兎は星乙女と共に   作:二ベル

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女神庇護

 

 

 

「リュー・・・さすがにアレはどうかと思うの」

「はい、申し訳ございません・・・やりすぎました」

「『リューの言うことを聞く』っていうのはまだ構わないわ、内容によるけれど。でも、さすがにアレはないわ。可哀想よ」

「返す言葉もございません・・・」

 

 

昼下がり、リビングにて昼食を取りながら女神は眷族に注意していた。

その原因は、少年の格好にあった。

 

 

 

目が覚めると体に重みがあり布団を捲り上げると、白髪に兎耳をつけた少年が女神の腹に顔を埋めて眠っていたのだ。

 

 

「えっ・・・何事・・・!?私が眠っている間に何があったの・・・!?」

 

 

泣き疲れて眠っていたのか、自分の体を何とかズラし少年を抱き寄せると泣いていたような痕に、女神のネグリジェが少しばかり湿っていたことがわかった。

 

 

「・・・どうして、バニースーツ・・・? いや、かわいいけど・・・」

 

 

寝起きの頭で何とか状況を読み込もうとするも、理解できなかった女神はとりあえず眠れる白兎の頭を胸元にやり抱きしめ頭を撫でて日の光を浴びることにした。

 

 

「この耳・・・素材が良いのかしら・・・とても触り心地が良いわ・・・ふわぁぁ・・・」

 

優しく耳を掴んで、サワサワと上下に触っているとまるで感触があるかのように少年は身動ぎし

 

「はっ・・・ふっ・・・ぁっ・・・」

 

などと喘ぐ。

女神は、ハッとしてついいやらしい手つきで握って触っていたことを自覚し手を離し少年の顔を覗きこむと少年は体をプルプルと震わせてゆっくりと瞼を開けて、自分の頬が何か温かいものに触れていることに気がついて頬擦り、顔をグリグリとする。

 

 

「んぅ・・・はふっ・・・」

 

ムニムニと温かく柔らかい何かが形を変えるも自分を拒絶することなく包み込んでいて、さらには頭を優しく撫でられている感触を感じて、少年は柔らかい何かに顔をくっつけたまま上を向いた。

丁度柔らかい何かに顎を置くようにしたその格好で、愛しの女神と目が合った。

 

 

「・・・・・・」

「―――おはよう、ベル」

 

 

女神は優しく少年の瞼を指で拭ってやり、微笑を向ける。

すると少年は、ボンッと顔を赤くして再び胸に顔を埋めた。

 

ぐりぐり。

 

むにむに。

 

 

「ふふっ、ベル、くすぐったいわ・・・そんなに私の胸が良いの?」

「・・・・ぁぃ」

「どうかしたの? そんな格好して・・・昨日寝る時はそんな格好じゃなかったでしょう? いえ、似合ってるけれど・・・」

「ぼ、僕が悪いんれす・・・」

 

 

再び泣き出す少年の背をぽんぽんと叩きながら、少しずつゆっくりと何があったのかを聞いてみれば

 

大賭博場(カジノ)に入るのに春姫と伯爵夫妻になったことをリューに【僕達夫婦なんです!】などと勘違いさせて傷つけてしまった。だとか。

 

・リュー自身も後から勘違いしていたことを輝夜に教えられたがそれでもショックであった。だとか。

 

・その埋め合わせで『1週間何でも言うことを聞いて欲しい』とか。

 

・言うことを聞くのは別にいいけれど、こんな格好をさせられるとは思っていなかった。

 

 

少年は女神の顔を見つめながら、

 

「辱められました・・・僕知ってます、こういうのを【もうお嫁にいけない・・・!】って言うんでしょう!?」

 

なんてことを言い出す。

女神はその涙で潤んだ瞳に庇護欲を駆り立てられて力強く抱きしめた。

 

「だ、大丈夫よ・・・ほ、ほら、基本的に他派閥との恋愛って難しいんだし・・・ここには貴方のその・・・ね?いるわけだし・・・」

 

「アストレア様がいいぃぃぃ」

 

「くふ―――ッ!」

 

 

女神は打ち抜かれ、少年を抱きしめたまま未だいたベッドへと倒れこんだ。

 

 

「ぼ、僕は、一族の恥でずぅぅぅぅ! きっと、【ベルは通さない! ベルはクラネルの恥晒し】って言われるんですよぉ!?」

 

「だ、誰がそんなことを言うのよ!?」

 

「だ、だってぇぇえぇ」

 

「そ、それに貴方の血縁は他にいるのかわからないのよ!? 後はもう、貴方があの子達と頑張って増やすしかないわ!?」

 

「僕まだ親になりたくないでずぅぅぅ!?」

 

パニック、パニック、パニック。

なんだこれ。

女神はわけがわからなくなった。

いや、まぁ? 少年の歳でヤルことヤッてるけれど・・・美味しく頂かれちゃってるけれど、さすがに親になるのは早い気がした。

 

 

―――ん?でも、この子の歳というか・・・アルフィアの年齢を考えると、ベルの母親は10代で産んでるからそんなに変わらない・・・?

 

いやまぁ、最近の子はソッチ方面でも早いと聞くし?

私も美味しく頂いちゃったし?

本人たちが納得しているならまぁ・・・と妥協。

けれど、さすがに今の少年にはそこまでの心の余裕というか・・・まぁ、無理があるから却下だ。

無論、爛れた生活など論外だ。

 

 

「ベル」

「?」

「無理やりは駄目よ?」

「何がでずがぁぁぁ!?」

 

少年の感情を表すように、兎耳がペタン―――と垂れ落ちた。

 

 

「ご、ごめんなさいっ!? な、なんでもないわ!? ベ、ベルはまだまだ私達に甘えていい年頃なのよ!?」

「僕、子供じゃないですぅぅうぅ」

「お、大人だったらすぐに泣いて女神の胸に顔を埋めたりなんてしないわ!?」

 

 

アストレアの指摘に、ぴくり、と動きを止めて少し間が空いて

 

「――――まだ子供でいいです」

 

と小さく呟いた。

それから少し落ち着いた頃、少年の現在の格好についての話題に戻る。

 

 

「泣くほどなら、無理に着る必要はないわ」

「で、でも・・・」

「私があの子達にちゃんと言ってあげるから」

「ほ、ほんと?」

「ええ、本当よ。あ、でも、その胸・・・少しだけ触らせてくれないかしら」

「え?」

「本物みたいで気になってたのよ。駄目かしら?」

「―――優しくしてください」

 

 

何を言っているんだこの子は。作り物なんだから感触などないだろうに・・・と思いつつも、後ろから鷲掴んでみたり、正面に向き合って触ってみたり途中、少年も女神の胸を触ったりと一頻りその感触を堪能して手を離した。

 

「―――ご馳走様でした」

「も、もう着替えてもいいですか?」

「え、ええ。私も着替えるわ・・・」

 

 

女神と少年はベッドから起き上がり、それぞれ着替えをする。

黒いシャツに黒いズボンを着用して女神の着替えが終わるのを待つ少年。

 

 

「見ていて楽しいのかしら?」

「んー・・・でも、綺麗です」

「そ、そう・・・ありがとう。ああ、そうだ、耳だけはつけていてもらえると私嬉しいわ」

「うっ・・・」

「い、いや?」

「別に耳だけならいいですけど・・・何ていうか、触られた感触があって・・・」

魔道具(マジックアイテム)かしら?」

「た、たぶん・・・」

 

 

女神もまた着替えを終え、ベッドの上に投げ捨てられた兎耳カチューシャを少年の頭に装着してやると再びピクピクと動き出した。それが不思議で再び優しく掴んで上下に擦ったり、つついてみるとやはり触覚があるのか少年は顔を赤くしてビクビクとしていた。

 

「や、やめてっ・・・くださっ・・・!?」

「あ、ご、ごめんなさい!? そ、そうだベル! 貴方にプレゼントをあげるわ!」

 

ランクアップしたお祝い、していなかったしね!と女神はいそいそとクローゼットを開けて両手で包みを取り出して少年へと受け渡す。

それを小首をかしげながら受け取り、開けてもいいか許可を貰ってベッドの上で広げると1着のポンチョが現れる。

 

「ええっと、女神(ヘラ)のローブはアーディちゃんが借りたままになっているでしょう?だから、迷宮(ダンジョン)探索でも使えるように作ってもらったのよ。」

 

 

黒色で手まですっぽりと覆えるが、戦闘で邪魔にならないようになっており背中にはヘラの徽章(エンブレム)ではなく、アストレアの徽章(エンブレム)が。それを鏡越しに見る少年は先程までの大泣きなど嘘のように瞳を輝かせニコニコとしていた。その証拠に兎耳がピン!と立っているほどだ。

 

 

「気に入ってくれたようでよかったわ」

「こ、これ、いいんですか?」

「ええ、いいのよ。ほら、【ディアンケヒト・ファミリア】に行くんでしょう?お昼食べに行きましょう?」

「え、あ、はい! で、でもちょっとだけ・・・」

「?」

 

少年もまた机の引き出しから黒い小箱を取り出して女神に差し出した。

『え、嘘、まさか・・・!?』と勘繰ったが、平静を装ってそれを受け取る。

開けてみれば、女神が想像していた物ではなかったが綺麗な首飾りが入っていた。

 

透明の魔石の先端部分に金具を取り付け、金具から紐を通していてその透明な魔石をよく見てみれば、光の粒が泳いでいるように動いていた。

 

 

「こ、これって・・・あのアーディちゃんを助けた時の?」

「はい、アスフィさんが回収して調べてくれて・・・お守り程度でしかないけど、どうするかは僕が決めればいいって言ってて、だから、えっと、アストレア様にあげようと思って・・・」

 

恥ずかしくなったのか、人差し指と人差し指をチョンチョンとする少年に女神は再度打ち抜かれた。

 

 

「ベル」

「はい?」

 

 

女神は少年の両肩をガシッと掴んで

 

「安心しなさい、貴方は私が守るわ」

「―――??」

 

 

―――聞いたことがあるわ。アルテミスが言っていた、これこそが【其は女神を穿つ狩人(オルテギュアー・アモーレ・ミオ)】なのね!?

 

 

女神アストレアは盛大に変な方向へと考えが拗れていた。

 

 

―――あれ、というか待って、確かこの子、【女神殺し(テオタナシア)】なんて非公式の二つ名をどこかで聞いたような・・・?

 

なんだその不穏な二つ名は、と噂で聞いたときは思ったがそもそも誰が広めているのかといいたくもなった。

固まっていると少年が心配そうな顔で手を引いてきてハッとなって我に返り、昼食を食べにリビングへと向かった。

 

そうしてはじまったのが、眷族に対する注意だ。

 

「リュー・・・さすがにアレはどうかと思うの」

「はい、申し訳ございません・・・やりすぎました」

「『リューの言うことを聞く』っていうのはまだ構わないわ、内容によるけれど。でも、さすがにアレはないわ。可哀想よ」

「返す言葉もございません・・・」

 

バニー姿で女神に抱きついて泣いていたことを、リューとアリーゼに報告して『可哀想なのは駄目だと思うの』と注意した。

 

 

「あの子は玩具じゃないの」

「はい」

「だから、さすがにベルが泣くようなのは許してあげて」

「ア、アストレア様!」

「な、何かしらアリーゼ?」

「実際、どうでしたか?寝起きに・・・バニー姿のベルがいるのは」

「―――そうねぇ」

 

 

女神は熟考。

ゴクリ・・・と喉を鳴らす眷族達。

少年は我関せずを貫き昼食を黙々と食べる。

そして、女神は口を開いた。

 

 

「殺傷性が高すぎるわ」

「あぁ~^」

「まず起きたら、私のお腹に顔を埋めて泣き疲れて眠っていたわ」

「ゴクッ」

「それで起きたら、『乱暴されました!』『辱められました!』って私の胸に顔を埋めてグリグリ・・・って来たわ」

「守らなきゃ・・・ゴクッ」

「それで、今あの子が着ているポンチョをプレゼントしたら、私にもくれたのよ・・・モジモジしながら・・・」

「あらぁ~^」

 

 

謎の女子会話が聞こえてきて顔を徐々に赤くした少年は、狐人のメイドに『ごちそうさま!』と言ってそそくさと出て行ってしまうのだった。

 

 

「と、とにかく、あの子を苛め過ぎないように!」

「「「正義の剣と翼に誓って!!」」」

「そういうところよ!?」

 

 

■ ■ ■

 

 

「―――ってことがあったんですよ」

「―――なるほど。それでベルさんはヒューマンから兎人(ヒュームバニー)になってしまわれたのですね」

 

光玉と薬草の徽章(エンブレム)が飾られた清潔な白一色の石材で造られた【ディアンケヒト・ファミリア】の建物にて白髪の少年と白銀の長髪の少女は背中を向け合いながら、話をしていた。

ヒューマンである彼女の容姿は、精緻(せいち)な人形、という言葉が真っ先に浮かぶほどで、少年より低い150Cに届かない小柄な体がその印象に拍車をかけていた。

彼女の名は、アミッド・テアサナーレ。

少年の担当医のようでありながら、少年の魔法に目をつけた彼女はお手伝いと言う名のアルバイト先の雇い主でもある。下げられた頭からさらりとこぼれる細い長髪は白銀色で、大きめな相貌には儚げな長い睫毛がかかっている。服装は白を基調とした、どこか治療師を思わせる【ファミリア】の制服だ。

 

 

「―――【聖火を灯し天秤よ、彼の者に救いを与えよ】――【聖火ノ天秤(ウェスタ・リブラ)・オーラ】。」

「そちらの方は怪我の度合いは軽症なので、そのまま安静に寝かせてあげてください。ベルさん、次はこちらを手伝っていただけますか?」

「魔法の効果が解除されるまで、同じのは無理ですよ?」

「効果時間は?」

「5分」

 

 

【ディアンケヒト・ファミリア】は治療と製薬の【ファミリア】で、派閥の活動内容は開発した回復薬の販売や、より専門的な治療術や道具の提供を主としている。他の店、他の【ファミリア】では取り扱っていない高級な薬や、失った視力でさえ回復させる高度な治療術の評価は高く、客層は選ぶものの、中堅以上の冒険者達からは多く支持されている。

 

 

「ですが・・・まあなんと言いますか」

「?」

「クレーズ一家の1件が無事片付いて何よりです。これで貴方も正義の派閥の一員として名を知らしめられたのではありませんか?」

「うーん・・・でも、変な非公式の二つ名とか、お義母さんの存在が大きすぎてそこまでじゃないですか?」

「いっそ、英雄にでもなってみては? 貴方は前衛、後衛、回復―――と、いわばオールラウンダー。遠征の時でさえその存在は重宝されますよ?」

「―――僕に英雄は無理ですよ・・・・お義母さん達を差し置いて・・・」

「―――何があったのか聞かせてはもらえないのですか?」

「―――。」

 

 

口を噤んで儚げな微笑を浮かべる少年に、聖女は溜息をついて患者の治療に当る。

乙女ノ揺籠(アストライアー・クレイドル)】を使えば、一気に治療はすむが少年としては『疲れる』し主神のディアンケヒトとしては『建てた治療院がその日の内に潰れかねない』らしく許可が得られなかった。

最も、そこまでの緊急性はないので問題はないが使えるものを使いたいと思ってしまうが故に何とも歯がゆかった。

 

役割としては、少年の支援魔法【聖火ノ天秤(ウェスタ・リブラ)・オーラ】で対象者1人の生命力を上げて『軽症者なら自己治癒で』『重傷者ならアミッドの手があくまでの時間稼ぎ』を行う。

アミッドの見立てでは、スキルと魔法の複合起動とは言っても、聖火巡礼(ペレグリヌス・ウェスタ)の効果もしっかりと対象者にも影響しているようで状態異常も治っていることが確認できていた。

 

 

―――回復魔法ではないためあくまでも自己治癒の促進でしかありませんが・・・それでも重宝される存在になるでしょう。

 

 

 

「そういえば思ったのですが・・・」

「?」

聖火巡礼(ペレグリヌス・ウェスタ)というスキルとの複合起動であれば、他の魔法とはできないのでしょうか?」

「えと?」

「例えば・・・ダウンはどうです?」

「うーん・・・それって、矛盾しませんか? 全能力低下魔法なのに生命力を上げるって」

「例えばの話です。貴方の攻撃魔法の場合はどうですか?」

「―――試してみないとなんとも」

「では、後日、試してみましょう。患者はもう大丈夫そうです、少し、休憩をとりましょうか」

 

 

 

 

治療院の団員の休憩室にて、少年と聖女は背中合わせで座っていた。

聖女は少年のステイタスが載った羊皮紙を眺め、少年はポリポリとお菓子をかじっていた。

 

 

「―――あまり食べると、夕飯時にあまり食べられなくなってしまいますよ」

「・・・・ポリポリ」

「聞いてますか?」

「あ、ごめんなさい。ぼーっとしてました」

「まったく・・・・まだ疲れが残っているのでは?こちらが頼んだこととは言え、無理に来る必要はございませんよ?」

「別に、無理はしてないですよ・・・」

「なら構いませんが・・・無理は禁物ですよ、わかりましたか?」

「はーい」

 

 

休憩も終わり、治療院に訪れる人も減ってきた夕方頃、アミッドが書類仕事をしている最中特にすることもないベルは訪れる女神や女性冒険者に頭を撫でられたり兎耳を触られたりしていた。

 

 

「アミッドさん」

「・・・・」

「アミッドさん」

「・・・・」

「あっ!あそこにマーメイドが!」

「ハッ!?ど、どこに!?」

「嘘です。」

 

騙しましたね?と恨めしそうな目で睨んでくる聖女を少年はニヤリと返す。

傍から見れば、2人の髪色というか背丈と言うか姉弟と見られてもそこまで違和感がないのでは?と治療院の者達は言う。

 

 

「さっきから声をかけているのに無視するから」

「すいません、集中していました。それで、何か?」

「いや、この立て札・・・【『お触り500ヴァリス。ハグ8,700ヴァリス』】って・・・これやっぱり治療院の営業と関係ないんじゃ?」

「・・・・・・・」

「あっ! あそこにユニコーンとバイコーンが!!」

「なっ!? ど、どこに!?」

「いませんよ」

「――――くっ」

 

 

その少年を使った『アニマル?セラピー』なるものは、人気があるといえば人気があるが少年としては『不特定多数の匂い』がつくのは少しきつかった。故に、余計に疲れてしまっていた。

 

 

「そういえば・・・ベルさん、いえ、アストレア様が所有している土地の教会に保管している素材があるんでしたか」

「はい。僕が持っていても仕方がないから、使える人に渡そうと思って」

「では、正式に契約書を用意した方がいいですね。お金はファミリアで構いませんか?」

「はい、構いませんよ。あとは・・・ヴェルフにも相談したんですけど、全部は持っていけないから、必要な時に必要なものを持っていってその分の額を支払うって言ってました」

「―――なるほど、では、こちらもそのように。いつ行きましょうか?」

「いつでもいいですよ?」

「そうですか・・・では、次の私の休暇にでもお願いします。一度、見ておきたいので」

 

 

聖女様はひそかに『ヴェルフ・クロッゾ・・・鍛冶師と素材の奪い合いになりかねないか、いささか不安ですね』と思うも勝ち取ってみせるという謎の決意を胸に秘めていた。

後日、鍛冶師と聖女が素材の前に立つと

 

「「宝の山だ」」

 

と同じ言葉を吐き、それぞれが素材を取っては言い合いがはじまったり

『ユニコーンの角を武器の素材に!? も、もったいない!』

『いいや!勿体無くねぇ!!』

 

と少年が見守る中、軽く修羅場になるのだった。


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