旧・兎は星乙女と共に   作:二ベル

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ベル君

暗い場所での活動時、精神ともに不安定化。
     ↓
ゴーグルで視界の明るさを確保。(緩和)
     ↓
信頼度の高いアリーゼの炎の付与魔法が灯り代わりになる。(緩和)
     ↓
背負っているリーネが意識を取り戻すことで、孤独ではなくなる(緩和)
     ↓
合流することで、デメリット効果が完全相殺。
     ↓
人工迷宮、作者的に『ここって結構音響くんじゃね?』と思ったので、ベル君的に相性が良すぎる。


【星ノ刃】
通常時(鏡みたいな刀身)→赤→白→青


天秤よ傾け

 

 

「くそったれがぁぁぁぁッ!!」

 

人工の迷宮で響く、女の怒りに満ちた叫び声。

その女の姿は、満身創痍もいいところ、重傷も重傷で血まみれであった。回復薬を渡そうとするローブの者たちのことなど、知ったことではないとばかりに殴り飛ばす。

 

「ヴァレッタちゃーん、荒れてるねぇ。【勇者(ブレイバー)】にでもやられちゃった?」

 

【タナトス・ファミリア】、闇派閥の幹部。二つ名は【殺帝(アラクニア)】。名をヴァレッタ・グレーデ。ステイタスはLv.5。15年前のオラリオ暗黒期から闇派閥として活動し混乱をもたらした主要幹部の一人。邪神のもとで血に酔い、快楽に身を委ね、最も多くの冒険者を殺害し人の命を奪うこそが己の至上だとする生粋のシリアルキラーである。そんな彼女が、血塗れで帰ってきたのだ。あんなに意気揚々と【勇者】ことフィン・ディムナを殺しに向かったというのに。

 

 

「違ぇよ!!アルフィアだ!」

「うーん?」

「【裏切り者】のアルフィア・・・いや、正確に言えば違ぇが、よく似たようなやつが現れやがった!装備はぶっ壊されるわ、怪物共を呼び寄せるわ、散々だ!ああ、くそぉ!忌々しい!フィンの野郎に殺されかけた時のことを思い出しちまった!!」

 

 

「くそがああぁぁぁぁ!!」と叫び散らしながら、辺りお構いなしに八つ当たりをする。

 

「へぇ・・・【裏切り者】のアルフィアねぇ。で、その子のレベルは?」

「知るか!少なくとも私よりも下だ!装備を破壊してすぐ逃げたんだからなぁ!」

「あー・・・じゃぁ、あれかな。さっきからバルカちゃんが怒ってる謎の存在ってのがその子なのかな?」

「はぁ?どういうことだよ」

「この『クノッソス』の仕掛け・・・いや、根本的に通路とかをさ、破壊しながら合流しちゃったみたいなんだよねぇ。」

 

『イシュタル巻き込まれてないかなぁ』なんて他人事のようにそんなことを言ってのける主神タナトス。そして、その報告を聞いて目を見開くヴァレッタ。八つ当たりで頭が漸く冷えたのか、回復薬を頭から被って治療していく。それでも、怪物たちに襲われた結果なのか、左腕は完全に治りきらなかったようだが。

 

「左腕・・・駄目そう?」

「・・・・義手(アガートラム)を寄越せ」

「高いよぉ?それに、『呪詛』付きとか言うんでしょ?」

「うるせぇ」

「はいはい、頼んでおくって。それにしても・・・」

 

『それにしても【裏切り者】のアルフィアねぇ・・・』とどこか懐かしいものに触れるように目を細めて口を開く。

 

「あの時の大抗争の時にエレボスが連れて来た【ヘラ】と【ゼウス】の眷属・・・アルフィアとザルド。途中から随分と雰囲気っていうかさぁ、変わったよねぇ」

 

「ちっ・・・。自爆攻撃にガキを使おうとしたら、そのガキを私らの知らない間に作戦ごと変えてやがった。ガキはいつの間にかいなくなってるわ。おかげさまで【アストレア・ファミリア】の小娘共を殺しそこなった!そこからだ!全部全部、計画が中途半端に狂ったのは!」

 

自爆兵の子供を逃がしたと思えば、丁度よくオラリオ陣営が勝てるようにパワーバランスを取りやがるわ。エレボスは何も言わねぇどころか、面白そうにしてやがるわ、最後の最後にザルドの野郎はダンジョンに篭りきっていたものだからスキルで強化しているのかと思えば、『一切食ってない』状態でオッタルと戦って敗北。

 

「【裏切り者】、【腑抜け】って言われても仕方がねぇよなぁ!!」

「あぁ~あったねぇ。そんなこと。エレボスも何やら、黒い魔導書を手に入れてたみたいだけど・・・あれって本当にただの魔導書なのかなぁ」

「それこそ私が知るかよ」

「エレボス的には『難易度がハードモードからノーマルモードの間に変わった程度だ。大して違いあるまい?』って言ってたしねぇ。」

「あぁ~思い出しただけで、腹が立つぜ。なぁ、いっそ『精霊の分身』共を合流した冒険者共にぶつけて圧殺しちゃだめか?」

 

「ん~それは無理かなぁ」とタナトスは笑いながら返答し、ヴァレッタの状態を見つつも、過去の大抗争を思い返す。『せめてあの時代に、精霊の分身があればなぁ』なんて思いながら。

 

大抗争の際、助っ人とも言うべき、Lv7の2人を連れて来たというのに、確かに、急に変わったのだ。人が。

 

『自爆による特攻か・・・ふむ。別にそれについてはどうでもいい。だが・・・子供を使うのは気に入らん。だから逃がした。運が悪ければ死ぬ。別にこの時代ではそんなに変わるまい?』

 

『ダンジョンで何をしていたかだと?それをお前達が知る必要がどこにある?都市最強などとのたまうオッタルのガキなんぞ、スキルに頼るまでもない』

 

結果、2人はまるで格下の、可能性のある冒険者に手ほどきするように力を使っては打ちのめし、立ち上がらせ、最終的に死に絶えた。無論、死者が一切いなかったわけではない。むしろ最も死者が出た『良い時代』だった。だというのに、どこかスっきりしない不完全燃焼な終わり方をしたのだ。確かにオッタルを1度打ち負かし、2度目も何度も何度も追い詰めて・・・そして、時間切れで敗北。アルフィアに至っても似たようなものだったと聞く。アルフィアと戦ったというアストレアの眷属達は、その後、急速に力をつけ始めてLvこそ上がっていない者もいるが、その技量は確かな成長を見せているほどだ。

 

 

「はぁ~あの時代はいっぱい死んで、良い時代だったなぁ」

「浸ってんじゃねぇよ」

「あはは、ごめんごめん」

「死者を復活、もしくは『記憶』を持った状態で転生することはあるのかよ」

「それ、『死』を司る俺に聞くの?ヴァレッタちゃん。有り得ないから。魂は浄化される、それも全部同じようにね。」

 

仮にこの下界に2人の魂が降りて転生していたとしても、それはまったくの別物でしかないよ。

それだけ言って、ヴァレッタの質問に回答しヴァレッタもまた、舌打ちをして口を閉ざす。

 

「まぁ・・・仮の話をするなら、そうだねぇ。」

 

アルフィアに子供がいたりしたんじゃないかな?あぁ~迎え入れられたらいいのになぁ。とふざけた事を言うタナトスに、『それこそありえねぇよ』と否定する。

 

「ま、あの体型で経産婦だったらそれこそビックリだ。美の女神も裸足で逃げ出すよきっと」

「ハッ、相手はあのザルドってか?」

「おもしろいかもよ?」

「ねーよ、ばーか」

 

 

■ ■ ■

 

「【炎華(アルヴェリア)】ッ!!」

 

 

 

『――――――ッ!?』

 

雷炎を纏った渾身の蹴りが、『精霊の分身』に炸裂し、その上半身が、ままならず悲鳴を上げる。付与魔法のスペルキーの使用によって炎の鎧は解除され、少年は石畳に着地する。

雷の音と炎が、怪物が焼ける音が響く空間で、ローブを揺らすその存在に誰もが声を失う。

 

「ど・・・どうして・・・?」

 

アリーゼ以外は。

 

「どうしてここにいるの!?ベルッ!!」

 

こんな危険なところに来てほしくなかった。巻き込みたくなかった。なのに、来てしまった。ネーゼからの報告で耳を疑ったが、この音が響きやすい空間はベルにとって、相性が良すぎる。でも、それは精神的な条件を満たせばの話。

ゴーグルが壊れれば。人の死を、仲間の死を見たならば。それこそ一気に瓦解する、平常心なんて保てなくなる。そして何より、アルフィア達がこの空間にいたのではという疑念がベルを苦しめるきっかけになりかねない。だからこそ、情報を伏せたというのに。

 

「なんで・・・なんでぇ!?」

「『1人にしない』って言った!!」

 

ローブを揺らし、ゴーグルを外して、赤い瞳から涙を零して、ベルは叫ぶ。

約束したのに、『1人にしない』『置いていかない』そういったのに、1人だけ除者にされるのは耐えられない。僕を腫れ物みたいにしないで!!と。

 

「僕は・・・僕は可哀想なんかじゃない!!」

「―――ッ!」

「行って・・・!怪我人を連れて脱出して!!」

 

もう話す時間はないと強引に切り上げて、脱出しろと促す。

良く見れば、アリーゼもリューもみんな怪我をしていた。全員ボロボロだった。だから、自分が残って、ドワーフとアマゾネスの姉妹を手伝うべきだと判断した。

 

「無事に・・・帰ってきなさい」

「・・・・うん」

 

「ガレス叔父様、おねがいします!」

「任せとれぇ!!小僧、まだ魔法は使えるのか!?」

「マジックポーションがあと1本あります!」

 

精霊の魔法を跳ね返して、マジックポーションを2本のうち1本消費し、オーラを自分を含めた4人にかけてさらにダウンを『精霊の分身』にかける。

 

 

 

 

 

「いいかぁ、小僧。あいつは力型じゃ!突進と尻尾には気をつけろぉ!」

「アルゴノゥト君!魔法って何でも返せるの!?」

「はい!――いえ、何でもってわけじゃないです!魔法の完成がわからないとできないです!さっきのはレフィーヤさんが前にそんなことを言っていたのを思い出したからってだけで」

 

「「「レフィーヤ、ナイスぅ!!」」」とこの場にはいない少女に向けて全力の賞賛を送る。18階層から帰還後に何度か保護者同伴でダンジョンに言った際に、レフィーヤは軽く『こんなことがあったんですよ~』程度に話していて『精霊の魔法って言うんですかね、詠唱が完成するあたりで○○の化身、○○の王とか言うんですよ。あれはやばかったです。死に掛けましたし』なんてことを言っていてベルはそれをしっかり覚えていた。

 

 

「じゃあ、あんた!戦争遊戯の時の黒いのは!?」

「あれ出したらきっと、もっと暴れますよ!?」

「「「じゃあ、却下!!」」」

「18階層の時の回復?魔法は?」

「リーネさん助けるのに使ったし、平行詠唱できないので余裕ないですよ!」

「無理して使わなくていい!『音』の魔法は!?」

「・・・いけます!」

「なら、それで牽制をお願い!でも、無理はしないで!」

「小僧は魔法がきたら、跳ね返せ!それ以外はあまり突っ込むな!LV3にそこまでさせられん!」

「はいっ!」

 

そしてゴウゴウと炎をあげて動きを止めていた『精霊の分身』が再び動き出す。それに気づいたベルが3人に伝えティオネは【蛇の鞭】に確かに力が加わるのを感じ取り、気を引き締めなおす。さらにガレスが攻撃パターンがそこまでないことを伝える。圧倒的な破壊力と素の防御力は恐ろしいものがあるものの、攻撃の種類は限られていて単調であると。

 

ベルの魔法で力を増幅し、その圧倒的な潜在能力を無視するようにガレス達は攻める手を止めない。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおっ!」

 

殿を任せられた冒険者達の気迫が、執念が、仲間を思う心が一進一退の攻防を生み出す。『精霊の分身』は魔法の影響で能力が下がっているのか、動きは鈍く、逆にこちらは能力が上がり鋭く、そして力強く、打ち込んでいく。スタンプで攻撃を繰り出そうとしてきても、ベルの音の暴風によって妨害され、3人で戦っているよりも確かに、遥かに圧倒して行く。残っている尻尾と砲撃で必死に上半身『魔石』への攻撃を防ぐ『精霊』の顔に、確かな焦燥が走っていく。

 

『・・・!?』

 

尻尾を切り裂かれ、巨牛の下半身に強烈な攻撃が炸裂し、轟然と地に沈んだ。

 

「もらいぃー!」

「くたばれっ!!」

 

ティオナ、ティオネ、ガレス、三方向から同時に『精霊』の上半身に飛び掛る。

『魔法』を放って1人を撃ったとしても、残る2人が『魔石』を貫く。そもそも短文詠唱を奏でる猶予など、ベルが邪魔をしてくる時点でないも同然だ。

大双刃と湾短刀、大戦斧が精霊の体躯に叩き込まれようとした。

 

『――アハッ』

 

しかし、そこで、正面から飛び掛ったガレスは、『精霊』のおぞましい無垢な笑みを目にした。

 

『【荒べ天ノ怒リヨ】』

 

一節。たった一節。それだけで、魔法は発動した。

ベルの妨害もお構いなしに。

 

「・・・知らない魔法?なら・・・ッ!!」

 

ベルは必死に、焦りながら、早口で唱える。

 

「【贖えぬ罪、あらゆる罪、我が義母の罪を、我は背負おう。】」

 

『【カエルム・ヴェール】』

 

まさかの超短文詠唱。これは聞いてない、知らないと必死に唱えていく。

発生するのは夥しい雷の膜。その巨体を覆い尽くす雷の鎧。

ガレス達は時を凍結させるも、ベルが魔法を詠唱していることに気づいて、守りに入る。

 

「小僧を守れぇ!!」

 

「【我から温もりを奪いし悪神よ、我を見守りし父神よ、我が歩む道を照らし示す月女神よ、

我が義母の想いを認め許し背を押す星乙女ら四柱よ、どうかご照覧あれ。】!」

 

「「わかってる!」」

 

ベルの魔法で全能力が低下しているというのに、それを打ち返してしまいそうなほどの巨大な雷の恩恵を得た怪物。切り札を隠し持っていた『精霊』は、無垢な笑みを狡猾なものへと変えた。

 

「【何故ならば――我が心はとうに救われているからだ】!」

 

ガレスがベルの盾になるように構え、ティオネ、ティオナはさらに魔法による追撃をさせないように猛攻をしかける。

『精霊』はその2人の攻撃に確実にダメージを負い、次の行動が遅れていく。

そして、放たれた魔法が2つ。

 

『【放電(ディステル)】』

 

「【乙女ノ揺籠(アストライアー・クレイドル)】ッ!!」

 

次の瞬間、凄まじい雷撃と白雪のような光が展開した。

付与された雷鎧が360度、全方位にわたって電流を放射させ、そして、白雪のような光が戦闘を行っているルームそのものを包み込む。

 

『―――オオオォ!?』

『―――アレ?』

 

放たれた雷、それによって死に絶えるはずの冒険者が『精霊』の目の前に立っていた。

光の鞭が前脚に絡まっており、その鞭の先を追えば、真横の位置からティオネが『魔法』を行使していた。

 

白雪の光に当てられて、瞬く間に傷が治療されていく。

ドワーフが、アマゾネスが、無傷の状態で襲い掛かる。

 

「残念じゃったなぁ」

「へへへ、暖かいなぁこの魔法・・・」

 

地響きを伴う運動で体の向きを何度も変え、床に、壁面に、瓦礫の中に叩きつけようとするも、壊れない。おかしい。おかしい。

無垢な笑みを微笑みを浮かべていた『精霊』は、再び焦り、魔法を唱え始める。ならば、圧倒的な火力で焼き払ってやるとばかりに。

 

『【閃光ヨ駆ケ抜ケヨ闇ヲ切リ裂ケ代行者タル我ナ名ハ光精霊(ルクス)光ノ化身光ノ女王(オウ) 】』

 

「それは・・・知ってる・・・!」

 

レフィーヤがうろ覚えだけど真似て、こんな詠唱だったんです。って言っていたのを思い出して最後のマジックポーションを消費して右腕を『精霊』に向けて準備する。

 

 

「何より・・・詠唱が似てるのは、むしろ、僕にとっては、やりやすい・・・!ガレスさん!たぶん、僕この後、倒れますから!」

「任せて寝ておれ!片付けて運んでやるわい!」

 

ベルが右手を開き、何かを掴み取るように『精霊』を見つめ、そして、精霊もまた魔法を完成させ発動させる。

『【ライト・バースト 】』

「【天秤よ傾け】ッ!」

 

放たれるはずの閃光の砲撃は放たれず、不発する。置換され、襲い掛かってくることもない。

 

『―――エ?』

「・・・」

 

ベルは、掴み取るようにしていた右手を、握り締めた。

『魔法』の登録。

置換さえしなければ、登録はできる。それでも、イメージがしずらかったがために、ライラによって掴み取る動作を組み込んだことで登録する際のイメージを明確にさせた。

閃光の砲撃は冒険者を襲わず、『精霊』に返ってくることもない。そもそも

 

「そもそも・・・威力が高すぎる魔法をこんなところで使ったら、地上まで巻き込まれる・・・」

 

ベルは倒れこみながら、さらに、最後に『精霊』に指を刺して唱える。

空間に溜まりに溜まった魔力を、爆弾を起爆させるために。

 

「あと・・・は、お願いします・・・【鳴響け(エコー)】」

 

夥しい量の魔力(爆弾)が『精霊』に襲い掛かり、足を、腕を、体を、そして――魔法を唱えるために必要な喉を潰した。

ガレスたちも巻き込まれながら、治療されながら、突貫していく。

 

「それでは歌えんのぅ?歌えんだろう?――歌えるわけがないわァ!!」

獰猛な笑みを弾けさせて、ガレスは大唾を飛ばし、それにアマゾネスが続く。もはや、鞭など必要ないと魔法を解除して。

 

「私たちより下の子にここまでさせたんだから、ちゃんと倒せなかったら!団長に笑われてしまうっつーのぉ!!」

「いっくよおぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

ティオナ、ティオネ、ガレスによって足が切断されていく、解体されていく。

 

「そもそも!デカすぎんだよ!邪魔だクソが!!」

「その図体では、この部屋は狭かろうて!!」

「アハ、アハハハハハハ!!あの子の魔法のお陰で、すっごい斬れるよ!?ウルガの切れ味が上がってる!!」

「ワシの斧もじゃ!」

「言っとくけど、あの子の魔法の影響受けてたら、もうすぐ砕けるわよ!?」

「まだローン終わってなぁぁぁい!?」

 

怒涛の勢いで全ての足が滅多斬りされ地に伏し、女体部分が潰された喉でもがきくるしむも、3人が飛びかかり、ウルガ、大戦斧、湾短刀によって止めを刺される。

 

「塵となれぇええええええええええいっ!!」

「死ねぇえええええええええっ!!」

「ぶっつぶれろぉおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

爆散。

上半身の『魔石』が3人の攻撃により砕かれ、『精霊の分身』の巨体が膨大な灰粉へと果てた。

3人が着地と共に武器が砕け、灰が舞い上がり大きな霧を生む。

残響していた音の魔法は完全に消え去り、霧の奥から3人の影がベルのもとに歩み出てくる。魔力枯渇で眠っているベルをドワーフの大戦士が背負い、『精霊』の死骸が舞う大広間を後にするのだった。

 

■ ■ ■

 

 

少し肌寒い夕方の風が体を撫で、少年はゆっくりと目を覚ます。

そこは、どうやら冷たい迷宮ではなく、光ある地上であった。

 

 

「―――んぁ?」

「あっ、起きた!?」

「―――ティオナさん?」

「大丈夫そう?」

「はい、なんとか。」

「もしかして、あの入れ替える魔法?って結構マインド消費する?」

「えっと、入れ替えるだけなら、多少は。『登録』なら結構・・・あの魔法、すごいですね」

 

 

登録?今この子、登録って言った?と地上に脱出し寝かせられる場所にベルを寝かせ様子を見ていたティオナは思った。もしやこの子・・・と質問する。

 

「ね、ねぇ・・・もしかして、レフィーヤみたいにいろいろ使えるの?」

「レフィーヤさんみたいに?」

「う、うん!えっと、レフィーヤはエルフ限定だけどさ。」

「あー・・・えっと、違うんです。僕のは、入れ替えじゃなければ『登録』は2つのみで、使ったら消えちゃいます」

「つ、つまり?」

 

今、僕の中に、さっきの『精霊』の魔法が1つだけ納まってますよ?と疲れた顔で微笑むベル。

固まるティオナ。

ひゅーと風が吹いて、ティオナは脱力し、『ここにレフィーヤがいなくてよかった』と言いだして、さらに

 

「君、メレンに来てなくてよかったね。来てたらバーチェ達に狙われてたかも」

「え?バーチェ?」

「うん。テルスキュラのアマゾネス。すっごい強いよ」

「・・・・勘弁してくださぁい」

「あ、そういえば、リーネを助けてくれてありがとうね。フィン、治療院に運ばれたから代わりに言っておいてくれって。」

「でも、他の人は・・・・」

 

『君のお陰でリーネを含めて3名助かった』と報告してティオナは立ち上がって、【アストレア・ファミリア】の団員を呼びに立ち去った。一瞬、リーネさんしか助かってないはずだと言おうとしたが、自分のスキルが絶対じゃないことを、特に精神状態が不安定になれば、安定しないことを思い出して、

 

 

 

「―――何人いたのか確認できてなかったけど、生きてたんだ。よかったぁ」

 

と空を見上げて、微笑を浮かべた。

やがてやってくるのは、複雑な顔をした赤い髪の姉で、目線を合わせるようにしゃがみ込んで、頭を撫でてベルのことを背負う。

 

 

「アリーゼさん・・・その、強く言い過ぎて、ごめんなさい」

「どうしてベルが謝るのよ」

「だって・・・」

「・・・ごめん、ベル。ちょっと危ないことからベルを遠ざけようと意固地になりすぎちゃってたみたい。帰ったら、ちゃんと話すから」

「うん」

「ああ、それから、アストレア様の無茶振りを聞いてくれてありがとうね。」

「イシュタル様のこと?」

「それもだけど」

 

 

『1人であんなところに潜り込むなんて怖かったんじゃない?』と少し笑みを浮かべた横顔が見えて、僕は『アリーゼさん達がいるのがわかったから、頑張れた』と破顔して答えた。

とりあえず、とりあえず・・・色々問題はあるけど、ボロボロだし疲れたから、帰ったらお湯に使って美味しい物が食べたいわねー。なんて言いながら、僕達はアストレア様の元に帰るのだった。




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