腐臭と刺激臭が辺りに漂っている…ガスマスク付けてるから分からないけど、多分そう。
相手のポケモンはじわり、じわりと体力をその体にへばりついたヘドロに奪われ、フラフラとし動きも鈍くなっている。
一方、僕のポケモン…ドヒドイデは余裕たっぷりに相手を眺めていた。
「ドヒドイデ、トドメをさしなさい」
「(こくり)」
ドヒドイデがゆっくりと近づき、頭の触手で相手を吹き飛ばし
『勝者!毒の貴公子、アハト!』
呆然と立ち尽くす相手に会釈をして控え室へと向かう。
「ありがとうございました、またの挑戦をお待ちしておりますよ」
僕はアカリ、ジムリーダーの時の名前はアハトって名乗ってます、ただのどくタイプのジムリーダーです。
…毒の貴公子って呼ばれてます。
「アハト様ー!」
「流石毒の貴公子、どくタイプであの方の右に出る者はいないと言われているトレーナーだけあって、かなりの強者…」
「クールで素敵…毒の貴公子様…」
(……うーん、毒の貴公子、かぁ)
「よ」
「んー?キバナさんだー、どうしたんですー?こんな所にわざわざー」
少し素を出す。
キバナさんだったら別にいいと思う、取り繕ったってバレバレだし意味は無いもんね。
「アレで最後だろ?俺様の所に来るまでまだ時間あるからよ、暇つぶしにちょっとな」
おどけたように笑う彼につられて笑ってしまう。
「僕はあんまりお話得意では無いですがー…それでもいいなら、話し相手になりますよー」
「ありがとな、アハト…いや、今はアカリか?」
「ふふー、アカリでいいですよー?」
しばらく近くのカフェで食事をするついでにたわいも無い会話をし、しばらく話したあと思い切って聞いてみる。
「…それでー、実際どうして僕の所に来たんですー?」
「ん?ああ、暇つぶしっていうのもあるけどよ、実際来たのはさ」
ハンバーガーを豪快に噛みちぎり、キバナさんは僕の目を真っ直ぐに見つめた。
「お前、貴公子って肩書きに納得してんのか?」
「…本音を言うなら、あんまり納得はしてませんねー」
「だろーな」
毒の貴公子、本来どくタイプにはありえない貴公子というかっこよくてきらびやかな呼び名。
けれど、そんな呼び名は僕…私自身が望んだ訳では無かった。
「でも仕方ないですよー、このボードシティの、そして何よりどくタイプのイメージアップの為ですからー」
私の生まれ故郷であり私の担当であるボードスタジアムのある場所、ボードシティ。
ガラルで1番工場が多く、研究所もいっぱいある場所。
…でも、今は改善されたけど昔は汚染物質やゴミ問題がいっぱいあって働いてる人達以外の人があまりよらなくなってしまった。
昔の影響からかどくタイプのポケモン達も多く住み着いて、そのポケモン達も怖い存在だと思われてしまっている。
…誰かが直さなきゃ、勘違いされたままだからねー。
「それに、中性的?って言うんですかねー?ほら、私キバナさんレベルでイケメンですからー」
「自分でいうか?まあ確かにお前は俺様といい勝負だろうけどさ、けど」
「…確かに、そこに私の意思はないと思います。
けど、そんな事言ってられませんからー」
笑う。
笑って、誤魔化した。
そんな私を見てキバナさんは…
「負けねーからな」
そういって、立ち去った。
「いやー負けたー」
どうも、負けました。
チャンピオンカップで思いっきり負けちゃいました、てへぺろりん。
「相変わらずキバナさん強いなー、そのキバナさん倒すダンテさんも相当だけどー」
荒れてたなー、相変わらず?だねー。
「荒れを表に出さない、アカリが珍しいだけ」
「おー?」
後ろを向くと同じジムリーダーであり、大切な家族であるはがねタイプ使いのリグナがいた。
あまり表情が変わらない鉄面皮と小柄な身体がチャーミング。
僕と同じくキバナさんに負けた彼女へガスマスクを外し笑いかける。
「勝ち上がってきたチャレンジャー2人をボコボコにしたフルボッコにしたリグナさんではないかー」
「煽ってる?」
「ないよー」
「………」
「まっへ、ほっへはひっはらないへ」
「こんなモチモチな物をわざわざ露出した人が何をほざくか」
「だってー触りたいでしょー?引っ張らないなら触らせてあげるー」
「………」
何だかんだでこの子も荒れてるよねー、いつもより感情がでてるなー。
「………アカリ」
「んにゅー?なにー?」
「あなたも人の事言えない」
「ありゃー?なんの事ー?」
「マスク越しでも分かる、すごく感情でてる」
「…たはー、マジかー」
僕のほっぺをモチモチしてた手を背中にまわしギュッとハグをしてくれる。
「好きにして、いい」
「…くふふ、それ、自分の鬱憤ばらしも混じってないー?」
「でも、したいのはアカリも」
「正解、最近ご無沙汰だったもんねー」
「チャレンジとリーグ戦があるのにする訳にも行かない」
「それもそっかー」
スマホロトムに頼みタクシーを呼びながらリグナと手を繋いで外へ出る。
久々に2人きりになれるかなー。
「それと」
「んー?」
「もう私との2人きりだから、貴公子は、アハトはお休み」
「……ありがとう、リグナ」
「…ん」
やっぱり、敵わないなぁ。
張り詰めていた糸が切れるような感覚と共に、リグナに寄りかかる。
私達は家に向かう。
ガスマスクは外れ、硬い服は脱ぎ、ありのままの姿となる。
「……それじゃ」
「ふふ、久しぶりだねー…いいよ?」
「…ん」
私は思いっきり、
着せ替え人形にされた。
「ふふふ〜、やっぱりリグナの選ぶ可愛い服は最高だね〜!」
「この日のために、買ってきた、やっぱりアカリ、いい素材」
こうしたオフの時だけ、私は可愛く、女の子らしくなれる!
やったね!