ほむら「まどかはウェヒヒヒなんて言わない」
まどマギの日常が見たかった。
どうしてこうなった。
─────陰鬱な世界観はどこ?
俺が最初に全てを知った時の感想がそれだった。
なんだこの超平和な世界は………。ここは魔境だと思ってたが、いや魔境なのだが、魔女いないだけでここまで平和な世界なのか………
「雨野くん?どうしたのボーッとして?
もしかして先生に見惚れちゃった?
ダメよ、そんなこと────」
「ないです」
「即答!?」
こちらの様子に気がついた早乙女先生に真顔で即答する。真面目な思考を巡らせているのだ。生徒にまで手を出そうと考えるならとっとと結婚して欲しい。
そんな苦い顔をしていると、背後から恐る恐る聞き慣れた声がかけられる。
「あ、雨野くん、可哀想だから
もうちょっと優しくしてあげようよ………」
「そうは言ってもな鹿目、
言う時は言わなきゃダメだと思うんだわ」
「そう!そうよね!」
「えぇ、先生は高望みしすぎなんですよ」
「ド直球!?」
俺の発言によって早乙女先生は撃沈、膝から崩れ落ちる。
そして見事なツッコミを入れたのも聞き慣れた声。隣の青髪の生徒………美樹さやかだ。
「まどかの言う通りだよー、ほら、銀紙に包んで」
「くばぁ」
「美樹、それを言うならオブラートだっての。
おめーも先生の傷口に塩塗ってんじゃねーか」
「あ、そっか。てへへ」
銀紙があるからと手でシュークリームを掴んで食った、等と言うくだらね……しょうもな………仕方ない理由でフラれたという今朝の先生の話を思い出す。無理だわ弁護の仕様がねぇ。ほれ見ろ最前列の転校生も完全に困惑してるぞ。
と、その時。6時限目の授業を終えるチャイムが放送で鳴り響く。
「と、とにかく!
今日の授業はここまでですね、お疲れ様でした」
こうして、今日も平和な
どうやら、俺は知らぬ間に別世界に来ていたようだった。流行りの転生というのにも憧れていたが、いざ目覚めてみれば、近未来的な日本。ガッカリした。
だが、
魔法少女まどか☆マギカ
通称、まどマギ。
CM詐欺だのOP詐欺だの言われていたが、神がかったテレビアニメ作品だ。その明るさが目立つCMや広告、OPからは想像出来ないような陰鬱な世界観はどうしてもハマるものがあった。(脚本担当様が沙○の唄と○ate/Zeroを手掛けているのなら納得だが)
まぁ簡単にいえば、魔法少女ものである。キュゥべぇという淫じゅ……マスコットに願いを叶えて貰う代わりに魔法少女として、敵である魔女と戦う………そんな物語である。
(ネタバレのためここから反転)
そして実はその魔女こそ、魔法少女の成れの果てであり、魔法少女になってしまえば必然的に魔女になる結末が確定されるのだが。これを知っても戦い続ける定めにある魔法少女たちの辛い物語だ。救いは………一応ありはするのだが。
どうやらそんな世界に転生してしまったようなのだ。(前世の記憶はまどマギのみだが)………主人公である鹿目まどかのクラスメイトで友人のモブ男子として。魔女の餌にでもなるのかと思っていたが、どうやらそれは違うようだった。
いや、『それは』というのすら、間違っていたようだった。この世界には、魔法少女も、魔女も、白いマスコットも、なんと
これは平行世界云々ではなく、おそらくではあるが
【まどマギ世界によく似た超平和な別世界】だろう。
なんと言ったって、今日は【2日目】である。そして昨日は友人として鹿目まどか、美樹さやかの2人と共に放課後を迎えたが、学年、魔法少女としても先輩である巴マミとの出会いのイベントがなかった。まぁ先に『巴先輩に勉強を教えてほしい』という名目で話したりはしているのだが。
結局巴マミは現れず、ごく平和に放課後を終えた俺は息子を放ったらかして長旅行に行っている両親のいない、代わりにゲーム三昧の居候のいる農園脇の家に帰宅することになったのだった。ちなみに三滝原農園として俺も農作業をしている。野菜生活である。
だが、1人だけ俺と同じく困惑してる奴がいた。
黒髪の美人転校生、暁美ほむら。ちなみに眼鏡なし。
おそらくループ中のほむほむだと思われるが…………
それこそ昨日転校して来て、昨日を完全に無事に終えてしまって今日はずっと困惑している。そりゃそうなるわ。早くもクールが祟ってぼっち化し始めているが………助け船を出した方がいいなこれは。
適当な設定つけて落ち着かせよう。というか見ているこっちがハラハラしてくる………暴走して何かやらかしそうで怖いし。絶対やらかすよあの娘。
学校終わりのHRも終え、鞄を手に取って真っ先に彼女の元へと直行する。
「なぁ、ちょっといいか?」
「…………………」
話しかけるが、反応がない。無視かな?
「おーい、暁美さん」
「…………………」
また無視か。いやこれは……気付いてないな?
顎に手を当て立ちつくすほむら。どうしたもんか、と悩んでいると、鹿目まどか、美樹さやかの2人がやって来る。
「ほ、ほむらちゃん?」
「おーい転校生、
うちの堅物男子が珍しく話しかけてるぞー」
「話しかけてるぞー」
「ハッ………ごめんなさいまどか………じゃなくて、
あなたは……雨野 礼司、だったかしら」
「おう。やっと気付いてくれたな。
鹿目の印象が強いようだけど
俺の名前覚えててくれて助かるわ」
グッドサインからの、握手の手を差し出す。
が、返されない。
「…………?」
「握手だけど………気を悪くしたならごめんな」
「ちょっとー、失礼じゃない?」
「い、いえ、ごめんなさい。分からなくて」
さやかの言葉に再びハッとしたほむらは、俺が戻そうとした手を慌てて掴み、雑に握手を交わす。それにさやかは呆れたように笑う。
「あ、ちょっと天然な感じ入ってんのかな?
運動も勉強も出来るみたいだから親近感湧くね」
「あ、ははは………」
「……………ん、んっ。
それで雨野くん、何の用かしら」
わざとらしく咳払いしたほむらは話題を変えようと普段の美人転校生へと雰囲気が一転。まぁ関係ないのだが………少し鹿目と美樹の方を見る。2人はいない方がいいな、魔法少女関連だし………ほむらを落ち着かせるのが大事だ。
「少し2人きりで話したいことがある」
「え、礼司もしかして告っちゃうの!?」
「え、えぇ!?」
「違う。脳内ピンク色かお前美樹
お前目立つからやめて本当にお願いします」
クラス中がざわつくからその誤解やめろ。いや誤解みたいな言い方した俺も俺だけど。
「ごめんなさい、私そういうのは………」
「違うっつってんだろ!?
告白とか出来ねぇよヘタレだし!」
「それ自分で言っちゃうんだ…………」
「はぁ………とにかく、校庭の倉庫裏でな」
鞄を持ち直し、ほむらとすれ違う瞬間に耳打ちする。ちょっとカッコいいから一度やってみたかった。
「魔女について、とかな」
「っ!?」
「ははは、じゃ後でな」
そう言って教室を後にし、倉庫裏へと向かう。
「おっと、思ったより早く来てくれたな」
倉庫裏。もう背後から尾行されていたのはバレバレだが、そう言って振り向く。そこには思いっきり警戒しているほむらがいた。撃ち殺されそうだ。おぉ怖い怖い。
「あなた、何者?
魔女の気配も全く感じない………
なのに、2人きりで魔女の話だなんて」
「うーん、腹を割って話そうと思ってな」
さてさて、勝負の時間だ。
失敗、負けりゃ死ぬと思う対話の始まり始まり。