天井から降り注いだ緑肉の雨は、いつの間にか止んでいて、溶解液の水溜りが所々にできていた。きっとリザードマンが焼いて管を塞いだのだろう。微かに残った液体が、ぴちゃり、ぴちゃりと落下していく音がする。
「―――ひ、ぅぁ・・・っ!」
救われることなく、たった2つの存在にしか助けを求める声を聞いてもらうこともできず、虚しく、消えていく。崩れていく。
「――ぁぁぁぁぁっ」
どこの誰とも知らない、もう身元を証明する背中もない、その誰かに向けて。
仕方がなかった。アレはもう、どうしようもなく化け物で救う手段なんて私も、ましてや【
「―――ベ、ル?」
泣いていた。
何故?何故?何故?私は・・・
何故ならば、
誰かにとっては英雄視されるかもしれないが、少なくとも、
だから―――理解、できない。
「どうして・・・・泣いて、るの?」
「ベルさん・・・」
「ごめんなさい・・・ごめんなさい、ごめんなさい・・・!」
――どうして、ベルが、謝っているの?
わからない、わからない。
そんなときに、ふと、頭に先ほどまでの言葉が流れてくる。
『僕の傑作の1つ!!僕はこれは便宜上【
・・・『どこからか変な御伽噺の本を寄越されてさぁ』
「―――あ」
それは、アマゾネスの少女が語っていた
『【イケロス・ファミリア】から融通してもらってさ、完成したら"ジュラ"に渡す手はずだったんだけど・・・まぁ、また作ればいいよね。目の前に
「―――あぁ」
登場人物は、少年と
『【胎児】の宝玉だっけ・・・?あれの失敗作、未熟児みたいなのが渡されてさぁ、試しに作ってみたんだ。そこの『喋るモンスター』と!冒険者の掛け合わせ!!魔法は撃てないけど、すごいでしょ?これを君たちは『怪物』と呼ぶ?それとも『人間』?』
・・・・『そこの『喋るモンスター』と!冒険者の掛け合わせ!!』
あの男の、ミュラーの声が何度も頭の中で反響する。
『喋るモンスター』それは、異端児のこと。
なら、少年が出会った
「―――ああぁぁぁ!」
「アイズ!落ち着け!」
ガラン、ガラン、と鞘に納めた
アイズは力を無くした様に座り込む。
そこで、漸く、理解した。自分が何をしたのか、してしまったのかを。
―――私は、私達は、ベルの目の前で、家族を・・・殺した・・・?
「ひっぐ・・・うぁぁ・・・『助けて』って言ってたのにぃ・・・」
「――――え?」
『助けて』って言っていた?
聞こえない、聞こえなかった。私には、聞こえなかった。
呼吸が定まらず荒れていく。
「――、――――、―――!」
声にならない、言葉にならない嗚咽で
思い出を汚され、家族を壊され、目の前で殺された。
『助ける』ことを諦めて、処分された。
【英雄】として都市で憧れの眼差しを向けられる派閥の【勇者】が諦め、【剣姫】が剣を振るった。
いつものように、淡々と、振るった。
少年の中で【英雄】が救うことを諦めたという目の前の現実が、音を立てて少年を傷つけた。
【
【
【
『仕方がなかった』『倒さなければ、自分達の身が危なかった』
そんな言葉を聞かせて理解させ、納得させられるほど、目の前にいる少年は、大人ではなかったし、現実を受け止められるほどの心の余裕がなかった。
フィンがリザードマンと何かやり取りをしているが、内容など聞こえないほどに、アイズは何度も口をパクパクと、言葉を漏らそうとして、何も言えなくて俯く。
「――どういう状況だこれは。アイズ、何があった?何故、お前は泣いている?」
「――リ、リヴェ、リア・・・?」
自分の役目を終えたのか合流をしにやって来たリヴェリアは、目の前の光景に唖然としつつも、泣いているアイズの頭を撫でて目線を合わせてくる。けれど、アイズは何も言えなかった。
「ごめん・・・・今は、何も言えない・・・私が、あの子を、ベルを傷つけた・・・」
「――――帰ろう。もう、我々にできることはない。」
「で、でも・・・!」
「ここでずっとこうしていても、仕方がないだろう。捕らえられていた者たちを地上に連れて行く必要もある。人手がいる。それに、今のお前に、彼に何が言えるというんだ?」
かえって傷口を広げるだけだ。
そう言われて、リヴェリアに腕をつかまれ、無理やりに立たせられる。ふとリヴェリアの顔を見ようとしてみれば、前髪で隠れていたのか、よくわからなかったが、とても悲しそうな、そんな感じがした。
「レイ、オレっちとグロスは逃げた男を追う。レイはもう少しだけ、ベルっちといてやってくれ」
「・・・・よろしいのですか?」
「ああ、オレっち達だけで大丈夫だ。」
「わかりました。お願いします」
「アイズ、リヴェリア。僕達は18階層に行く。そこでリヴィラの冒険者達に協力してもらって行方不明者たちを地上に連れて行く。」
「わかった。あのリザードマンは何だ?」
「おいおい説明する。とりあえず、襲ってくることはないから安心してくれ。彼等には、逃げたミュラーを捕縛してもらい18階層に連れて来てもらう。彼等なら、匂いで追えるそうだしね」
「はぁ・・・わかった。アイズ、行くぞ」
「アイズ、悪いけれど・・・」
「うん、わかってる。『仕方がなかった』んだよね」
アーディに治療されている輝夜のもとにフィンが行き、この後の説明を簡単にする。あとは任せてくれていいと。
「――わかった。後は頼みます【勇者】。」
「あぁ。彼は・・・」
「あの子は私の
「―――わかった。では、事後処理はこちらで。報告はまた後日そちらに行かせてもらうよ」
「えぇ。そうしてもらえると助かります」
「彼に、失望されてしまったかな?」
「たかだか1人の子供に失望されたからなんだと言うのです?何より、あの子にだってアレはどうにもできません。それを他人に責め立てようものならそれこそ傲慢もいいところだ。しかし、それもできないから、あの子はずっと苦しんでいる。」
【英雄】だから何でも救えると思ったら大間違いだ。
そう言って輝夜は立ち上がり、アーディと一緒にベルの元に向かっていく。
フィン達も去り際、ベルを一瞥して、立ち去っていく。
「・・・ベ、ベル」
「アイズ」
「フィン?何?」
「リヴェリアにも言われたかもしれないけれど、今、君が彼にかけられる言葉はないはずだ。今は、そっとしておくんだ」
「・・・・ごめん」
「いや、君に命じたのは僕だ。君が謝ることではないよ」
■ ■ ■
「―――すまない、面倒をかけたな。」
「―――無事、だったのですカ?」
「勝手に殺すな。ベルを置いて死ねるわけがないだろう?」
「ベル君、寝ちゃった?」
泣き喚き、目元を腫らして、
「私達はこれから18階層で休息を取って、地上に戻る。貴様は?」
「それでは私モ、同胞の元に戻ります」
「どうしてベルは、ああも取り乱していた?」
「それは・・・・私とベルさんだけが、『助けて』という2人の声を聞いていたからデス」
そして、レイが自分の羽をベルの装備の隙間に差し込んで、立ち去って行く。
「はぁ・・・後味、悪いね。」
「まったくだ。化け物にされたエルフの女の体は、見るも無残なボロクズになって崩れて、もはや原型もない。」
「ベル君とレイだけが聞こえてたらしいけど・・・救えたのかな?」
「さぁな。少なくとも、私達では、無理だろう」
「だよね。・・・それより、ベル君、私が背負ってるけど、いいの?」
「ああ。まだ体が痛むから、頼む。とりあえずは18階層で体を洗いたい。溶解液のせいでベタつく」
「だね。私も洗いたい。ベル君もベタベタだし」
ベルはアーディに背負われ眠っているが、それでも、まだ鼻を啜る音や瞼から涙が伝っていた。
「捕らえた『冒険者』は『魔力源』として使われていた。」
「闇派閥もばっちり関与。どころか、闇派閥だったね」
「【イケロス・ファミリア】が異端児共に何らかの手を出している。そして、"ジュラ"・・・【ルドラ・ファミリア】の奴が生きていたとはな。」
「えっとー・・・確か、5年くらい前かな?ダンジョンの異常事態で沢山冒険者が死んだんだよね?正確には闇派閥だっけ。大爆発が起きて」
「ああ。おそらくは生き残りだろうな。」
ミュラーといい、【イケロス・ファミリア】といい・・・輝夜もアーディも薄々、何となく、狙いが何なのか、今回のことで気が付いた。
「ベル君・・・狙われてるよね。あの
「よほどクノッソスを破壊されたことを根に持っているらしい。どうしたものか」
「オラリオの外に逃がしたほうがいいんじゃ?」
「・・・ベルは、1人にはなれない。私達全員が一緒でないと嫌がるのが目に見えている。」
「じゃ、じゃあ、アストレア様と2人だけで・・・とかは?」
「それも無理だ。私達が死亡して恩恵がないとアストレア様が気づいてしまえば、ベルもそれに感づく。」
そうなれば、あいつは自殺しかねんぞ。
逃がすにせよ、逃げないにせよ、1人にはできないと重々しく輝夜は呟く。
「前から聞きたかったんだけどさ、ベル君に何があったの?」
「アルフィアの血縁という話はしたな?」
「うん、聞いてる。アリーゼ達がオラリオを離れる理由を聞いたときに。」
大まかな事情を、【ガネーシャ・ファミリア】の主神と団長、そしてアーディは知っている。
他に知っているのは、【ロキ・ファミリア】と、【ヘルメス・ファミリア】、【フレイヤ・ファミリア】と女神デメテルくらいだ。
もっとも、女神デメテルに関しては、出会った当時のベルの髪が荒れていて、痩せていたために無理を言って色々と融通してもらったが故なのだが。
「まあ、悪神エレボスが、ベルの元に現れて、朝目が覚めるとアルフィアもザルドも痕跡ごと消えていたのがきっかけだな。」
「そういえば、ザルド・・・だっけ?様子が変だったってお姉ちゃんが言ってたような」
「アルフィアの墓に行ったことはあるか?」
「警備とかでたまに」
「今度、ベルと一緒に行ってみろ。そこの隠し部屋に、ザルドがおかしくなった理由がある。」
「え?」
「私もはじめて見たときは目を疑った。何せ、大量のモンスターの素材があるんだからな」
「それは、ベル君のため?」
「ああ。アルフィアはローブを残していったが、ザルドは何もなかった。あの抗争の中で2人に影響を与えた何かがあったのだろう・・・それこそ、ベルが何もしなくても暮らしていける程度にはある。」
時折モゾモゾとするベルの髪にくすぐったそうにするアーディに笑みを向けながら、輝夜は話を続ける。思い出すように目を細めながら。
「2人がいないことに気づいたベルは、家を飛び出して、村中を探し回った。が、見つからず、
それでも見つからず、果てには、2人を探している時にベルが怪物に出くわして、襲われ、それを
「そこでベルの最後の拠り所がなくなった。」
「待って。お爺ちゃん・・・えっと、ゼウス様?はどうしたの?」
「ベルが何度も殺そうとした」
「は!?」
ベルの祖父というゼウスは、2人がオラリオに行き、悪に堕ちるのを止めなかった。
2人がベルの元から去るのを止めはしなかった。
そして、仕舞いにはザルドの恩恵が消えたと感じた時点で『2人は死んだ』と伝えた。
ベルが恨むのは当然のこと。
だから、ベルは何度も殺そうとした。寝ている時に、包丁で刺し殺そうとした、一緒に歩いているときに崖下に突き落とそうかと考えた。
「でも、できなかった。」
「・・・どうして?」
「『お爺ちゃんが好きだから』」
家族として、お爺ちゃんが好きだったから、だから、憎くても殺せなった。
だから、精神が荒れた。
「あいつは英雄譚や冒険譚、御伽噺が好きだが、それも、私たちが行った時には本棚にはほとんどなかった。」
「どうしたの?」
「自分の前から、大好きな英雄がいなくなったんだ。神の手によってな。だから・・・・こんなもの要らないと言って、湖に捨てたらしい。実際、団長とリオンが湖に沈んでいる本を何冊も見ている」
怒りの矛先がなくて、荒れて、碌に食べず、大好きだった本を見れば、2人のことを思い出してまた苦しくなるから、捨てた。それほどまでに、追い詰められていた。英雄が好きだったのに、英雄がいなくなり、自分もそれになりたいと思わなくなってしまった。今でこそ、羨望するが所詮はあくまで『アリーゼ達に並び立ちたい』だけ。
「私たちがベルと出会った時、団長様が最初にベルの手を取ったが、私たちが事情を話した途端、激情した。当然だ。」
なにせ、目の前にいるのは親の仇。
本人は当時のことを覚えていないが、小さい子供ながらの罵詈雑言の嵐。泣き喚き、物を投げつけ、家から飛び出す。連れ戻しても、決して近づこうともしない。
「・・・・寝ているアストレア様の元に包丁を持って近づいた時はさすがに焦った。下手に怪我をさせるわけにいかないが、神殺しなどさせられないからな。」
「でも、結局、できなかったんだよね?」
「あぁ。私たちがいたからな。」
「・・・?」
「『家族を奪われた』苦しみを知っているから、『家族を奪う』ことができなかった。アストレア様がいなくなれば、アストレア様の眷属である私達がどうなるのか・・・そんなことを考えたのかもしれない。」
だから、結局何もできなくて、包丁の刃を握り締めて、血を流して泣き喚いた。
異変を感じて目を覚ました女神アストレアは、目の前で手から血を流して泣いているベルを見て、それはもう動転した。包丁を取り上げ、自分の衣服を破いて、傷口に当てて、リオンを呼び出して治癒魔法をかけさせた。
「さすがに、アストレア様も神ゼウスに大激怒だ。『小さい子供がいて、親がいなくなるのは止めないとはどういうことだ!こうなるのは当然のことだ!!』とな。村人に頼み込んで、ゼウスとは別で家を建ててもらうほどだ。」
その一件からは、ベルは物を投げるようなことはなくなり、大人しくなって、よく女神アストレアと一緒にいることが多くなった。
「それでも、ふと、ふらりといなくなることがあってな。2人の影を追って彷徨う事があった。それである日、アストレア様と一緒に昼寝をしていたはずが、いなくなっていて、焦ったアストレア様とともに探し回っていたら、ベルが怪物に襲われて血塗れで倒れていた。死んでもおかしくなかったほどに。それで、団長が念のためにと持ってきていたエリクサーやポーションを全部使って、3日3晩生死を彷徨った。目を覚ましたときには、泣き腫らしたアストレア様から説教を喰らって、あいつは初めて泣きながら『ごめんなさいごめんなさい』と言ったんだ。そこからだな。懐くようになったのは」
そこでようやく、神に対する忌避感ではなく、女神アストレアを警戒するのをやめて向き合うようになった。
それでも、後になって本人に聞いてみれば、あの時は誰も彼も同じようにしか感じ取れず神様の目はあの時の夜の『黒い神様』に見えて仕方がなかったのだという。
「アストレア様に、お義母さんの面影を感じたの?」
「いいや?それはどちらかと言えば、私だな。『乱暴なところが似てる』と言われて、思わずデコピンをしてしまった」
「うわぁ・・・・」
「もちろん、アストレア様に母性を感じたのかもしれないが、あれはどちらかと言えば・・・そうだな、恋だな。どこに惚れたのかはわからんが、優しさに惚れたのかもしれんし、姉のような柔らかさが良かったのかもしれん」
「アリーゼは?」
「同列だな」
アリーゼは、ベルにとっては、嫌な事を考える暇がなくなるほどに、あちこちに引っ張りまわして遊びまわった。だから、気が付けば懐いてしまっていた。
「まぁ、懐く前から一緒に風呂には入っていたんだが、懐き始めた頃には、自分から口にしないが1人で行動ができないから、自然と手を握ってきたりしていたな。」
「ベル君って、手を繋ぐときに、こう・・・にぎにぎしてくるよね」
「ああ。離れないようにあいつなりに必死なんだろうな」
「今でも一緒に入ってるんだよね?寝るときも一緒なの?」
「今でも一緒だな。1人になると駄目らしい。暗い場所に目があるように見えて体が震えるんだと。寝るときは基本的にはアストレア様と一緒で、たまに私や団長、リオン。他にも誘われたらそっちに行ってるみたいだ」
「モテモテだね?」
「ああ、いつの間にかほぼ全員が絆されていた。アーディ、貴様もだろう?」
「気づいてた?」
「ああ、やたら密着してくるとベルが言っていたからな」
「ええっとぉ・・・それで、アルテミス様はどうしたの?」
「ん?あぁ、女神アルテミスは、本当はベルを眷属に迎えるつもりだったらしい。」
けれど、ベルが一番居て欲しい時にいてやることができなかった。
再会ができたときには、女神アストレアと出会っていたから、無理に引き剥がすことも、誘うこともできず、見守ることを女神アルテミスは決めた。
「オラリオに来たときは、必ずベルに会いに来ている。・・・・それで、アストレア様がオラリオに帰るときに『行かないで』と言って、アストレア様の私物を隠したことがあってな」
「ベル君、やんちゃさんだったんだ?」
「結局、ベルがオラリオに来ても大丈夫なようにするから待っていてほしいと説得して、帰っていったんだが・・・6年もかかってしまって、それもあってベルは余計にアストレア様から離れるのを嫌がるようになってしまった。仕舞いには『アストレア様が天に帰ったら僕も天に帰る!』なんて言うんだぞ。困りものだ」
「ヘルメス様は?石を投げられたとか何とか聞いたけど?」
「アストレア様がオラリオに帰還した後、すれ違いで神ゼウスを訪ねにやってきた事があってな。夕方で暗かったのも原因なんだが・・・悪神エレボスと見間違えたみたいで、私たちが連れていかれると思ったらしい。何とか止めたが・・・あれは疲れたな。投石だけで、すんでよかった」
「あ、あははは」
つまるところ、こいつは私達に対する依存度が高い。それにトラウマのせいで、余計に1人なれない。
寂しくて仕方がないのと、愛に飢えているのだ。と輝夜が言ったところで、アーディに背負われているベルがまたモゾモゾと動く。
「――んぅ・・・」
「―――起こしたか?」
「――――お義母さん」
「違う、私は「会いたい」・・・そうか。そうだな。」
義母の死を聞かされてなお、どこかその影を探しているときがある。
果たされることのない再会を願い続ける。
それが、ベル・クラネル。
「おはよう、ベル君。」
「アー・・・ディ・・・さん?」
「うん、君のことが好きなアーディお姉さんだよ?ちょっとは落ち着いた?」
「・・・・うん。輝夜さん、体・・・」
「大丈夫だ。お前よりマシだ。ただ、戦闘衣装が少し溶けてしまったからお前のローブを借りているぞ?」
「うん・・・いいよ。・・・体、ベタベタする」
「18階層で水浴びして、綺麗にしてやる。」
「アーディさんも入るの?」
「うん、入るよ?」
「・・・・場所は?」
「いつものところだ」
「あそこ、嫌い」
「どうしてだ?」
「だって・・・・『死んだらここにお墓を作って欲しい』って言うから」
アーディは『この子の前で何変な冗談言ってるの!?』と思わず輝夜に抗議の大声を上げてしまった。