どけ、ワタシはヤンウマだぞ。   作:2Nok_969633

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 絵本だよ、一番お気に入りの……『しあわせの青いバラ』っていう絵本。
 みんなを幸せにした、心が優しくとっても穏やかに笑うお兄さまとその隣で咲き誇っている青いバラのお話。

 …本当に選ばれたのは果たしてどちらだったのだろうか?
 






そのモンスターの名は

 

 

 

 君を指名したんだ、と言う言葉は時として残虐で残酷で非道だ。

 例えそれが義務だとしても、その言葉の重みを君は理解しているのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春芽吹き、小鳥も囀り日差しも暖かく…などと良くある挨拶から始まった入学式も終わり俺を含めた新人、新入生がトレセン学園の門を通って早数日。

 

 トレセン学園では今日も今日とて鍛錬に打ち込んでいるウマ娘達が今か今かと、スカウトに目を付けられるように結果を残そうとしている。打ち込んでいる姿は新入生から高等部含め、誰が見ても圧感するほどのものであり尚のことこちらも逸材を見つけなければ無作法というもの…自然と力が入ってしまう。

 

 こちら側…トレーナーが見抜くのは必然的に潜在能力が高く、さらには才能からその先を見極め勝ち続けるウマ娘であるため、そしてウマ娘も同様に信頼性を含めた力があるトレーナーを探す。3年間志を共にするとなると尚更であり当然のことである…何せレースに出るには専属となるトレーナーが付かなければそこに立つ資格すら貰えないのだから。

 

 正直自論…もといネガティブな思考になってしまうが、己の名誉や承認欲求、嫉妬、そして互いを喰らい尽くすほどにトレーナーはウマ娘を利用し、彼女達もトレーナーを利用する関係である、といった考えは否が応でも過るものなのだろうか?実際のところ、ここは勝負の世界とは最早呼べない。戦場だ。この学園自体が血みどろの…汗、涙、狂気に至るありとあらゆる惨たらしくも美しい…儚い夢の舞台である。あんなにも可愛らしい娘達が繰り広げてきた…夢のある舞台なのだ。

 

 俺はその誇り高き誉の場に立っている。何と光栄な事だろう!何と素晴らしき場所なのだろう!ふふふ…はーっはっはっはっは!っとといけないいけない。あまりの興奮に我を忘れるところだった。落ち着け、俺。

 

 そう、俺は今…出来る事なら我をも忘れたい一心なのである。

 それは何故か?

 実のところ、最近トレーナー界隈では話題が尽きない事があるそうで、なんでも…スカウトを頑なに断っている娘達が今年は多いのだとか。

 例としてトレーナーに終始断りを入れ続けているウマ娘達が数にして約100名程ではあるが、例年から考えてもそういう事は起こるものではあるらしい。

 仮にも人間より力があるとはいえお年頃な彼女達…思春期真っ只中の女の子である。そうそう簡単に大人が踏み込んでいい領域では無いし、成熟した精神を持っているわけでも無い。俗に言えばまだまだ子供だ。そりゃ普通はそうだ。あくまでトレーナーです!プロです!といっても…そう簡単に夢を見させ一心同体でやりましょう!だなんて図々しいにも程がある。まあ、それが仕事だから…くだらないプライドなんて捨てて打ち込むしかないが。

 

 そうして奮い立てていたのだが、今年はどうも…少しばかり様子が違うらしい。

 なんでも有力なベテラントレーナーがモノの見事に惨敗を繰り広げている…らしい。あくまで…もしかしたら、の話だ。勿論スカウトの話だがね?

 

 そしてその噂が広まる要員となったのが、恐らく俺のせい…と噂があるそうで…その噂が真実かは置いておくにしても、トレセン学園に入ってきた初日を含めて今日に至るまでに、どこからともなく現れる突出したウマ娘達からの交流が絶えないのは事実である。この新人である俺に、だ。いやぁ…俺が居るところに…まあ来るわ来るわ、豊作である。

 

 ルドルフと食事をする機会があった時にはオグリキャップが。オグリキャップには必然的にスーパークリーク、タマモクロス、イナリワンが。ルドルフと絡んだことによってミスターシービーの他、生徒会ではエアグルーヴ、そしてナリタブライアンにその姉であるビワハヤヒデに何故かマヤノトップガン、ナリタタイシン、ウイニングチケット、ゴールドシチー。何故か絡んでくるテイエム、タキオンその他大勢含めれば…キリがない。何なのだこれは、どうすればいいのだ⁈新入生も含めたらそれこそキリがないぞ‼︎

 

 さらに何故一日の大半を、担当になっていないこの俺がトレーニングメニューまでそれぞれ作り、渡し、見なければならないのだろうか。何か事あるごとに弁当を作れだの、ゲームセンターに寄ろうだの生徒会を手伝えだの…それ自体は楽しい。だが、俺は普通に真面目に、ウマ娘の育成をしたいだけなのだ。一対一での。何を持ってこんなにも熱く燃えるように奉仕活動みたいな事をしているのか、これがわからない。その分お出かけ頻度も上がるから金も飛んでいくわで…。あくまでトレーナーとして出来る事はやっているとしてもこれでは最早大御所のチームである。可愛らしい子達と一緒に出かける事は非常に光栄なのだが、その見返りが…新人には荷が重すぎる!そして何故こなせているのかすらわからない。彼女達の癖から走り方、フォーム、体調、距離適正、脚質適正、得意な場まで全てが手に取るようにわかる。もしや俺にはトレーナーの才能があるのでは…?いやいや…それは無いな、うん。

 

 見方を変えればよくよく考えるとトレーナーとして最高じゃね?いいじゃんいいじゃんバイブス上がるねフゥッ!旦那ァ…選び放題だぜえ…?しかもこんな別嬪さんに囲まれてよぉっ!幸せもんじゃあねえか!と思ったそこのあなた…判決、死刑。普通に怖いって。

 

 一言で表すのであれば、まあ大層な化け物共が侵攻、侵略してきている。ズカズカと俺が規定していた己の国際法を無視して戦略的に感じられるほどに今まさに囲まれているように感じてしまうのだ。あくまでも感じるだけで実害は無い。無いのだが、どうにも落ち着かない。かかり気味?人間である俺が?

 

 それに追い討ちをかけるように新人トレーナーにはあるお約束がある。

 前提として俺はそもそも初心者だ。仮に優秀なトレーナーだとしても、誰か1人を選んでその子だけを担当しましょう…という方針が存在する。つまりは…俺はこの子達から誰か1人を選ばなければならない。うん、無理だね無理無理、無理よりの無理よ。だってみんな強いしかっこ良すぎるしで…選べん!チームを組めるものなら是非とも組みたいが…それは認められていない。現実はクソゲーである。期待しているぞってあのロリッk…やよい理事長にその秘書、たづなさんも頑張ってください!なんて言うんだから…トレーナーって職業はほんまブラックだと痛感する…やれやれだぜ。

 

 それでも『提案ッ!何かあったら相談すると良い!』とか言って手厚いサービスをする素振りを見せた理事長とたづなさんが、

 

 「憂愁…どうしても手に入らないものがある。それが実に悲しい。」

 

 「奇遇ですね。私もあるんですよ…何かを犠牲にしてまでっていうのは流石に冗談ですけれどね?」

 

 って目のハイライトを無くしてぼやいていたことを思い出した。俺とそこまで年齢差が無いにしても2人が手にしたいものとはなんだろうか?トレセン学園に来てからというもの、実に空気が重たい気が…。あんなに元気っ子!みたいな理事長が極偶に見せる暗さと、たづなさんの笑っているけど目が笑っていないあの不気味さは…そそr怖い。

 

 

 

 実際、俺何かやっちゃいました?的な雰囲気になるのが不思議でもある。

 

 

 

 そんなこんなで濃い日常を送り続けたことについては色々な意味で貴重であった。

 トレーナーとしての出だしは悪くはないのだろう。しかしながら、少しばかりウマ娘による胃もたれが発生してしまった。俗に言えば不調とも言える。

 

 率直に言って疲れた。ぶっちぎりで疲労が溜まった。

 

 もう少しじっくり、そして欲を言えばゆっくり見極め審議をして選出したいものだ。その為のレースがこの先に控えている。今の俺の最悪なコンディションのままでは…リフレッシュが必要だ。流石に体力も尽き、体の節々が痛い…頭の回転も普段より遅くなっているのがわかるため余計に神経がすり減る。

 

 

 

 そんな考えをしている矢先、少し気持ちを落ち着かせるためという名の大逃げ遠出を企てていると流石にお腹が空いてきた。考えごとをしすぎていたようだ。ということで即食べれて安く、そして美味いお店が無いか偶々(・・)通りがかった商店街にて探していると、

 

 

 

 「エラー発生。目的の座標にて、該当物件無し。」

 

 

 

 見るからに面倒事がありそうな予感がして俺はハァッ…っと静かにため息をつきながらも足を前へと進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何度も繰り返し行った反復作業は回数が増えれば増えるほどに染みつくもので…

 

 

 

 (またか…こういうところは本当に不器用だな。)

 

 

 

 

 <ピーピーピー「端末のGPS機能にも、エラー発生。バッドステータス、万事休すであることを確認。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相変わらずだな。

 

 

 

 変化見られず。これよりオペレーション、開始します。

 

 

 

 

 

 

 「……どうしたんだ?」

 

 

 

 「……………バッジからトレセン学園のトレーナーであることを確認。初めまして、私の名前はミホノブルボンです。」

 

 

 

 一風変わったウマ娘と出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 起床の時間です。夢から醒めてください、マスター。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 植木鉢、青いバラ、存在しないもの、不可能から夢を叶える、神からの祝福…うっ(消失)



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