兎の逆鱗
「♪♪♪」
日が昇り、カーテンの隙間から朝を告げるように日の光が差し込んで暗い部屋が微かに明るくなり外からは鳥の囀る鳴き声で僕は目を覚ます。胸をポンポンと軽く叩き楽しげな鼻歌が聞こえて、顔を横に向けると、そこには燃え盛る赤い髪に緑色の瞳の姉・・・アリーゼさんがいた。それも、裸で。
「おはよう、ベル!」
「・・・・オハヨウゴザイマス。アリーゼサン」
「・・・どうしてそんなカタコトなのよ」
「だ、だって・・・」
「忘れていたのはベルじゃない。『ランクアップしたら純潔をあげるわ!』って確かに言ったわよ?」
「じょ、冗談だと思ってたのに!?」
「・・・・ご馳走様でした」
「うわぁぁぁぁぁ!」
昨日、ホームへと帰還して、お風呂に入って、みんなで夕食を取って、アリーゼさん達が報告会をしている間、僕は1人蚊帳の外だったので読書をしていたのだけど、気が付いたらアリーゼさんに抱き上げられて部屋に運ばれて、服を脱がされて・・・・哀れ兎、真っ白な皿の上に乗っけられたディナーよろしく美味しく頂かれてしまったのだ。僕は、すっかり忘れていた。あのミノタウロスとの戦いの前にアリーゼさんが言っていた言葉を。というか、割と本気で冗談だと思っていた。
「なに、嫌だったの?私じゃ嫌?」
「い、嫌じゃないですぅ!!」
「ならいいじゃない。これで私もベルも大人よ!ふふん!」
「どうしてドヤ顔を!?」
(嫌じゃなかった、嫌じゃなかったけど・・・・!)
輝夜さんにされたことといい、僕はその未知の刺激に抗える訳もなく、やがてアリーゼさんに縋るようになってお互いによがり狂ってしまっていた。お、女の人ってすごい・・・やっぱり、ダンジョン都市オラリオはすごい・・・!?あ、あんな!?あんな冒険までするの!?
拝啓お爺ちゃん、お元気ですか?ヘラお婆ちゃんに殺されていませんか?僕は、昨日・・・冒険をしました。たぶん、ランクアップしてます。いや、した。うん。
「ベル君」
「はい」
「感想をどうぞ」
「・・・・すごくよかったです。またしてほしいです」
「素直でよろしい」
そう言ってニコニコとしながら、アリーゼさんは僕の頭を撫でる。心なしか、ツヤツヤしているのは気のせいだろうか。いや、絶対気のせいじゃない。何か吸ってる!絶対そうだ!
「さぁ、ベル!お風呂に入って朝ごはんよ!」
「ま、待って!裸で出歩くのはさすがにまずいよ!?」
「気にしない気にしなーい!」
「気にする、気にするからぁぁぁ!!」
■ ■ ■
南のメインストリートに位置する繁華街、そこは酒場や広場から流れてくる陽気な歌声と弾奏。待ちのあちこちでは魔石街灯があり、迷宮帰りの冒険者を加えた通りは人ごみで溢れかえる。色とりどりの灯りが大通りを照らし出し、星々に負けないほどの光を放っている。暗い場所が苦手な僕でも少しばかり胸が躍るというか好奇心を駆り立てられるような、そんな見たこともない景色が広がっていて、鳥や獅子など様々な動物を象った看板が立ち並んでいる酒場の1つに、僕とリリ、ヴェルフ、そして一緒にダンジョンに行っていたリューさんの4人がジョッキとグラスを掲げて重ねあった。
『乾杯!』
笑みと一緒に飲み物がジョッキから弾け、零れ落ちる。僕たちの声に随伴するように、周囲で騒ぐ冒険者達のテーブルからも、ガチン!とグラスを叩き合う音が鳴った。ヴェルフの行きつけで連れてきてもらった店は真っ赤な蜂の看板を飾る酒場【焔蜂亭】といい、一部の冒険者や鍛冶師にはとても人気があるらしい。なんでも、紅玉を煮詰めたかのような真っ赤な蜂蜜酒の虜になって連日通ってしまう人たちも多いんだとか。シルさんの働いている【豊穣の女主人】より店内は狭いけれど、なんというか・・・・これぞ冒険者の酒場!という感じがした。
「【ランクアップ】おめでとう、ヴェルフ!」
「これで晴れて上級鍛冶師ですね、おめでとうございます」
「ああ・・・ありがとう。疾風、あんたも何度もダンジョンに付き合ってもらって悪かったな」
「いえ、気にしないでください。アリーゼの剣を見繕ってもらった礼もありますし、こうしてベルに同性の友人ができたのはとても喜ばしい」
普段とは違った、はにかんだ仕草のヴェルフは口元から笑みを零し、目標が叶ったことが抑えられないようだ。先日の中層での戦闘の後、何度かリューさん達を誘ってダンジョンへと繰り出し乱戦という乱戦を繰り返しているうちにヴェルフは【ランクアップ】が可能になっていたらしい。そのお陰で『鍛冶』の発展アビリティを習得して、僕たちの元に駆けつけ、こうして祝賀会を開いていた。
「確か・・・これでヴェルフ様は【ファミリア】の
「いや、必ずしも全て、というわけじゃない。ヘファイストス様や幹部連中が認めた武具だけだな。下手な作品を世に出したらそれこそ、女神の名を汚すことになる」
「「なるほど」」
「それでも・・・・少なくとも、これからあなたの作品は飛ぶように売れることでしょう。それだけ、【ヘファイストス・ファミリア】のブランド名は大きい。上級鍛冶師の作品というだけでも十分な価値がある。」
「でも・・・その、ヴェルフは目標を達成したから、パーティは解消?」
僕は少し寂しくなってそんなことを言うと、ヴェルフは後頭部を掻きながら苦笑しながら口を開いた。
「お前は俺の作品を気に入ってくれた恩人で友人だ。ランクアップしたからって『じゃあサヨナラ』なんて言う訳無いだろ?呼んでくれればいつでも飛んでいくさ。だからそんな捨てられそうな顔をするな」
僕はその言葉に目を丸くして、やがて破顔し、もう一度笑い合って4つの杯を打ち付けた。
「あぁ・・・そういえば、ベルには俺の家名のことは話した・・・というより、ベルが主神、アストレア様から聞いたらしいしあんたも知っていると思うから聞いておきたいんだが・・・」
「?なんでしょうか」
「あんたはその・・・エルフだ。エルフにとって俺の家名、『クロッゾの魔剣』には因縁があるはずだ。俺がベルとパーティを組んだ、そして直接契約を交わしていることになんとも思っていないのか?と思ってな」
「ああ、そのことですか。そうですね・・・・何も思っていないと思えば嘘になります。多くの同胞の住む森を焼き払ったその魔剣の力は忌まわしき存在と言われても仕方が無い」
少しばかり、重苦しい雰囲気に。でも、2人とももう自分達が言う言葉、言われる言葉を知っているかのように態度は変えずに言葉を交わしていく。僕はアストレア様に言われるまで、『クロッゾの魔剣』についてのことなんて知りもしなかったし僕がミノタウロスを倒すときに魔剣を使ったことをヴェルフに言ったときは『別にそれは仕方がないことだろう?どうして謝るんだ?』と言われてしまった。
「ですが・・・その同胞の森を焼いたのは、『ヴェルフ・クロッゾが鍛えた魔剣』ではありません。私たちがあなたを、先祖達がしたことを責めるようなことをすれば、それはベルのことを責めるに等しいことだ」
後世の者までが責められ、その責を負うのは違う。そういって再びリューさんはグラスに入った水を飲んでは食べ物を口に運ぶ。そのリューさんの言葉が引っかかったのか、ヴェルフもリリも僕のことを見た。
「ベルのことを責める?どういう意味だ?」
「ええ、ベル様は魔剣なんて打てませんよね?」
「・・・・・」
「そうですね・・・どう言いましょうか。あまり詳しいことをここで言うわけにはいきませんので・・・あえて言うなら『暗黒期の時代において神に家族を奪われた』とでも言っておきましょうか。ベル自身の問題ですので、私たちが勝手に口を開くわけにもいかない。なのでベル、彼等に話しても良いと思うなら、そうしなさい。少なくとも知ったからと罵られ弾き者にされることはないでしょう」
「・・・・うん、わかった」
そうして2人に語られるは、ある種、暗黒期の裏側であり、オラリオで多くの死が生まれるほんの数日の前日譚。
そこにいたのは4人の家族。白い髪の少年に、灰色髪に黒いドレスを着た女性、顔に大きな傷を持った男に、1人の老神。女性は本当の母親の双子の姉で、少年の血縁。2人は病に苛まれ、少なくとも少年が大人になるまで持つかどうかもわからないことぐらいは少年も理解していた。受け入れたくはなかったが。それでも、少しでも長く長くこの楽しい4人での生活が続くものだと少年は願っていたし、信じていた。義母と風呂に入っていると祖父が覗き、もしくは混浴しようとして家ごと吹き飛ばされ、一緒に寝ていると潜り込もうとしてきて、また吹き飛ばされて満天の星空の元、気絶するという形で眠りに付き、翌朝、瓦礫の中から叔父と祖父が目を覚ますのだ。そんな日々は、唐突に終わりを告げた。あっさりと。前触れなく。ある夜、少年を抱きしめて眠る義母がおらず、瞼を擦りながら話し声のするところに行けば、少年以外の3人とはじめてみる人物が会話をしていた。暗かったこともあり、少年にはよく見えなかったが・・・暗闇の中でさえ存在感をつよく発するように、その瞳は暗く、冷たく輝いていて少年は竦んでしまった。少年の存在に気づいた義母は少年を抱き上げてベッドへ連れて行き少年は一緒に眠りに付く。きっと、祖父の知り合いなのだろう、少し怖いけれど、見た目だけでいうなら叔父だって怖い部類だ。大丈夫、明日もいつも通り叔父もいて義母もいるのだと、そう温もりに包まれて夢へと落ちる。
目が覚めれば、本当に今までの事が夢だったかのように、2人の痕跡を消すようにいなくなっていた。それが、少年の絶望の始まり。ベル・クラネルの始まり。
どこを探そうが、泣き叫ぼうが、翼を持った姉に探して欲しいと懇願しようが、もう、二度と再会を果たすことは叶わず、暗闇が少年を苛み続けた。2人が何故いなくなったのかと理由を知れば、オラリオで多くの命を奪い、破壊をもたらしたと聞いた。そして、オラリオに来てようやく会えたと思えば義母の墓だった。
これは、『ごく普通に暮らしていた少年が真っ黒な神の手で家族を取り上げられた』というだけの、それだけの話だ。
少年が、2人の家族で義母の血縁だと知れば責め立て石を投げようとする者は少なからずいるはずだ。とそう締めくくる。
「・・・・というだけの話だよ」
「ベル様の家族・・・」
「俺は、暗黒期はオラリオにいたわけじゃねえが・・・・なるほど、疾風、あんたが言っていたことがわかった気がする。」
「まぁ・・・・アストレア様は引き取ると言っていましたし、私たちも初めて会った時からベルを放っておけませんでしたから。今こうして笑っている姿を見れてとても喜ばしい」
「リューさん、今日はいつもと違う?」
「そうですか?」
「だって、いつも逃げるから」
「に、逃げてはいない・・・!からかわれるからそうなってしまうだけで!」
「そっか」
「ええ。そうです」
『まぁ、お前はお前だよ。これからもよろしくな』とそう2人とも同じことを言って、笑いあう。僕がオラリオに来て初めての友人で・・・どういえばいいのか分からないけど、とても胸が熱く、嬉しい気持ちだった。そんな様子を見て、リューさんも表情を柔らかくして僕の背を摩ってくれる。普段はあまりしてくれないから、とても特別さを感じてしまうけれど、嫌ではなかった。やがて、少しばかり暗くなってしまった空気を変えるようにリリが声を上げる。
「そ、それよりも!先日のゴライアスとの戦いですが、リヴィラにいた方たちもあの時参加・・・参加でいいのかわかりませんが、参加していたらしく、ベル様にイチャモンを付けていた方たちもベル様のことを認めていて随分株が上がった様子でしたよ?」
「そ、そっか・・・・」
話題を逸らし、先日のゴライアス戦の話をするリリ。なんでも、あの場にリヴィラの冒険者が何人か参加していたらしく・・・言わば、僕が【カナリア】を振り回してゴライアスを攻撃していたり、魔法を使ったり、挙句の果てにはアリーゼさんが嘆きの大壁に巨大な斬撃の後を見舞ったことで『あいつらやべぇよ・・・』『すげぇ・・・』『見えない魔法とかアリかよ』等々、そんな話があったらしい。口に食事を運びながら、当時の戦いの話をしていると、それに割り込むように声が響いた。
「―――何だ何だ、どこぞの『兎』が一丁前に有名になったなんて聞こえてくるぞ!」とワザとらしく僕たちの真横に陣取っていた冒険者からの声だった。
6人掛けのテーブルに座っている内の小人族の冒険者が杯を片手に叫ぶ。
「新人は怖いものなしでいいご身分だなぁ!レコードホルダーといい、嘘もインチキもやりたい放題だ、オイラは恥ずかしくて真似できねえよ!」
周りの客達の視線が集まる中、僕たちの目も隣にいる冒険者の・・・幼い少年のような声音へと向かう。
さらに小人族の男性は、唖然としてしまっているリリ達と、興味をなくして食事を再開する僕とリューさんを見てせせら笑っていた顔をひく付かせて続けた。
「おい、お前ら2人なんで平常で飯を食ってんだよ・・・」
「相手をするだけ無駄です」
「あれがお義母さんが言っていた『小賢しい小人族』か・・・・って思って」
「・・・ベル、それは恐らく【
「・・・・当たり前じゃないですか」
「サポーターしかいないファミリアのガキに、売れない鍛冶師と腰巾着のように吊るんで、寄せ集めのパーティを組んでるんだってな!そんでもって逃げ足だけは立派でモンスターを他人に押し付けては良いとこ取りをしてランクアップ!流石『兎』だ、立派な才能だぜ!」
冷やかしと侮辱か、聞こえてくるんはそんな声で、でも、リリはリリで『まぁ、サポーターですし。』と涼しい顔をしているし『まぁ、売れてなかったのは事実だな』と同じくヴェルフも何食わぬ顔を。そして僕は『まぁ、できなくはないと思うけど』というそれぞれがそれぞれの反応をしめす。リューさんも相手にすることはない、何より派閥同士の揉め事は避けた方がいいと教えてくれている。
それが気に入らなかったのだろう、小人族の男は舌打ちをしたのち、僕に矛先を向けて言葉を発する。
「6年の間に【
それは、その言葉は僕の逆鱗に触れるものだった。無視を貫くよりも、眉間にしわを寄せ女神様を侮辱したことに怒りを露にしつつも僕に抑えるようにとリューさんは手を取り訴えかける。でも、僕にはその言葉がどうしても耳に入ってこない。
「い、今頃、その廃墟とやらもどうなっているんだろうなぁ!」
「『
その一言とともに、小人族は店の外に吹き飛び、店には静寂が訪れる。体が、頭が、とても熱い。自分でもこんなに頭に血が上るなんて今まで知りもしなかった。リリは肩を揺らし言葉を失っているし、リューさんは『あぁ・・・すみません、アリーゼ、アストレア様』と僕のローブの裾を握りながら俯き言葉を零す。やがて、ガヤガヤと音が、雑音が大きくなり小人族の男と同じファミリアの冒険者達が僕を取り囲んだ。
「なんだなんだ、図星を突かれてお怒りってか!?よくもやってくれたな!?」
「先に手を出したのはそっちだぞ!!」
「手は出てねぇよ、バーカ。口が滑っただけだ」
「んだと、この鍛冶師風情が!」
そこからは、よく覚えていない。怒りに任せて魔法を放ったのか、ただただ殴り合いへと移ったのか。最終的に茶髪の美青年が現れ僕の腹に膝を打ち込み、顔面へと拳が叩き込まれ、真後ろに殴り飛ばされた。そして、これ以上僕を暴れさせないようにとリューさんが取り押さえ何かを相手に話し、同じ店内に偶々いた狼人の・・・・ベートさんが何かを投げ、破壊し、酒場に静けさを強引に取り戻させて何かを話したかと思えばその集団は消えていき、ベートさんは僕の前で立止まりポーションを叩き込んで「・・・これで借りはナシだからな」と言って出て行った。
「大丈夫ですか、ベル様!?」
「なんだったんだ、あいつは・・・」
「ベル・・・動けますか?」
「・・・お墓」
「・・・はい?」
「お墓、教会にいかないと・・・!」
「・・・・わかりました。行ってみましょう。ですが、彼等があそこに、『神の所有物』に易々と触れられるとは思えませんが」
「・・・・・ごめん、なさい」
「いえ・・・・仕方ありません。輝夜でも殴り飛ばしていたでしょうから。アストレア様を侮辱したのです、ベルは間違っていませんよ。」
「ごめんなさい・・・」
■ ■ ■
「っへぇ~、ベルが喧嘩・・・・ねぇ。ベルもやっぱ男の子ね、やんちゃして帰って来るなんて!」
「でも、喧嘩はよくないわ?ポーションを貰ったとはいっても怪我しているじゃない・・・・」
「・・・・・アストレア様のことを、ズルをしてるって。偽善の神だって。・・・お義母さんのお墓のことも」
「教会は無事だったではないですか。ベル」
「・・・・でも」
結論から言えば、廃教会は誰の手も加えられえおらず、綺麗なままだった。お墓を荒らした後も、隠し部屋を荒らされた後も、まったくなかった。それでも、許せなかった。僕は悔しくて、唇を噛んで涙を流してしまう。
「どこの派閥か分かる?リュー」
「はい・・・あのエンブレムは【アポロン・ファミリア】だったかと。アストレア様のことを侮辱した挙句、ベルのことを・・・・人殺しの子と嘲笑しました。」
「その小人族の子は?」
「生きています。問題ありません」
「・・・・そう。近いうち、何かしてくるでしょうね。」
「恐らくは。・・・・最初からベルを狙ってやっているようにも見えました」
「ベル、私のことは気にしなくていいから・・・だから、体を綺麗にしていらっしゃい」
「・・・・ぐずっ。はぃ・・・・」
「ベル、行きましょう。体、痛いでしょう?」
「リューさんが?」
「た、たまには・・・というやつです」
「・・・・ぁぃ」
リューさんに背中を押され、お風呂場へと向かう僕は少しだけ振り向いてアリーゼさんとアストレア様に謝る。『迷惑かけてごめんなさい』と。2人は気にしないでと微笑んで手を振ってくれていたけど、僕の胸の中はモヤモヤしていた。
「アストレア様、もしかしてですけどベル、狙われてます?」
「まぁ・・・・2人も短期間でランクアップしていたら・・・・いえ、ベルは特にそうだけれど。アポロンのことでしょうし・・・」
「レベル2だから手を出しちゃえ!とかですか?」
「う、うーん・・・・たぶん?」
「どうするんです?」
「とりあえず・・・明日以降、どうしてくるか次第じゃないかしら。」
「それにしても、ベルがアルフィアの子ってどこで知ったんでしょう。あの子はその名前を口にしていないはずですよね?2人のことを話していても、名前は出さないですし」
「知っているのはガネーシャ、ヘルメス、ロキ・・・あとはフレイヤかしら?」
「・・・・フレイヤ様が関わってるとか?」
さすがに、ナイナイ。いや、怪しいけど、さすがに・・・組むメリットないし。と2人は頭を振り明日以降教会に誰か来ないように見張りでも立てようかなんて話し込む。
「・・・『迷惑かけてごめんなさい』かー」
「どうしたのアリーゼ」
「いやー・・・普段から甘えてくれてますけど、『良い子にします』って昔言ってたことあったなーって。『良い子』でいないと家族じゃなくなるって思ってるんでしょうか?」
「思っていたとしても、それは仕方ないことでしょう?」
「それはそうですけど・・・あの子のことを考えれば。でも、ああいう考えはよくないと思います」
「そうね・・・・。あとで寝るときにでも、ちょっとだけ話してみるわ」
「はい、お願いします」
その夜、久しぶりにというか、1匹の子兎のすすり泣く声が、静かに響いた。
■ ■ ■
夜空に浮かぶ月の光を浴びて、金属で作られた太陽のエンブレムはきらめいていた。
そのエンブレム掲げるファミリアの名は【アポロン・ファミリア】。
主神はチェス盤に笑みを向け駒を動かし、別の部屋では黒髪長髪の女が『お告げが・・・お告げがぁ・・・太陽が黒く染められて砕かれるぅ・・・』と吐き気を催し、その横にいた友人の女は『何いっているのよ・・・』と呆れ返っていた。主神アポロンの前でひざまずき、報告をするのはアポロン・ファミリア団長、ヒュアキントス・クリオ。二つ名は【
「・・・・報告は以上です。ご指示通り目的は達しました」
「んふふふふ、よくやったぞヒュアキントスぅぅぅ!これであとはベルきゅんを迎え入れるだけだぁぁぁ」
「・・・・」
ベル・クラネルがアルフィアの子というのは確かにごく一部の者しか知らない。知っていたからと言ってどうということでもないのも確かだが。
「・・・・アポロン様、どこであの者が【静寂のアルフィア】の子であると?」
「ん?ああ、なに、本当に・・・偶々、風の噂で聞いただけだよ。フィリア祭のことといい、『姿が被って見える』とかリヴィラにいた冒険者が彼が魔法を使ったときに『どこかで見た様な・・・』なんてことを言っていた。それだけさ」
「ひっかけた。と?」
「そんなところさ。まあ、本当に当たっていたとは驚きではあるけどね。」
「我々は、暗黒期のことを知っているわけではありません。あの派閥に手を出すのは危険では?」
「・・・・『当事者のみで』『私の子供達は全員あの場にいた』とすればいいのさ」
不適に笑みを浮かべるアポロンに、ヒュアキントスは嫉妬心を持って唇を噛み、部屋を後にする。残るのはアポロンと木霊するアポロンの笑い声のみだ。
「んふふふふ、【疾風】があの場にいたのは予想外だが、ベルきゅんは頂いていくよ。アストレア~」