Fate/Genuine fake   作:喫茶院

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突如としてフェルメールから令呪の譲渡の提案をされたルルシエ。
ルルシエは警戒するが、フェルメールの本意とは…?


そして奇妙な成り行き 前

これは…罠、なのかしら?

 

令呪の譲渡は、過去の聖杯戦争では起きたというけれど、それだって渡されたのはそのマスターの身内だったっていう話らしいし。

それにそのマスターは時計塔の優秀な先生だったともいうし。

マスターがピンピンしてるような状態だったら明らかに罠と取れるんだけど…

マスターとサーヴァントとの間で何か不和を起こしたのかしら。

それにしては令呪が一画も減ってない…妙ね。

でも外部からマスターを移動させたような形跡もなし、右肩からの血溜まりも異様にてらてら光ってる。

サーヴァントがマスターを殺そうとしていたところに私が乱入した、そう考えるしか、他にないのかも。

 

「そっちの目的は何なの?」

「それも見ての通り、マスターといざこざを起こしたんだ。それで、新しい魔術師のマスターを探しているところ。」

 

どうだい?と問いながら、ようやく女は振り返った。

やっぱり、言ってることは間違ってるとは思えないわ。

女には返り血がべったりと付いているんだから。

 

「君は魔術師と考えても良さそうだね、私のマスターになる気はあるかな?」

「そこを動かないで。そりゃマスターにはなりたいけど、まだあなたの話を完全に信じた訳じゃないから。」

 

マスターとのいざこざは本当だとしたって、令呪の譲渡については疑問が残る。

令呪の譲渡をしようと言って近づいて、それでサーヴァントが武器でグサリ!なんてことがあったら、お間抜けすぎて見るにも耐えないから。

 

「君が信用できないのは無理もないな、信用できないついでにもう一つ聞いてもいいかい?」

 

「君は令呪がなくなった私のマスターを、どうするかな?」

「殺すわ。」

 

殺さないメリットなんてないじゃない。

少しだけ治癒魔法をかけてやって、女の真名を聞き出して、それで殺す。

いくら下準備とか事前の知識がほとんど何もないからって、舐めているのかしら?

私も魔術師の端くれ、人を自分の目的のために殺すなんてことは、とっくに覚悟していたのよ。

 

「どうして殺すのかな?」

「そんなの分かりきってることじゃない。いつまた令呪がそいつにまた宿るか分からないし、それにそいつが脅されて、あなたの真名を他のマスターに告げ口するっていうのもあるじゃないの。」

「ふぅん、なるほど、なるほど。」

 

「それじゃあ、君には令呪を渡せない。」

 

何ですって?

 

「見てみるといいよ。」

 

唐突に女が指さした方には、マスターの男の腕があった。

未だに血を流しながらも、来た時より明らかに体とくっついている男の腕が。

そして、男の手の甲にいつの間にか女の手が重ねられている。

…見ろって言われて、あたしはその事実に初めて気づいた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんてね。

 

本当に微々たる魔力を、少しずつゆっくり注ぎ込んでいたんだわ。

一気に注げばあたしに勘づかれるからってことかしら。

令呪はサーヴァントとのパスを繋ぐものでもある。

パスを通してマスターからサーヴァントに魔力が行く仕組みになってるから、その逆もありってことか。

外部から改めて患部に魔力を通す道を繋いで治癒するよりも、元からある道を使って治癒する方が効率的かつ迅速に効果が見れる。

なおかつ令呪は一画も使われてないから道は強固なもの。

だからあんな微弱な魔力でも効果が出ていた、と。

…筋はちゃんと通っているのよね。

対サーヴァントとの戦闘じゃ、マスターと悠長に手を重ね合っている余裕なんて無いだろうし、考えられもしなかったのよ。

 

「…あなた、何がしたいの?マスターといざこざを起こして、あたしの侵入を許して、令呪の譲渡まで持ちかけておいて…それなのに渡さないとかマスターの傷を癒すとか。」

「君が分からないのは重々承知でやっているのさ。それに、渡さないとは言っていないだろう?」

「…条件を、付けたくてね。」

 

「君に令呪を渡す。だから…マスターを殺さないでほしい。」

 

何かの冗談よね?

今、マスターを殺さないでほしいって言ったの?

生かす要素なんてほとんど無くて、逆に生かすことによって不利益が生じる存在だというのに?

…これは、アテと読みが外れたわ。

アテは、あたしがまともなサーヴァントを手に入れられるってこと。

読みは、こいつは少なくともバーサーカーではないと見ていたこと。

見た目にほとんど狂化の影響が出ていないタイプのバーサーカーっていう可能性が出てきたわ。

言動と行動が噛み合ってないように感じるもの。

 

「…あなた、バーサーカーかしら?」

「マスターでも何でもない魔術師に教える義理なんてないよ、君が今提示した条件をのんでくれるならば話は別なんだけどね?」

 

たしかに今、最優先で考えるべきことはクラスではないのかも。

それよりかはこの条件をのむかのまないかを決めたいわ。

その判断にはこの女のクラスも必要とはするけど、教える気は無いようだし推測も出来ないなら後回し。

 

「もし、あたしがこの条件をのまないと言ったら?」

「逆に君はどうするのかい?私は君に害をなさないこと以外は秘密。もっとも、君が私を殺すつもりであれば返り討ちにはしてやるつもりさ。」

「…それ以外秘密?随分と都合がいいのね。」

「お互い様だろう、こんな非正規な方法で令呪を手に入れようとする君も大概だ。」

 

ビー玉程度の大きさだった魔力の塊を、卵の黄身程度の大きさまで膨らませて睨んでみるも、それでも女は動じない。

サーヴァント相手の会話っていうのは、想像より大分不気味なのね。

本気で狙って出した攻撃を、全部のらりくらりと躱されて、向こうからは何もしてこないみたいで。

 

「それにそんな口約束、どうにでもなるでしょう。」

「なら口約束で済まさなければいい話だろう、身体的拘束(ガンド)!」

 

魔力が揺らいだ。

魔力の詠唱…話が違うじゃないの…!

信用してはいなかったけど、こんなタイミングで打ってくるとは。

今のは一時的に体の動きを止める初級魔術ね。

これを詠唱したっていうことは、今までの会話は全て時間稼ぎ?

あたしは魔力球を射出する構えに入る。

とにかく何か一つでも手を打たなきゃ…

 

停滞(ウェイト)。」

射出(ゴー)っ!」

 

女とあたしの詠唱は、ほぼ同時に行われた。

あたしの指先から、魔力球が射出される。

それは脅威的な速さと魔力の密度を持って、女に向かって突き進む。

そのまま女の眉間を貫く寸前で、女が上半身だけを後ろに大きく仰け反らすことで回避し、女の背後にあった壁に着弾。

一瞬の間を置いて、壁は半径10センチ程の円形のクレーターを作り出した。

射出をする魔力球にしては質量が大きかったのか、打つと体に反動がくる。

反動で床に尻もちをつきそうになるも、何とか体勢を立て直した。

次の魔術の行使に備え、新たな魔力弾を生成する。

…生成する?

…ちょっと待ってよ。

女が使った魔術は、どうなったっていうの。

 

身体的拘束(ガンド)が、来ない…?」

 

そんなはずは無いわ。

さっき、確かにあの女は魔術を詠唱した。

ハッタリじゃない、魔力の揺らぎでそれは分かる。

令呪を通して治癒魔術とかの、魔術を行使してない風に見せかけるという訳でもなし。

そして、次の詠唱も何の効果も及ぼしていない。

停滞(ウェイト)という魔術詠唱は、初耳よ。

 

「君にはかけていないからね、今の魔術は私にかけたもの。」

「あなただって動いていたじゃない。」

 

動いていないなら、あの壁のクレーターは出来ていないわ。

 

「私があの約束を破った時に発動する仕掛けにしたからさ。」

「…それが停滞(ウェイト)ってやつね。」

「ご名答。」

 

「あたしがあなたを信用していないからって、そこまでするの。」

「現に今、してみせただろう。」

 

…呆れた。

でも、この言葉が本当ならあれはただの口約束ではなくなったのね。

魔術詠唱で発せられた魔力の揺らぎは私に向かった痕跡が見当たらない。

私に向けてかけたものではない、という点については一応信用は出来そうだ。

結局話は遡るわ。

あたしがこいつの出した条件をのむかのまないかってところまで。

今までこの地で感じた魔力の揺らぎはここの一つだけ。

ここでサーヴァントと契約しないとなると、本当に最初まで状況が戻る。

そして今後、私がいるところまで届くほどの魔力の揺らぎを見つけるまで、待たなければならない。

私がいるところまで届く魔力の揺らぎ、私の近くに揺らぎの発生源があるのか、遠くから強力な揺らぎの波紋が伝って来ているのかの二択。

前者なら微弱な魔力の行使というのもあるけど、後者となると…令呪の使用、強力な魔術の行使、サーヴァントの宝具…

 

そして、聖杯の実体を持つ顕現。

 

いずれにせよ、後者の場合の発生源はあまりいい状況ではない。

この機会を逃して果たして無傷で令呪を手に入れられる状況がまた、あるのだろうか。

…そう考えたあたしの脳内は、当たり前のひとつの結論を出した。

 

「…分かったわ。その条件を、のみましょう。」

「…そう来なくっちゃあね。」

 

そう言って、あたしはいつでも射出できる構えをとき、魔力球も空へと霧散させる。

笑みを浮かべながら、女はマスターの手の甲に添えていた手に力を込めたようだった。

女は私に背を向け、正確に何をしているかこちらからは見えない。

ブツブツと私には聞こえない音量で、何かを呟く。

それが魔術詠唱であることは、呟き始めてから女を中心にして渦巻き始めた魔力の動きで明白だ。

女が呟くスピードが上がり、魔力の渦が狭まっていく。

やがて魔力の渦が女の体へ纏われると、

 

無辜の英雄(ベドリエグヘットランド)…」

 

纏われた魔力がマスターの手の甲に流れ込んだ。

 




Heaven's_Feel見に行きました。
すごく良かった…見に行ってない人にネタバレをせずに言うと、戦闘シーンの迫力が死ぬほどいい。
一秒につき数百枚描いてるとか頭おかしい(褒め言葉)
それはそれとして、ここから展開どうなっちゃうんでしょうね。
Heaven's_Feelを糧として、私の創作も成長出来たらなと。
Heaven's_Feelまた見に行きたいなあ…
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