兎は星乙女と共に   作:二ベル

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ふと、時系列的に『あれ、ヴァレッタちゃん死んでるじゃん』ということに気が付きました。

ごめんなさいヴァレッタちゃん。
君のイベントは、発生しないことになった。


ヘスティア様が神会に出れないのを忘れてました。なので、少し修正しました。ごめん、ヘスティア様


我が名はアールヴ

暖かな日差し、心地よい風、木の葉の影から漏れる木漏れ日にウトウトとしている昼下がり

 

 

「申し訳ございませんっ!!」

「・・・・ふぇ?」

 

 

少年の目の前で、土下座をする1人の妖精(エルフ)のお姉さんが・・・そこにはいた。

 

槍を引き抜き、神ヘルメスをフルスイングした後、アイズ・ヴァレンシュタインとじゃが丸君を食べ歩いている時に

 

 

「えっと、ティオナが君に渡したい物があるって言ってたんだけど・・・君、眠ってたから・・・今から、いい、かな?」

 

と言われ、何のことかと疑問に思ってみれば人造迷宮(クノッソス)で落としてしまった【星ノ刃(アストラルナイフ)】を回収してくれていたらしく、渡せずじまいでいたらしい。二つ返事でアイズに手を引かれ向かう先は【ロキ・ファミリア】本拠、黄昏の館。お茶会をするためのテーブルが設置された庭に連れて行かれた。

 

 

『リヴェリア、ベル、連れて来た。ティオナ・・・いる?』

『ん?アイズ?ああ、いるが・・・まあ丁度今、【疾風】と【紅の正花】と茶を飲んでいたところだ構わないぞ』

『あらベル、どうしたの?』

『ベル?なぜ【剣姫】と手を繋いでいるのですか?』

『じゃあベル、ティオナ呼んで来るから・・・待ってて?』

 

少年からしてみれば、どうして姉2人がここにいるのかと疑問だったが姉2人からしてみれば『なぜアイズと手をつないで歩いている?』という疑問が大きかったらしい。

 

『ど、どうして2人はここに?』

『ただのお茶会よ?』

『ええ、リヴェリア様に誘われまして・・・ほら、ベルもこっちに』

『女装しているせいで、2人、姉妹みたいだったわ』

『うぐ・・・』

『お前たちは彼をどうしたいのだ・・・』

 

そうこうしてお茶会の席に同席させられ、お茶菓子を持ってきたクリーム色の髪の妖精(エルフ)、アリシア・フォレストライトが1人増えていることに首をかしげた。

 

『あ、あの・・・この子は?』

『私のベルよ?』

『私のベルです』

『はぁ・・・・ベル・クラネルだ。アリシア』

 

リューの横に座っている白髪の少女が、ベルだと言われ顔色を青くして妖精(エルフ)の矜持など捨て去りいきなり土下座を行ったのだ。リューとリヴェリア、アリーゼは目を見開いて固まり、ベルにいたっては眠さで状況を理解できていなかった。

 

 

「申し訳ございませんっ!!」

「・・・・ふぇ?」

「わ、私のせいで・・・貴方が庇護している異端児(ゼノス)を・・・ッ!」

 

 

聞けば人造迷宮(クノッソス)経由で迷宮に帰ろうとしている異端児(ゼノス)組、そして人造迷宮(クノッソス)に攻め込んでいた妖精(エルフ)組を合流させるように通路が開け放たれ、さらには闇派閥(イヴィルス)まで現れ三つ巴のような混戦状態になってしまったのだという。

フィンから『どうか彼等が敵か味方か、君たちの目で見極めて欲しい』と言われていた上に、誰一人として傷つけておらず、対話を望んでいた異端児(ゼノス)と戦闘を行うわけにもいかず複雑な気持ちになっているところに闇派閥(イヴィルス)と赤髪の女の出現。最終的には、赤髪の女に殺されそうになったアリシアを歌人鳥(セイレーン)のレイが庇ったのだという。

 

 

「わ、私が動きを止めてさえいなければ・・・」

「リューさん?」

「時間的に丁度、あなたが黒いミノタウロスと戦っている頃でしょうか・・・【勇者(ブレイバー)】と【重傑(エルガルム)】が来てくれたおかげで助かりました」

「・・・・つまり?」

「その後治療も行ったので、無事です。安心してください」

「えっと・・・アリシアさん、そういうことみたいなんで、大丈夫です、よ?」

「し、しかし・・・!」

「本当に、大丈夫ですからその・・・あんまり土下座しないほうが・・・」

 

 

ベルとしては、『オラリオでは土下座が流行っているんだろうか』という気持ちだったし異端児(ゼノス)云々については、無事にダンジョンに帰れたと聞いていたのだから何をどうするでもないのだ。というか、綺麗なお姉さんが額に土をつけている姿を見たくなかった。

 

 

「えっ・・・アリシ、ア?」

「えぇぇっ!? な、何してるの!?」

「ア、アリシアさん!?」

「何してるのよあんた・・・」

純潔の園(エルリーフ)・・・妖精(エルフ)の矜持を捨てたのか・・・」

 

そこで『何としても罰して欲しい』みたいな空気のアリシアの後ろに、ティオナ、ティオネとアイズ、レフィーヤ、そしてレフィーヤに呼ばれたフィルヴィスがやってくる。

 

 

「アリシア・・・・その、パンツ、見えそう」

 

そのアイズの言葉に、アリシアは飛び起き『すいません、それから彼女にありがとうと伝えてください』と言うと席についたのだった。アイズ達も席につくとティオナがゴトリ、と音を鳴らしてベルの前に布が巻かれた物を置いた。

 

 

「これ、君のでしょ?綺麗な刀身だから覚えてたんだよねー拾っといたよ」

 

 

巻かれていた布を外して現れるのは、鏡のような刀身、2つの刃を持つ【星ノ刃(アストラルナイフ)】だった。ベルは歓喜、ナイフに頬ずりをする始末。

 

 

「危ない!危ないからベル!」

「顔を怪我しますよ!?置いておきなさい!!」

「や、やめ、は、離してぇ!?」

「だいたいなんで落とすのよ!?」

「ぽろりがあったんだよ!?」

「不敬ですよ!?」

「アストレア様のぽろり!!」

「見たいかもしれないわ!?」

「アリーゼ!?」

 

 

【アストレア・ファミリア】は今日も平和だった。

 

 

 

「じゃあ、ナイフと槍は危ないので自分が預かっとくっすね・・・帰る頃に言ってくれれば自分門にいるっすから」

「アストレア様とアルテミス様に変なことしないでくださいね?」

「できるわけないっす!?」

「イシュタル様はどうでした?」

「いつぞやは・・・ありがとうっす・・・とても柔らかかったっす」

 

 

ベルから危険物(抜き身のナイフと槍)を受け取ったラウルは、女性陣に殺気をぶつけられながら、門番の職務へと戻りベルはまた暴れ出したりしないようにアリーゼに膝の上に座らせられ拘束。刃の暴風は去った。

 

 

 

「リヴェリア様、お見苦しいところを・・・」

「・・・気にするな」

「あの、ベル」

「なんですか、レフィーヤさん?」

「さっきから気になっていたんですけど・・・どうして女装をしていr」

「その質問は身を滅ぼしますよ」

「何故!?」

 

 

ベルが女装している理由を誰もが聞きたがっていたが、そのレフィーヤからの質問を一蹴。断固として答える気はないと宣言。

 

 

「僕は被害者なんですっ!」

「ひ、被害者?」

「アリーゼさん達に、辱められたんです!」

「は、辱め!?」

「ち、違うわよ!?」

「弄ばれましたっ!」

「そ、そんなに嫌だったの・・・?」

「ベル、アリーゼが泣きそうですよ・・・?」

「えと、その・・・もう少し、優しくしてほしいです・・・アリーゼさん」

「うん、うん、わかった。もう少し優しく押し倒すね?」

「アリーゼ?ちょっと頭を冷やしたほうがいいのでは?」

「リ、リオン!?怖い!顔が怖いわ!?」

 

 

【ロキ・ファミリア】の面子なぞ知らん顔とばかりに騒ぎ出す姉と弟が―――そこにいた。

片方は女装に対する不満を。

片方は今後の兎についての取り扱いを。

 

 

「―――コホン。少年、先日はロキが面倒を・・・いや、馬鹿をやらかしてすまなかったな」

「へ?」

「ロキが?何かあったんですか、ベル?」

「えっと・・・アイズさんに襲われました」

「え゛」

「ベ、ベル!?」

 

次に語られるのは、アイズとの一戦。それをけしかけたのがロキなのだが・・・

 

 

「襲われて、倒されました」

「た、たおされ・・・」

(けが)されました」

(けが)され・・・っ!?」

「泣かされました」

「ア、アイズさんはいつから肉食系女子に!?」

「ち、違うっ!?わ、私は、な、仲良くなろうと・・・っ!?」

 

 

ベルに悪気はないのだ。ありのままを語っただけで、それを勘違いさせやすい言い方をしてしまっているというだけで・・・つまり、そう、そこにいる誰もが!リヴェリア以外が!!

 

 

【金髪少女が白髪少女(男)を押し倒して嬲る絵面】

 

を思い浮かべていた。

 

それはもう、衣服さえボロボロに破られ、『ぐへへ』と金髪少女が少年を押さえつけて涙を浮かべているのもお構いなしに、涎を垂らしていた。

 

『ベル・・・』

『ア、アイズざぁん・・・』

『大丈夫、痛いのは最初だけ、らしいから・・・』

ビリッ

『ひぐっ、背中蹴られたとこ・・・十分痛いです・・・』

ビリビリッ

『ロキが、仲良くなるには、こうするのがいいって・・・』

『や、やぁ・・・!?』

 

 

そんな絵面である。

 

 

「いやいやいや・・・・春姫じゃないんだし」

「ええ・・・【剣姫】が?さすがに考えにくい」

「でも絵面としては・・・」

「ありね」「ありですね」

「ベ、ベル・・・酷い・・・これもロキのせいだ・・・!」

 

 

たった今、神会(デナトゥス)でリヴェリアの折檻によって生まれた小鹿のようにプルプル震えてお尻を押さえているロキに追加の制裁が加わる事が決まった瞬間である。

 

 

「でも仲直りしましたよ?」

「紛らわしい!!」

「さっきも僕がオラリオと戦っているところを見守ってもらってたんですよ」

「なぜオラリオを敵に回しているんですか!?」

「大地に突き刺さった槍を引き抜き!邪神ヘルメスを打ち倒したのです!」

「何故演劇風!?そしてヘルメス様が打ち倒された!?」

「そうして掴み取った勝利の暁に・・・アイズさんはじゃが丸君を授けてくれたんですよ」

 

 

「勝利の暁に得られるのが、『30ヴァリス』のじゃが丸君!?やっすい!?」

 

 

少年による勘違い劇場に山吹色妖精は大混乱。

アイズは何故か誇らしげに。

リヴェリアは頭痛が痛む頭を抑え。

少年はアリーゼの良くない教育の『ばちこーん☆』を。

アマゾネスの妹は腹を抱えていた。

哀れヘルメス。

彼が倒された際に得られる報酬はなんと、お値段30ヴァリスの『じゃが丸君』なのであった。

 

 

■ ■ ■

 

「じぃー・・・・」

「・・・な、何故私を見るんだ」

「んー・・・なんか、変わりました?」

「し、知らん・・・」

 

兎に見つめられる白巫女妖精。

 

「ベル、ダメよ。あんまり女の子をじろじろ見ちゃ」

「そうです。失礼ですよ」

「ご、ごめんなさい」

 

 

でも何か気になるのか、机に手をつけ体を乗り出して手を伸ばす。

それをガシッとレフィーヤに掴まれる。

 

「レフィーヤさん?」

「なに女性の胸に真顔で手を伸ばそうとしてるんですか?」

「えっと・・・()()にあるから?」

「そこに胸があると触るんですか!?破廉恥兎!!」

「ち、ちがっ!?」

「ベル・クラネル・・・24階層でそうとう心を痛めてしまったのか?だとしたらすまない・・・」

「違うんですフィルヴィスさぁん!?」

 

 

ベルは気になって仕方がなかったのだ。

形容しがたい違和感が、以前とは何かが違う違和感をフィルヴィスから感じていたのを。

けれどそれをどう言葉にすればいいのか、ベルには分からなかった。

 

「うぅぅ・・・」

「ベル、ダメよ。そういうのは。触りたいなら私達だけにしなさいよ」

「そうじゃないんですぅ」

「謝罪をしてください、ベル・クラネル」

「うぐ・・・レフィーヤさん・・・」

 

『さぁ、フィルヴィスさんに謝罪を!!』と圧をかけられ、ベルはフィルヴィスに頭を下げる。

 

「ごめんなさい、フィルヴィスさん・・・」

「あ、ああ、気にしないでくれ・・・」

 

 

 

■ ■ ■

 

 

「そういえばベル・・・・」

「どうしたんですか、アイズさん?」

「あの時、黒いミノタウロスの腕を食い千切ってたけど・・・大丈夫?」

 

その発言に、リヴェリアは口に含んだ紅茶を吹き出しそうになった。

その心のうちはもちろん

 

『USOだろ?まさか、ザルドのスキルでも持っているのか!?』というものであった。

 

 

「大丈夫・・・とは?」

「えっと、お腹壊したりしてない?」

「はいっ、大丈夫ですよ?あ、でもアミッドさんに怒られました」

「何て、言ってたの?」

「【あなたの口の中に、ミノタウロスの肉が入っていたのですが一体どういうことか懇切丁寧にご説明をお願いいたします!!】って、すごい顔を近づけて。それで説明したら【兎は肉を生で食べる習性でもあるのですか!?】って」

 

治療を行っている際、口にミノタウロスの肉が残っていることに気付き掻き出したアミッド。

目覚めた際に問い詰められ雷を落とされた兎。

 

 

「少年、君は・・・ザルドのスキルを知っているのか?」

「叔父さんの?さぁ・・・『料理が美味しくなる』とかですか?」

「違う」

「じゃあ、筋肉がすごいことになr・・」

「違う・・・知らないならいい。」

「ベル、あんたダメよ。生で食べちゃ、お腹壊すわよ?」

「?」

 

 

イマイチ何を言われているのかわからないベルは、やがて、何かを思い出したように口を開いた。

 

 

「叔父さんが言ってました。」

「ほう・・・なんと?」

 

 

アリーゼとリューは嫌な予感がした。

絶対!碌な!ことを教えられていない!!と。

しかし、リヴェリアはそんなこと露知らず、母性に溢れる目でベルを見つめる。

 

 

「【"なま"はやめとけ。いろいろ大変なことになるからな】って!!」

「そうかそうか。」

「叔父さんも、僕の・・・お父さん?も"なま"で大変な事になったって」

「・・・・ん?」

「ファミリアが大変な事になったって」

「待ってベル。何かおかしいわ」

「叔父さんが1人で震えてたって」

「う、うーん?」

「リヴェリア様?大丈夫ですか?」

「・・・・・いや、すまない。他に何か2人から聞いたことはあるか?」

 

 

何かを察したのか凍りつくリヴェリアはそれでもベルが悪いわけではないのだから、話題をズラすべきだと判断。デキる女は掘り返すような野暮なことはしなかった。

ベルの言っている言葉の意味がわかってしまったのか、アリシアとレフィーヤ、フィルヴィスに関しては顔を真っ赤にしていたが。

 

 

「えっと・・・叔父さんが、【ロキ・ファミリア】のガレスさんのオデコには『牛肉』って書いてあるとか?」

 

 

その時、どこかからガレスの悲鳴が聞こえた気がした。

 

 

「えっと・・・【美の女神はお前みたいなのをペロッと食べてしまうから、出会ったら引きずり回すつもりでいろ。なんならミノタウロスの糞でも投げてやれ】とか」

 

 

引きずり回された美の女神はとうに天に返されていた。

 

 

「あとは・・・えっと・・・そう!!」

 

 

少年は気になっていたのか、明るい顔になって止めの一撃を繰り出した。

 

 

「お義母さんが、珍しく笑顔で言ってたんです!!【ロキ・ファミリア】の地下には、伝説のシスター『プリティ・シスター・アールヴちゃん』がいるって!!」

 

 

リヴェリアが微笑を浮かべながら凍りついた。

アリシアとリューが震え、『お、お待ちくださいリヴェリア様!?あの子に悪気はないんです!!』とフォロー。

 

アリーゼとアマゾネス姉妹は腹を抱えていた。

そしてレフィーヤも何故か乗っかった。

 

 

「私、よくその方にお世話になってますよ?あ、でも、最近は・・・えっと・・・何でしたっけアイズさん?」

「えっと・・・確か【セイント☆シスター・アミーゴMark II】だったかな」

「そう!それです!!」

 

 

どこかで、アミッドが悪寒に震えて『ベルさんを呼び出すべきでしょうか・・・』と頭を撫でるモーションをしながら、呟いていた。

リヴェリアは現実逃避をし始めていた。

 

 

「叔父さんが、そのシスターは実は『ちぃママ』っていうのも兼任?してて、お酒を出してくれるって。」

「どこの酒場ですかそれは・・・【ロキ・ファミリア】は一体いつからそのようなことを・・・・リヴェリア様?どうされたんですか?」

「い、いや・・・なんでもない・・・なんでもないんだ・・・・」

「リヴェリア様、手が、手が震えております!?紅茶が、紅茶がぁ!?」

 

しかしそんな動揺する大人達のことなど露知らず、少年少女たちは盛り上がっていた。

 

 

「どんな方なんですか?お義母さんが笑顔になるくらいなんです、すごい人・・・もしかして神様とか?でも、【ロキ・ファミリア】にロキ様以外の神様が?今も現役ってことは、結構な古株なんでしょうか?」

 

「まず何故、ゼウスとヘラの両派閥がそんなことを知っているんですか、ベル?」

 

「んー、お爺ちゃんが会いに行ったとかなんとか?」

 

「何をしているんですかあの老神は」

 

「いやいやベル、さすがにシスター神様ではありませんよ。えっとですね・・・【きゃっぴるーん☆お待たせしちゃったぞぉー♪さぁ、○○番目の人、どうぞどうぞー!キャハッ☆】って感じです」

 

 

少年が、何かかわいそうなものを見る目で、山吹色妖精を見つめた。

 

「あ、私、この間『胸ってどうすれば大きくなるか?』って言ったらおまじないを教えてもらったよ?」

「胸の大きさ・・・?」

「えっとねー・・・1日3回南の空に向かって牛乳を飲みながら【いたりないたりなぷっかりぃ☆】って唱えるとすぐにバインバインのボインボインになるって」

「・・・・・」

 

 

『なってないじゃないですか』とはとても言えなかったが、視線に気付いたアマゾネスの妹は『いやー、アミーゴの教えてくれたおっぱい体操の方が効き目ありそうだったからぁ・・・あと胸を見るなぁ!』と言い放ち、すぐに顔を逸らした。

 

 

―――あれ、おかしい。お義母さんは『あれはすごいぞ・・・ふふっ』って言ってたのに。あの普段あんまり笑わないお義母さんを笑顔にすることができる手腕を持っている凄い人のはずなのに・・・なんだろう、これ。

 

 

「見てくださいアリーゼ、ベルの顔が引きつってます」

「ごめんリオン。私、ベルの話と反応でお腹が痛いわ」

 

 

まさかここに、ご本人がいるなどと、誰が知るだろうか。

アリーゼは自分の膝の上に座らせているベルを抱きしめながら涙を浮かべて笑いを堪えていた。

リヴェリアはただ一人、生きているならあの2人を『ウィン・フィンブルヴェドル』したい衝動に駆られた。

 

そこに、余計な横槍が入る。

 

 

 

「―――おや、ベルじゃないか。退院していたとは、おめでとう」

「あ、フィンさん」

「やけに賑やかだね。何の話をしていたんだい?」

「団長~。実は、例のシスターの話をしていたんですよ」

「へぇ~」

「お義母さんが笑顔になるくらいだから、すごい人だと思ったんですけど・・・違うんでしょうか?」

「ん?あぁ~・・・・いや、そんなことはないさ。すごいよ、彼女は」

「本当ですか!?」

「ああ、何せ僕達の団員が世話になっているくらいだ・・・レフィーヤなんて常連らしいじゃないか」

「変な喋り方なのは?」

「ンー・・・ファンシーさって必要だと思うんだ。ほら、堅苦しいと言いづらいだろう?」

「な、なるほど・・・」

「なんならこれから、行ってみるかい?」

「いいんですか!?」

 

 

フィンは面白そうなものを必死に隠しながら、ベルを地下の懺悔室に行くか誘い出した!

リヴェリアはいよいよ取り乱しそうになった!!

 

「・・・すまない皆、私は少し、席を外す」

 

 

それでも優しいみんなのママ!リヴェリアは涙を飲んだ!!

『純粋な少年の夢(?)を砕くわけにはいかない!!』と。

そそくさと立ち上がり、本拠の奥へと姿を隠してしまった。

 

 

「えっと、アリーゼさんは?」

「ん?いっておいで。待っててあげるから。二つ名も帰る頃には決まってるでしょうし」

「何だろうなぁ・・・」

「あ!きっとアレだよ!!『始原英雄(アルゴノゥト)』!!」

「許してくださぁい!」

「えぇ~かっこよかったのになぁ・・・私も『ふぁいあぼるとぉぉぉ』ってしたいなぁ」

「ふ、ふえぇぇ・・・」

 

 

純粋にベルの死闘を目を輝かせてティオナは『すごいね!』『かっこいいよ!』『今度、メレンに行こうよ!』などと言ってはベルは逃げ道を塞がれていった。

 

「あ、あ、アリーゼさん」

「ん?どうしたの?」

「えっと、アミッドさんが僕の魔法のこと知って・・・それで、『暇なときでいいから手伝いに来てほしい』って言ってて、行ってもいい?」

「別にいいけど・・・【ディアンケヒト・ファミリア】はアニマルセラピーでも始める気かしら?」

「アリーゼ、ベルはアニマルではありませんよ・・・」

「でも、抱き心地抜群でしょ?アストレア様もベルが帰ってきてから『久しぶりに安眠できたわ』って言ってたし」

「えと?」

「まあ、ベルの無理のない範囲で色々とやってみなさい」

「うん!じゃあ、ちょっと行ってくるね」

 

 

 

フィンとシスターの話をしながら、ベルは地下の懺悔室に向かっていった。

途中、ガレスとベートに出会い4人で懺悔室に行った後・・・

 

ベートは「強さって・・・なんなんだろうな・・・」

ガレスは「強さとは・・・なんなんじゃろうな・・」

フィンは「すぅーーはぁ・・・強さとは・・・なんなんだろうね?」

 

 

ベルはただただ3人が飲み屋ノリを始めたことに困惑。

なんならツマミと酒を注文しはじめた。

 

やがて困惑する兎を置いてけぼりにして盛り上がった3人に耐えかねたのか魔力が迸り始め

 

 

「―――【我が名はアールヴ】!!」

「「「ああああああああああああああっ!?」」」

「・・・・・きゅう」

 

 

お茶会をしていたアリーゼ達にも、4人の悲鳴が聞こえリヴェリアにおぶられて気絶したベルが運ばれてくるのだった。

 

 

 

■ ■ ■

 

後日。

【ディアンケヒト・ファミリア】でアミッドの手伝いをしているベルが

 

 

「アミッドさん」

「どうしました、ベルさん?」

「強さって・・・なんなんですか?」

「・・・・」

 

 

アミッドを絶句させて『すべて、忘れなさい』と仮眠室に引きずられていくのだった。


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