兎は星乙女と共に   作:二ベル

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ギャグ回だと思います。
キャラ崩壊とか違和感とかあったらごめんなさい。
どうしてこうなったのか?
ランクアップイベントはミノタウロスが良い。+でもオリヴァス戦も欲しい。
じゃあ、オリヴァス→ミノタウロスでいいじゃん。アイズさんとの特訓ないし。

てな感じです。


白兎誘拐事件

拝啓、アストレア様、いかがお過ごしでしょうか。

季節は春へと近づきつつも、まだ肌寒く、僕もつい数時間前までの女神様の人肌・・・神肌の温もりが恋しくてなりません。

どうせならお昼頃まで2人で仲良くゴロゴロしているのも悪くない。そんな風に感じる今日この頃なのですが、その願いも叶うことはないでしょう。

さて、本題に移りますが・・・・・僕は今・・・・

 

 

 

 

誘拐されています。

 

 

女神様・・・・・・どうか、哀れな子兎を助けてください・・・・。

 

 

 

「ひっく・・・うっ・・・アズドレアザマァァァ!!」

 

 

■ ■ ■

事の発端・・・発端?ねぇ、発端?あったかなぁ・・・いや、ないよ?

女神様のベッドで目が覚めて、一緒に着替えをして、みんなと朝食をとって今日の予定を確認して、久しぶりのリューさんとのダンジョンで手を繋いで、僕はつ1時間ほど前にホームを出たんです。

 

「では、ベル。サポーターのアーデが来るまでの間に私は手頃なクエストでもないか見てきますので少し待っていてください。」

「はいっ!リューさんっ!」

「・・・っ!な、なぜそんなに嬉しそうなんですか?」

「だってリューさんとダンジョンに行くことあんまりないから・・・」

「うっ・・・す、すいません。決してわざとでは・・・」

 

手を繋いでいるときのリューさんは落ち着いていて凛とした顔をしていたけれど、繋いでいる手はにぎにぎ。にぎにぎ。と時々感触を確かめているようで、その度に顔を見ればちょっとだけ頬を染めていた気がした。あといつもより良い匂いがした。

僕はリューさんの指示に従って、おとなしくベンチに腰掛けてリリが来るのを待ちながら、空を見上げていた。影とか暗いところは駄目だけど、空とか綺麗なものはとても好きだ。気がまぎれるし。

 

「アイズさんを連れ戻せって、いったい何処にいるっていうんですか!?」

「『冒険者依頼を受けて24階層に・・・・』とか何考えてやがる、遠征前だぞ・・・ったくよお」

「・・・・・・」

 

空を見上げて、ぽけーっとまさしく朝日を浴びる野うさぎの様にしては、少し太陽の温もりと心地よい風でうとうとしていると、どこからか声が聞こえてきた。

んーなんだろう、聞いたことがあるような・・・ないような・・・?いや、最近はないはず・・・だよね・・・うん。

 

「あっ!!あの子は!!」

「あ?何だ、あの白いのが何かあんのかクソエルフ」

「えっと、フィリア祭の時の・・・・」

「っ!?例の噂の『オルガン・ラビット』か!?」

「えっ!?何ですかそれ!?」

「オルガンのような音を奏でて、周囲一帯を灰燼に変えたという・・・・」

「いや、私その倒したちょと後にあの子のところに到着しましたけど、周囲一帯が灰燼は盛られてますよ・・・」

「・・・んなことどうでもいいんだよ!!アイズを探すんだろうが!」

 

朝から元気だなぁ・・・僕なんてまだアストレア様と一緒に寝ていたいくらいなのに・・・。『オルガン・ラビット』?そんな変わった名前のモンスターがいるなんて・・・オラリオはやっぱりすごいなぁ。やけに慌てているというか急いでいる割には会話をする余裕があるというか・・・なんか少しずつ、足音が近づいてきてるし・・・。

 

「えっ、えっと、あの子のスキルだと思うんですけど、探知とかできるっぽくて・・・私たちが来たことにも、姿も見ずに察知していたんですよ!」

「・・・・で?何が言いたい」

!

「あの子にアイズさんを探してもらうんですよ!ベートさん!!」

!!

「・・・・・はぁ。テメェで交渉しろ」

!!!

「分かりました!」

 

「あ、あの君!!!」

「うひゃぁっ!?」

 

ものすごいスピードで近づいてきたと思ったら、いや、待って、何で僕の前で急停止するの!?何何々!?レベルが上がるとそんなこともできるの!?輝夜さんが言ってた『縮地』ってやつじゃないよね!?

僕は、いきなり目の前で急停止して両肩をつかんできた山吹色のエルフさんに絡まれた。いや、目が怖い。血走ってるし。あっ、どうしよう、急すぎてというかビックリして目が覚めるどころか涙が出てきた。

 

「お、おい、ウィリディス、怖がっているぞ!?」

「す、すいません。あ、あの!!ちょっとアイズさんを探すのを手伝ってくれませんか!?お礼はちゃんとしますのでっ!」

「・・・・・へ??はいっ!?」

「あ、ありがとうございます!!その、ちょっと急ぐので運びますね?」

 

そう言うと、山吹色・・・・えと、山吹さんは僕の有無を聞く前に僕の横腹を両手で掴み、それを後からやってきた気だるそうにしている狼人さんに投げ渡し、それを驚きながらもキャッチして腰に抱えられた。わずか3秒である。何この早業。

 

「じゃあよろしくお願いします!アイズさんの居場所!見つけてください!!」

「え・・・えぇぇぇぇぇぇ!?」

 

そう言うと、今度は一気に景色が変わっていくほどの速度で運ばれていった。あっ、リリが来てリューさんが戻ってきた!助かった!!あ、あれ、2人がぽかーんとしている!?お願い!お願いします!助けてっ!!

 

「「ベ、ベルぅぅぅぅぅ(ベル様ぁぁぁぁぁ)!?」」

 

2人の声があっという間に遠くなって聞こえなくなって、どんどんダンジョンに近づきつつあって、途中ピンク色の髪の・・・えと、エイナさんのお友達のお姉さんが見えた気がして、そのお姉さんも「えっ!?えぇぇ!?弟君!?」なんてビックリしていたけど、その姿はあっという間に見えなくなった。

とうとうダンジョンの入り口にやってきて、僕を担いでいる狼人さんはそのまま、あろうことか、僕がいるのに、飛び降りた。

 

「・・・ぐぇっ!?」

「ちょっ!?ベートさん!もう少し優しくしてあげてください!」

「あ!?るせーぞ!?急いでるって言ってるじゃねーか!!おいクソ兎!とりあえず手紙には24階層って書いてあったんだ!!18階層まで行くぞ!!」

「ひっ、ひぃ・・・・ひぃ・・・・」

 

アイズって・・・アイズさんって・・・・誰ぇぇぇぇぇ!?

僕の心の訴えなど、露知らずどんどんどんどん降りていく。Lv1の僕が耐えられる速度ではなくて、もっとこう早かった。時には縦穴を飛び降り、時には襲ってくるモンスターを一掃するのに僕が邪魔なのか、一度空中に投げては倒し終わってからキャッチしてまた爆走!!僕の目はとうに回っており、何なら吐き気すら催していた!!

 

―――ど、どうしてこんなことに・・・・アリーゼさんが『その下着もうサイズ合わないからあげるわ!え、いらない?ラッキーアイテムよ?そういわずに取っておきなさい!寂しいときに枕元に置いておくといいんじゃないかしら!私もベルの貰うわ!交換よ!!』なんて言ってたけど、アリーゼさんの言うとおり、ラッキーアイテムを受け取らなかったからこうなったのかな・・・。帰ったら貰っておこう・・・。

 

兎は混乱する頭の中で、訳の分からない結論へと至っていた!!

下着を貰うことで運気があがるなら皆そうしている!!もしここに輝夜がいたならば、こう言うはずだ

 

『女神と同衾している時点で運気なんぞ勝手に貯まるわ!!』と。

 

「あっ!そうだ!お、お腹すいていませんか!?【じゃが丸くん小豆クリーム味】ですよ!手伝ってもらうんです!朝ごはんくらい上げます!」

そういって山吹さんは僕の口に、じゃが丸君を突っ込んで・・・あ、甘っ!?

 

「おrrrrrr!!!」

「ああああああああっ!?アイズさんの小豆クリーム味がああああ!?あ、あなた!!アイズさんに恨みでもあるんですか!?」

「ま、待てウィリディス!!こんな状態で!揺れている状態で!食べ物なんて口に突っ込まれれば、吐いても仕方ないだろう!?」

「いいえ!アイズさんを思う気持ちがあれば、美味しく食べれるはずです!!」

 

ダンジョンで身動きの取れないドナドナ中の小動物の口に食べ物を突っ込むのは間違っているだろうか。

             結論。

――――拷問だぁ。。。

 

「ひっく・・・うっく・・・おねえちゃぁん・・・・」

限界もとうに超えていた僕にさらなる追い討ち!!体にさらにかかる負担!!気が付けばもう10階層すら過ぎてしまっている!!そして何より、どうしてこうなっているのかも分からず、精神的にも追い詰められていく!!・・・・そ、そうか!!わかった!こ、この人たちは、アレだ!!闇派閥(イヴィルス)に違いない!!

僕は決死の覚悟で、魔法を唱えようとする。僕もアリーゼさんと同じ正義の眷属!おとなしくやられるわけには!!

 

「・・・ご、(ゴスペ)・・・ぐへぁっ!?」

い、痛い!また飛び降りたせいで衝撃が!?

「お、おい・・・さすがにまずいだろう!?やっぱり!?顔色も悪いぞ!?」

「い、いえ、安心してください!さ、ささ、最終的にこの子の記憶を消せばいいんです!!?」

「ひ、ひいぃぃぃ!?」

 

怖い怖い怖い怖い怖いっ!!この人、記憶を消すとか言ってる!?怖い!!オラリオはやっぱり魔窟だったんだ!?エルフの人はみんな綺麗で、不正をゆるせないような潔癖性を持っていて、人攫いなんてしないって思ってたのに!?妖精どころかこれじゃあ死妖精(バンシー)だぁぁ!?

狼人のこの人もきっと僕を巣穴に連れて行って、子狼の餌にするんだっ!?獣人怖い!!

 

 

ベル・クラネルの妖精に対する評価が50下がった。

ベル・クラネルの獣人に対する評価が70下がった。

 

そして、とうの昔にキャパシティーを超えた僕はもう涙とさっき無理やり口の中に入れられた、じゃが丸君を吐いたときの胃液でそれはもうぐちゃぐちゃになっていて、身動きが取れないから拭うこともできなくて、僕とちょうど目があった黒髪エルフ?さんに拭ってもらえないかと目で訴えるも『すまない・・・触りたくない・・・』なんて言われて、さらに大ダメージ!!

 

―――僕が何をしたのっ!?

 

「さぁ、君!ここが18階層です!きれいでしょう!!ここには朝と夜の概念もあって町もあるんですよ!?その、私とベートさんは少し情報が無いか聞いてきますので、ちょっとだけ待っていてくださいね?」

「はぁ・・・はぁ・・・・はふ・・・」

 

そう言って17階層の嘆きの大壁を突破!初めての18階層に!!でも、今の僕にそこまでの余裕はない!!どんどん景色変わってるんだもん!!僕はもう本当に限界も限界で、なんなら僕の【トラウマ】でもある黒い神様は、『俺でもそれはしない』と同情の目を向けてくる!!

そしてなにより、何か、こう、川が見えてきて、叔父さんとお義母さんとお爺ちゃんが僕に手を振っている!!

 

―――あ、アレ!?お爺ちゃんなんで川の向こうにいるの!?

 

『ベル、いいか。喰うときはナマはやめておけ。いろいろとまずいからな』

「そうだね!それで叔父さん、体壊したんだもんね!でも今そういう状況じゃないよ!?」

『本当に、気をつけろ・・・お前の父親ときたr・・・「―――『福音(ゴスペル)』」

「お、おじさああああああん!?」

 

叔父さんが川の流れにのって消えてしまった。

『いいか、ベルよ。他人に意志を委ねるな。精霊だろうが神々だろうが同じだ。ましてや儂は何も言わん。あえてワシが言えることは、お前は美女たちと同衾に混浴をしとるんだ。イケるところまでイ・・・・「『福音(ゴスペル)』」

「お爺ちゃあぁぁぁぁぁんっ!?」

お爺ちゃんまで消えてしまった・・・というか何でお爺ちゃんがそっちにいるの!?いちゃだめでしょ!?それに何で2人ともこの状況を覆すアドバイスをくれないの!?はっ!?もしかしてお義母さん!?お義母さん助けて!!

 

『・・・・・私を、お前を置いていく私を許してくれ。ベル。』

とお義母さんに悲しい顔で言われてしまった。溢れ出るはもうすでに溢れていた大粒の涙!!黒い神様!!あなたはどこまで僕を追い詰めれば気が済むんですか!?こういうの、虐めって言うんですよ!?知ってました!?

 

『脆き者よ・・・汝の名は、弱者なり』

・・・・意味が分からないよ!?そんな同情の目で言われてもわからないよ!?

 

そんな思考の海に溺れていると、「お、おい・・・大丈夫か?」と黒髪のエルフ(?)さんが声をかけてくれた。

「そ、その・・・これ、水だ。飲んでくれ。多少は気分も良くなると思う。ああ、毒は入っていないからな!?本当だ!ほら、この通り。ごくん。な?」

「ひっく・・・あ、ありがとう・・・・・ございまずぅ。」

「わ、私はフィルヴィス・シャリアという。よろしく頼む。それで・・・・その・・・」

「???」

水をくれた黒髪のエルフ(?)さんこと、フィルヴィスさんは、恐る恐る僕に聞こうとする。さっきから心配そうにチラチラ見てはいたけれど・・・。

「き、君は・・・彼女・・・レフィーヤ・ウィリディスの話を理解、しているか?」

「してるわけないじゃないですかぁ!?」

という僕の精一杯の返答に、肩を揺らす。そして、ダラダラと汗を流しながらさらに聞いてくる。

「名前は?」

「ベル」

「レベルは?」

「1」

「所属は?」

「アストレア・ファミリア」

「あぁぁぁぁぁ!」

地面に両手両膝を付いて、「何をやっているんだぁ!?交渉も何もあの時の『はい!?』はイエスではなかったではないかぁ!?」と叫んでいた。そして、落ち着いてきた僕に申し訳なさそうに事情を説明してくれた。

曰く、アイズ何某さんが中々帰ってこないと思ったら、冒険者依頼を受けて24階層に行くと手紙を寄越してきたこと。それを主神の命令で見つけ出して連れ戻すようにと言われているということ。

僕にもわかるようにゆっくりと、丁寧に教えてくれたこのエルフ(?)さんのことを僕はきっと忘れない。

 

エルフ(?)に対する評価が30回復した。

 

「・・・・というわけなんだ」

「えっと・・・その、わかりましたけど・・・。僕、必要なんですか?」

「私にはよくわからん・・・。その、『探知』?ができるとウィリディスが言っていたんだ。」

「確かに・・・できなくはないですけど・・・」

「本当なのか!?」

「で、でも・・・・個人は無理ですよ?そ、その、それこそ複数人で一緒にいるとかなら可能性はあると思いますけど・・・」

 

スキルや魔法のことを他派閥の人たちに安易に教えちゃだめだと教わっていた僕は大雑把に説明をした。するとフィルヴィスさんは顎に手を置いて悩ましく考えて、僕をもう一度見て口を開く。

 

「24階層で、モンスターが大量発生しているらしいんだが、その場所を特定することは可能か?」

「・・・た、たぶん?」

「・・・・そ、その、今更なんだが・・・少し手伝ってもらえないだろうか?身の安全は私が必ず!」

「う、うーん・・・・で、でも、地上で騒ぎになってるんじゃ・・・」

「それは・・・否定できない。だが何かしら処罰されるとすればそれは私たち3人だ。君は気にしなくていい。地上に連れ戻してやりたいが・・・こちらも少し急いでいるんだ。」

僕は、少しだけ考えて了承することにした。そして、情報収集から戻ってきた2人をフィルヴィスさんが怒鳴り狼人さんは「おい、どういうことだクソエルフ」と言いウィリディスさんは「す、すいませぇぇん」と力なく土下座した。帰るに帰れないし協力することを伝えて僕はまた狼人さんに背負われ、またものすごいスピードで階層を降りていく。

 

「おい兎!!もう24階層だぞ!?どこにいるのかさっさと教えやがれ!!」

僕は思わず、反応がたくさんあるところを指差した。

 

「ほ、本当にわかるのか!?」

「ね、ね!?この子、すごいですよね!!」

「い、いや、本当ならすごいことだが・・・」

「ひっく・・・・・ひっく・・・は、はや、むり・・・ごめんなさぃ・・・許してください・・・・」

 

そのまま僕が指を指す方へと、猛スピードで進んでいく3人。この人たち、自分より格下に対する配慮が全くといっていいほど無い!!やがて、進んだ方向に壁があって

「おい!行き止まりじゃねぇか!!」

「ちょっ!?君!?まさか間違えたんですか!?」

「ひっく・・・ひっ・・・うっ・・・この壁・・・ホンモノ・・・チガウ・・・・」

「おい、言葉遣いまでおかしくなってきたぞ・・・」

 

僕が、この壁が普通じゃないと言ったのを信じたのか、山吹さんは光のビームを放ち、壁を破壊した。するとさらに進める通路が現れて、その先から戦闘音と悲鳴が。

 

―――もうやだぁ・・・。おねぇちゃぁん・・・。女神さまぁ・・・。

 

3人+1匹が進んだ先には、お目当てのアイズさんがいたらしく、そして、輝夜お姉さんにアスフィさんら【ヘルメス・ファミリア】の人。相対するは、謎の女(?)に、骨の仮面を被った男(?)に白法衣に植物のような怪物がそこにはいた。

 

「アイズさあああああん!?」

「ひっく・・・えぐ・・・っ!!」

「えっ!?レフィーヤ!?」

「うっ・・・ひうっ・・・」

感動の再会でもするかのように、山吹さんは叫ぶ。そしてすぐに戦闘に加わろうとする。あ、僕はもう忘れられているみたい。酷い・・・。そして、僕の姿を目にした、輝夜お姉さんはギョッとして叫び声を上げた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?貴様らぁ!!私のファミリアの新人を連れてくるなどどういう了見だぁ!?」

 

女神様・・・救いがありました・・・・。

 

「うっ・・・ひっく・・・輝夜ざぁん・・・っ!!」

「え・・・ベ、ベル・クラネル・・・!?どうしてLv1の子がこんなところに!?」

「おいアスフィ、知り合いか?」

「ほら、アルフィアの子の・・・以前リオンが相談に来ていたでしょう?それにローリエを助けてくれた子です」

「・・・・・Lv1って聞いたぞ。」

「ええ、Lv1です。」

「レベルってなんだ」

「ふふふ、嫌ですねファルガー。レベルはレベルですよ。お惚けさんですねっ」

「「・・・・ハハハハハ!!・・・・馬鹿じゃないのか!?」」

 

ヘルメス・ファミリアの人達も僕のことを知っている人は知っているらしく、状況を理解し、驚愕。事情も知らないので、山吹さん達を見て「えっ、こいつら他派閥の子を連行してきたの!?」という反応を見せた。

僕は狼人さんからようやく開放されて、輝夜さんの元に猛ダッシュ。途中、白法衣の人たちが襲ってきたけど、なりふり構わず『福音(ゴスペル)』した。

 

「ひっく・・・か、輝夜ざぁん・・・うっく・・・」

「ベ、ベル!?な、何がどうなっている!?リオンはどうした!?」

「あ、あの闇派閥(イヴィルス)の人たちに・・・ひっく・・・捕まって・・・あっという間に・・・こんなところに・・・うっく・・・【アイズサンアズキクリーム】さんを探すの手伝って欲しいって・・・ひっく」

「ま、待って!違う!!私たちは闇派閥(イヴィルス)じゃありませんよ!?」

 

僕の言葉を聞いて輝夜さんは、頭を抑えてくらっと仰け反った。

当然だ。本来こんなところ・・・いや、24階層にいるLv1なんて聞いたことが無い!!自殺行為も大概にしろ!?

 

「・・・き、貴様らは駆け出しを殺すつもりかぁ!?【ロキ・ファミリア】ぁ!?」

「ふぇ!?【アストレア・ファミリア】の人がいたなんて!?で、でもこの子のお陰でアイズさんを見つけられました!」

「ひっく・・・うっ・・・輝夜ざぁん・・・・ひっく・・・!!」

「だぁぁぁ!!男が泣いてんじゃねぇ!!敵がいるんだから戦いやがれ!!」

「「無茶言うなぁ!!!(言わないでくだざいぃぃ)!!?」」

 

そこからはもう、ヤケクソでほとんどサポートに回らされていた。

「ベ、ベル!2つ目の魔法!!2つ目の効果を歌え!!その後に3つ目の効果を歌え!!」

「は、はいぅ!!【天秤よ傾け、我等を赦し全てを与えよ――乙女ノ天秤(バルゴ・リブラ)オーラ】ッ!!」

「【天秤よ傾け、罪人は現れた。汝等の全てを奪え―――乙女ノ天秤(バルゴ・リブラ)ダウン】ッ!!」

 

魔法で味方・・・輝夜さんとヘルメス・ファミリアと金髪の剣士さんにオーラを。あとは赤い髪の女の人(?)と骨の仮面の人(?)と白法衣と植物の怪物にダウンをかけて、輝夜さんの邪魔にならないように下がる。するとすぐにまた指示が来た。

 

「ベル!!悪いが死傷者がいる!3つ目の魔法を使ってくれ!!倒れてもちゃんと回収するから安心しろ!!」

「は、はぃぃぃぃ!!【贖えぬ罪、あらゆる罪、我が義母の罪を、我は背負おう。――――乙女ノ揺籠(アストライアークレイドル)ッ!!」

 

ルーム中に僕の魔法の効果が展開されて、『傷がふさがらない!』『呪いを受けてる!』と言っていた声が『う、うそ!?直ってく!?』『自爆攻撃が不発してる!?』という状況になっていき・・・・そのあたりで僕は意識を失った。

 

■ ■ ■

「・・・・んぅぅぅ」

 

少しして、僕の意識が回復する。でも、とてもひんやりしていて、でも、いやな感じじゃなくて気持ちいい冷たさで、そして僕を包むように背中から温もりを感じた。その温もりの方をぼんやりとした目で見ると、そこには裸で僕を抱きしめている輝夜さんがいた。

 

「か・・・ぐやさん?」

「・・・・起きたか。」

「どうして・・・裸?」

「お前の体が、やけに汚れていてな。それに・・・さすがにアレは可哀想だと思って帰る前に綺麗にしてやろうと18階層でよく水浴びに使っている場所に来たんだ。寒くないか?」

「うん・・・・。気持ちいいよ・・・。」

「そうか・・・よかった。とにかく無事で・・・怖かったろう?」

「うん・・・いきなり捕まった・・・後からフィルヴィスさんが説明してくれたけど・・・怖かった・・・」

「恐らく、リオンあたりがアストレア様に報告しているはずだ。もう少しだけ、こうしていよう。」

「・・・触っててもいい?」

「ん?・・・ああ、好きにしろ。爪を立てたり噛んだりするなよ?」

「うんっ・・・」

 

僕が落ち着くまで、動けるようになるまで、輝夜さんに甘えてもいい許可が貰えてただただ甘えて、その間輝夜さんは、僕の目から零れる涙を拭ったり、水を体にかけたり、頭を撫でたりしてくれていた。

 

「・・・さて、着替えもすんだし帰るとするか。」

「・・・うん」

「ああ、万能者(ペルセウス)が、『貴方のお陰で仲間が助かりました。このお礼は必ず』と言っていたぞ。」

「???」

「お前の3つ目の魔法だ。呪いまで消すとはな。ディアンケヒトに見つかったら面倒くさそうだ」

「地上、騒ぎになってないかな?大丈夫かな?」

「さぁ・・・どうだろうな」

そうして話が終わったら、輝夜さんはまだフラフラしている僕を地上まで背負ってくれた。僕のスキルのおかげで、モンスターと戦闘することもなかった。たぶん、精神状態で狼人さん達と一緒にいた時みたいに戦闘するハメになったりするのかもしれない。

 

■ ■ ■

【ロキ・ファミリア】本拠

黄昏の館

 

朝、【3人組が他派閥の白い髪の少女のような少年を攫ってダンジョンに潜っていった】というギルド職員の話をギルドに来ていた猫人のアナキティ・オータムより報告を聞いた、王族妖精ことリヴェリア・リヨス・アールヴは激怒した。

 

「貴様ら、他派閥の駆け出しを連れ去って死地に追い込むとは何事だ!?恥をしれ!!!」

「フィン・・・うちら、もうアカンかもしれん・・・・遠征なんて・・・無理やろ・・・」

「ハ、ハハハ・・・僕はその子にあったことがないからよくわからないんだけど・・・とにかく、謝罪はしに行こう、ロキ。僕も同行する」

 

怒れる王族妖精+す巻きにされている狼人に『私は他派閥の13歳の男の子を誘拐しました』と書かれた板を首から下げて正座させられる山吹エルフ、そして『どうして自分が怒られているのかわからない』という顔をして同じく正座しているアイズ+乾いた笑みをする団長(フィン)に『今までいろんなことあったなぁ・・・』と黄昏る主神ロキ。

もはやカオスどころではなかった。

 

「あ、あの子は【アストレア・ファミリア】以前に、13歳の子供だぞ!?それにLv1だ!!いくら恩恵を受けていたとはいえ、抵抗もできず、有無も聞かずに連れ去って、あまつさえ闇派閥(イヴィルス)との戦闘だと!?紅の正花(スカーレット・ハーネル)が殴りこんでくる訳だ!!貴様たちは抗争でも起こすつもりなのか!?協力を得るにしても……お前たちは碌に交渉すら出来ないのか!?まともに事情説明ができたのは18階層でだそうじゃないか!」

 

と雷を落とし、そして、ふいに首をグリン!!とアイズへと向ける。

 

「貴様も貴様だアイズ!!遠征前だと言うのに『冒険者依頼を受けたのでちょっと24階層に行ってきます。』だと??ピクニック感覚で依頼を受けるな!!またじゃが丸くんにでも目がくらんだのか!?阿呆めが!!」

「っ!?」

わ、私、本当に依頼を受けただけなのに!?と謎の罵倒を受けたアイズは思ったし、なんなら心の中の小さなアイズも『私わるくないもん!』と主張している。だが、怒れるママにそんなものはおかまいなしだった。

 

「あの子はすっかり我々を【闇派閥(イヴィルス)】だと勘違いしてしまっていたぞ!?どうしてくれる!?仕舞いには、街中で【いい子にしていないと、ロキ・ファミリアに連れて行かれる】だの【早く寝なさい!じゃないとロキ・ファミリアが来るわよ!!】なんてどこぞの民間伝承のようなものが流れる始末だ!!貴様ら本当によくやってくれたな!!みっちり調教(教育)してくれる!!」

 

そう、朝の一部始終を見ていた、見てしまったものたちはそれなりにいた。そして、噂は一気に流れていった。その結果が謎の民間伝承が流行る。というものだったのだ。

これには子供好きのロキは大ショックを受けて、酒を飲む気にもなれずに、ずっと窓から遠いところをみて黄昏るほどだった。心なしか、その髪が白く見えた。

 

ちなみに、後日、「私のせい・・・みたいだから、私も謝罪に行きたい」とアイズも同行し自己紹介をして、警戒こそされたが、保護者同伴で何度かダンジョンに行った末に多少は仲良くなったが【じゃが丸君】を薦めたら「ひいいいいいい」と怯えられてショックを受けていた。

ガチの殴りこみをしたアリーゼは『あのロキ様が土下座までしたんだもの・・・さすがにこれ以上怒れないわ・・・』と女神アストレアと話し合った際にそう結論付けて、ベルが「これ以上騒ぎが大きくなるのはちょっと・・・」と言うので、あれやこれやと要求することにした。

 

 

帰宅して疲弊していたベルはフラフラしながらアリーゼの元に行き、「ラッキーアイテム、下着、ください」と言い仕舞いには女神アストレアの元に行き「女神様のも、もらって、おけば、きっと、安全……」と皆のいる前で言ってしまった為に余計心配されていた。

アリーゼはちゃっかり下着をあげた。

それでも、あの普通は経験しないようなことをしたためなのか、ステイタスは伸びに伸びていたため、ほくほく顔で羊皮紙をアリーゼに見せに来た兎に対し、誰もが「えっ、まさかチョロイ!?」と驚いていた。

 

なお、まったくもって関係ない、二次被害として帰宅したベルを心配していたリューは、「エ、エルフ!?リューさんはエルフ!?ど、どこに連れて行くんですか!?僕食べても美味しくないです!!」と怯えられ、偶々お風呂に入っていたベルと出くわして「大丈夫?」と心配して声をかけた狼人のネーゼは姿を見ただけで、泣きながら、バスタオルも巻かずに女神を置き去りにしてアリーゼの元に脱兎の如く逃げたベルに対して、かなり深いショックを受けていた。

2人して「「あのクソ共がぁぁぁぁ!!」」と言わんばかりにキレた。

 

何度か抱きしめたり話をして宥めたりしてようやく警戒心を解いてくれたが、この労力のケジメをどう取ってやろうかと、それはもう2人は怒っていたそうな。

 

 

アリーゼ・アストレアからの要求

・遠征への同行

・遠征の際のアイテム等の消耗品などの費用負担

・極彩色の魔石に関する情報の開示

・闇派閥に関する情報の開示

・XXXXXXXXXXヴァリス等

 

 




前回、新しく出たスキル
『英雄羨望(アルゴナウタイ)』の補足ですが、これは
原作ベル君が「僕は英雄になりたい」というのにたいして、この話のベル君は「自分にとっての英雄である姉達に並び立ちたい」という気持ちの方が強く現れていて、でも、『自分だけがそこに至るのでなく一緒に進みたい』という気持ちがあります。なので原作でヘスティア様が言っていた『英雄になるための切符』を渡す。という効果が付属しています。


今回の話でベル君は3つ目の魔法を使っていて、そのお陰でヘルメス・ファミリアの死者は出ていません。

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