深い森の中を1人の少女と狼が歩く。
体躯3m程の体躯で黒い毛並みにシベリアンハスキーの様な模様で鼻先、耳先、足先、尻尾の先だけが白く、赤い瞳をしている狼の背には大剣が2振り、太刀が2振り、双剣、剣斧、軽弩が1振りずつ積まれておりその他にも旅に必要な最低限の荷物が積まれている。
隣を歩む少女は身長155cm程で桜髪ロングストレートにクリットした赤い瞳、小顔で丸顔な顔立ちで華奢な体つきにぺったんこな胸で括れた腰。
服装は黒いブラウスに赤いネクタイ、赤いプリーツミニスカートで黒いオーバーニーソックス、茶色いブーツ。
上から黒いコートを羽織っておりコートにはフードも付いている。
武器は持っていないが狼が持っているのが少女の武器である。
この少女、名を『アリス』。
無所属のハンターとして『
ハンターランクも高く、G級クエストの受注も許可されている若くして凄腕のハンターだ。
そんなハンターであるアリスがこの森の中を進むのはこの先にあるカムラの里を目指しているからである。
たたら製鉄で名をあげた里として有名であり、交易船も度々来航する。
また、他地域では使われていない『オトモガルク』を使用する珍しい地域でもある。
この地に来た理由はただ1つ。
百龍夜行が近々発生するとの報告を受けたハンターズギルドからの直接の依頼だ。
里にはハンターが1人しかおらず、里守がいても百龍夜行に耐え抜くのは難しいとの話だ。
それをたった1人で止められるのかと言うのは愚問である。
アリスにはテオ・テスカトル、ナナ・テスカトリ、クシャルダオラ、ネルギガンテの4体の古龍を同時に相手した実績がある。
4体の古龍相手に1度も力尽きる事無く討伐して見せ、当時のハンターズギルドの度肝を抜いた。
何故ならば、それを成し遂げた当時アリスはたったの15歳と言うハンターになるのさえも認めるのを躊躇う年齢であるにも関わらず意図も簡単に倒して見せた。
一度実績を作れば話は早い。
あれよあれよとアリスは英雄扱い。
今ではさまざまな街からスカウトの声がかかっているがそれを全て断り続けている。
理由はストリークにある。
ストリークはオトモ用のアイルーやガルクと違い通常のモンスターと同じである。
さらに言えばこの影狼獣シャービルフは古龍に相当する力を持つ。
分類上は牙獣種に分類されるがその実力は古龍に等しいと言って差し支えない。
武器射出機能を備えた武器庫を背中に背負いながらもジンオウガやタマミツネの様に素早く動き回り、リオレウスよりも強いブレスを放ち、影を操るその姿は死神と恐れられる程だ。
アリスとのコンビネーションも相当な物でアリスはストリークの武器庫から武器を射出する事で戦闘中での装備換装を可能とする。
アリスが今どの武器でどの様な戦闘を望んでいるかをストリークは完全に理解し、最適なタイミングで武器を射出する。
これだけ優秀である為ギルドもアリスのオトモとして認めているがストリークはモンスターである。
アリスがライダーであれば許可された物だがアリスはハンターであるが故にモンスター使役の許可は降りないのだ。
こればかりはアリスがどんなに強くても特例が認められない。
何故ならばアリスの所属がハンターズギルドだからだ。
ハンターズギルドがモンスターの使役を許可してしまえばライダーズギルドに睨まれる。
本来、モンスターを使役し共に戦うのはライダーにのみ許された特別な力だからだ。
それをアリスは道具もなにも使わずにストリークと息を合わせて見せた。
モンスターと人は相容れぬ存在。
それが根本的なルールとしてこびりついているこの世界でアリスは異端である。
いくら卵から育てたといえこんなにもモンスターが懐くこと事態がおかしい。
いつストリークがモンスターとしての習性を思いだし、人を襲うかわからない。
それが学者の回答でありアリスがどの街にも所属しないフリーのハンターである理由だ。
自身の大切な仲間であるストリークを心の何処かで恐れ、怪しむ様な連中に背中なんて預けられない。
故に、ストリークと共にフリーでハンターをする道を選んだのだ。
それでも今回の依頼の様に1つの里や村に長期間滞在する必要のある依頼を受ける事だってある。
今回も里の外で夜営するつもりだ。
里に入ればストリークが恐れられるから。
「ようこそ、ハンター様。」
「あなたがアリス様ですね?お待ちしておりました。」
鬱蒼と繁る森の中に双子の龍人族の女性が現れる。
「里長よりあなた様のお迎えを頼まれております。」
「あなた様がモンスターを連れている事は里の皆が周知しております。
皆、モンスターには慣れた者ばかりですのでモンスターもご一緒にどうぞ。」
2人の女性はそう言うと微笑む。
「良いの?」
「あなた様にそれだけ懐いている様子を見るに里の者を襲うような事は無いでしょう。」
「それに、アイルーやガルクもモンスターです。ただ、あなた様のモンスターがオトモとして流通していないだけでそれ以外は我々のオトモと何も変わりませんから。」
2人がそう言って私を先導して歩き始める。
「変わってる。」
「それは里長と我が里のハンターに言って下さいな。」
「あなた様がモンスターを連れているが襲われる心配はないと里の皆を説得していたのは里長とハンターですから。」
2人の女性が歩きながら振り返って言った。
「そうでした。まだ名乗っておりませんでしたね。
私は里の受付嬢をしております。ヒノエです。」
「私が双子の妹で集会所の受付嬢をしております。ミノトです。」
「私はアリス。フリーのハンターです。」
互いに自己紹介をすます。
モンスターが出る可能性もあるこの森に受付嬢2人が案内とは。
「さて、煙が見えてきましたね。
あの煙が登る場所が私達の里、カムラの里に御座います。」
「後少し、です。」
ヒノエとミノトがそう言って微笑む。
息ぴったりな2人の受付嬢と共にカムラの里へ向かうのだった。