根に移る。
「奴等は屋根の上には上って来れないみたいですね・・・」
「そのようだ。はぁ・・・何がどうなっている。冒険者までやられているとは・・・娘、何が起きている?」
「え・・・えぇ!? ロ、ロキ・ファミリアに、アストレア・ファミリア!? まだ生きてた!?」
「「勝手に殺すなぁ!?」」
未だ混乱する女性に事情を聞くも、急に人々が暴れ出しただの、冒険者までやられただのとこれまた理解ができない内容。
「いつから起きたのかわからないのか?」
「は、はいぃ・・・少なくとも今朝にはもうすでに・・・」
「ということは我々が精霊郷を出る頃か少し前から、ということでしょうか」
「つまり、昨日か一昨日?」
考えを巡らせながら、屋根越しに
「気付かなかったが、上から見ると生存者はああしてバリケードの中に立てこもっていたわけか」
「意外にも無事みたいですね。」
生存者の確認ができた、そこに―――
『じゃがまるうううんんっ!』
と叫びながら飛んでいく金髪が少年の瞳に写る。
「あの、今、アイズさんが飛んでたんですけど」
「は? アイズさんが飛ぶわけないじゃないですか。ベルはお馬鹿なんですか?」
「いや、でも」
「そうだぞ、クラネル。いくら【剣姫】だからって空は飛べないだろう。もし飛んでいたなら、私はこの耳を差し出すぞ」
みんな飛んでいないって言ってるし、気のせいかな?
そう思って、再び背負っている女性を落とさないように慎重に、けれど急ぎ足で歩いていると再び声が聞こえた。
『うぅぅぅぅ、じゃがまるくううううううううんっ!!』
「ほ、ほら! 飛んでるじゃないですか!?」
「な、そんな馬鹿な!?」
「はい、フィルヴィスさん後で耳触りますからね!」
「くぅ・・・!?」
「いやいやいや、いくらLv.6だからってアイズさんは空を飛びませんよ。きっと2人は疲れてるんですよ。ね、リヴェリア様?」
「あ、あぁ・・・そうかもしれないな。私も、疲れている気がする」
「嗚呼、リヴェリア様・・・顔色が・・・」
少年とフィルヴィスは、確かに見てしまった。
かの【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタインが残念な奇声を発しながら空を飛び、どこかへと去っていくのを。
「リ、リヴェリアさんも空、飛べますか?」
「やめろ、飛べるわけがないだろう。変な期待をするな」
■ ■ ■
「無事やったかぁ! リヴェリアママぁあああ!!」
「ええい、抱きつくな! 私達は先ほどオラリオに着いて状況を把握しきれていないんだ!」
「みんなも無事でよかったわぁ! あとお帰りなぁ!」
「これは何の騒ぎです?」
「ええとなぁ・・・うちらも着いたのは、わりとさっきでなぁ。何でも、ここに金をつぎ込んでるのは自分やから、自分が食料を分配するーって言っとるやつがおってな。生存者同士の醜い争いが起こっとんねん。ゾンビものの醍醐味や。」
「ゾ、ゾンビ・・・?」
「ごめんリオン、ベル。私達も何とかこの場を納めようとしたんだけど・・・」
「私達もわからないことだらけで・・・」
「んでな、そこでさらにゴロツキ共が偉そうにしとったからな? ベートにぶっ飛ばさせて場をおさめてん。」
「は、はぁ・・・」
「ところで、神ロキ。ゾンビ・・・とは?」
「ん?ああ、そか知らんか。えと、順番に答えるなー。まず、ウチの眷族は、各々迷宮に潜っとる。もうすぐ
「フィンとガレスは?」
「ティオナ達とダンジョンや」
ロキはどこか状況を楽しんでいるような顔をしながら、順番に説明していく。
何が起こっているのか、やはり全く把握できておらず、街から悲鳴が上がった途端、パニック、パニック・・・パニック。ロキは護衛にアキを頼み、アストレアと一緒に、アルフィアの墓参り&ベルには伏せて墓の中の調査を行って星屑の庭にて茶を飲んでいた。
悲鳴が聞こえたため、何があったのかと窓から街を見てみると外を徘徊する・・・『ゾンビ』なるものが溢れていた。
「あのロキ様?『ぞんび』って何ですか?」
「神々の中やと一般じょーしきやけど、まぁ下界の子らは知らんか。せやな――」
簡単に言えば『死人』。痛みも恐怖もない、歩く屍。けれどそれは、あくまでも神々の妄想、小説に出てくる作り話で実際にいるものではないらしい。
「つまり・・・どういうことでしょうか?」
「つまり、あいつらはゾンビのそっくりさんや。意識、恐怖、痛みを感じへんなって、生きとる奴を襲う・・・で・・・そいつらに引っかかれたり噛まれたりした奴が、感染してゾンビになる・・・っちゅうとこまでな。」
「ああ・・・襲ってきた者達には確かに噛み傷があったな。」
「では、それが感染経路ということでしょうか・・・」
「まあ、一般人がゾンビになったところで、自分らにはどうってことないやろうけど、無力化ってなると骨かもなぁ」
ゾンビは生きているものを永遠に狙い続け、例えばバリケードをしいていたところで、中にいるのを察知しているのかいずれは破壊し襲い掛かるのだという。
「原因を追究しなければそもそも解決しない・・・?」
「おい兎」
「ベートさん?」
「てめぇのあの魔法で治せねえのか」
「無理ですよ、だって今日満月じゃないですし」
「あー・・・精霊郷にいた時が丁度満月でしたもんね」
「ちっ」
「舌打ち!?」
「あの、神ロキ・・・アストレア様は?一緒にいたのでしょう?」
「ああ・・・それがなぁ」
何だかんだで、女神アストレアもゾンビがいる状況に興奮していたのか、非難している最中、助けを求める声を聞いてアリーゼと一緒にどこかへ行ってしまいロキが振り返るともうすでに姿はなかったらしい。
「びっくりしたわよ、振り返ったらいなかったんだもの」
「そ、そんなぁ・・・」
「あの方はあれでも、お転婆なところがありますからね」
「アストレア、ウチ等とおるとき、バリケード越しにゾンビ見て何だかんだで楽しそうにしとったしな。ホラーもの好きなんちゃうか?」
「・・・・たまに寝る前に読んでた。やめてほしい・・・」
「ベ、ベル・・・まさか、読み聞かされたりしてないですよね?」
「それが、たまにされるんですよレフィーヤさん。耳元で囁かれるんです。」
「うわぁ・・・」
「それでロキ、そもそもの騒動の原因、目星はあるのか?」
なぜゾンビが生まれたか・・・そっちは想像がつくらしく、そもそもゾンビを知っているのが神々である以上、どこかの神が原因に違いないらしい。
「大方、自分が大好きな空想の世界を現実にしたい・・・そんな風に思っとたんとちゃうか?」
「なんで
「迷惑すぎる・・・」
「せやけど、ここにはくっそ強い面子が揃っとる! いけるやろ! そんなくだらん妄想も、こんなド三流の騒動も・・・『Zバスターズ』がすぐ解決したるわっっ!」
「何ですそれは? 解毒薬か何かですか?」
「ちゃうわ! どう考えても薬の名前ちゃうやろ!?」
「知りませんよ・・・」
「ずばり!半人半妖の悪魔祓いをリーダーにした悪魔祓い専門の特殊技能集団やっっ!」
半人半妖・・・そのワードで、誰もが一匹の狼人に目を向けた。
「おいおいおいおい・・・まさか・・・」
「そう! 行くんや、ベート! オラリオの明日を取り戻すために!」
「ふざけんな! 勝手に変な役を押し付けんじゃねぇ! 」
「頑張ってください、ベートさんっ」
「まぁなんだ、頑張れ【凶狼】」
「応援しています、【凶狼】」
「えと・・・ファイト、ベートさんっ」
「うるっせぇ! あと兎、てめぇ雑だ!もっとなんか言いやがれ!」
「安心しい、ウチが司令官や。」
「ロキ司令官!」
「ロキ司令官!」
「あ~ええこや~ウチこういうん好きやで~最高や~なぁ、ベルたん、ウチんとこ来うへんか?ん?今ならレフィーヤのおっぱい付いてくるで」
「アストレア様じゃないと嫌でーす!」
「えぇ~いけずぅ~あと、なんや、ええおっぱい・・・しとるやん・・・けっ」
「ひっ!? 【
ベルの姿を見たロキが、涎を垂らしてセクハラを行おうと手をワシャワシャさせながら迫り、それに『レフィーヤに襲われた』ことがフラッシュバックしたベルが反射的に砲撃。ロキはその場に、床に叩きつけられた。
「うぎゃぁっ!?」
「ロ、ロキィ!?」
「自業自得だ、馬鹿者」
「自業自得です、神ロキ」
「フーッ、フーッ!!」
「どーどー、どーどー、落ち着け、クラネル。悪は去ったぞ」
両腕で必死に、アミッドの胸を守る少年を宥めるフィルヴィス。それに溜息をつくのは保護者のリヴェリアとリュー。
「と、ところで・・・なんであそこでモルドさん倒れてるんですか?」
「えっとねベル・・・」
「? どうしたんですか、セルティさん」
「あれが、ゴロツキの正体で、場を納めるために【凶狼】がぶっ飛ばした」
「・・・さすが、リーダー」
「おい、その羨望の眼差しやめろ」
「ベル、貴方はこの狼のようになってはいけませんよ。ちなみに、殺してませんよね?」
「殺すかぁ!?」
「だ、大丈夫や・・・安心しぃ・・・こういうのはな・・・『ギャグキャラは死なない』お約束やねん」
「ロキ様もギャグキャラ?」
「くっ・・・ウチは突っ込み役や!」
「次はどこに行くんですか?」
「さすがに空振りは困る」
「ふっふっふ、情報取るなら、神々の社交場・・・神聖浴場に決まっとるわ!」
「あ、お祖父ちゃんが昔覗いたって言ってたところかな?」
「貴方のお祖父さんは何をしているんですか!?」
大神ゼウス。彼は女神のみが入浴される事を許された『神聖浴場』を歴史上唯一覗いたことのある神物。この件により浴場の警備はより厳重とされ虫一匹の侵入さえ出来ないが、その偉業は今でもオラリオで伝説として語り継がれている。
「覗きは男の浪漫らしいですよ、レフィーヤさん」
「し、知りませんよ! あ、覗きしたら殺しますからね!」
「する理由がないんですけど・・・」
「真顔で答えないでください!」
「まぁまぁ、そこは別にええから・・・あそこやったら色々神もおりそうやしデメテルかて常連やからな~。」
「アストレア様は行かないのかな」
「ベルを置いていけるはずないでしょう」
「気を使ってるってこと?」
「いえ、そうではなく。貴方がダンジョンに潜っている時は行っているときもありますが・・・あのお方はベルといる時のほうが安らぐとのことで・・・」
「え、ベル、貴方、アストレア様と一緒に・・・?」
「? レフィーヤさんもロキ様と入ればいいじゃないですか」
「せやで、レフィーヤ! いっぱいおっぱい育てたるで?」
「いやですよ、こんな破廉恥神!!」
再び、懲りずに今度はレフィーヤの胸に手を伸ばしてきたロキに顔を赤くしたレフィーヤが拳を叩き込んだ。
「ぐっほぉ!?・・・ええパンチや。腕、上げたなレフィーヤ・・・。それより、セクシーゾンビ・・・げふんげふん、デメテルを探して『神聖浴場』に行くでぇ」
半数以上が『しょうもないことに付き合わされる』と察して溜息をつき、少年少女が『どんなところなんだろう』と好奇心に胸を躍らせて、次なる目的地に向かうのだった。
「よし! 『Zバスターズ』出撃や!」
「「はい、わかりました司令官!」」
「【