僕がオラリオに来てから・・・冒険者になってから半月ほどが経った。
つい昨日は輝夜さんと僕のスキルの効果を検証がてら『戦闘せずに何階層まで行けるか』をしてミノタウロスに遭遇し、血濡れのままホームへと帰宅し輝夜さんと強制的にお風呂に入り、
アストレア様の部屋でステイタス更新をしてもらっている間に寝落ちしてしまっていた。
何やらアストレア様は僕の背中に跨りながら『無茶はさせられてないかしら?』とか
『男の子の眷属は初めてだから、困ってることがあったらちゃんと教えてね?』とか
気を使ってくれている言葉が聞こえたけれど、僕はアストレア様の温もりと感触に包まれて夢心地だったから、そこから先何か会話をしたのかは覚えていない。
目が覚めたらアストレア様が僕の頭に手をやりながら眠っていたのできっと眠ってしまった僕を起こさないように一緒に寝てくれてたんだと思う。
お義母さん達がいなくなってから・・・正確に言えばあの夜、寝ぼけていたとは言えお義母さん達と話をしていた"
『大切な何かを奪われてしまうんじゃないか』そんなことを考えるようになっていたんだと思う。
お爺ちゃんはそれに薄々気づいてはいたけど、解決することはできなかった。
だってお爺ちゃんは結局のところお爺ちゃんで、お義母さんの温もりを与えられるわけじゃなかったから。
アストレア様達と出会って一緒に暮らしたりするようになってからは、アストレア様とアリーゼさんが僕のそんな状態に気づいてか寝るときは必ず同じベッドで僕の胸に手を置いて『ぽん、ぽん』とリズムよく叩いてたり頭に手をやって髪を梳くように撫でてくれていたのを覚えている。
オラリオに来てから、マシになったとは言えそんな生活に変わりはないというか、習慣付いてしまってか僕個人の部屋はあれど、自分の部屋で寝ることはなかった。
そうしてあっという間に半月。
早いのかどうかはわからないけれど、今の生活はすごく楽しい。
団員数11名+1で一緒にいることが多いのは、やっぱりアリーゼさん輝夜さん、リューさんにアストレア様でからかわれたり弄られる事もあるけど、僕は楽しいよお義母さん。
だけど、お義母さん達が命を賭してまで望んだ『英雄』の姿はどこにもなかった。
僕にとってはお義母さんも叔父さんも英雄だし、僕を迎え入れてくれたアリーゼさんたちも英雄だ。
でもきっと、お義母さん達が望んでいるのはそれじゃないんだと思う。
■ ■ ■
「歓迎会をするわ!!」
その日の朝、みんなで朝食を食べているときにアリーゼさんがそんなことを言う。
アストレア様は知っていたような顔をしているけど、他の人たちは『何言ってんだこいつ』
と言いたげな顔で口をあんぐりと開けていた。
「歓迎会?」
「そうよ!」
「誰の?」
「ベルの!!」
「してませんでしたっけ?」
「してないわ!!色々忙しかったし気が付いたら半月経ってるのよ!!」
「何故、今日なのか教えていただけませんか?団長様。あ、ベル、そこの醤油取ってくれ」
「あ、はい、どうぞ輝夜さん」
「だって、もうじき
「そうは言っても忙しいのは全員ではないでしょう?ベルはオラリオが初めてだから見回りをさせるつもりはないってこの間言っていたし」
「アリーゼも一緒に見て回りたいとその分、自分の仕事の量を増やしていたじゃないですか」
アリーゼさんと団員の人たちとで話し合いが進んでいく。
「
僕が疑問に思った顔をしていると横に座るアストレア様が教えてくれた。
何でも、モンスターを調教して手なずけるのを見世物にしたお祭りらしい。
「というわけで、今日の夜は外食ね!!たまにはいいでしょ!!」
「あーまぁ、わかった。行って来い。どっちにせよ全員は無理だしな。ホームを無人にするわけにもいかないし、巡回もあるし」
話は纏まってライラさんがいつものメンバーで行って来いということで話は片付いたらしい。
曰く、『たまには外食がしたいから丁度いい理由にしたかった』ということらしい。
「じゃー、ベル、今日はダンジョンで"魔法"も使いながら戦ってみましょっか!!」
「――――えっ!?魔法使っていいんですか!?」
「5階層より上で『誘引』を使って複数を相手に戦ったりしてたんだし、そろそろいいかなって。」
「待ってくださいアリーゼ。ベルはまだ魔法を使っていない、つまり
アリーゼさんの提案にリューさんは異議を唱える。
なんでも、
ということらいし。
「うーん・・・そうねぇ・・・確かに使うたび倒れるんじゃベル自身が魔法を確認できないわね。うん、じゃあ今日はお昼まで6階層までを回って終わりにしましょっか。
その後に試し撃ちってことで」
「――――はいっ!!」
その日、1度だけ、ダンジョンの一角で鐘楼の音が鳴り響いた
■ ■ ■
その日の夕方、メインストリートを歩みリューさんの友人がいるという酒場に向かっている。
暗くなり始めていて徐々に酒場を中心に盛り上がりを見せる大通りは熱気が漂い、足を進める
暗くなり始めているのと、田舎者くささが残っているのかキョロキョロする僕を見かねて輝夜さんは手を引いて歩く。
『誰もお前から奪ったりなどせんから落ち着け』と言いながら。
そうして到着した2階立てで奥行きのある石造りの・・・もしかしたら周りにある酒場の中でも一番大きいかもしれないお店に到着した。
名を豊穣の女主人というらしい。
豊穣・・・豊穣・・・
「――――ベル、言っておきますが『えっちな接待をしてくれる』お店ではありませんので勘違いされませんよう。クスクス」
「なっなっ、そんなことっ、考えてないよ!?」
「ほほーう?まぁ?普段からお金を払わねば体験できない思いをしておりますものね?クスクス」
「うぅぅぅぅ」
「輝夜、あまりベルを困らせないで上げてね?」
真っ赤になる僕に助け舟を出してくれるアストレア様に感謝しつつ僕達はお店の中に入る。
お店のカウンターでは
ネコ耳を生やした獣人・・・キャットピープルのお姉さんがてんてこ舞いに動き回っていたり客から注文をとるウェイトレスさんがいて全員が女性だった。
「あっ!!ご予約のアストレア・ファミリア様ご案内でーす!!」
僕たちに気づいた薄鈍色の髪をしたお姉さんが予約していた席に案内してくれた。
途中、僕に目が止まったのか
「君・・・・女の子・・・?んんん??」
なんて言うものだから
「―――あの、僕やっぱり髪切ります」
と言ってしまった。
長い夜はまだまだ続く。美味しい物をいっぱい食べよう。うん、そうしよう。
■ ■ ■
「―――それでアリーゼ。ベルの魔法はどうだったの?」
「えぇ、確かにすごかったですよ。ただ・・そのー・・」
「「??」」
「ベル、魔法を撃つ時にナイフの切っ先をルームの壁に向けて撃ったんですけど、魔法が発生した後にナイフが砕けちゃったんですよね」
「―――はい?」
「まあ、サイズ的にライラのお古のナイフを使ってたってのもあるんですけど、この子の成長速度に見合う武器ってそもそもあるんでしょうか?」
食べながら、アストレア様は今日の成果をアリーゼさんに聞く。
アリーゼさん曰く、魔法を撃つたびに武器が破損するんじゃ意味がない。最終的にステゴロになってしまう。と。
撲殺兎なんて誕生させたくない。と。
「うーん・・・そうねぇ。明後日ガネーシャのところでパーティがあるからヘファイストスに相談してみるわ」
「はい、お願いします。アストレア様」
「いいんですか?その、、」
「―――いいのよ、お金の心配は。むしろちゃんと見合ったものを使わないと余計に高くつくわ」
「その分、がんばって強くなってくださいね、ベル」
アストレア様に気にしなくていいと言われ、リューさんにその分成果を出してくれれば問題ないと言われて僕は少し、楽しみになった。
「あの、ところで・・」
「どうしたのベル?」
僕はさっきから気になっていたことを聞いてみようとした
「あそこの団体席、どうしてあいてるんでs「ご予約のお客様、ご案内ニャーー!!」・・・やっぱりなんでもないです」
長くなったので続きます