兎は星乙女と共に   作:二ベル

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vsエクストラミート

「誰もいない・・・?」

 

「おかしいなぁ~。堅牢な建物やし避難場所になっとると思ったんやけど・・・」

 

「いや・・・・臭いも、気配もある。奥の方だ。」

 

「この部屋も開きませんね・・・仕方ありません、壊します」

 

「アカンアカン、中にぎょーさんゾンビおったらどうすんねん。ゾンビ物で短慮はアカンで!」

 

 

神聖浴場。

それはその名の通り、神のみが入浴することを許された清浄な浴場だ。

広大な浴室には大小様々な浴槽の他に巨大な樹木や天然の岩が配置されており、大自然の演出を買って出ている。石材を削って造られた壁や柱の内装も精緻かつ荘厳であり、豪奢な極みがつくされていた。

この神専用の大浴場は、ギルドが都市に住まう神のために設け管理されており、各【ファミリア】から徴収した税の一部を神への尊崇の意味もこめて彼等の娯楽施設として還元させているのだ。

 

もっとも、男神達の利用率は低いらしく、神聖浴場といえば、まず女神達のものを指すらしい。

その昔、どこかの狒々爺の神による覗きを許して以降、ギルドによる警備は鼠1匹逃がさないほどに厳重になった。

 

そんな場所に、神1、兎1、狼1、妖精4で構成された『Zバスターズ』が足を踏み入れた。

 

 

「ロキ様」

 

「ん?どないしたん、白っこ」

 

「白っこ・・・まぁいいや。えと、なんでこんなに暗いんでしょうか」

 

「あー・・・たぶん、『おやくそく』っちゅうやつやなぁ。」

 

「『おやくそく』・・・・?」

 

「まぁゾンビ相手に冒険者っちゅうだけで、ルール無視しとるんやろうけど・・・っちゅーか、白っこのスキルのおかげで、そもそも難易度がイージーすぎんねんなぁ。なんや、ゾンビに無視されるって。」

 

「あ、でも大声出すと見つかりますよ?」

 

「まじかいな」

 

神ロキからの『おやくそく』を教えられ、現在足を踏み入れている施設が暗い事に納得・・・納得?した面々は、警戒を怠ることなく足を進める。なお、神ロキ曰く、こういうゾンビもので『空を飛ぶ』乗り物を使うと

 

 

「もれなく墜落するで。これも『おやくそく』や」

 

とのこと。

 

 

「おい兎」

 

「? なんですか、ベートさん」

 

「てめぇのスキルでどこにいるかわからねぇのか?」

 

「ええと・・・ごめんなさい。死亡している扱いになってるのか、無反応です。」

 

「そもそも、どういう条件で見つけているんだ?」

 

「えっとアミッドさんが言うには、僕の心臓の鼓動が波になっててそれに向こうからの鼓動とか、音がぶつかって・・・とかなんとか」

 

「まぁゾンビは基本的に『動く死体』やしなぁ・・・これもおそらく、『おやくそく』なんやろなぁ。」

 

「ちっ」

 

「し、舌打ちされた・・・」

 

 

狼に、『使えるんだか使えないんだかわからねぇ野郎だ』みたいな目をされてショックを受ける兎を金髪妖精のリューが哀れみ肩にぽんっと手を置いて通路を歩いていく。

 

「あ、あそこに倒れている女性・・・ギルドの守衛の方でしょうか?」

 

「お、腰に鍵ぶら下がっとるやん!レフィーヤ、取ってきてー。」

 

「えっ、私!?」

 

「あったりまえやん! このままやと自分、活躍どころなくして『映す価値なし』になってまうで。」

 

「うぐっ・・・・わ、わかりました」

 

ロキに促され、恐る恐る倒れている女性のもとまで歩み寄るレフィーヤ。

女性の腰には確かに鍵がぶら下がっており、それを気を失っていることを確認して、そーっと鍵を取り上げた。

 

「こ、怖くなんか・・・。も、もらっていきますねー。」

 

「腰がひけているぞ、レフィーヤ。」

 

「フィ、フィルヴィスさぁん・・・!」

 

『ウガアアアアアアアア!?』

 

鍵に手をかけると、たちまち女性がいきなり立ち上がり、レフィーヤにむかって襲い掛かってくる。

 

「きゃぁあああああ!?」

 

「レフィーヤさん!――【福音(ゴスペル)】!」

 

ゴーン!

 

という極力回りに音が響き渡らないように調整された砲撃で女性を壁に吹き飛ばし、兎は山吹妖精を抱き寄せ救出。鍵もしっかりと入手した。

 

▶【Zバスターズ】は、施設の鍵を手に入れた。

 

 

「だ、大丈夫ですか? レフィーヤさん?」

 

「・・・・きゅるるん」

 

「は?」

 

「はっ!? な、なんでもありません! それにしてもいい胸してますね、これ。本物(アミッド)さんもすごいんでしょうか」

 

「怒りますよ」

 

「ご、ごめんなさい!?」

 

「ぶふふふふっ! レフィーヤやっぱビビっとったー! もの取ろうとしたら急に動き出すんはゾンビあるあるやでー!」

 

「殴りますよ?」

 

「あと白っこも、ええ乳しとるなーホンマ。ちょっと触らせてーなー」

 

「埋めますよ?」

 

「あ、ごめんなさい、調子に乗ってすいませんでした痛たたたっ!? 2人とも堪忍やー!? ほら、この鍵で浴場の方に行けるでー!」

 

 

『ほんまあの子、アルフィアに似てきてへんか?おお、こわっ』と2人に顔を抓られ、腹を抓られ、足を抓られたロキは抓られた部位を撫でながら、小声でそんなことをもらし閉じられている扉に鍵を差しこみ、『ガチャ』という音を立てて扉を開けた。

 

「よし。この鍵はもう必要ないな、捨てるわ。」

 

ぽいっ。と当たり前の様にロキは鍵を放り捨てた。

 

▶【Zバスターズ】は、施設の鍵を失った。

 

「ちょ・・・!? まだ使うかもしれないではないですか!」

 

「ええか、フィルたん。そういうもんなんや。ゾンビものはな。」

 

「フィ、フィル・・・たん・・・」

 

「ロキ様ロキ様」

 

「ん? なんや?」

 

「他にも、『おやくそく』てないんですか?」

 

「んー・・・せやなぁ。例えばー」

 

曰く、『こ、こんなところにいられるか! 俺は部屋に戻るぞ!』と言った奴は消える。

曰く、『先に行け! ここは俺が食い止める!』と言った奴もやられる可能性がある。

曰く、『カップルはだいたい死ぬ』。

曰く、『幼児のゾンビはいない』。

曰く、『襲撃イベント』がある。

曰く、『治安維持を担う組織は役に立たなかったりする』。

曰く、『着ている衣類はボロボロ』。

 

 

 

「なぜ、幼児のゾンビはいないのですか?」

「え、【ガネーシャ・ファミリア】の人達を見かけないのってそういうことなんですか!?」

 

「あー・・・リューたんにレフィーヤ、それはな、大人の事情やな。」

 

「は、はぁ・・・」

 

「もうわけがわかりません・・・」

 

「どうでもいい。とっとと調べるぞ。」

 

 

中を進んでいく。

かわらずゾンビが数体うろついており、それをリューとベートが蹴散らし道を開いていく。

 

「あの、ベルのスキルで気付かれないなら、別に倒す必要ないんじゃ?」

 

「いえ、そうとも言えないでしょう。ベルのスキルは絶対ではありませんし・・・何より、大きな音に反応するのであれば倒して無力化しておくにこしたことはありません」

 

「んまぁ、拘束したところでリミッターが外れてしもうてるからすぐに壊されるやろうけどなぁ。」

 

「しかし・・・どこを見ても『奴等』しかいないな」

 

『あぁぁぁぁぁ・・・・』

 

「ここにも溢れてやがんのか・・・女神しか入れねえ筈じゃなかったのか。」

 

「非常時やからな。子供好きの女神でもおったんやろ。」

 

「とりえず、閉じ込めておきますか?」

 

「んー・・・そんじゃ、頼める?」

 

「はい。【ちょっと運びますね(ゴスペル)】。」

 

 

倒れ伏している5体ものゾンビ。

それを音の砲撃で開いている部屋に放り込み、すぐさま施錠。

しかし、兎が振り返ると、保護者たちがなんともいえない顔で見つめていた。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「「「「雑」」」」

 

「!?」

 

「ま、まぁまぁ・・・それより、デメテル様ですよね? 探すのは。何でなのか知りませんけど。」

 

「そんなん・・・見たいからに・・・けふんけふん・・・・もう少し探してみよか。行くで、【Zバスターズ】!」

 

「・・・なんか、神様と冒険してるみたいで新鮮ですね」

 

「おぉぉ、わかってくれるか!? 自分らだけしかダンジョン入れへんから、ウチは寂しくて寂しくて・・・うっうっ」

 

「やめろ、見え透いた嘘泣きをするなロキ」

「やめやがれ、きしょくわりぃ」

「やめてくださいロキ。帰還するたびにセクハラばかりするくせに」

 

「レフィーヤさんもするくせに・・・」

 

「何かいいましたか、ベル?」

 

「んー、なにも?」

 

 

【Zバスターズ】の冒険は、つづく。

 

 

■ ■ ■

 

「デメテルおらへんな~。下着でも落ちてたら、ベートがクンクンして一発なにゃけどな~。」

 

「蹴り殺すぞ!」

 

「まさか・・・いつもそうやって匂いを・・・」

 

「さすがに軽蔑するぞ・・・」

 

「Lv.6の嗅覚って、すごいのかな・・・あ、でも、叔父さん『獲物の味』とかなんとか言ってたような・・・?」

 

 

軽蔑、驚愕、好奇心、それぞれの視線が、一匹の狼に向けられた。

狼が眉間に皺をよせ、ピクピクと目元をひくつかせ、怒り、吠えた。

 

「信じるな!! 誰がやるか!!」

 

『ガタッ』

 

「!」

 

「リーダーのせいでゾンビに気付かれたんじゃ!?」

 

「おい兎、てめぇその呼び方やめやがれ!」

 

「用心しろ、ロキの言うゾンビかもしれん。もしもの時は頼むぞベル」

 

「はいっ」

 

「おい無視してんじぇねぇぞ。っていうか兎をかばってんじゃねぇ、ババア」

 

狼の咆声に反応したのか、物音がした部屋へと面々は向かっていく。

室内は薄暗く、先ほどの物音がしたとは思えないほど静まり返っていた。

 

 

「デ、デメテル~、おるか~?」

 

『―――ウワァアアアア』

 

「って自分かーい!」

 

「ヘルメス様!? 何で!?」

 

「何故この神がここにいる? それに顔が引っ搔き傷だらけではないか・・・」

 

現れたのは、橙黄色の髪に旅行帽を被った優男風の男神ヘルメス。

顔には無数の引っ搔き傷に目元には街中にいるゾンビと同じように目元に隈ができていた。

 

「大方、この騒ぎに乗じて念願の神聖浴場を覗こうとしたんやろ!」

 

「最低すぎます・・・」

 

『ファ!? ウガウ、ウガウ!?』

 

「そんなに気になるなら、アスフィさんと入ればいいじゃないですか!」

 

『アスフィージャァ、駄目ナンダヨォ、ベルクゥゥン!覗キハ、男ノ、浪漫ナンダァアアア!』

 

「・・・とりあえず後日、アンドロメダに報告しておきます。」

 

「待て・・・あちらに気配が・・・!」

 

 

ヘルメスよりさらに先、影からさら女性が現れる。

オレンジに近い色の頭髪、グラマラスなボディ。

アフロディーテも裸足で逃げ出す、『爆乳(エクストラミート)』。

 

 

『ンアアァァァァン!』

 

「神デメテル!?」

 

「セ・・・セクシーゾンビキタァァァ!」

 

 

セクシーゾンビ、その真名――否、神名は『デメテル』。

大らかで慈悲深い性格の持ち主、巨乳に敵対心をもつロキでさえ毒気を抜かれるほどの神物。

 

「なんだその反応は!」

 

「なんでロキ様喜んでるんですか!?」

 

「あたりまえやん! セクシーゾンビやぞ!?」

 

『ンォオオオオオ!!!』

 

「お前も喜んでるんじゃねえよ!」

「ヘルメス様まで喜ばないでください!」

「やれ、兎!」

「【福音(ゴスペル)!】」

 

「セクシーなねーちゃんが序盤でゾンビになる! それもゾンビものの定番!」

 

「じゃ、じゃあ・・・フレイヤ様がゾンビになったら・・・」

 

「魅了も兼ね備えた最強のゾンビのできあがりじゃないですか!!」

 

「やっぱり美神は滅ぼすべきなんじゃ!?」

 

「やめなさいベル! そうやってちゃんと相手を知らずに敵意をぶつけるのは間違っている!! いえ、まぁあの派閥は何かと危険ですが・・・!」

 

まさかまさかの神がゾンビになるという状況。

そして、デメテルがセクシーゾンビなるものになるという状況に、【Zバスターズ】は大混乱!!

司令官ロキは、歓喜のあまり声を裏返し『庭を駆け回る犬』のようにはしゃぐ始末!!

 

兎はあろうことか、美神フレイヤがゾンビになったら・・・を想像して震え上がった!!

どう足掻いても、タガが外れた彼女に食べられる未来しかないのだから!!

 

「てめぇら、楽しんでんじゃねぇだろうな?」

 

「んなわけないやーん。あ、でもデメテルがここでゾンビになっとるってことは・・・あのおっぱいに顔を埋めながら噛み付いた女ゾンビがいるっちゅうわけで・・・百合か、百合なんか!?滾るわー!」

 

「やっぱり楽しんでるんじゃねえか!」

 

「ア、アストレア様・・・アストレア様は!? アストレア様のお胸は!? 僕のアストレア様はどこ!?」

 

「ベ、ベル、帰ってきなさい!! 気を確かに!! アストレア様の胸はきっと無事です!! ええきっと無事ですとも!!再会が果たされたその暁には、消毒液をたっぷりかけてあげましょう!!」

 

「ベルにリオン・・・お前達も落ち着け・・・」

 

「あぁ・・・リヴェリア様のお顔が疲れに満ちておられる・・・」

 

「そもそも、神様もゾンビになってしまうんですか!?」

 

 

混乱(カオス)渦巻く、薄暗い室内!

1匹の兎と1人の妖精は、己の主神の胸の安否を案じ、みんなのママたる王族妖精は頭を抱えていた!! レフィーヤの驚愕した顔から放たれた質問に、ロキは『ぺっぺけー』と交換音でも出すかのように親指を立てて答えた!!

 

 

「設定的には苦しいけど、オモロいからアリや!」

 

「わけのわからんことを言ってる場合ではない! まずは一旦拘束して、隔離する!」

 

「でも、デメテル様やヘルメス様に手をあげるなんて・・・!」

 

「ヘルメス様ならさっき吹き飛ばして・・・あ、ほら、湯船に浮いてますよ」

 

「ヘルメス様ぁあああああ!?」

 

「状況が状況だ、なりふり構ってられるか!」

 

『あああああああああぁん!』

 

「あ、ベル」

 

「へ?」

 

 

▶セクシーゾンビ・デメテルは兎を掴み、壁に追い込んだ。

 ▶兎は混乱している!!

 

「あれ、まずくないですか?」

 

「ベルがゾンビになっては我々の行動に支障がでるぞ!」

 

「ちょいまちーや、見てみぃ・・・あれ」

 

神ロキは見た。

瞼に涙を溜めてプルプル震える壁際の兎が、女神の『爆乳(エクストラミート)』によって身動きを封じられているのを。ロキは遠い目をして、慈愛の目を持って、まるで子供が大人になったことを喜ぶかのような顔をした。

 

 

「あれが・・・・『乳ドン』か。」

 

『兎サァアアアアン!』

カプッ。

 

▶セクシーゾンビ・デメテルは、女神アストレアが可愛がっている兎の肩につまみ食いをするように噛み付いた。

 ▶兎は顔を蒼白させた。

 

 

「「「「あ。。。」」」」

 

 

「ほわぁああああああああっ!?」

 

▶兎の悲鳴が室内に木霊した。

 

■ ■ ■

 

 

「よぉし、次はいよいよ本命のギルド本部や! 人も情報も、あそこなら集まっとるやろ~。」

 

 

【Zバスターズ】は神聖浴場を後にし、再び建物の屋上に立っていた。

神ロキは『ええもん見れたわぁ~』とでもいうかのように前髪を掻き分け、夜風に当っている。

 

「悲しい・・・事件だったな・・・」

 

「フィルヴィス・・・ざぁん・・・・ひっぐ・・・えっぐ・・・ぐすっ・・・うぅぅぅぅ・・・!」

 

「ベ、ベル・・・その、大丈夫ですか?」

 

「リューざぁん・・・何で助けでぐれなっぐすっ・・・ひぐっ・・・!」

 

「す、すいません・・・一瞬の出来事で・・・」

 

「ベ、ベル~ほら、元気だしてくださーい!」

 

「ひく・・・おっぱい怖い・・・」

 

「ロ、ロキでも見て、中和してくださいベル!!」

 

「おいレフィーヤ!聞こえとるぞ!!」

 

一匹の哀れな兎は、肩にリップマークをつけて涙を何度も拭っており保護者達【Zバスターズ】はなんともいえない顔で目をそらしていた。あのベート・ローガでさえも

 

『兎・・・てめぇはよくやった・・・』

 

と同情するレベルで。

 

 

「ほれ、それよりはよ行くで~ギルド本部に」

 

「最初からそっちに行けば良かったじゃないですか・・・」

 

「・・・なぁ、何故クラネルは噛まれたのに、ゾンビになっていないんだ?」

 

「そういえばそうですね。何ででしょうか。ロキ、わかりますか?」

 

「んなもん、主人公補正やろ。」

 

「・・・はい?」

 

「あーでも、ウチとしては、白っこ・・・言いにくいな。ベルたんはヒロインっぽいしなぁ・・・」

 

 

まーた何かわけわからないこと言ってるよこの神・・・という目は誰もがしていた。ただし、リューだけは顎に手を当てて思い当たる節があるのかベルを何度もチラチラ見ては思考を巡らせていた。

 

 

「リオン、何か心当たりでも?」

 

「リヴェリア様・・・ええ、まぁ。もしかしたら【聖火巡礼(スキル)】のおかげかと。」

 

「どのような効果だったか・・・この子のスキルは我々も開示してもらってはいるが・・・」

 

「どうしてこの子、個人情報を他派閥に教えているんですか?」

 

「本人が気にしていないようですので・・・。ああ、でも知られてはいけないことはさすがにアリーゼ達がいろいろと気を巡らせているみたいです」

 

 

聖火巡礼(ペレグリヌス・ウェスタ)

・自動起動

・浄化効果

・生命力、精神力の小回復。

・生きる意志に応じて効果向上。

・信頼度に応じて効果共有。

・聖火付与(魔力消費)

・魔法に浄化効果付随

 

一度、建物の屋根で腰を下ろした面々は、リューが羊皮紙にメモ書きした思い当たるスキルを確認する。

 

「ベル? 体に異変というか、違和感は?」

 

「ぐすっ・・・えと、背中のスキルのとこがちょっと熱いです?」

 

「うーん・・・たぶんやけど、この『浄化効果』っちゅーのちゃうか? 自動起動ってことは、この子の体に良くないものが入り込んだらそれを追い出そうとかしとるんやろ。」

 

「信頼度に応じて効果共有ってことは・・・リューさんも問題ないんじゃ?」

 

「・・・・信頼度の度合いがわからないな。我々ではどうなのか、という意味で。」

 

「あ、あと、近くにいるかどうかも関係あるんじゃ?」

 

「可能性はあるな。基準としては・・・ベルたん、リヴェリアママは好き?」

 

「え・・・えと、はい」

 

「じゃあ、リヴェリアママは大丈夫そうやな。じゃあ、レフィーヤは?」

 

「友達いなさそうなので、友達になってあげました」

 

「なっ!?」

 

「ぶっふぅっwwww レフィーヤ良かったなぁwwwwアイズたん等に『あの子とどうすれば仲良くなれるんでしょうか・・・』とか食堂で相談して、ティオネに『押して駄目なら押して押して押すのよ!!』って言われてたもんなぁwww」

 

「ロ、ロキィ!!? あ、あとベル、私、ちゃんと友達いますから!! あなたよりずーっといます!!むしろ、あなた友達いるんですか!?」

 

「え・・・と? アイズさんとティオナさんとローリエさんと、ヴェルフにリリに命さんに・・・・」

 

「あ、もういいです。殆ど年上のお姉さんしかいなさそうなので。はい、お腹一杯です」

 

「?」

 

 

脱線した話をする神と子に、くだらないものを見る目をしていたベートが夜の街を見ながらふと、『そういやいねぇな』と思い出して口を開く。

 

「・・・そういや、アイズはどうした? あいつは確か今日はダンジョンに行ってないはずだろ」

 

「え? 飛んでましたけど」

 

「あ?どういう意味だ兎」

 

「リーダーだってその尻尾を回せば飛べるんじゃ?」

 

「飛べるわけ、ねぇだろぉ!!」

 

「まぁまぁまぁ・・・・意外とギルドにおるかもしれへんなぁ。さ、レッツゴーや!」

 

 

 

▶【Zバスターズ】は、悲しい傷を負った兎と共に次なる目的地、ギルド本部へと足を向けた。


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