さやか「助六!?」
もう大分前のネタだけど可哀想だと思った(小並)
寿司ネタは合うような名前無いし仕方ないですが……
「さやかちゃんは酢昆布に決定だね!」
さてはまどか先輩だなオメー
「えっと……それじゃあ、
ほむらちゃんの歓迎ってことで……か、乾杯」
「「「「乾杯ー!」」」」
恥じらいながらのまどかの開始の言葉に、5人全員でコップを掲げる。横の黒いのからの吐息が凄くて怖くなってくるが、それはまぁ置いておくとして。
「なんで俺ん家なの?」
「リビング広いしゲームもあるし。
正直ここ居心地いいんだよねー」
「なぁさやか、ゲームしねーか?
ほれ、前に買った新作あるからさ」
「あなたが暁美さんね、私は巴マミ。よろしくね」
「マミさんは私たちの先輩なんだよ」
「えぇ、よろしく」
勝手か。誰も聞いてくれやしねぇ。女所帯で居心地悪い。すっごい気まずい。……まぁ孤独よかマシだけど。各自で勝手に家を集会所にされるのは何度目だろうか。女同士のお喋りに割り込むのは苦手なのでキッチンにでも向かう。
「………スコーンでも作るか」
調理スキルは高くて困ることはない。特に、女子が多い学校でやっていくにはある程度の評価点がなければ何があるか分からない。一部の女子は色々と怖いし。そんな前世の教訓を思いだし、まだ両親のいるうちから始めたのが家事だ。
ちなみに前世については、ほむらに聞かれようと答える気はない。正直、教訓ばかりの思い出したくない過去だ。戻れやしないし、戻る気もない。戻りたくないし。
「~♪」
前世でよく聞いた鼻歌を歌いながら冷蔵庫を漁り、冷やしてあるスコーンの作りかけを探して取り出す。薄力粉、ベーキングパウダー、グラニュー糖を混ぜてからバターを入れてパン粉状にし、そこに牛乳を混ぜたもの。こうして冷やしておけば、後は牛乳を薄くかけて型を取ってオーブンに入れるだけ。ちなみに紅茶に合うプレーン、チョコチップ入り、気分を変えたココア味の3種類がある。
「~♪」
「初めて聞く音楽だね」
「ん?まぁそら……そうだろーな」
牛乳を取り出して振り向くと、さやかが来ていた。さっきゲームをするとか言ってた気がするが、どうかしたのだろうか。
「杏子とゲームするんじゃなかったのか?」
「それが充電してなかったってさ。
そっちは何作ってんの?」
「スコーン。マミ先輩が紅茶持って来てたし」
そういや昨日は寝落ちしてたな……音漏れが酷いから消しに行ったら目の前で電源落ちたがそういうことだったか。さやかの問いに答えると、さやかは天板の上に置かれた焼く前のスコーンを見て感嘆した。
「へぇー、やっぱ手作りって凄いね。
あたしはさっぱりだよー」
「簡単だし今度作ってみたらどうよ?」
「いやいや、遠慮しとくかな。
もし黒焦げが出来たらと思うとねー」
「料理なんて最初はそんなもんだよ。
俺が初めて作った味噌汁、
味噌が濃すぎてクソ不味かったし」
「やっぱ慣れですか」
「慣れだろうなぁ」
牛乳を取り出して答える。こういう時は『最初から出来るような人はいない』なんて話を聞くが、才能があれば最初から出来るような天才はいる。無論、俺はそんな天才じゃない。菓子作り用の刷毛を取り、牛乳に浸ける。
「これを軽く塗るだけ、手伝ってくれんかね」
「おっけー」
さやかに牛乳塗りを任せてオーブンの準備に入る。ずっとつっ立って俺と喋るだけなのも暇だろうし、どうせなら手伝ってもらう。
「いやー、家事万能の礼司はいい嫁になるよ」
「そこは婿って言って欲しいんだけど!?」
「あっははは、でも結婚は早そうだよね」
「結婚ねぇ………正直考えてねぇなー」
今を生きるのに手一杯だ。夢も考えていない。人生二週目(尚一週目は未到達)だが、正直、大人になる前にこっちに来てしまったし。
「私見だけどさ………別に考える
必要なんてないと思うんだよ、将来なんて」
「へー……続けて?」
「人生なんて辛いことばかり……
さやかも考えたことあると思うけど、どうよ?」
「……………まぁ、たまにね。
時たま、燃え尽きるのはあるよ」
「だからだよ」
「………」
「人生、幸せなことよりも辛いことが多い。
だから精一杯、
暇な時、時間がある時にな。
時間は有限だ。人間、いつ死ぬかも分からない。
だから思いっきり楽しめばいいんだよ。
未来なんて、今考えても仕方ないんだしな。
まぁ……ある程度の目標を考えときゃ良いんだよ。
『幸せに暮らす!』って程度の目標だけ。
そんな簡単な目標なら、人は頑張れるんだしな」
「…………………」
そう言って、なんだか恥ずかしくなる。
偉そうになってしまったし、さやかの返事がない。
照れ隠しで最後に〆を。
「と、俺の人生講座でした。なんてな」
「………人生何週目ですか?」
「………………二週目……なんて言ったらどうする?」
「やっばい、納得しそう」
「冗談に決まってんだろ」
かなり図星でした。はい。
「んー……でもなんか、確かにそうだね。
今を楽しく、将来なんてその時、かぁ……」
「色んな考え方があるけどなぁ。
俺は……ちょっと今で手一杯だし、そんな考え。
将来まで考えるのも大切なんだろうけどな」
「私もそうだなぁ……はい、塗り終わったよ」
「共感してくれたようで良かったわ、サンキュー」
牛乳が塗られたスコーンの天板を貰い、型を取っていく。余った分も焼いて、俺が食べる。形の良いものは出しておく。型を取り終わって、オーブンに入れる。190℃で15~20分程度焼けば完成だ。
「よっし、手伝ってくれてありがとう」
「良いって、ためになる話も聞けたしね」
「そう言ってくれると嬉しいわ。
さってと……ゲームの充電も終わった頃だろ」
奥の階段から杏子が顔を出す。
「丁度だね、行ってくる」
「行ってらー」
さやかを見送り、息をつく。
「………………将来、ねぇ。
やっぱ………馬鹿なことしたんだろうな、俺」
前世を思い出して、呟く。
酷い頭痛に力が抜け、壁に背中を預ける。
「大切なものは失ってから気付く……ね」
楽しい日常。
それが、前世の日々を想起させる。
「…………い、づっ……」
割れた酒瓶。
絆創膏。
カッターナイフ。
机の傷。
黒い落書き。
濡れた制服。
動かない腕時計。
死んだ猫。
「………………──────」
「っ、大丈夫!?」
頭痛は、呼ばれた声に止まる。
薄れた朧気な視界、眼を擦って鮮明にする。そこにいたのは、焦る顔のほむらだった。
「酷い顔色……! どうしたの!?」
「来てくれたのか、ほむほむ……」
「冗談なんか言ってないで! どうしたの!?」
心配をかけるワケにはいかない。
この頭痛も、ちょっとした持病のようなものだ。
だから、嘘をついた。
「………トイレ我慢してた」
「………チッ!!」
舌打ちと共に放たれたローキックが、脛を捉えた。