これは記録。
都市に刻み込まれた、『悪』が極めし隆盛の時代。
これは記憶。
俺だけは忘れてはならない、2人が駆け抜けた『
我等の血によって記された魔道書によって、汝は蝕まれ、優しいお前は苦しむことだろう。
否応なく、何の脈絡もなく流れ込み、お前の記憶に入り込むシオリのように、お前の知らぬ記憶が芽生えることだろう。それはお前を苦しめ、破壊し、現実と対面してさらに『失望』へと転じるだろう。
お前は2人を連れて行き、漏れ出た神威によって魂までも犯して行った俺のことを、神を心底恨み、殺しに来ることだろう。それこそ、あの『
お前の生きる我等のいない時代において、『英雄』はいるか?
お前の愛する家族のいない世界において、『お前だけの英雄』は現れたか?
2人はお前を置いていき、命を投げ打った。だが、お前はそれをきっと、『無意味』と片付けることだろう。事実、お前が失望し、絶望しているのであれば、その通りなのだろう。
だがしかし・・・無意味であったとしても、お前の目に広がる世界は決して、『無価値』ではないことを知れ。
「・・・見事だ、オラリオ。俺は俺の全てをもって『悪』を執行したが、最後はお前達のしぶとさと、『正義』の輝きにせりまけた。素直に負けを認めよう。じゃないと、カッコ悪いからな。」
だから、これは
呪いにもなるだろう。
あるいは、お前の力になる奇跡にもなるだろう。
とある【古の賢者】が作り、破棄したものを拾い上げたものを使っているからな・・・どこまで有用かは、保証できん。
上書きされた記憶によって、お前はお前でなくなるやもしれんし、お前の中で答えを見つけて俺の悪意に打ち勝つかもしれん。楽しみにしているよ。
入り込んだ3人・・・いや、正確には俺の恩恵を介した"あいつ"の記憶も混じる可能性もあるから、4人か。まぁいい、その入り込んだ記憶によってお前が知らぬ言葉、お前の知らぬ光景、そして、お前が習得していない技術を得ることもあるだろう。それがこの魔道書の効果だ。まぁ、断片的なものでしかないが。
ああ、無論、謝るつもりはないぞ?俺は『絶対悪』だからな。媚びず、泣かず、喚かず、赦しを求めない。憎まれることこそが『悪』の本懐。俺は最後まで嗤い、邪悪を貫き続ける。
「下界の住人であるお前たちには、
『悪』を葬るならば、それは『正義』の女神でなければならない。そして、お前を壊し、お前の義母の後悔を晴らすために、たった1つのおせっかいを焼いてやるとしよう。
「あぁ、アルフィア。お前の子を、『■■の■■』に託すというのはどうだ?【膝枕されながらヨシヨシされたいランキング堂々の一位。】だ、最高だろう?まぁ、決めるのはお前だが。」
お前が、この魔道書を手に取らないのであれば、ただの『塵屑』であり、手に取ったのであれば、『呪いの書』とも言えるだろうが・・・限られた旅路の果て、お前がより良い解を得られることを願っているよ。
あえて名をつけるなら・・・そうだな、後継者という意味を持って・・・【
「・・・あぁ、そうそう。これ、全部読めるようになったら消えるようになってるからな。じゃぁ・・・・そうだな、頑張れ。少年」
「―――えぇ?」
ベルと輝夜が、【ロキ・ファミリア】の眷属達と共に行方不明者の捜索に出て少しした後、掃除をしていた春姫が、うっかり例の魔道書を落としてしまい拾い上げた際、文字が見えてしまったらしく私の元に持ってきたのだ。
今まで見えていなかったはずの魔道書の最初のページが、どういうわけか、文字が浮かび上がり読めるようになっていた。
「どうして?今まで、読めなかったのに?衝撃が与えられたから?」
そう思って、私は、天界で今頃ピースをしているだろう
「えいっ!!」
ビタンッ!!
「コ、コン!?ア、アストレア様!?」
書物になんて事を!?という反応―――まぁ、事情を知らないのであれば当然ね。
「こ、こほん。ごめんなさい、なんでもないの。」
「そ、そのご本は・・・?その、手記のように見えますが?」
「―――【呪いの書】よ。読むと、もう一生『白い兎』が傍にいないと眠れなくなっちゃうの」
「ほぇっ!?」
ふふ、春姫ったら、『ナニソノ呪い!?』みたいな顔をして尻尾をピン!と立たせているわ。
「で、ではその・・・ベ、ベル様を今夜お借りしても?」
「駄目よ。私と寝るのだから」
「そ、そんなぁ・・・!」
「なんなら、私の部屋で3人で寝る?それなら、手を打つわ。」
「――っ!!」
「ああ、でもやっぱり駄目よ。輝夜から聞いたけれど、あなた寝言がその・・・アレらしいじゃない。ベルが眠れなくなったら困るから、お預けね」
「ガーンっ!?」
新入りの女の子をからかいつつ、魔道書をパラパラと開くも、とくに変化はなし。
まさか、今現在、ダンジョンでベルが魔道書のせいで苦しんでいることなぞ、露知らず。
「帰って来たら、また抱きついてくるのかしら・・・・ふふっ」
「うぅぅ・・・アストレア様が羨ましいでございますぅ」
「色々あったが故よ、春姫?貴方だって、ベルに懐かれていないわけじゃないじゃない?キスだってしたのでしょう?」
「お、お酒の力で。でございますが・・・・」
「それでも、いいじゃない」
「お、怒らないのでございますか?『浮気モノー!!』とか『不純だー!!』とか」
「うーん・・・確かに、あれこれ手を出すのはよくないとは思うけれど・・・そもそも皆あの子のことを好きになっちゃったみたいだし、人のこと言えないのよねぇ」
妙な胸騒ぎがするけれど・・・うん、その分、帰って来たあの子を抱きしめてあげよう。
あの子はきっと目を細めて、嬉しそうに身を預けてくるはず。
異端児についてもそうだ。私が書いた『御伽噺』がフィリア祭と同じように効果が小さいながらも、あの子の役に立ってくれるなら・・・きっと、無駄ではないはずだ。
そんな思いが、まさか、あの子を苦しめる原因になるだなんて、私は、知りもせずに、紅茶を啜った。
帰って来たあの子が、机の上に置いてあった御伽噺を見て、激昂し、初めて家出をするだなんて、今の私は知るはずもなかったのだ。
■ ■ ■
ベル・クラネル
Lv.3
力:S 910
耐久:S 900
器用:S 990
敏捷:SS 1190
魔力:SS 1100
幸運:H
魔防:H
<<スキル>>
□
パッシブ:自身に害ある存在からの遭遇率を減らす(認識されにくくなる)
アクティブ:自身でトリガーを設定し、害あるモノを誘引する
□
・早熟する
・懸想が続く限り効果持続
・懸想の丈により効果向上
魔道書【
□
・
・人型に対し攻撃力、高域強化。
・人型に対し敏捷、超域強化。
・追撃時、攻撃力、敏捷、超域強化。
・怒りの丈により効果向上。
・カウントダウン式(Lvに依存)
カウントごとに威力、敏捷上昇。
カウントに応じ精神力、体力を大幅消費。
・精神疲弊
<<魔法>>
□【サタナス・ヴェーリオン】
詠唱式【■■】
自身を中心に不可視の音による攻撃魔法を発生。
※星ノ刃アストラルナイフを持っている事で調整され自由に魔法を制御できる。
擬似的な付与魔法の効果を与える空間を作成。
魔法の影響を受けた物質は振動する。
■スペルキー【■■■】
周囲に残っている残響を増幅させて起爆。
唱えた分だけ威力が増加する。
【
□詠唱式【天秤よ――】
対象との武器もしくは、詠唱済み魔法を入れ替える。
魔法のみ登録可能。
登録可能数×残り1
■登録済み魔法:ライトバースト
詠唱式【閃光ヨ駆ケ抜ケヨ闇ヲ切リ裂ケ代行者タル我ガ名ハ光精霊ルクス光ノ化身光ノ女王オウ】
※登録する場合、詠唱式、効果を把握している必要がある。使用後、登録は消える。
威力は本物よりも劣化する。
□【天秤よ傾け、我等を赦し全てを与えよ】
一定範囲内における自身を含む味方の全能力を上昇させる。
□【天秤よ傾け、罪人は現れた。汝等の全てを奪え】
一定範囲内における自身の敵対者の全能力を低下させる。
■追加詠唱
【天秤は振り切れ、断罪の刃は振り下ろされた。さあ、汝等に問おう。暗黒より至れ、ディア・エレボス】
範囲内における敵対者の戦意を大幅低下(リストレイトに近い状態にする)。
効果時間中、一切の経験値が入らない。
※効果時間5分。
■
絶対安全領域の展開
・回復効果
長文詠唱
【贖えぬ罪、あらゆる罪、我が義母の罪を、我は背負おう。】
【凍える夜には共に手を繋ぎ傍にいよう。道に迷ったときは共に歩もう。】
【我はもう何も失いたくない。】
【箱庭に愛された我が運命はとうに引き裂かれた。我は貴方を憎んでいる。】
【されど】【されど】【されど】
【我から温もりを奪いし悪神よ、我を見守りし父神よ、我が歩む道を照らし示す月女神よ、
我が義母の想いを認め許し背を押す星乙女ら四柱よ、どうかご照覧あれ。】
【我が凍り付いた心はとうに温もりを得た。ならば同胞達に温もりを分け与えよう】
【我は望む、誰も傷つかぬ世界をと。我は願う、涙を流し彷徨う子が生まれぬ世界をと。我は誓おう、次は我こそが手を差し伸べると】
【救いを与え、揺り籠のごとく安らぎを与えよう】
【何故ならば――我が心はとうに救われているからだ】
効果時間
15分
※月下条件化
・詠唱式変異
・月光が途切れない限り効果範囲拡大
・回復効果
・微弱な雷の付与
「――――えぇぇ?」
私は、廃教会の隠し部屋に設置してあるベッドの上で、裸でベルの上に跨っているというただでさえはしたない格好だというのに、ひっくり返りそうになった。たしか最後にステイタスを更新したのは・・・クノッソスに帰って来てからだったはずよね?そこから、異端児に出会ったり、色々あったみたいだけれど・・・うーん・・・。
「どうかしたんですか?」
「え、な、なんでもないわ!ベルの体、綺麗だなぁって思ったのよ?」
「・・・?アストレア様のが綺麗ですよ?」
「あ、ありがとう・・・」
―――
心当たりがあるとすれば、家出をする直前に手にした、あの御伽噺だ。
『こんな、こんなものいらない!!こんなもののせいで、僕の思い出が汚された!!エルフの人も、
『【同情?憐憫?貴方が
涙を流し、髪をかき乱し、錯乱したように、自分でも何を言っているのかわかってないような顔で、そんな言葉を私の目の前で投げつけて、私は何度も落ち着くように言い聞かせても、その言葉は入っていかずに、
『【
その言葉を聞いて、気が付けば、私はベルに平手打ちをしていた。
恩恵を持った子が、ただの一般人と変わらない私の平手打ちで倒れるわけもないのに、ベルは倒れ、机の角に頭を強くぶつけて、ポタポタと血を流し始めて、私は自分がベルに手を上げてしまったことに驚いて謝ろうと手を伸ばすも、一瞬、キョトンとした顔をして、やがてプルプルと大粒の涙を浮かべて、震えて、主神室を飛び出し皆の制止を無視して裸足で飛び出してしまったのだ。
―――ベルに手を上げたことなんて、初めてじゃないかしら。こんなに、痛いのね。
ベルが初めて家出をして、けれど、行き先なんて分かりきっていて、だから慌てて私の元にやってくる眷属達を落ち着かせて、春姫に頼んだのだ。
『春姫、今日はベルと一緒に一晩過ごしてくるから・・・着替えと、食事・・・詰められるだけで構わないわ。お願いできる?』
そう言って、着替えやら食事やらを入れたバッグと共に、唯一の心当たりである廃教会にやって来たのだ。
案の定、アルフィアの墓の前で、えんえんとすすり泣くベルの姿があり、私は背後から抱きしめて、離れようともがくベルに『ごめんなさい、痛かったでしょう?もっと気を使ってあげるべきだったわ』と言って抱きしめ続けた。
出かける前に、輝夜から聞いた話では帰還する1日前・・・どうやら溶解液で戦闘衣装がベタベタになって一晩、18階層で過ごしてから帰って来たらしいが、『冒険者』と『異端児』を『未熟児の宝玉』によって無理やり別種の化物を生み出すという所業を闇派閥はやってのけたらしい。
それも、私が書いた御伽噺に出てくる『
そして、ベルと
ベルのささやかな力にと思っていたものが、悪用されてしまったショックが大きい。
―――アルフィア達が命を投げ打ってまで、『英雄』を求めたのに、『英雄』はおらず、それに対して失望して暴れだしたって、アルフィアの言葉が聞こえたと言っていたわね。
『【一体、貴様等『雑音』は、どこまで
これは恐らく、あの魔道書【
スキルが消えたり、使用不能になっていたり、魔法が使えなくなっていたり・・・おかしなことになっているのも、これの影響に違いない。
―――そもそも、スキルや魔法が変異することなんて、あるのかしら?
なんにせよ、
「それにしても・・・・」
「―――アストレア様」
「ん?どうしたの?」
「ちょっと、寒い・・・です」
「あ、ごめんなさいね。ほら、おいで、くっつきましょう?」
春姫・・・恨むわよ?
『着替えを用意して』と頼んだのに、何故、ベルの着替えしかないのかしら?私はどうしたらいいの?泣き止んだベルに『手入れしているから、今日はここに泊まっていこう』と言い、隠し部屋に入って一緒に狭いお風呂に入って久しぶりの2人だけの時間を楽しんでいたというのにお風呂を出たベルがタオルを取ろうとバッグを開けたところ、驚きの言葉を吐いたのだ。
『―――アストレア様』
『どうしたの?』
『えと・・・』
『ベルも濡れているから、早くして頂戴?風邪、引いちゃうわよ?』
『タオルが1枚に、アストレア様の着替えが入ってないんですけど』
『――――えぇぇぇぇ!?』
結果、ベルが私の体を先に拭き、その次に私がベルを拭いてやって、どうするか悩んでいて・・・
『僕の着替えをアストレア様が着るっていうのは?』
『うーん・・・着れないことはないでしょうけど、胸がね・・・伝説の彼シャツというのもやってみたいけれど。』
『・・・・・胸?』
『こほん、なんでもないわ。窮屈で苦しくなっちゃうでしょう?』
『うーん・・・着ていたものは、さっき洗濯に回しちゃったんですよね?』
『えぇ。だから私、着る物がないわ・・・はぁ。』
2人して裸でバッグの前でしゃがみ込んで、どうするか悩んだ末、何を血迷ったのか
『もう、ベルも裸でいなさい。私、裸でいるしかないみたいだし私だけ裸なんて、ずるいわ。・・・・くっついていればいいのよ。』
『えぇっ』
『ほら、人肌の温もりっていうじゃない』
『う、うーん?』
『アリーゼ達とは、そういうことしているのに、私にはしてくれないの?・・・・食べちゃうぞー!』
『きゃーっ!?』
美味しく頂かれた兎さんが・・・いました。
まぁ、そんなこともあり、2人くっついて食事をして、ベルのステイタスを更新していると、ワケワカメなことになっていて、私は、ぷるんと胸を揺らして仰け反ってしまったのだ。
しかし、やはり暖かい季節とは言え、裸では冷える。
「くっついてると暖かいわねぇ・・・」
「―――」
「あら?ベル?」
「アストレア様・・・柔らかい・・・」
「ふふっ、やっぱり、アリーゼ達とは違うかしら?」
「うん・・・全然、違う。お義母さん、僕、女神様に食べられちゃいました。叔父さん、僕、すごい?」
「何を言っているの?」
「アストレア様が、処女神なのに・・・その、天界に送還されなくてよかったなって」
「処女じゃなくなると送還されるなんて、ハードコアモードすぎるわ!?」
それどこのスペランカーなのよ!?
私だって、可愛い男の子とそういうことくらい・・・きょ、興味あるわ!?あるったら、あるのよ!!
「ぎゅぅぅぅぅ」
「あうぅぅぅ」
「失礼なことを言った罰よ」
「うぐぅぅぅ、柔らかいぃぃ・・・。」
「ふふふ、久しぶりの2人きりなのだから、楽しまなくちゃ」
「お、怒ってないんですか?」
「家出なんて、昔リオンだってしているし、あなたの様子がおかしいことくらい気づいていたから、怒ってないわ。それに、あんなに泣いていたらねぇ」
「はぅっ」
もうすることもなく、2人くっついて、裸のままベッドに潜り込んで私はベルの頬を撫でて何があったのかを聞いていく。
「―――それで、あとは【ロキ・ファミリア】が片付けるってことになったらしくて、アーディさんが僕を背負ってくれて、3人ともベタベタだから18階層で休んでから帰ろうって」
「大変・・・だったのねぇ。【ロキ・ファミリア】のこと、嫌いになっちゃった?」
「――しばらく、会いたくないです。その・・・」
「気持ちの整理、できてないものね」
「ごめんなさい、大人じゃなくて。」
「あなたはまだ13歳よ?いいじゃない、別に。でも、この街にいるかぎり【ロキ・ファミリア】の名は聞くし、見もするわ。だから、そのたびに目くじらを立てては駄目よ?疲れちゃうから」
どうやら、ラキアによるヘスティア誘拐事件でベルとアイズちゃんがお世話になったエダスの村で、2人は喧嘩して、それ以降、ベルは距離をとるようになってしまったらしい。今回の一件の前にも、何か話をしようとしたらしいけれど、地上ということもあって叶わず、そして悲しい出来事が起きて、ベルの心に傷ができてしまった・・・と。まぁ、会いたくないと言うのは無理もない話だ。
「よしよし・・・それで?18階層に行って、1晩宿を取ったの?」
「ええっと、戦闘衣装もベタベタで水浴びがしたいって輝夜さん達が言ってて、宿も高いからって、もうキャンプにしようってなって湖の近くでテントを」
「3人分買ったの?」
「ううん、2人用を買って、3人でくっ付いて寝たんです」
「うーん?戦闘衣装もベタベタで、洗ったのよね?」
「うん」
「水浴び・・・アーディちゃんも入れた3人でしたの?」
「?・・・うん」
つまりこの子、他派閥のお姉さんと一緒に水浴びをしたと?
いやまぁ、アーディちゃんもベルが好きだって言って可愛がっていたけれども。
「アーディちゃんに・・・美味しく頂かれちゃったの?」
「うっ・・・」
「頂かれちゃったのね・・・」
「ふ、2人に」
「すごいわね」
「アーディさんと輝夜さんが、『いやなことがあったときは、イイことして忘れさせてあげる!』って言って、それで。」
「嫌じゃなかったの?」
「嫌じゃ・・・うん、なかったです」
それで焚き火をして、戦闘衣装を干して、体が乾いたあと、火を消して3人くっ付いて寝たのだそう。
そして、嫌なこともとりあえず頭の片隅に追いやって帰って来たときに『御伽噺』を目にしてしまったがために、燻っていたものが、勢いよく燃え上がるように爆発してしまった・・・と。
「ごめんなさいね・・・気持ちを台無しにして」
「アストレア様は・・・何も、悪く、ない、です」
ベルは泣いているのを見られたくないのか、私に密着して胸に顔を埋めてくる。けれど、その声は震えていた。
「明日は夕方になったら帰りましょう?それまでは、そうね、ゆっくりしてるのもいいし・・・出かけたいところとか、あるかしら?」
「ううん、こうしてたいです」
「じゃあ、そうしましょう。ふふ、ここも狭いけれど、2人きりなら、いいわね」
「そう・・・です・・・ね・・・」
「あら、寝てしまいそう?」
「う・・・ん」
「じゃぁ、もう寝ましょう。灯り、消すわね」
「いやぁ・・・」
「私がちゃんと、抱きしめているから、安心して寝なさい。」
「う・・・ん・・・」
灯りを消して、抱き合って時々すすり泣くベルを撫でて、落ち着いて眠りに付くまで、私は天上を見上げる。
――エレボス、あなたはどうして、ベルにこんなことをしたの?私にはわからないわ。全くもって。
ダンまちの季節的な時系列がよくわからないんですよね