―――音が聞こえる。
ちょろちょろと流れる下水の音に耳を傾けながら、冷たい目をした、男神が暗い場所で呟いた。
その後ろに佇む、糸目の男は首を傾げて問うた。
「音? 一体何が聞こえるというのですか、我が主?」
――あがく音だ。
「潰されまいと虫のようにもがき続ける――『正義』の音色。」
――ああ、そうだ。これは『悪』に抗う者達の音色。
「あれだけの絶望を味わっておきながら、未だ折れない。さすがはオラリオ、『約束の地』。実にしぶとい。」
冷たい瞳の男神は、どこか喜ぶようにその冷たい瞳を細めた。
周囲に集うのは、『悪』を名乗る者達。
桃色髪の女に、白髪の男。糸目の男に、白いローブを着込んだ『信者』達。
「勘違いするな。これは賛美だ。かつての守護者、最強の象徴が敵に回ってなお、剣を放さぬ冒険者と、彼等を支えんとする善神ども。星が消えた暗黒の空でなお光を求める者達。これを『英雄の都』と言わずして何と言う?」
桃色髪の女が何か言葉を投げるが、声はくぐもって聞こえ辛く、男神のただの独り言、独白のようにさえ聞こえてくる。
ゆえに、これもまたあの黒い魔道書の影響なのだろうとぼんやりとした頭で少年は眺めていた。冷たい瞳の男神の素顔は、相変わらず真っ暗でよくわからず、他の人物にも多少なり靄のようなものがかかっているのはきっと、その男神からしてみればどうでもいいからなのだろうと勝手に解釈した。
「ありがとう、諸君。英雄達の音色と比して、まるで響かぬ君等の熱賛、確かに受け取った。」
彼等は計画を立てて都市を破壊していた。
商人を巻き込み、周辺諸国から増援が来ないよう信者を増やして一斉蜂起させた。
我が身大事となった他国がオラリオに手を回す余裕等ない。たとえ援軍を与える事ができたとして、その頃には全て終わった後だろう。
白髪の男は今すぐに冒険者を、オラリオを追い詰めるべきだと叫びあがるが、幹部たちはその声に聞く耳を持ちはしなかった。
「―――。『悪』とはなんだと思う?」
『・・・っ? な、なに・・・っ?』
「非道を尽くすことか? 残虐であることか? 俺は少し違うと思う。それは手段であり、本質ではない。『悪』とは、恨まれることだ。」
その言い分に、少年はごくごく普通に納得してしまった。
確かに、少年は『黒い神様』を恨んでいる。
もしもあの時代に、あの場に幼いままの少年がいたならば、幼いながらに、突き落とすなり、刃物を突き立てるなりして神殺しをしていたことだろう。実際、それは叶うことはなかったし少年は泣いていることしかできなかったわけだけれど。
「そして、『絶対の悪』とは――
生命も、社会も、文明も、時間さえも。それまで積み上げてきた万物を全て無に帰すモノ。
断絶と根絶。あるいは、存亡の天秤を嗤いながら傾ける邪悪。それこそが『絶対悪』。
「徳を積もうとする善人のように、せこせこと小さな悪事を働くな。小市民の『悪』より、『悪』の極地を謳え。 なぜなら、この
男神は、まるで見えないはずの、認識することができないはずの少年に目を向けて講義するように語る。
「やるなら、『とことん』だ。・・・・じきに、
やはりよくわからないことを言って、最後には背を向けて手を振って眷族らしき男の名を呼び、連れションに行ってしまった。
「しかし・・・裸の王を気取るのは肩が凝るなぁ・・・」
(あの黒い神様は・・・2人を僕から取り上げてまで、何がしたかったんだろう・・・アストレア様達はあの時代に、何をしていたんだろう。)
痛む頭を押さえるように、少年は意識を浮上させた。
深層に落ちる前のことを、思い出すのを拒むように。
■ ■ ■
「―――ん・・・。」
意識を覚醒させた少年は周囲の壁に傷が残っていることを確認。
意識を落とす前に【
「・・・・おはようございます、ベルさん」
「起きてたんですか・・・?」
「つい、先ほど。貴方のうなされている声で・・・」
「すいません。」
「いえ・・・それより、運んでもらっていたみたいで・・・ありがとうございます」
「・・・・・・はい」
「それで・・・ここは、どこでしょうか? 階層は? 」
「ああ・・・ええと・・・ごめんなさい。僕の記憶違いじゃなければ、ライラ先生から教えてもらった・・・『37階層』だと思います」
「・・・『深層』、ですか」
少年と聖女は互いの状況のすり合わせをするべく情報を出し合った。
少年が聖女を守ろうと怪物に攻撃したこと。
その際に意識を失った少年を、今度は聖女が飛び込む形でその場を離脱したこと。
そして、急に視界が暗くなり、意識を失ったこと。
少年が魔法で内側から破壊して意識を失ったままの聖女と外に出てみれば自分達は『ワームウェール』の臓物の中にいたこと。
辺りを見渡してみれば全てが白濁色。
そこで心当たりのある階層ではないことがわかり、記憶を掘り起こしてみれば、ライラから教えてもらった階層の印象と合致すること。
大きく開けた空間にいつづけるわけにもいかず、聖女を片手で支えながら、可能な限りモンスターのいない道を辿って今いる
魔法を展開し、聖女の衣類がボロボロになっていて少年が使っているローブを変わりに着用させたこと。
今も
「それで・・・この魔石灯は・・・?」
「・・・・周りを見れば、わかります」
そう言われた聖女は起き上がり周囲を見渡した。
見渡して、言葉を失った。
けれど少年は、そこに希望を見出すことは決してなかった。
そこに人がいないことはわかっていたから。
けれど、彼等を見て、少年は沸騰したように激情し、破壊した。
種族も、顔も、年齢もわからない。けれど、彼等が冒険者だったのだろうということだけは武器と防具が教えてくれる。彫刻のように白くて、細い指。元の美しい色を忘れてくすんだ金の毛髪。かすかに漂う独特の腐臭。少年が破壊したのは、
「・・・なぜ、破壊したのですか? このようなこと・・・・」
「ごめん・・・なさい。でも、押さえられませんでした。この人達を見たら、何ていうか・・・思い出したくないものを思い出したというか」
「・・・・・いえ、すいません。私が言えたことではありませんね。」
「魔石灯は・・・僕がこの
「そう・・・ですか」
「
「・・・・体に異常は?」
「・・・・右腕が、動きません」
「・・・・見せて下さい」
アミッドは少年に向き直ると右上をそっと持ち上げ、グローブを捲り上げて、生唾を飲み込み、そっと指を這わせて何度も確認する。強めに指を押し込んで、さすって、肘を曲げさせたり握らせたり。けれど少年はそっぽを向いて無反応。
「ベルさん、痛くないのですか?」
「・・・・はい」
「自分で動かせますか?」
「難しいです。なんていうか、ジンジンするっていうか」
「・・・・・」
「治りませんよね?」
「・・・治します。そんな言い方をされては。意地でも治します。ただ、地上のように設備があるわけではありませんので・・・その・・・」
彼女の言いたいことは何となくわかっていた。
おそらく、『多少、歪むかもしれない』と言いたいのだろう、と。
少年はとりあえず動けばそれでいいとだけ言うと、聖女は魔法を唱えて治療を始めた。
「ヴェルフさんに感謝してください」
「?」
「このグローブがなければ、今頃貴方の腕は吹き飛んでいました。正直、あの意味の分からない化物相手に
「そう・・・ですね、帰れたら、お礼、言わないと」
「帰れたら、では、ありません。」
「・・・?」
「帰るんです」
治癒しながらも、聖女はしっかりと強い意思を込めて、絶望に染まって諦めたような目をする少年を見つめた。
■ ■ ■
治療を終えた少年と聖女は地面についた片膝と片膝をむき合わせながら、見詰め合う。
すでに少年の魔法は消えうせ、モンスターの襲撃を警戒し、
「現状を確認しましょう。」
「はい」
「現在地はベルさんの言うとおり・・・37階層と仮定します。しかし、どの地帯にいるのか把握できません。お互いの体も治療したとはいえ、此処から先も傷つかない保証はありません。ベルさんに至っては・・・」
「気にしないでください、アミッドさん」
「ですが・・・」
「僕は別に、アミッドさんが墓を掘り起こすことを提案したことを怒ったりしてないですよ」
「・・・・・」
「気付かされるのが遅いか早いかでしかなかったんです。僕が何もしなければ・・・そうならなかったはずなんです。それだけです」
「そんな悲しいこと、言わないでください・・・!貴方は確かに、多くの命を助けました。無駄ではありません」
「でも、目の前でその分を奪われましたよ」
「・・・・・っ」
治療しながら、アミッドは懺悔するように、女神アストレアに少年の義母の墓を掘り起こすことを提案したことを話した。墓石がズレていると少年が違和感を抱き、そうして少年のいないところで行われた調査で結局は、棺桶には何もなかったわけだけれど事実目の前にいる少年は傷ついていた。責められる覚悟で、その際のことをぽつり、ぽつりと言葉を零すも少年は怒ることはなく、寧ろ、表情を変えることはなかった。前髪で隠れた目元が酷く悲しげに閉じられていたのをアミッドは忘れられなかった。
「僕が・・・きっと取り乱すと思ったから・・・だからやったんでしょう?」
「・・・・はい」
「なら、いいじゃないですか・・・もう。 アストレア様だって、僕が留守にしていて、だからその時に調べてくれたってだけでしょうし」
「怒らないのですか? 何故?」
「・・・・だって、会いに来てくれたじゃないですか」
「・・・はい?」
「27階層に、いたじゃないですか。お義母さん。」
「あれが、ご自分の義母であると、そう言うのですか?」
「少なくとも僕には・・・お義母さんにダブって見えました。 今も、
再び生まれる、沈黙。
少年は瞼を閉じて、唇を噛んで震えていて大きく深呼吸をしてアミッドに話が脱線したから戻そうと提案する。アミッドもまた深呼吸をして周囲を見渡してもう一度話を戻す。
「私は
「はい、僕がアミッドさんを守ります」
「お願いします。」
「武器は、
「何より・・・あの男と、あの・・・えと、」
「・・・・。」
「その、いつ現れるかもわからないので・・・」
「・・・・そこの冒険者達の遺留品から使える者は貰っておきましょう」
「・・・本気ですか?」
アミッドはこの
「まず、アミッドさんの恰好は・・・
「・・・え、えぇ」
「それなら、せめて身に纏うものくらいは変えたほうがいい。それに、使えるものがあるなら、使うべき・・・です」
「・・・・・」
「その・・・見えてるものは見えてるし、出てる物は出てるんですよ、アミッドさん」
「へ?」
「・・・・」
アミッドは自身の恰好を確認。
少年がいつも身に纏っているローブを上から着用させられている。
露出しているところは露出してしまっているし、こぼれるものはこぼれ、ぽろりもあった。
顔を少しずつ赤くしながらも聖女はガバッとローブで体を包んだ。
いつだったか、朱色髪の女神に『そのおっぱいで聖女は無理やろ・・・』なんて言われたような言われてないような気がしたが、アミッドはこんな状況だというのに赤面し少年を睨んだ。
「・・・見たのですか?」
「触りました」
「・・・・さ、さわっ!?」
「ドロドロだったし。綺麗にしなきゃと思って。」
「・・・・・っ」
「僕とアミッドさんの仲じゃないですか。」
「私達はそのような関係ではありません!!」
「とりあえず、そこの金髪の人の
小さくなるアミッドを他所に、よろり・・・とよろめいて、遺体の前までいくと少年は次々に装備品をあさって回収していった。その手に躊躇がないわけではなく震えているし、閉じられた瞼からは悔しそうに涙を零している。
「アミッドさんがいてくれてよかった・・・」
薄暗い迷宮の底で、ぽつりと少年は彼女に聞こえないくらいの声量で、そう零し、滴を地面に落とした。
■ ■ ■
「アストレア様! 戻りました!」
「おかえりなさい、アリーゼ。・・・状況を聞かせてもらえるかしら?」
「・・・輝夜とライラは、治療院にいます。それから、アウラ。ごめんなさい、貴方の仲間全員を守りきることはできなかったわ」
【アストレア・ファミリア】本拠。星屑の庭。
駆け込むように3人を除いた眷族達が帰還し、状況を説明した。
神が2柱送還されたことも、【ディオニュソス・ファミリア】が消滅しその眷族達も含めて大勢の冒険者が死亡したことも。
そして、途中で離脱した輝夜、ベル、ライラの3人と一緒に行動していた冒険者のうち、ロキ、ヘルメスの眷族が死亡したこと。
「ライラが言うには、ベルとアミッドちゃんは『ワーム・ウェール』に飲まれたそうです」
「・・・・恩恵はある。生きてはいるわ」
「ほっ・・・とりあえずよかった。2人は今は治療院にいさせています。もしここに戻ってきても待機させます。」
「わかったわ。それで、ロキとヘルメスは知ってるの?」
「さっき、説明に行ってきました。っと言っても、ヘルメス様は急に恩恵が消えたのを感じてアスフィに下層に行くように命じて・・・そのお陰で輝夜とライラは助かったんですけど。ああ、さすがに4人も運ぶのは無理があったので、18階層で偶然にもいたベルのお友達に手を借りたみたいです」
「お友達・・・・?」
「鍛冶師君と、リリルカちゃん。あとは、命ちゃんたち【タケミカヅチ・ファミリア】です。」
アスフィが1人で4人を運んで飛ぶのは流石に無理があった。
そこで、18階層までを往復していたところ、偶然にもそこに少年に知己たちがいたのだ。
聞けば、少年なしでダンジョン探索をしていたとのことで。
『あいつと一緒だと楽だけど、危機感が薄れるんだ』
『それに、自分達の力も磨きたかったので』
『私は楽したいんですけどね』
モンスターとの交戦回数が少なくなる少年のスキルは、ある種、『モンスターに対する危機感が薄れる』弊害があったのか、自分達だけで探索し薄れた感覚を取り戻そうと活動していたらしい。
「アストレア様。私はこれから、2人が落ちたかもしれない場所・・・『ワームウェール』の本来の出現階層は37。あくまで可能性ですけど・・・行ってみます」
「・・・わかったわ。お願い。回復薬も持てるだけ持って行きなさい」
「はい! じゃあ、みんな! 私、急ぐからお願いね。 リオン、魔法お願い! あ、スピードのほうね!」
「・・・・私、ですか? 効果は短いのですが・・・」
「構わないわ! 少しでも迷宮に入る時間が早ければそれで」
「はぁ・・・わかりました。地上のほうは任せてください。」
「ええ、任せたわ!」
「【今は遠き森の空。瞳に映る夜空の星々。どうか我が声に応じ、彼の者に慈悲を与えて欲しい。】――【ノア・ヘイスト】。30秒しかありません。行ってください」
「行ってきます!」
「「「行ってらっしゃい!」」」
アリーゼはリューから支援魔法を受けると赤髪をたなびかせて、ストリートを駆け出して迷宮へと向かっていった。残る団員達も各々の怪我の治療に当たるも、少年の安否でそわそわとしていた。
■ ■ ■
「ロキ・・・」
「ん? どないしたん、アイズたん」
「あの赤い髪の人が・・・ベルがどうにかなるって」
「?」
【ロキ・ファミリア】、黄昏の館。
フィンを助けた金の
『アリア・・・あの小僧は、じき死ぬぞ』
『・・・ベルの、こと? させない・・・!』
『もう手遅れだ。 もうここにはいない。 母親の手で死ぬのだと、エニュオは言っていたぞ』
『・・・・・』
『私には興味のないことだ。お前さえ手に入ればな』
そんなやりとりが、人造迷宮から脱出する前にあったという。
真剣な目でアイズはロキを見つめ、ロキもまた、目の前の少女が次に何を言うのかわかっていて、微笑んでいた。
「ロキ、私・・・あの子を助k――」
「ええよ」
「え?」
「せやから、ええよ。行ってき。」
「いいの?」
「アイズたんがそうしたいんやったら、そうしぃ。 っちゅーか、あの子にうちの
「・・・ありがとう。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
アイズはそれだけ言うと、金髪を揺らし愛剣を腰に携えてストリートを走り出す。
母親に殺されるだなんて、信じられないし信じたくないけれど、そんなことさせるわけにはいかないと。眦を割いて。
■ ■ ■
「ふぅーん・・・ヘルメス、それで、私にどうしろと?」
バベルの上、その一室で美の女神がワインを口にしながら頭を下げる橙黄色の男神に横目で訴えかけていた。男神ヘルメスはフレイヤの元にやってきては自分の眷族が一斉に死んだことを伝えた上でかの少年の安否が不明だと報告してきたのだ。
「・・・手を、貸してもらいたい。フレイヤ様」
「私に何の得があると?」
「おいおい、このままベル君を見捨てるつもりかい? あの子にご執心のあなたが」
「・・・・・」
「それと・・・そうだな、あえて言うなら、
「あなた・・・いやな言い方するのね」
「『オタ×ザル』は流行らないぜ。やっぱり、時代は『おねショタ』さ」
「ヘルン、ヘルメスをつまみ出しなさい」
「あああああ、待って、待って!! 悪かった! 悪かったから!?」
女神の後ろで佇む猪人の武人はその意味の分からない『オタ×ザル』なる言葉に、謎の寒気を感じた。侍女頭のヘルンは意味の分からない言語に吐き気を催しヘルメスを摘みだそうとした。
「ベル君にご執心の貴方だ。好きな年下の男の子を守らないと、大人の女として恰好がつかないぜ?」
「・・・・・はぁ。いいわ、貸してあげる。けれど、アストレアに伝えておきなさい。『ベルは奪わないであげる。その代わり、1日私に貸しなさい』と。それくらいはいいでしょう?」
「・・・わかった。けれど、彼が嫌がることはしないと誓ってくれ」
「場合によるわ。だいたい・・・あの子を無理やり私のモノにしようとしたら、壊れるのがわかりきっているんですもの。ほんっとうに難易度が高くて嫌になる」
「わかったわかった。アストレアには俺の口から伝えておこう。まぁ、彼の保護者達が何を言うか今から怖くて堪らないけど」
「知ったことじゃないわ。・・・・そういうことだから、オッタル、行きなさい」
「・・・よろしいのですか?」
「ええ、構わないわ。 ザルドを殺したという料金を支払ってきなさい。ただし、あの子を助けようとする者がいるのであれば、その者達の道を切り開くだけでいいわ。」
「・・・承りました」
猪人の武人は、女神の元から去り、迷宮へと向かっていく。
次に女神は侍女頭に目を向け指示を飛ばす。
「ヘルン、ヘイズにディアンケヒトのところに行くように伝えて。期限は【
「・・・畏まりました」
「あとは・・・そうねぇ・・・ねぇ、ヘルメス?」
「な、何かな、フレイヤ様・・・?」
何か思いついたように笑みを零すフレイヤに、冷や汗を流すヘルメス。
「ザルドの大剣・・・墓標にしておくには、もったいないと思わない?」
「・・・く、くれるのかい?」
「あげないわ。 でも、見せてあげてもいいわよ?」
「・・・ごくり。」
「ふふっ・・・やっぱり、やめにするわ。見せてあげない。あなたには」
かくして、迷宮前の入り口を3人の冒険者が駆け込み、飛び込んでいく姿が目撃された。
【
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン Lv.6
【猛者】オッタル Lv.7
【今は遠き森の空。瞳に映る夜空の星々。どうか我が声に応じ、彼の者に慈悲を与えて欲しい。】――【ノア・ヘイスト】
効果時間 30秒。
【ノア・XXXX】。
ベル君のオーラとは違い、部分部分にしか増幅効果をかけられません。