「アリーゼさんっ!!早く早くっ!!」
「待って待って、あんまり走ると危ないわよ!」
白髪紅目の少年と赤髪緑目の少女の声が響く。
ここは少年の家から少し歩いた場所にある湖の近く。
少年に手を引かれながら少女は歩く。いや、走らされる。
そんな光景を少し後ろからついて行くエルフの少女リュー・リオンは微笑を浮かべながらも「あの子が笑うようになって良かった」などと考えていた。
アストレア達との出会いから数日したのち、ようやく懐く様になった。
初めて会った時は「嫌な感じはしない」けども警戒心があった。いや警戒心丸出しだった。
それでも少年とゼウスから聞く限りでは、アルフィアとザルドが現れた時にゼウスが神であることは伝えてあるし、ゼウスの元にヘルメスがやってきたこともあるし村の近くにモンスターが大量に現れた時期にはアルテミスファミリアが村に滞在していたらしく、少し話した後にはアストレアに風呂に入れられいろいろな話をしていた。
ゼウスがいないことに気がついた輝夜たちが風呂場に急行し風呂に入り込もうとするゼウスを捕縛、「そこに!浪漫があるんじゃ!!ええい邪魔をするな!!女子がそこにいる!なら一緒に入る!自然の摂理じゃ!!」などと言う変態爺にリューはルミノス・ウィンドしようとしたし、したところをアリーゼに「待って!さすがに魔法は駄目よ!!アストレア様とベルが巻き込まれる!!」と止められるというバタバタがあった。
最終的にゼウスは土に植えられた。
ベル曰く、朝日が昇るころには出てくるらしい。
「―――あれが本当に神なのか?」とは輝夜の言。
なお、割と本気で天に返されるんじゃないかと思ったアストレアは湯船に浸かりながらベルに抱きついていたし、ベルも憧れのエルフに対して「―――これがバンシー・・」などと呟き恐怖のあまりアストレアに抱きついて体を震わせていた。
そんなハプニングの後、3人と2柱がその件で揉めている光景を見て
アルフィアたちとの生活の光景とかぶって見えて懐かしくなってベルは泣いていた。
でも、悲しみからくるものではなかったのか、ベルは久しぶりに笑いながら泣いていた。
一緒に寝ているときには、すすり泣く音がして抱きしめて眠っていたし目が覚めるまで傍にいるようにして漸くベルは心を開いたのだ。
そんな日々を過ごしている内にベルがお気に入りの場所に行きたいと言うのでアリーゼとリューが一緒に向かっていたのだった。
「アストレア様が帰るときには『良い子にします。だから行かないで』と懇願していたものだから説得が大変でしたが・・・・笑顔を見せてくれている以上、問題なさそうでよかった。」
オラリオにいる冒険者やその神は都市外に出ることは、難しい上に手続きも面倒で有力ファミリアであれば余計に難しいのだ。
今回は「アストレア・輝夜・アリーゼ・リュー」以外の眷属はオラリオに残っているため2週間という条件を何とか押し通してやってきていた。
ベルはアリーゼからの「家族にならない?」という言葉にすぐには頷かず、懐いてきた頃に「家族にしてください」とお願いした。
だから、オラリオに残っているゴタゴタが片付いたら迎え入れるとアストレアと約束していた。
まさか、6年待たされるとは思っていなかったが。
「――――リュー!!!ぼーっとしてるとまた畑に落ちるわよ!!」
今はベルと久しぶりに何度目かに会うアリーゼとリューと一緒にいる。他の眷属も交代でやってきていてお互いにいろんな話をしていたし、狼人のネーゼなどは珍しかったのか尻尾や耳をモフられていた。
「あれは事故です!!人とぶつかって足を滑らせてしまっただけです!!もう落ちません!!!」
■ ■ ■
「―――ベル、ここは?」
「とても静かな場所ですね・・・・風が心地良い」
アリーゼたちは湖の端に作られていた墓石の前にいた。
「―――えっと、妖精さんのお墓」
「妖精?リューみたいなエルフ?」
「違くて―――えっと、うーん・・・・」
「「???」」
「昔、嵐の後に助けた『喋るモンスター』がいて、お義母さんたちがいなくなった後に僕がモンスターに襲われて殺されそうになった所を助けてくれて、僕を庇って死んじゃって・・・。普通のモンスターとは違っていたしまるで御伽噺の精霊とか妖精みたいだから、勝手に妖精さんって呼んでる」
曰く、嵐の後にアルテミスファミリアの冒険者たちと見回りをしているときに車輪が折れて横転している荷馬車があったのだという。
その中から助けを求める声があり、中を覗くと空のように青く綺麗な翼を持ったモンスターが、誰もが知っているモンスターとは何かが違うモンスターがいたのだそうだ。
「どうする?」「モンスターが喋る・・・?嘘でしょ?」等と住民たちと冒険者たちが悩んでいるところを何の躊躇もなくベルはすぐ近くにいた冒険者からポーションを奪い、荷馬車の中に入ってモンスターに飲ませた。
「―――お姉さん、もう大丈夫だよ」と「―――助けを求めてる。悩むぐらいなら助けてあげたい」そう言ったのだという。
その光景に固まっている人間たちを見てアルテミスは
「そのモンスターに手を差し伸べたのはベルだ。だから、どうするかはベルが決めろ」
と伝え結果、この湖でのみ生活させるということで助けたという。
そのモンスターはセイレーンだろうとアルフィアたちを連れてきたときに言ってはいたが、醜悪なはずのモンスターとは違っていてよくわからなかったらしい。
ただセイレーンが言うにはダンジョンで冒険者に捕まって運ばれていたというのでオラリオからの密輸だろうという結論は出ていた。
ベルは涙を浮かべながら墓の前で座り込んでそんな話をした。
喋るモンスターとか綺麗な顔のモンスターだとかそんなことは聞いたこともなければ密輸などどうやって?とリューもアリーゼも同じことを思った。
「――――お別れを伝えたくて」
「―――そっか、もうじきだものね」
もうオラリオに来ても問題なさそうだから、いつでもいらっしゃい。そうアストレアから伝言を頼まれていた。
伝えた後、ベルから行きたい場所があるとここに2人を連れて来ていた。
「―――うん。だからお姉さんにお別れを」
2人もベルを習って目を瞑る。
祈るわけでもないが、ここに連れて来たのは何か知ってほしかったからなのだろうと思って。
「―――お姉さん、僕、オラリオに行ってくる。冒険者になるよ」
ベル・クラネル
13歳
恩恵は、まだ無い。
正史より1年早くオラリオに入る感じで。
闇派閥との大抗争から1年で無理を言ってベルの所に来ていたのでアストレア達が帰って(眷族は入れ替えで来てた)から後始末とか復興とかでなんだかんだ時間が掛かってしまって気づけば6年たってたってことにします。