旧・兎は星乙女と共に   作:二ベル

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おいでよ!毒沼の森!
竜狩り、依頼


「―――ということがあって、その、迷宮(ダンジョン)で温泉を見つけたって報告をしたらアストレア様がちょっとだけ拗ねちゃってて」

 

「うんうん、それでそれで?」

 

「後姿が凄く寂しそうだったからアリーゼさんに何でか聞いたら『神様が迷宮(ダンジョン)に入れないんだから、迷宮(ダンジョン)にしかない温泉とか聞いたら自分()だけ入れないんだから落ち込みもするわよ』って言ってて」

 

「あららー、確かに神様達は入れないから悔しいよねー」

 

「アストレア様に喜んで欲しくって、どうしようかって思って・・・入浴剤を探したりしてたときにふと、思い出したんです」

 

「何を何を~?」

 

「僕の知り合いの治療師(ヒーラー)のお姉さんが入った後の残り湯には、癒しの効能があるらしくって」

 

「コフッ!?」

 

「? 大丈夫ですか、アミードさん?」

 

「ア、アミーゴMrk2だぞぉ☆」

 

 

【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)、地下懺悔室にて白髪の少年がお悩み相談をしにきていた。

曰く、『その知り合いの治療師(ヒーラー)のお姉さんと一緒にアストレア様がお風呂に入れば、温泉に入ってるも同義では?』とのこと。少年は何か変な方向に拗れていた。

 

 

―――こ、この子は私を入浴剤か何かと勘違いしていませんか!? 折角阻止した『ケヒトの湯』計画を思い出させないでください!!

 

 

「今日はいつもの?シスターはいないんですね」

「今日はちょっと忙しいみたいでねー私が代役なんだ・ぞい☆」

 

 

―――そもそも、何故この子は当たり前の様に【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)にいるのですか!?

 

 

「それで、えっと・・・・治療院に行けばその治療師(ヒーラー)のお姉さんがいるだろうから相談に行こうとしたら、今日は留守にしてるって言われて。採取に行くなら僕に同行を頼みに来るはずだし・・・と思って街を歩いてたらロキ様が『悩みやったらウチにおいでーや』って」

 

 

―――ロ、キ様ぁぁああああッ!?

 

 

懺悔室の壁の向こう側で、銀髪の少女――アミッドはピクピクと口端を震わせていた。

迷宮(ダンジョン)で温泉を見つけたことに対しても、涼しい顔して他派閥の本拠(ホーム)にいる事に対しても。そして、あろうことか自分を入浴剤代わりにしようとしていることに対しても。

 

しかしアミッドは知らない。

治療院で休憩中に添い寝やら、背中にもたれかかって休んでいるおかげで、もう既に少年が自分のことをスキルで特定できていることに。

 

 

 

 

 

―――どうしてアミッドさん、『セイント・シスター・アミーゴ』とか名乗ってるんだろう?

 

 

「あ!」

「ど、どうかしたのかな!?」

「もちろん、水着を着ていいんですよ?」

「ブフゥッ!? そ、そうだねーいくら同性とはいえ、他派閥の主神。友人でもないのに裸の付き合いは問題があるかもしれないよねー☆」

 

 

違う!そうじゃない、そうじゃないんですよ!!とアミッドは拳を握ってプルプルと震えていた。

しかし、このままでは良くない。少年のためにも、お互いのためにも!!

聖女はこの壁の向こうにいる少年を正しい道に軌道修正するためにも導いてやることを決意した。

 

 

「こ、こほん。えっとぉ・・・いいかなぁー?」

「・・・・・」

「あ、あっれぇー返事がないぞぉー?」

「あの・・・ここって酒場でもやってるんですか?」

「へ?ど、どうして?」

「棚にメニューが入ってるんですけど」

 

ゴンッ!!

聖女は壁に頭を打ち付けた。

 

 

―――な、何故、メニューが!? いったいいつからここは酒場に!?

 

 

「もしかして、アミッゴさんは誰かが言ってた『ちぃママ』っていうのもやってるんですか?」

 

 

―――だ・れ・が!! ちぃママですか!?

 

「ち、ちがうぞぉー? そのメニューは誰かが間違えて持ってきたんだよきっと!後で、持ち主に返しておくね☆あとぉ、私は『セイント・シスター・アミーゴMrk.2』だぞぉ?」

 

 

これ以上、私の黒歴史を作らないでほしいと聖女は壁に頭を打ちつけながら、しかし、まだ正体がバレていないのであれば職務を全うしようと意を決する。

 

 

「コ、コホン! ベ、ベル君! 君はぁその治療師(ヒーラー)のお姉さんをどう思っているのかなぁ~?」

「? 好きですよ?」

 

 

ゴンッ!!

聖女は失念していた。

『どう思っているのか』なんて聞けばたいてい『好き』と答えるということを。

 

 

―――そういえば以前、『言わずに気が付いたらいなくなってたら嫌じゃないですか』とか言ってましたね。失念していました。

 

 

聖女は再び打ちつけた頭を撫でながら瞼から涙が若干浮かんでいるが、顔が心なしか熱いが、『そういうことじゃないんだぞぉ☆』と言い言葉の意味を伝えた。

 

 

「―――ああ、なるほど。えっと、優しい人?ですよ」

「じゃ、じゃあ君はその優しいお姉さんを入浴剤代わりにしようっていうのかなぁ?」

「む・・・・」

「それは、失礼だと思うんだぞ☆」

「確かに・・・」

「そんなことしても、君の女神様は喜んでくれないぞ☆ 」

「うっ・・・そうでした・・・ごめんなさい、アミードさん」

「アミッドだぞ☆」

「え?」

「え? あっ、ア、アミーゴだぞ!?」

 

 

少年は理解してくれたようで、小声で『ごめんなさいアミッドさん。今度ユニコーンの角、タッパに詰めていきます』などと意味の分からないことを言い、アミッドはつい自分の名前を言ってしまって慌てて訂正するハメになった。彼女は既に、いつも以上に疲れてしまっていた。

 

 

「そういえば~オラリオの外に温泉施設ができたらしいよ! 誘ってみればいいんじゃないかな!?」

「なっ!? そんなものが!?」

「うんうん! 誘ってあげればきっと喜んでくれるはずだよ?」

「わかりました! ありがとうございます! セイント・シスター・アミッドさん!」

 

バタン!タタタタッ・・・と少年は走り出していってしまった。

聖女はふぅーっと息を吐いて天井を見上げて、なんだかもうやりきった、いっそ清々しい顔になっていた。

 

 

「本当に不思議な少年です・・・純粋でありながらも、どこか淀んでいるような・・・まぁ、変な考えに拗れていましたがこれで何とかなるでしょう。というか、入浴剤を買えばよかったのでは?」

 

 

冷えた水を飲み、熱くなっている頭を冷やしていく。

そこでふと、思った。

 

「私の残り湯に効能があるのなら、彼にも似たような効果があっても良いのでは?仮にも癒しの効果を持った魔法を発現しているのですし」

 

後日分かることだが、聖火巡礼(ペレグリヌス・ウェスタ)の効果によって【アストレア・ファミリア】の団員は傷の治りが早いということを知った聖女は少年に『あなたの残り湯も似たようなものでは?』と詰め寄る事になる。

 

 

「ふぅ・・・ん? 彼は最後に、なんと言いました・・・?」

 

頭が冷えていくなか、ふと、最後に少年が言い放った言葉を思い出す。

何かが、こう、ひっかかったのだ。

 

『わかりました! ありがとうございます! セイント・シスター・アミッドさん!』

『セイント・シスター・アミッドさん!』

『アミッドさん!』

 

「あ」

 

 

それを理解した瞬間。

懺悔室にて聖女の絶叫が響き渡ったのであった。

 

■ ■ ■

 

「♪」

 

少年は機嫌良さそうに地下から地上に上り廊下を歩いていた。

時折、【ロキ・ファミリア】の団員がすれ違っては『あれ、もう兎耳終わりなの?』『リヴェリア様は今日は留守ですよ』と声をかけてくる。

 

「あ、ベル君じゃないっすか。地下から来たってことは・・・懺悔室に?」

「ラウルさん? はいっ、懺悔室にいってました!」

「何か良いことがあったみたいっすね。それより、耳はもう取ってしまったんすか?」

「はい! でもどうしてそんなことを?」

「え、知らないんすか? 今、オラリオの流行(トレンド)は兎耳! 何でも【ヘルメス・ファミリア】が装備すると敏捷に補正が入る兎耳を販売しているらしいっすよ?」

「えっ」

「まあつけるのはヒューマンとかの獣耳がない種族と女性冒険者くらいっすけど・・・」

 

待って、知らない。なんだそれは。とラウルから街の近況を聞かされるベルは焦ってしまった。【ヘルメス・ファミリア】が販売しているということで妙にいやな予感がした。

 

「ち、ちなみに誰が製造を・・・?」

万能者(ペルセウス)ことアンドロメダっすけど?」

「アスフィさああああんっ!?」

 

 

絶対あれだ!死んだ魚のような目で作ったに違いない!

僕が外したら恨まれる!? 少年は焦りに焦った。

 

「団長が人工迷宮(クノッソス)の件で何か製造を依頼してたらしいっすけど・・・そうとう疲れてるみたいっすね」

 

「だ、大丈夫なんですか!?」

 

「ま、まぁ・・・大丈夫っすよ。流行ってのはすぐに廃れるもんっすから」

 

 

やっべ。せめて売り上げに貢献してあげようそうしよう・・・少年は今もなお『ふふふ・・・ふふふふ・・・・』と暗黒微笑するアスフィの顔を思い浮かべて震え上がり、足早に【ロキ・ファミリア】を立ち去ろうとした。

 

立ち去ろうとして、山吹色を視界に納めてしまった。

 

「きゅるるー・・・ん・・・・」

「・・・・・」

 

彼女は、オレンジ色でヒラヒラの多くついた、そして丈の短いスカート―――いつもの戦闘衣装(バトルクロス)ではないものを身に纏っていた。彼女は、片膝をつき左腕を曲げ人差し指を唇に当てウィンクと、ポージングをしていた。隣には黒髪赤眼の同胞の少女と黒い衣服を来た金髪少女がいた気がしたが、それどころではない気がした。

 

「あ・・・あ・・・」

「・・・・・お、お邪魔・・・しました・・・」

 

エルフの少女は徐々に顔を赤く、瞼に涙を溜めプルプルと震えだした。

そして、ゆらりと立ち上がり少年に迫ろうとした。

 

瞬間。

 

「待ちなさああああああああああああいっ!!」

「ごめんなさあああああああああああいっ!?」

「ベ、ベル!?」

「レフィーヤ!?」

 

 

始まるのは逃走劇。

本拠(ホーム)を飛び出し、街を走りぬけ、迷宮(ダンジョン)に飛び込んだ!

 

 

「忘れなさい忘れなさい忘れなさああああああああああいっ!!」

「ひいいいいいいいいいいッ!?」

「レフィーヤ! ベルを苛めないで!?」

「落ち着け、レフィーヤ!」

 

金髪少女は『あれ、これ、デジャヴ・・・』とか言いながら、レフィーヤの後を黒髪赤眼妖精と共に追いかける。気がつけば既に17階層から18階層に。後に、宿場街(リヴィラ)の頭目は語った。

 

 

『兎が妖精に追われてその後を金髪と妖精がものすごいスピードで追いかけていきやがってよ・・・やべぇよ最近のガキ共は。躾がなってねぇ』

 

 

(ベル)山吹色(レフィーヤ)は19階層に突入。

時折魔法が放たれては、(ベル)によって打ち返されていた。

その打ち返された魔法によって周囲にいた怪物達はたちまち魔石ごと滅殺。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいいいいいい!?」

「何で私の魔法を打ち返せるんですかぁぁぁぁぁ!?」

「こう、ナイフでくいっとボールを打つみたいに!?」

「うぎいいいいい!?ただでさえ魔法が増え・・・リヴェリア様みたいな!?魔法を発現させてええええ!?詳しく説明しなさあああいっ!!」

「何で知ってるんですかあぁぁぁぁ!?」

「あなた前にベートさんに追いかけられた時魔法使ってたそうじゃないですかぁぁ!?ただでさえ出鱈目な魔法を持っているくせにぃぃ!?」

「ひぃいいいいいっ!?」

 

どこかで、アマゾネスの少女に腕を組まれ鬱陶しそうに掃おうとする狼人がくしゃみをした。

 

 

「おい【剣姫】、そろそろ27階層なんだが・・・」

「――――たぶん、生まれる、と思う」

「「アイズさんって妊婦さんだったんですか!?」」

「変なところで息を合わせるな!?とにかく止まれ!!」

 

25階層で前回のように(ベル)少女(アイズ)に後ろからタックルされ取り押さえられ、山吹色(レフィーヤ)もまた黒髪赤眼(フィルヴィス)によって取り押さえられた。

 

「ひっく・・・アイズさぁん・・・助けてくださぁい・・・」

「だ、大丈夫・・・ベルは私が守る、から・・・えと、落ち着い、て?」

「落ち着けレフィーヤ。彼に非はないだろう?」

「うっ・・・確かに・・・すいません、アイズさんフィルヴィスさん・・・それから、ベル」

「こ、怖かった・・・ほんと・・・ひっく・・・」

 

 

2人はそれぞれ取り押さえられ、宥められ、ようやく落ち着いた頃にレフィーヤによって謝罪をされそれをベルは受け入れた。なぜそんな姿を?と聞けば『神々の戯れです。気にしないでください』とあまり触れてほしくなさそうにしていたのでベルはそれ以上聞くのをやめた。

 

 

「ふぅ・・・・その、ほんと、ごめんなさい」

「いえ・・・僕は大丈夫です。傷も治ってますし」

「自己治癒能力のあるスキルでもあるのか?その、炎というか・・・」

「ああ、えと、はい。Lv.4になったときに・・・」

「えと、どう、する?2人とも」

「「え??」」

「たぶん、アンフィス・バエナが出てくると思うんだけど・・・ベルとは前に約束、してたし・・・ベルにはあの魔法を使ってもらうことになるけど」

 

ベルとレフィーヤは顔を見合わせ、ゴクリ。と唾を飲みこんだ。

武器、防具は特に問題はなく、レフィーヤとフィルヴィスも格好が格好なだけで戦えないわけではなかった。

 

「ベル、念のため聞かせてください・・・例の魔法は回復魔法なんですか?」

「どちらかと言えば、防御魔法のような?回復は効果の1つです」

「つまり?」

「魔法を展開してる間は、僕達は傷つきません」

「!」

「それでアイズさんに僕の魔法を付与して強化すれば・・・」

「仮に水に潜られても、ベルなら特定できるから・・・大丈夫、かな?」

 

大雑把な作戦を4人は立て始めた。

まずベルが【乙女ノ揺籠(アストライアー・クレイドル)】を展開して全員を防護。

レフィーヤが【ウィン・フィンブルヴェトル】で水上に行くのを阻止。

アイズが【エアリアル】を使用し、さらにベルの【聖火ノ天秤(ウェスタ・リブラ)・オーラ】で強化。

フィルヴィス、アイズ、ベルが前衛、後衛のレフィーヤが魔法で攻める。

 

「作戦ってこういう感じでいいんですか?」

「フィンがいればまた違うと思うけど・・・たぶん、ベルがいれば何とか。ベル、槍があるなら黒いミノタウロスにやったやつやってみる?」

「! いいんですか?」

「ん?何だその槍がどうの・・・とは」

「フィルヴィスさんは見てないんでしたっけ・・・『ふぁいあぼるとおおお』って子供達が叫んでたやつですよ」

「ああ、なるほど。アレか」

 

タイミングを見てアイズがベルに風を送り、ベルの聖火巡礼(ペレグリヌス・ウェスタ)の効果の1つ、聖火付与で炎を出しフィルヴィスのディオ・テュルソスを槍で吸収して再現する打ち合わせを行い4人はいよいよもってアンフィスバエナに備え始めた。

 

 

「じゃあ・・・がんばろっか。ベル、お願い」

「はい!【贖えぬ罪、あらゆる罪、我が義母の罪を、我は背負おう。】―――【乙女ノ揺籠(アストライアー・クレイドル)】!!」

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け。】――」

 

こうして、双頭の白竜は咆哮とともに生まれ落ちた。

 

『ォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

「えと、じゃあ・・・・」

「「「【一狩りいこうぜ】!」」」

「えっ、待て、何だそれは!?」

 

なにかついていけてないフィルヴィスを他所に、双頭の白竜、27階層の階層主、アンフィルバエナへの蹂躙が始まった。

 

 

■ ■ ■

 

 

「―――で、貴様等は迷宮(ダンジョン)内を走り回った挙句、階層主に突撃した、と?」

「「「「すいません」」」」

「はぁ・・・レフィーヤ、少年に叫び声をあげて追い回すのをやめろ。前科を増やすつもりか?」

「ひっ!?ち、ちがっ、すいません!?」

 

 

4人は【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)にて正座させられていた。

もちろん、首から反省札をぶら下げて。

正座する4人の前には腕を組んでゴゴゴ・・・と眉間に皺をよせるリヴェリア(皆のママ)と帰りの遅い少年を心配して尋ねてきた女神が困ったように微笑んだ顔をしていた。フィルヴィスとレフィーヤはいつもの格好に着替えており、傷んでしまった衣装を見てロキはどこか落ち込んでいたがレフィーヤが言うには『ふん!知ったことじゃありません!』とのこと。

 

『私は羞恥を偶然みてしまった年下の男の子を追い回し、階層主と戦いました』

『私は追い掛け回されて魔法を打ち返して階層主と戦いました』

『私は後輩と男の子を追いかけて階層主と戦いました』

『私は同胞と男の子を追いかけて階層主と戦いました』

 

レフィーヤとフィルヴィスだけが『うぅぅ、なんてエルフにあるまじき醜態を・・・』と言った顔をしていたが、アイズとベルだけが真顔で目の前のリヴェリアとアストレアを見つめていた。

 

「―――面構えが違うわね」

「つい先日もやらかしたからな」

「あらあら、やんちゃなのね」

「第一アンフィス・バエナはLv.5・・・水上ではLv.6相当・・・馬鹿なのか?」

「! ベルがいれば・・・私達は無敵!」

「そういうことを言っているのではないぞ、アイズ!!」

「す、すいません!?」

 

アイズ、レフィーヤ、フィルヴィスによるとアンフィス・バエナにトドメをさしたのはベルの『炎雷の槍(ファイア・ボルト)』だったらしく。それはアステリオス戦よりも威力が上だったという。曰く、それを見たレフィーヤによると『うおっまぶしっ!?』とのこと。

 

「まさかとは思うが・・・ランクアップか?」

「さすがに短期間すぎるしそれはないと思うわ・・・更新だけはしておくけど・・・ところでベル、その風呂敷の中は何かしら?」

「えと・・・ドロップアイテムです。」

「ほう・・・『アンフィス・バエナの竜肝』か、売るのか?」

「ヴェルフにあげます」

「じゃあ帰りましょうか、ベル」

「あ、はい、でも、いいんですか?」

「ああ、いいぞ。しかしまだ反省の時間は終わってないからその札はかけたまま帰れ」

「うっ・・・はい」

 

プルプルと痺れた足を引きずりながら、女神と手を繋いで反省札を首からぶら下げた少年は振り返って未だ正座させられている少女たちを見て

 

「えと・・・お勤め、ごくろうさまです・・・」

「ベル、また、ね?」

「何か言葉が違う気がしますが・・・ええ、その、すいませんでした。今度は普通に探索しましょう」

「そうだな、ああ、そうしよう」

 

 

正座させられている3人の少女は、手をつないで出て行った少年と女神の後姿と横顔を見てほんの少しどこか羨ましい光景のように思えて頬を綻ばせるのだった。

 

 

■ ■ ■

 

ベル・クラネル

Lv.4

力:G 240

耐久:F 333

器用:F 390

敏捷:E 423

魔力:E 452

幸運:G

魔防:G

精癒:H

 

 

スキル、魔法覧省略

 

 

羊皮紙を見つめる団長(アリーゼ)は溜息をついた。

 

「ベル・・・あんた、いつからそんな戦闘狂(バトルジャンキー)になったの?私そんな育て方してないわよ」

「ご、ごめんなさい・・・」

 

もみもみ

 

「そうそうあー・・・もうちょい右を揉んで頂戴。」

「肩・・・凝るの?」

「まあねえ・・・って反省してる?」

「し、してる・・・」

 

もみもみ。

羊皮紙を眺める姉の肩を申し訳なさそうに揉む少年がいた。

大賭博場(カジノ)の一件では恐らくそこまで影響されておらず、2度の逃走劇、強化種との戦闘、そして階層主戦による経験値だろうと察するもつい溜息をついてしまっていた。

 

「まあ追いかけられた?って聞くし不可抗力とするけどほんと、気をつけてよね。あんた1人の命じゃないのよ。」

「ごめんなさい・・・・」

「ほら、もう肩はいいから、今度は股の間に座って。」

「?」

「後ろから抱きしめさせて」

「はぁい」

 

 

アリーゼの後ろから、今度は足を開いたその場所にベルは体を納める。

それを待ちわびたように、グワシッと抱きしめ体を前後に揺らす。

言い聞かせるように耳元で囁き、頬擦りをする。

 

「いくら聖火巡礼(スキル)のおかげで1人で行動できるようになったとは言え、絶対じゃないの。精神状態によってはまともに動けなくなるかもしれない可能性は0じゃないのよ?」

「えっ?」

「だってそうでしょ? 篝火に水をかけられたら弱っちゃうじゃない。何より、ベルはトラウマがなくなったわけじゃないんだから。」

「う・・・」

迷宮(ダンジョン)では何がおきるかはわからない。だから・・・気をつけるように!」

「―――はぁい」

「わかればよろしい! どうする?今日は一緒に寝る?」

「アストレア様と3人で?」

「別にそれでもいいわよ?」

「じゃあ、そうする」

「よしっじゃあ、皆のところに行きましょうか! ベルに冒険者依頼(クエスト)が来てるから読んでほしいのよね」

 

 

ベルは自分が指名されていることに疑問を覚えながらも、すっかりお腹が空いて腹から音が鳴っていて言われるままにリビングへと向かっていく。食卓には既に風呂上りの全員がいて先に食べ始めている者もいた。ベルはアストレアの左隣に、アリーゼはベルの隣に座る。懐から手紙を取り出してベルに手渡す。

 

 

「えと?」

「読んで頂戴、ベル」

「な、何でここで?」

「いいからいいから」

「?」

 

封筒は既に1度開けられており、団長であるアリーゼが確認したのだろうと思いベルもまた封筒の中から取り出して読み上げた。

 

 

 

「ええと・・・『【生命の泉を擁する霧の国 ベルテーン】より・・・」

 

団員達が食事をしながらも手紙の内容を聞いていく。

ベルは言葉につまり、一度チラッと姉たちを見てニコニコとしているアリーゼを見て諦めて続きを読んだ。

 

 

 

「――――『おいでよ! 毒沼の森!!』」

 

「「「ブフゥッ!!?」」」

 




ステイタスの数値はもうちょい上の方がいいか迷う
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