地獄があるとすればそれは、きっと
『地獄』という名称は極東においてのものだけれど、聞いた話ではそこは悪行を成した罪人に罰を受けさせられる世界らしい。
きっと、生きている人間からすれば、『地獄』というものは
『―――え?』
視界の先には、巨大な壁面の奥に走った、広く、長く、深い亀裂。
縦に走った割れ目から飛び出すのは、おぞましい紫の
目の前で飛び散る、姉の体は頭部と胴体、下半身と3つのパーツに別れ、宙を舞い、下半身は崩れ落ち、思い出したかのように血が吹き出した。言葉もなく、開いた口が塞がらず、目は見開かれ、震えた。
『■、■■■ッ!? ―――ぐづっっ?』
死んだ仲間の名を呼んだ
「あ・・・あぁ・・・」
伸ばした手は虚しく空を掴む。
脳が忘れることで、少年を守ったその悲劇が、惨劇が、惨たらしく再現されていた。
自分が今、足をつけて立っている場所は27階層だった。
死んだ人達は、『旅人の眷族』でもなければ、『道化』の眷族でもない。
そこにいたのは、『正義の眷族』だった。
宙から落ちてきた巨体に、咄嗟に盾を構えた
ぴちゃっと少年の頬を撫でるように、生暖かい液体が縋るように伝った。
胸を、心臓を掴み潰されたような苦しみが、吐き気を催した。
「あ・・・あぁぁ・・・!?」
いやだ、行かないで、独りにしないでと両手で頭を押さえてブンブンと左右に頭を振るう。悪い悪夢よ覚めてくれと、現実にしないでくれ、と。心の拠り所を失うのはもう嫌だと泣き叫ぶ。けれど、ああ、地獄とはまさしくこのことを言うのだろう。
その『鎧を纏った恐竜の化石』とでもいうべき細く巨大な体躯は次々と【
片腕を失った大和撫子。
腕が宙を舞い、鮮血を撒き散らす。
それでも心を折らなかった姉達は仲間の仇だと怒りの炎を燃やし、詠唱を経て『魔法』を行使する。
『■■■ィ、砲撃、あわせて!!』
けれどそれも無駄だった。
その怪物は、魔法を跳ね返し、2人の魔導士を炎上させた。
上級冒険者を一撃で葬るその爪に、モンスターの道理にそぐわない機動性、そして『魔法』を反射する装甲殻。怪物の全貌を理解した女達は、絶望に屈した。おぞましい咆哮を上げて、姉達を殺し始めた。
『いやああああああ!?』
『食べないでぇぇぇええ!?』
殺戮、蹂躙、捕食。
戦意に綻びを見せた者から惨たらしく虐殺されていく。
目を焼かれた小人族。
腕を失い、夥しい脂汗を滲ませる大和撫子。
今まで見た事がないような、涙の気配を孕ませた赤髪の姉。
悲惨な断末魔の叫びが響くその世界を。
まさしく。
『地獄』であると、言うのだろう。
残った姉達は何か語り合ったように見えたかと思えば、後ろを振り返り微笑んで、走り出した。
「嫌だ・・・行かないで・・・」
手を伸ばす。
離さない様に、失わないように、置いていかないでと。
頬を滴が、血潮が伝って流れていく。
やがて姉達は目を焼くほどの光の中に消えて行き、最後に残ったのは『抹殺の使途』だけだった。
真紅の眼光が、深紅の瞳を見据えていた。
「ぁあああああ・・・あぁぁああ・・・!」
怖い。
寂しい。
嫌だ。
助けて。
きっとそういう言葉を、誰もが絶望の只中で叫ぶことだろう。
きっと、そういう状況下では、母親のことを叫んで呼ぶことだろう。子を守る母を求めるように。
たった一人残った少年は、動かない体で泣き叫ぶ。
「アリーゼさぁん・・・! 輝夜さん・・・どこ!?」
置いていかないで。
「アストレア様、アストレア様ぁ!」
助けて、怖い、抱きしめて。
「お義母さん・・・お義母さん、お義母さん!」
ドロリドロリ、と海水が満ちていくように赤い滴が押し寄せてくる。
体を、赤く濡らして、穢していく。
震えて、泣き叫んで、どうしようもなく、縋るものもなく。
声にならない声で、泣き叫んだ。
そんな時に。
『しっかり・・・しなさい!!』
誰かに、頬を叩かれ『地獄』から引き上げられた。
■ ■ ■
呻き声を上げて、うなされている白髪の少年をただ、アミッドは見ていることしかできなかった。
「いったい何が・・・どういう魔法なのですか・・・?」
何か、そう、何か泥のようなものが背中に被弾し、そして現在身を置いている広間に到着した途端、限界だったのか口から泥のようなものを吐き出し意識を失った。泥に触れようとはまったく思えず、ただその泥に対して
『嫌だ・・・行かないで・・・』
地面に落ちた泥は、まるでなかったかのように綺麗スッパリ蒸発して消えうせた。けれど少年の意識は回復せず、それどころか悪夢に苛まれているようだった。
『アリーゼ・・・さ・・・輝・・・ん・・・ど、こ』
良くないものを見せられているのではないか、と思った。
精神に異常をきたした人間は治療院に少なからずいるし、治療院の外にも勿論いる。『心の病』といえば早い話、直せるものではないのだ。
「・・・・・私は、私は何が・・・できるでしょうか」
ここから逃げ出す術はない。
少なくとも少年がこのまま折れてしまえば、戦えないアミッドはそのままモンスターに辱められて殺されるだろう。或いは、今わの際、せめて苦痛を忘れられるようにと2人仲良く快楽に溺れるか。
『お義母・・・・さん・・・』
もうこの世にはいない誰かに救いを求め、泣き叫ぶ少年を一瞥する。
涙を流し、涎を垂らして、体を震わせ、泣き叫んでいた。
無力感に胸を締め付けられるアミッドは、いっそ泣きたい気持ちになった。
「いえ・・・私まで折れてしまうのは、いけません・・・」
どうする、どうすればいい?
これは『
『助・・・けて・・・』
「―――ッ!!」
その行動は、別に何か考えがあったとかではなく。
咄嗟だった。
腕を振り上げ、勢い良く降ろした。
「しっかり・・・しなさい!!」
パチーン、と頬を叩く平手打ちの音が響いた。
虚ろだった瞳は徐々に、泳ぎながらアミッドのことを見返して、涙を溢れさせた。
「アミッド・・・さ・・・?」
「しっかりしなさい、本当に・・・私は、貴方に縋るしか、生きていけないんです。私は、貴方を死なせるわけにはいかないんです! 貴方こそ、私を独りにしないでください!」
何が起きていたのか、理解するでもなくアミッドは少年を抱きしめる。
少年は抱きしめ返して、その胸の中で嗚咽を漏らした。
「ぐすっ、ぅあ、あぁ・・・アリーゼさんが、輝夜さんが、【アストレア・ファミリア】が・・・ッ!」
「大丈夫、大丈夫です・・・あの方達は、生きています!」
「でも、みんな・・・あの『怪物』に・・・!」
「いいえ、いいえ・・・! 貴方の家族は死んでなどいません!」
何度も何度も、少年の言う言葉を否定する。
痛いくらいに力強く、背中を摩って抱きしめる。
それが今、アミッドにできることだった。
やがて疲れたように、アミッドの胸の中で寝息を立てる少年を優しくあやすようにリズムよく背中を叩いた。
■ ■ ■
「―――ん」
「お目覚めですか」
少年が眠ってから約5分ほど。
短いほんのわずかな睡眠、けれど、少年の顔色はいくぶんか回復していた。柔らかい感触を頭に感じて、もぞもぞと動いて、撫でた。
「温かい・・・」
「あの、くすぐったいのですが」
「・・・・・・膝枕?」
「・・・・はい」
「もう少しだけ」
「・・・えぇ、何かリクエストはありますか?」
「・・・頭を、撫でて欲しいです」
「いいでしょう」
手を握り、残ったもう片方の手で頭を撫でる。
「・・・何を見たのか、聞いても?」
「・・・
「・・・・えぇ、貴方が、私を助けてくれました」
「その光景が、【アストレア・ファミリア】に入れ替わってたんです」
ピクッ、と撫でる手を止める。
けれど再び撫でるのを再開。
【ロキ・ファミリア】と【ヘルメス・ファミリア】の冒険者が、あの場所で死んだ。そのあと、視界が暗くなったところでアミッドは意識を手放したけれど、意識を取り戻す前のその景色が【アストレア・ファミリア】に入れ替わっていたのだとしたら、少年が発狂するのも無理はないと思った。
「怖いですアミッドさん・・・初めてそう思ったくらい、怖い」
「ええ、私も怖いです」
「きっと、さっきの男の人・・・僕達が先に進まないように立ちふさがってます」
「・・・ええ」
「・・・・・」
瞼を閉じて、少年は寝返りをうってアミッドの腹に顔を埋めた。
言いたいことは、だいたいわかる。
『もう嫌だ』
『動きたくない』
『怖い思いなんて、したくない』
少年の年齢を考えれば、そう言っても仕方が無い、そう言っても許されるだろう。何せここまで、モンスターからの攻撃をたった一人で引き受けてきたのだから。
けれど、それでもアミッドは少年を立ち上がらせるしかなかった。
唇を噛み締めて、告げた。
「ベルさん、帰りましょう」
「・・・・」
「地上に、帰らないと」
「・・・・」
「だから、戦ってください」
「―――ッ!!」
ぐっと胸倉をつかまれ、押し倒される。
カハッと空気が漏れて、押し倒された少女はポタポタと涙を零す少年を見た。
「僕一人で、戦えって言うんですか!? 魔法を使えば気付かれる! あの人に近付いたらまた魔法をうたれるかもしれない! それでも!?」
「ええ、それでもです! 戦わなければ、死ぬだけです! こんなところで、死ぬんですよ!?」
「怖い思いをするくらいなら・・・!」
「
墓を掘り返され、死んで辱めを受けた義母。
怪物に、『穢れた精霊』となったアルフィア。
少年にとっての最初の英雄。
それが、怪物となって立ちふさがっている。
ヴィトーと
「でも・・・でも、無理です。お義母さんを殺したくない、やっと会えたんだ!」
「あれが人間だと思うのですか、ベルさん」
少年の手を握るアミッドの手は震えていた。
わざと、残酷なことを言っている。何度も唇を噛んでは、震える手で少年の手を握り締める。
「ベルさん、申し訳ありません・・・残酷な、とても残酷なことを言います」
「・・・・い、いやだ」
「あなたの・・・お義母様を殺せるのは、あなただけです」
「無理だ」
「私は治療師です、とてもではありませんが・・・戦えません」
「・・・」
「だから、戦ってください・・・お義母様と。そして、倒してください」
「そん・・・なの・・・」
「恨んでくれて構いません・・・。 勿論、私もその罪を背負いましょう・・・『親殺しを強要した魔女』だと」
「・・・・・」
アミッドは戦えない。
アミッドは治療師だ。
彼女の戦場は、ここではない。
「貴方の傷は、私が癒します。体の傷も、心の傷も・・・だから、共に『冒険』をしましょう」
「・・・『冒険』」
「あなたがしろ、と言うのであれば、どのようなことでもします。だから・・・戦いましょう」
そっと少年の手をとって、銀色に輝く槍に添えた。
「あなたのお義母様に・・・ちゃんと、
言えなかったと後悔しないように。
言いたいことを言って、本当の『さよなら』をしよう、と。大きくなった自分の姿を見てもらおう・・・とアミッドは微笑を浮かべて少年が『できなかった』ことを述べた。
■ ■ ■
「アミッドさん、魔剣はあといくつありますか?」
身嗜みを整えて、ナイフの柄を握り締める。
隣に遅れて立ち上がったアミッドの手には銀色の槍が。
アミッドは自身に装着しているバックパックから『魔剣』の数を確認。
「3本です。 『炎』が2、『雷』が1」
「・・・・」
「あれやこれやと言った私が言うのもなんですが・・・何か、策でも?」
「僕はフィンさんみたいにできないし・・・アリーゼさんみたいにもできない・・・でも」
「でも?」
「
「スキル・・・ですか」
「はい・・・泣き疲れて、頭が冷えて・・・だからか、余計に感じる。あの人は、
立止まって、待ち構えている。
「他には?」
「そこから少ししたところに、反応が沢山・・・でたり、減ったり・・・たぶん、アリーゼさん達が『怖い』って言ってた『
「なぜ、彼はそんな場所の近くに・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
追い掛け回しておいて、何故かそんな場所に留まっている。
「ちなみに、『精霊』は・・・わかりますか?」
「・・・ごめんなさい」
「・・・そうですか」
「『
何とか頭の中から、姉達から聞いた話を掘り返す。
「普通は行かない場所・・・そこに、正規ルートがある・・・のかな・・・」
「『
「・・・・」
「ベルさん?」
賭け、というのが響いたのだろうか。
動きを止めた少年にアミッドは首を傾げた。
「正直、あの人と戦うのは無理です。またあの魔法をくらうのは・・・嫌です・・・だから、戦いません」
「・・・・では、どうすると?」
「
「まさか・・・」
「死ぬかも、しれないです・・・けど、通せんぼされてるなら、そこを通って欲しくないんなら・・・それしか、ない」
「・・・はぁ、わかりました。貴方に委ねます」
「アミッドさんは・・・あの人をひきつけてください。ほんの一瞬でいいんです、僕が、迎えに行きますから」
「・・・信じていますよ?」
「・・・はい」
「じゃあ・・・」
「行きましょう」
「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
これから行われるのは、1つの階層を巻き込んだ最大規模の
■ ■ ■
コッ、コッ、と音を立てて、少女は男の前に辿り着く。
道中現れたモンスター達は少年に引き寄せられてアミッドを見向きもしない。
だから、邪魔されることはなかった。
「おやおや・・・まさか、あなた一人でこんなところに?」
「ええ・・・私、1人です」
「見捨てられたと?」
「さぁ・・・どうでしょうか・・・少し、お話がしたくなったというのもありますが」
震える手で、槍を握り締める。
「貴方は『英雄を尊敬している』と仰っていましたね」
「・・・それが、何か?」
「理不尽に負けず、不条理に抗う・・・ええ、とても素晴らしい方々なのでしょう」
けれど。
「貴方は
「・・・・」
「はっきり言いましょう・・・ほんの僅かな時間でしたが、ベルさんに投げた言葉も吟味した上で、治療師だからこそ、あえて言いましょう。 あなたは『英雄』を見下しています」
「・・・ははは、何を言うかと思えば、それは心外です。私は心から・・・」
「なぜなら、本当に敬っているなら、貴方は決して笑えない」
「・・・!!」
「自分より強い者に挑み、敗れ、けれど何度も立ち上がる彼を・・・ベルさんを嗤えるはずがない。英雄を敬っていると思い込みながら、その実、あなたは嘲笑しているだけ・・・だから『破綻者』なのです」
遠くから聞こえるモンスター達の叫びが、徐々に近付いてくるのを感じてさらに槍を握り締める。
「・・・仮にそれが真実だとして、何だというのです? 今、あなた方が追いやられている状況と何が関係するのです?」
「・・・この状況も、そもそもは貴方がベルさんを個人的な理由で陥れただけのこと」
「――っ!!」
酷い嫌がらせだ、醜い嫉妬だ。
傍迷惑な復讐だ。
大人が子供にみっともなく嫉妬し、復讐して苦しめている。それだけのこと。
アミッドはゆっくりと左腕を伸ばし、人差し指を向けて告げた。
「まったくもって大人気ない・・・貴方のことなど私はしりませんが、告げておきましょう。 あなたは『病気』です」
「・・・黙れ」
「いいえ、黙りません。 治療師として、はっきりさせておきます。あなたのそれは異常です。 治療する必要性すらないほどに」
「黙れ!」
「他者の墓を掘り起こして怪物にしておいて、否定できると? いいえ、いいえ、私がさせません! あなたは『病気』です!」
「黙れぇえええええ!!」
走る、迫る、迫り来る。
指摘されたことに激昂し、剣を取り、走る。
けれどアミッドは逃げもせずただそこに立っていた。
冷静さを失ったヴィトーは気付かない。
暗闇につつまれたこの階層、自分の周囲に、まるで『星空』のように輝いて見える怪物達の目があることに。
『ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
「―――アミッドさん!」
「ベルさんっ!」
アミッドの後方から、夥しい量のモンスターを引き連れてやってきた白髪の少年がアミッドに手を伸ばし、抱き寄せる。そしてそのまま男にナイフを叩き付けた。
「ぐっ・・・!?」
「お返しだ・・・!」
「お返し・・・? いったい何を―――」
もう一度魔法を使い、再起不能に・・・そう考えた矢先、思考が凍りつく。ヴィトーの耳に入り込んできたのは、怪物達の咆哮。それらが全て、自分達のいる場所に向ってきているのだとすぐに理解する。
「い、いったい何を・・・!?」
「【天秤よ傾け、罪人は現れた。汝等の全てを奪え】――【
ナイフを叩きつけて、一歩前進。
「っ!? 力が・・・!?」
「落ちろっ!」
さらに叩きつけて、一歩、二歩と前進。
「落ちろぉおおおおおおっ!!」
ドッと押し寄せる怪物達に押し返されるようにして、少年達はヴィトーは一直線に強制的に1つの場所に移動させられる。
「馬鹿な・・・馬鹿な!? 階層中のモンスターを呼んだとでも!?」
「ァアアアアアアアアアアアアア!!」
さらに咆哮。
後方から、『
「これは・・・
「ァアアアアアアアアアア!!」
やがて『
少年は器用に、アミッドを守りながら怪物達の頭上に躍り出る。その体は既に傷だらけで、血を流していた。
「がっ!? ぐぅっ・・・!?」
次にやってきたのは、浮遊感。
『
「【天秤は振り切れ、断罪の刃は振り下ろされた。さあ、汝等に問おう。暗黒より至れ、ディア・エレボス】っ!」
「エレボス・・・エレボス・・・っ!?」
『よぉ、ヴィトー・・・愛してるぜ、我が眷族よ』
「ああ、あぁ・・・! エレボス、エレボスぅうううう!!」
目に見えて現れた幻。かつての主神の幻影に、心はかき乱される。
せめて、少年を先にモンスター達の中に落としてやろうと腕を伸ばすも、少年はあろう事かモンスター達で構成された『滝』を全力で上り始めた。
「アミッドさん! 『魔剣』!」
「くっ・・・はい!」
少年はアミッドから槍を受け取り、背中にしがみ付いているアミッドはさらに2本の『魔剣』を取り出して槍に吸わせた。
「
捕捉。
ヴィトーの魔法でベル君が見たのは正史におけるリューさんが経験した出来事です。
が、この魔法は『if』を見せるのではなく、『英雄』は『もっとも大切な存在』を失った時に心を折ってしまうというものなのでダメージではなく心を傷つける魔法です。
深層に落ちる前の出来事を、2つの派閥の冒険者が死んだジャガーノートの出来事。
それを『記憶を書き換える』という風な形で悪夢を見せていただけ、というものです。なので、ヘルメス・ファミリア、ロキ・ファミリアの冒険者が死んだはずの光景が全てアストレア・ファミリアに変わっていました。
あくまでも記憶の改竄、トラウマを呼び起こすだけのものです。