兎は星乙女と共に   作:二ベル

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ステイタスの数値上げすぎじゃないかと思ったりもするけど、どうなんだろうか。いまいちよくわからんです


眷属会議

 

 

ベル・クラネル

 

Lv.3

力:C 666

耐久:A 830

器用:A 800

敏捷:C 656

魔力:S 910

幸運:H

魔防:H

 

<<魔法>>

 

□【サタナス・ヴェーリオン】

詠唱式【福音ゴスペル】

自身を中心に不可視の音による攻撃魔法を発生。

 

※星ノ刃アストラルナイフを持っている事で調整され自由に魔法を制御できる。

擬似的な付与魔法の効果を与える空間を作成。

魔法の影響を受けた物質は振動する。

 

■スペルキー【鳴響けエコー】

周囲に残っている残響を増幅させて起爆。

唱えた分だけ威力が増加する。

 

【乙女ノ天秤バルゴ・リブラ】 

 

□詠唱式【天秤よ傾け――】

 対象との武器もしくは、詠唱済み魔法を入れ替える。

 魔法のみ登録可能。

 登録可能数×残り1

 ■登録済み魔法:ライトバースト

  詠唱式【閃光ヨ駆ケ抜ケヨ闇ヲ切リ裂ケ代行者タル我ガ名ハ光精霊(ルクス)光ノ化身光ノ女王(オウ)

※登録する場合、詠唱式、効果を把握している必要がある。使用後、登録は消える。

 

□【天秤よ傾け、我等を赦し全てを与えよ】

 一定範囲内における自身を含む味方の全能力を上昇させる。

 

□【天秤よ傾け、罪人は現れた。汝等の全てを奪え】

 一定範囲内における自身の敵対者の全能力を低下させる。

 

■追加詠唱

 

【天秤は振り切れ、断罪の刃は振り下ろされた。さあ、汝等に問おう。暗黒より至れ、ディア・エレボス】

 範囲内における敵対者の戦意を大幅低下(リストレイトに近い状態にする)。

 効果時間中、一切の経験値が入らない。

※効果時間5分。

 

 

私は、ベルの上に跨っていた状態から仰け反りそうになった。

当然だ。背負われて帰ってきて疲労というか、魔力枯渇までしていたとかで、碌に動けないというし・・・いえ、全く動けないわけではないのだけれど。というか、人形みたいにいいように弄られている、遊ばれているこの子はこれはこれで・・・こほん。何でもないわ。なんでもないったら!

 

咳払いをして、この子の髪の毛を触りながら、背中をなぞりながら羊皮紙を見る。また無茶をしたのだろうと言う、ちょっとばかりのお仕置きを込めて、動けないのをいいことに背中をなぞる。『くすぐったいですアストレア様ぁ』と涙目で訴えてくるが、知ったことではない。その顔を見たかったのだ。いえ、何でもないわ。そんな目をしないで頂戴。ほら、可愛い子にはつい意地悪をしたくなっちゃうでしょう?――――それよ。

 

「『ライトバースト』って・・・何かしら?ベル?体はなんともないの?いえ、動けないみたいだけど。」

 

その質問に、ベルはカチコチ固まって、『えっと、できるかな?って思って怪物が詠唱した魔法に試してみたら、できちゃいました』なんて言い出す。知ってるベル?その今の貴方の顔を神々の間では『テヘペロ☆』って言うのよ。またひとつ賢くなったわね。街中でやっちゃだめよ。それに、『魔法によって負担が変わるみたいです』という。当然だ、そんな大魔法、普通は使えない。

 

それにしても、この子は私が『イシュタルを捕縛、アリーゼ達をサポートしてきてほしい』と頼んだのに、どうしてロキの眷属3名と殿になって『精霊の分身』なんて怪物と戦っているのかしら?というか、この【乙女ノ天秤】の魔法登録って、怪物の魔法でもいけるのね。すごいわ。いえ、そうではなくて、つまりなに、この子は今、『僕の中に、爆弾はいってまーす!てへ☆』と言っているのかしら?可愛い顔して怖いわ。

 

「ベル、街中で使ってはだめよ?」

「当たり前じゃないですかぁ!」

「本当にお願いね?街中で使ったら大変なことになりかねないし、私送還されかねないわ。されなかったとしても、オラリオを追い出されちゃうわ」

「そ、そしたら僕が責任もって、アストレア様をやしないますぅ!」

「そういうことではないのよ!?」

 

どうして顔を真っ赤にして、プロポーズみたいなことを言っているのかしらこの子は。いやだわ、まだまだ貴方はおこちゃまよ。あら?私も顔がなんだか暑いわ。窓、締め切っていたのね。今、開けるわね。

 

「アストレア様?まだ服着ちゃだめですか?」

「駄目よ。もう少し触らせて頂戴」

「くすぐったいです・・・」

「お仕置きよ。無茶なことしたんだから。あなたLv3だけど、相手はそれどころじゃないでしょう?」

「うっ・・・・」

 

どんなことをしてきたのかと聞けば、モンスターがでるたびに【福音】を連呼しているうちに、ナイフが赤から白、そして、初めて青色に変化して超硬金属(アダマンタイト)の壁や床を溶断して、人の反応にいち早く近づくためにショートカットして走り回ったという。この時点で理解が追いつかなかった。どうしてその武器は耐え切れるの?ねぇ、ヘファイストス?知ってた?こうなるの知ってた?

そして、恐らく【殺帝(アラクニア)】と闇派閥の者たちそ遭遇し、モンスター達を『誘引』して押し付けて、死に掛けの【勇者】フィン・ディムナとその仲間達に出くわし、魔法で呪詛を解除。他にもロキの眷属達を助けて、ようやく合流したら、下半身が牛で上半身が女体の怪物・・・に出会って、アリーゼ達が怪我を負っていたので、自分が残ったという。それもすこしきつい言い方をしてしまったと。―――ベルを大切にしているアリーゼが、やけに落ち込んでいたわけだ。

 

「アリーゼと・・・喧嘩、しちゃったの?」

「そういうわけじゃ・・・ないですけど。ただ、その、僕だけ除者に・・・というか、なんていうか、つい、『腫れ物みたいにしないで』って言っちゃいました」

「・・・そう。珍しいわね、2人が喧嘩するのなんて見たことがなかったわ」

「で、でも、ちゃんと謝りましたよ!?仲直り、しました!」

「そう、なら、大丈夫ね。」

 

喧嘩をして、仲直りができたのなら、それでいいと私は何度もベルの頭を撫でる。ベルは、それを気持ち良さそうに目を細めて受け入れる。2人が喧嘩なんて、少なくとも私は見たことがない。多少、揉めることはあれど、じゃれあう程度だ。すぐにいつも通り仲良くくっ付いているのを私は知っている。

 

「あの、アストレア様」

「どうしたの?」

「―――女の人が、お義母さんのことを『裏切り者』って言ってたんです。何か、知りませんか?」

「・・・『裏切り者』?」

 

突然どうしたのだろうと、思わず固まってしまった。

何せ、本当に知らないのだから。あの大抗争の中で、2人の様子――正確にはアルフィアの様子がおかしいと思ったのは、気づいたのは本当に最後の最期だったのだから。ザルドのこともロキから聞いたくらいで、気づいたのはやはり【勇者】だ。直接戦ったフレイヤの眷族である【猛者】もきっと気づいていただろうけれど・・・・『自分達の知るザルドとは違っていた』と言っていた程度。説明のしようがない・・・。

 

「アストレア様?」

 

悲しそうな顔で、見つめてくるこの子になんと返せばいいのか、言葉が浮かばない。

うーんうーんと悩んで結局見つからないものだから、「えいっ」とうつ伏せになっているこの子に覆いかぶさるように倒れこんだ。

 

「ふわぁっ!?ア、アストレア様!?」

「ふふ、ベル、ちょっと臭いわ」

「ひどい!?」

「・・・だから、もう少しだけ、こうしてましょう」

「・・・はい」

「調べてほしいというなら、可能な限り調べるわ。でも・・・本当にわからないのよ」

「・・・はい」

 

抱き枕のようにして抱きついて、横向きになったり、仰向けになったり、ゴロゴロとしてじゃれあう。そう、これだ。これがいいのだ。たまらなく、良い。

 

「アストレア様・・・柔らかいです」

「嫌かしら?」

「嫌じゃないです・・・・」

「なら、よかったわ」

 

一頻り満足して、やっぱり何だか匂うので、この子を背負ってお風呂にいれて、皆と話し合いをすることにした。今後の方針について。

 

「やっぱり、帰ってきたらまずお風呂ね」

「うぐ・・・」

 

 

■ ■ ■

 

「まずは、皆、改めておかえりなさい。無事に帰ってきてくれて、嬉しいわ」

「新妻ごっこはしてくれないんですか?アストレア様!」

「ベルにはしたわ」

「ベルぅ?」

「ひぃっ」

 

リビングにて、私と眷属達で卓を囲むように報告会をする。とはいえ、ベルを入れるのは初めてだろうか。私としてはベルを手放す気にならなかったので、私とベルで1つの椅子にくっ付くように座っている。小柄でよかったわ。ベルは睨まれて居心地が悪そうだけれど。

アリーゼはベルとちゃんと話し合ったのか、今後、無理のない範囲で『同行させる』ということで手を打ち、報告会にもちゃんと出席させることになった。やはり、心配なのは心配なのだろう。

 

「じゃあ、アリーゼ。報告をお願い」

「あ、はい。えっと、まずはあの人工迷宮・・・ごめんなさい、正確な名前まではわかりません。フィンさんが【殺帝(アラクニア)】と接触したらしいので、もしかしたら聞いてるかもしれませんが。迷宮そのものはかなり広大で、以前18階層でベルが見つけた『未開拓領域』が繋がっているとすれば、ダンジョンそのものと・・・他の階層にも複数出入り口があると思います。」

「材質はやっかいなことに、超硬金属(アダマンタイト)やら最硬金属(オリハルコン)やらで、私どもではそうそう破壊できるものではございませんでした。」

「そして、やはり、あの『眼球型』のアイテムこそが、鍵であるということがはっきりしましたが【ロキ・ファミリア】で1つ私たち【アストレア・ファミリア】で所持していたのが1つであったため、分断された際には混乱を生みました」

 

アリーゼに続いて輝夜、リューがそれぞれ報告していく。超硬金属(アダマンタイト)の壁は【重傑】が壊したという話は聞いたが、それでも己の肉体を犠牲にしてのもので、そう易々と壊せるわけではなかったらしい。それを容易に破壊して、走り回っていたのが、誰もいるとは思っていなかった私が送り出したベルだ。

 

「『探知』で私たちの居場所、そして、怪我人のいる場所を把握して迷宮そのものを破壊してのショートカットでフィンさんたちも助けられたと聞きましたけど、やっぱり、あの迷宮を簡単に破壊してのけるのがおかしいというのが【ロキ・ファミリア】陣営としての回答です。」

「そう・・・どんなところだったの?」

「えと・・・音がよく響きましたね。たぶん、ある程度の条件を満たせば、ベルとは相性がいいんだと思います。」

「逆に言えば、その条件が満たされてなきゃ、動けなくなってたろうぜ」

 

1番最初に出会ったネーゼが魔法のことも含め『相性がいい』と回答し、それに続いてライラが『トラウマを考えれば相性が悪い』と答えた。

確かに、暗い場所であり、あちこちにモンスターがいる状態であれば探知ができなくなり、この子とは相性が悪かったかもしれない。恐らく、後続で入ったことが吉となったのだろう。

 

「私の付与魔法を使って、さらに加速して、イシュタル様にタックルしてそのまま攫ってくるとは思ってませんでしたけど・・・服・・・服でいいのかしら、あれ、もう丸出しでしたし。それに背負ってた女の子なんて悲鳴あげてましたよ?」

「・・・・ベルぅ?」

「ひゃ、ひゃい!?」

「女の子を運ぶときは?」

「お、お姫様抱っこ!?」

 

『誰がそんなことを教えたの?』と私は無言で眷属達を見るも、全員が首を横に振る。『やってもらいたいけど・・・ベル、私より背低いし・・・』と呟くのはアリーゼだ。やめてあげて、ベルがショックを受けているわ。

 

「誰が『お姫様抱っこ』と言ったの?」

「ロ、ロキ・ファミリアのリーネ・アルシェさんが、『女の子を運ぶときは優しくしないと駄目なんですよ!?』って言ってたから、じゃあお姫様抱っこがいいのかって聞いたら・・・『そうですね、あ、でもどうせなら・・・』って」

 

『ベートさんってハーレム作ってたんですね!【イシュタル・ファミリア】にも女の人がいたなんて!』なんてことを言うこの子に私たちは開いた口が塞がらない。ベル、少なくともあなたが言えることではないわ。

 

「でも、ベル、イシュタル様と、リーネちゃんを投げていたわ」

「投げてましたね」

「思い切り、投げていましたね」

「うぐっ・・・」

 

 

『女の子には優しく』という話をしていた傍から、『女の子投げてましたよ!』という報告。これはお仕置きが必要かしら。あれ、まって、でもこの子もこの子でアリーゼ達にベッドとかカウチに投げられてなかったかしら。

 

「し、仕方なかったんです!あの時は!そ、それに、リーネさん!ベートさんにキャッチしてもらったとき、僕に向かって親指立ててましたよ!?イシュタル様をキャッチしたラウルさんも!!」

「何をやっているんだあの緊急時に!!【超凡夫】はぁ!!」

 

『丸出しの女神をキャッチして喜ぶなぁ!!』と輝夜は言うが、でも、仮にも美の女神なのだし、男の子なら嬉しいのではないかしら?うーん、ベルとしては嬉しいのかしら?あら、微妙な顔をしているわ。イシュタルは好きじゃないのかしら。

 

「ベルは、イシュタルを抱えていたのでしょう?どうだったの?『美の女神』なのだし、嬉しかったんじゃないかしら?」

「うーん・・・フリュネさんみたいな見た目の神様じゃなくてよかったって気持ちが大きかったです」

 

『あ、あと、アストレア様の方が美の女神様だと思いますよ!』と返答してくる。うーん、ありがとう。と頭を撫でてやるけれど、なんとも言えない。あの『美の女神』がフリュネ・ジャミールみたいな見た目の神だと思われていたことに同情を禁じえないわ。フレイヤまでそんな風に思われていたらどうしましょう。フレイヤはフレイヤでベルに会いたがっていたし・・・・。

 

「あ、でも、アストレア様にああいう格好は似合わないと思います!普段どおりがいいです!」

「そ、そう?」

「ちゃんと服を着てくださいね!」

「着ているわよ!?」

 

 

 

脱線してしまった。話を戻しましょう。

ベルと合流後、アリーゼ達は怪我人を抱えて脱出。ベルはリーネという少女を救出する前に謎の仮面をつけた人物と交戦したと報告。

曰く、『どこかで会ったことがあるような、気配というか・・・人だけど人じゃなくて、モンスターだけどモンスターじゃないっていうか・・・』とはっきりしないことを言う。どちらかと言えば、『食人花』などの極彩色のモンスターの反応だったという。

 

 

「人の体に魔石なんて・・・ありえるのかしら?」

「僕の体に埋まってたりしないでしょうか?」

「大丈夫よ。安心して」

「ダンジョンで人型のモンスターが産まれないわけではありません。ですが、アレはどう考えても違います」

「何より、27階層の悪夢で死んだはずの【白髪鬼(ヴァンデッタ)】が魔石を持って生きていたというのがおかしいんです。だって、私、昔、に27階層が騒がしくて見に行ったとき、闇派閥も含めて人がいっぱい死んでたんですよ?」

「【白髪鬼(ヴァンデッタ)】の死体は確認したのか?」

「あの状況でどう確認しろっていうのかしら!?無理よ!?」

 

話は聞いていたけれど、確かにその状況で死体の確認など不可能だ。

まぁ、もう既にそのオリヴァス・アクトは赤髪の女に魔石を奪われて灰となって死亡してしまったらしいけれど。うん?あれ?待って・・・・赤髪に、オリヴァス・アクトに・・・あれ?

 

 

「ね、ねえベル?」

「―――はい?」

「あなた・・・『魔石』が埋まっている人を特定できるの?」

「うーん?」

「だって、24階層に行った時も、『赤髪の女と骨の仮面を被った男が・・・』って」

「―――」

 

ベルは腕を組んで、うーんうーんと唸りだす。何この子、一々可愛いことするのね。見て、アリーゼがきゅんきゅんしてるわ。どれだけベルのことが好きなのかしら。ああいうのを神々で言う『おねショタ』って言うのよ。

 

「確かに・・・何かおかしかったような?どういえばいいんだろう・・・人の中に別の何かがいるっていうか・・・モンスターとは違うんです。」

「特定・・・できるの?」

「た、たぶん」

 

その自信なさげな『たぶん』に眷属達は皆、おぉ~と拍手を上げる。それにまたベルは『えへへ』と照れる。あぁ・・・そういうところよベル。

 

「でも、特定できるって兎が狙われることにならねえか?」

「確かに・・・」

「アタシが敵なら、兎をまっさきに狙うぜ?」

「確かに」

「何より、あの迷宮を破壊して回ってたんだろ?やばくないか?」

 

 

沈黙が生まれてしまった。確かに、危険だ。すくなくともあと2つはランクアップして欲しいくらいには。下手に特定してしまって、孤立させられたらそれこそアウトだ。

 

「あ、そのときに『精霊の魔法』を使うっていうのは?」

「「「「駄目に決まっているだろう!?」」」」

「ごめんなさあぁぁぁぁい!?」

 

一網打尽にでもしようと思ったのだろうか。並行詠唱ができるわけでも、高速詠唱ができるわけでもないのに、無茶が過ぎる。怒られて当然だ。ほら、そんなに落ち込まないで。

 

 

■ ■ ■

 

「あ、そう言えばアストレア様。【イシュタル・ファミリア】の処遇はどうなるんです?」

「とりあえず、表向きでは【ロキ・ファミリア】にダンジョン内で大規模な抗争を起こして歓楽街でも同様に【ロキ・ファミリア】の団員が襲われたってことになっているわ。」

「女神イシュタルは?」

「じきに送還される予定よ。ロキともそういう話で合意してもらってる。」

 

もっとも、あの『天の雄牛』はベルが見つけ出した資料にしっかりと記載されていたし、迷宮内にイシュタルがいたことで黒であると確定。ロキの眷属にも被害が出ているのでロキはお冠。

『そのくっそ腹立つ乳、しわしわの葡萄みたいにして使い物にならんようにしたるわぁ!!』なんて言っていたし、まぁ、表向きに【ロキ・ファミリア】の名前を使うのはそこまで大したことではないということだった。事実、メレンでも眷属が世話になったと聞くし。歓楽街でのベルの戦闘もロキの眷属が襲われたということにしてもらった。タンムズというイシュタルの従者はベルが壁を破壊して閉じ込めていたらしく、再び精鋭と共に捕まえに行って拘束。3つ目の『鍵』を確保した。

 

 

「【イシュタル・ファミリア】の団員は全員が闇派閥と繋がりがあるのですか?」

「全員ではないわ。一部のみらしいわ。【麗傑(アンティアネイラ)】にも確認を取ったし嘘はついてなかったわ。」

「メレンでテルスキュラの・・・【カーリー・ファミリア】でしたっけ。それと繋がっていたらしいですが?」

「あれはイシュタルがフレイヤに抗争を起こすときに呼び込むつもりだったらしいわ。今はその・・・」

「どうしたんですか、アストレア様」

「アマゾネスたちが、こ、恋に目覚めちゃったらしくて・・・」

「「「は?」」」

 

 

『とりあえず、カーリー・ファミリアが闇派閥ということはない』としか言いようがなかった。私でもよくわかってないのだから。ずるいわ、ロキ。メレンに行くなんて。私も外に遊びに行きたいわ。

 

「では、解散予定の【イシュタル・ファミリア】の団員は今後、どうするのですか?」

「それは、子供達が決めることね。【麗傑(アンティアネイラ)】は、『殺生石』の件もあって、ヘルメスの所に行くと言っていたけれど・・・」

「『殺生石』でございますか・・・・」

「あ、そうだ。忘れていたわ、皆に紹介したい子がいるのよ」

 

 

そう言って、私は立ち上がり、リビングを後にし、呼び出しに行った。せっかく同郷の子がいるのだから、そっちに行くべきだと思ったのだけれど、ほかならぬ【麗傑(アンティアネイラ)】に頼まれてしまって断れなかったのだ。

空き部屋・・・正確には使っていないベルの部屋で待機させていた子を呼び出して、またリビングに戻る。全員が、固まっていた。ベルも固まっていた。それはそうだろう。

 

 

「は、はじめまして・・・サンジョウノ・春姫と申します」

「え、春姫・・・さん?」

「ア、アストレア様?こ、この子は一体?」

「ネーゼ、被ってます!キャラが被ってますよ!?モフモフですよ!?」

「リオン五月蝿い!かぶってないから!!種族違うから!」

「紹介とはどういうことでございますか?」

 

混乱する眷属達に向けて、深呼吸をして、私はさらに混乱するであろう一言を言う。でも、仕方がない。仕方がないのだ。

 

 

「この子を、迎え入れることにしたわ。」

「春姫さんを?」

「そう」

「迎え入れる?眷属に?」

「そうよ、アリーゼ」

「金髪・・・金髪・・・」

「狐人よ、リュー」

 

シーン・・・と全員が静かになる。『や、やはり私はタケミカヅチ様の所に行くべきでしょうか?』という彼女に『嫌なら仕方がないけれど、無理する必要はないわ』と言う。

やがて、静まり返っていた全員が声を上げた。当然だろう。でも、この子の『妖術』のことを知れば、納得するしかないはず。

 

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 

驚く彼女達に、ステイタスを映した羊皮紙を渡す。

 

 

サンジョウノ・春姫

Lv.1

力 :I 8

耐久:I 32

器用:I 15

敏捷:I 23

魔力:E 403

 

<<魔法>>

【ウチデノコヅチ】

階位昇華(レベル・ブースト)

・発動対象は1人限定。

・発動後、一定時間の要間隔(インターバル)

・術者本人には使用不可。

 

<<スキル>>

【なし】

 

 

「ど、どどど、どういうことですか!?」

「は、はぁぁぁ!?階位昇華(レベル・ブースト)ォ!?」

「え!?えぇ!?」

「これ、兎と合わせたら、やべえんじゃねえか!?」

「【イシュタル・ファミリア】が虚偽報告してるとか言われてたのはコレかぁ!!」

 

『確かに殺生石で魔道具にすれば、そりゃあ強力な軍団ができますね』と動揺する眷属の中、輝夜だけが納得した。確かに【タケミカヅチ・ファミリア】では守りきれない。と。はっきりと言った。そして、それと同時に私は彼女の魔法についての情報を秘匿するように眷属達に言い渡した。でないと、それこそ彼女の命が脅かされかねないからだ。

 

「ですが、何故私たちの派閥なのでございますか?別に、【ロキ・ファミリア】でも問題ないはずでは?」

「それその・・・【麗傑(アンティアネイラ)】が・・・・」

 

とチラっと私も春姫もベルのことを見ると、姉達がベルにものすごい勢いで詰め寄った。

 

「え、何々、ベルったらやっぱり歓楽街で・・・?」

「女子を引っ掛けてきた・・・と」

「やはり、あの薬もそういう・・・」

「ぬ、濡れ衣ですぅ!!僕はただ助けただけなんですぅ!」

「こんな・・・こんな美人さんを!?」

「い、いだだだだだ、ほ、ほっぺ引っ張らないでぇ!?」

 

とりあえず、貴方達落ち着きなさい。彼女が何も言えなくて困っているでしょう?そう言って一旦、席に着かせる。いえ、アリーゼは納得いってないのかベルを抱きかかえて座り込んでしまったけれど。

 

「え、ええっと、ではその、春姫?何か一言・・・」

「は、はい!えっと・・・・その・・・」

 

この子は何を言うのだろうかと、皆が視線を集中させる。3人ほど圧がかかっているけれど。やめてあげなさい、彼女Lv1よ?春姫はオドオドしながら、意を決して叫び上げる。一体どんなことを言ってくれるのかと、すこし胸を躍らせる。

 

 

 

「ベ、ベル様の、よ、夜伽のお相手は精一杯させていただきますぅ!」

 

 

―――はぇ!?な、何を言っているのこの子は!?思わず転んでしまうところだったわ。あ、あれ、変な汗が・・・おかしいわね。

あ、皆固まってしまったわ。ベルなんてアリーゼに頬を抓られて涙を流しているわ。お願いアリーゼ、ベルは悪くないのよ!?だからやめてあげて、頬が伸びちゃうからぁ!!

 

「やっぱり、同郷の子がいるところがいいんじゃないかしら?ね、ベル?」

「ひぐ・・・ひっく・・・」

「去ね」

「悪いことは言いません。疾く失せなさい狐人。」

「コ、コン!?」

 

 

これから大変そうね・・・ベルが。




ヘスティア・ファミリアにベルはいないので、これがいいかなって。

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