【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】 作:LN58
――――――金曜日の夜
琴里「おかえり、おにーちゃん、十香!」
士道「ああ。ただいま、琴里」
十香「うむ。ただいまなのだ」
琴里「どうだった? 今日も学校は楽しかった?」
十香「うむ! 今日も新しい発見がいっぱいだったのだ!」
士道「今日も仲良く折紙と張り合ってばかりだったけどな……」
琴里「それぐらいだったら全然いいじゃん、おにーちゃん」
琴里「完璧に偽造した戸籍もあるし、霊力封印した元精霊に対してはASTも迂闊に手が出せないことがはっきりしたんだしさ~」
士道「まあな」
十香「さあ、シドー! 明日は休日だぞ! そしたら、デェトだぞ! デェト!」
士道「いや、デートというよりは 十香が一人で出歩けるように 改めて街の案内をする感じなんだけどなぁ……」
士道「じゃあ、十香。今日はカレーライスだぞ。5回はおかわりできるからな」コトッ
十香「うん? 今日は夕餉が出てくるのがやけに早いな?」
琴里「だって、朝から作り置きしていたもんね」
十香「おお! こんなに美味しそうなものを私に気づかれずに前もって作っておくとは、さすがだな! 気づかなかったぞ!」
十香「うおお! うまぁ~い!」
琴里「でしょう! おにーちゃんのカレーライスは世界一なのだ!」
士道「そうかそうか」
士道「じゃあ、十香。俺はこれから出かけるから、好きなだけ食べて、食べ終わったら流し台に置いておけばいいからな」
十香「え」ピタッ
琴里「ああ たしか、今日は藤堂先生が来てくれるんだったっけね」
士道「ああ。精霊やASTと取っ組み合いの毎日になったもんな。このタイミングで基本を見直す機会が来たのは運がいい」
士道「そろそろ、来る頃かな」
琴里「あ、聞こえてきたわね、迎えの車」
士道「じゃあ、いってくるな。琴里、十香」ガチャ、バタン!
琴里「いってらっしゃ~い」
十香「え? え? え?」
十香「………………」
琴里「どうしたのよ、十香? 冷めちゃうわよ?」
十香「………………」ワナワナ・・・
琴里「……十香?」
十香「まってくれ! シドー! シドー!」ガタッ
琴里「ちょっ!? 十香!? 待ちなさいってばぁ!」
琴里「――――――!」シュル
琴里「士道! 車を停めて! 十香があなたを追いかけていったわ!」
藤堂「久しいな、士道。息災だったな」
士道「はい。藤堂先生もお元気そうで何よりです」
藤堂「む、しばらく見ない間に変わったようだな」
士道「え」
藤堂「隠さなくてもいい。今のきみは死線を潜り抜けてきた者の風格が漂いつつある」
藤堂「あれから また命懸けの武者修行の日々を重ねてきたようだな」
藤堂「きみのような 将来 有望な若武者の存在を励みに、我々もまた精進を重ねなければな」フフッ
士道「え、ええ、まあ……」ハハハ・・・
グラハム『――――――“デジャブ”というのかな?』
グラハム『私はこの“藤堂 鏡志朗”という男に見覚えがあるだけじゃなく、その人柄についても すでに惚れ込んでいるような気がしてならない』
グラハム『なるほど、これが5年前のあの日から きみが一人で“現代のサムライ”足らんとして師事した武人であるか』
グラハム『まこと見事な偉丈夫であるな、少年。惚れ惚れするよ』
士道「先生、よろしくお願いします」
藤堂「うむ。きみが“現代のサムライ”足らんとして 枢木神社の武道場にはるばるやってきた あの日から きみは見違えるほどになったが、」
藤堂「それでも、まだまだ成長段階だ。気づかぬ間に歪んだ箇所が伸長しているかもしれんからな」
藤堂「こうして その成長を確認することも大事なことだ」
士道「では、いきます――――――」
十香「シドー! お腹が空いたぞ~!」ドーーーン!
士道「と、十香!? ダメだって、今は!」
藤堂「うん? 士道くん、彼女は?」
士道「ああ……、“夜刀神 十香”と言います。訳あって今は我が家にホームステイしている
藤堂「………………」ジー
士道「す、すみません! はるばるお越しくださった藤堂先生の貴重なお時間を!」
士道「十香! だから、言っただろう! 家に帰ってカレーライスを食べていろって!」
士道「琴里が1日1本のチュッパチャプスを破っていたのを報告したら褒めてあげる約束だってしたのに、なんでついてくるかなぁ……」
藤堂「なるほどな。それがきみの新しい武者修行というわけなのだな」
士道「え」
十香「?」
藤堂「そうだな。子女に対する扱いも心得ておかなければ、立派なサムライになり得ない」
藤堂「『男女七歳にして席を同じうせず』とは言うが、今は女性の社会進出の時代であり、真のサムライの魂を持った大和撫子ともめぐりあうことだろう」
グラハム『たしかに、まだ少年は若い。私のように空を愛し、武士道を愛し、〈ガンダム〉を愛する心を持つには少し早すぎるところがある』
士道「な、何を言っているんですか!?」
藤堂「私も現在でこそ“奇跡の藤堂”と持て囃されてはいるが、世間的には“三十路を超えたおじさん”という評価の方が多いぐらいだ」
藤堂「妻を娶らず、子を成さず、ただ己を磨くことを至上として独身を貫く人生もあるのだろうが、」
藤堂「それでは藤堂家の次代に繋がらず、今日まで生み育ててくれた祖国や先祖に対して申し訳が立たんと思うから、」
藤堂「恥ずかしながら、この歳にもなって妻子を持てずにいる己の不甲斐なさを嘆いていたのだ……」
士道「そ、そうだったんですか……」
グラハム『孤児であった私には実感のない話ではあるな』
グラハム『だが、人生における成功と呼ばれるものに『子宝に恵まれる』というものがあるからには、』
グラハム『自分という存在を生んでくれた父母への報恩感謝をするのが人情というものであろうな』
グラハム『私も同胞や恩師の墓参りを欠かさないようにしていたから、血で結ばれた家族なら尚更――――――』
グラハム『少年は彼女のことをどう思っている?』
士道「べ、別に、俺は十香のことは“普通の女の子”だと思っているだけで、何も……」
藤堂「本当に変わったな、士道くん。その様子なら五河家の将来は安泰であろう」フッ
士道「そういうんじゃないんですよぉ……」トホホ・・・
グラハム『――――――十香に関してはまだ未知数ではあるがな』
十香「どうしたのだ、シドー?」
藤堂「すまないな、十香くん。今日は彼を喚び出してしまって――――――」
藤堂「む」
藤堂「むむ!」
十香「ど、どうしたのだ?」
藤堂「士道くん、彼女はいったい!?」
士道「え!?」ビクッ
士道「まさか、十香の正体が見破られた――――――」
藤堂「きみは本当にいい伴侶にめぐりあえたようだな」ニッコリ
士道「はああああああああああああああ!?」
士道「と、ととととと藤堂先生!?」
グラハム『たしかに、すでに彼女とは交際を経て一つ屋根の下で暮らして同棲生活を送っているからな』
グラハム『そのことを見抜くとは――――――、“藤堂 鏡志朗”、伊達ではないということか!』
士道「えええええええ!? ご冗談ですよね!?」
十香「いったいさっきからどうしたと言うのだ、シドー? 私はお腹が空いたぞ~、シドー!」
藤堂「士道くん、彼女のことは大切にしておくのだぞ」
藤堂「彼女は言葉通りの純粋無垢だ。これほどまで俗気に染まっていない清浄な気を持つのは よほど特殊な環境で育った人間にしかありえない」
藤堂「そう、これはまるで皇女殿下に拝謁した時の感覚とそっくりだ」
士道「そ、そうなんですか?」
藤堂「ああ。間違いない。彼女はよほど高貴な血筋の生まれなのだろう」
グラハム『たしかに、〈プリンセス〉であるから、間違いではないな』
藤堂「士道くん。今日のところは技を一つ見せるだけでいい。それで一点の曇りがないかを見せてもらおう」
士道「!」
士道「わかりました!」
士道「行くぞ! ここの一番!」
グラハム『では、この武人にとくと見せるとしよう!』
――――――【グラハム・スペシャル】!
士道「はああああああああああああああ!」
藤堂「見事なまでの切り換えの速さと技の冴えだな。達人の領域とすら言える」
藤堂「あれは常に自分ともう一人の自分がいてなせる達人芸だ。ここまで仕上がっているとはな」
十香「お、何だあのぐるぐるキックは!?」
藤堂「陽昇流 誠壱式 旋風脚だ、十香くん」
十香「ひのぼ――――――、ううん?」
琴里「あ、おにーちゃん、十香、おかえりなさい」
士道「ああ ただいま。まだ起きていたのか。早く寝とけよ」
十香「今日 二度目の『ただいま!』なのだ」
琴里「十香、おにーちゃんを困らせなかった?」
十香「そんなことはなかったぞ! トードーとかいう シドーによく似た名前の人から いっぱい褒めてもらえたのだ!」
琴里「え」
士道「今日は陽昇流 誠壱式 旋風脚だけ見せて、それから十香と一緒に高級レストランでテーブルマナーを学ぶことになったんだ」
琴里「えええええ!? おにーちゃん、ずるい~! ぐるぐるキックのご褒美が高級レストランだなんてずるい~!」
士道「あ、それならお前のためにオードブルにして持って帰ってきたから、明日食べてくれ」
琴里「さっすが、おにーちゃん! 愛してるぞ、おにーちゃん♪」
士道「だから、もう今日は寝ておけよ」
士道「十香も先にお風呂に入ってな。使い方はもう大丈夫だろう?」
十香「わかったのだ!」
十香「お風呂~!」
ダッダッダッダッダ!
士道「さて、今日の真夜中のミルクココア――――――」
琴里「士道」スッ ――――――白のリボンから黒のリボンに付け替える。
士道「……琴里?」
琴里「あなた、まだASTとの和解を考えているの?」
士道「当たり前だろう。そのために今日も資料作成だ」
琴里「公開可能な情報はこいつに全部入っているから」
士道「ありがとな、琴里」
琴里「まあ、無駄骨だと思うけど、可能性がゼロとは言い切れない以上はやれることはやったほうがマシか……」
琴里「しっかし、これまで“武士道”三昧で女の子に興味すらなかった士道が、」
琴里「明日の買い物で女の子が喜びそうなものをたくさん買い込んでくるってわけなんだから、」
琴里「藤堂先生も私たちがやっていることを知ったらびっくりしてひっくり返るでしょうね」
士道「ああ…………」ハハッ
――――――
グラハム「そう変えたのは 他ならぬ 妹である きみであろう、琴里?」
グラハム「最近プレイし終わった妹モノの神ゲーをプレイしてもらって一緒に語り合いたいと言うのに、」
グラハム「ここのところ、十香の世話とAST対策に追われて、少し不機嫌になっているようだが?」
――――――
琴里「あ、兄貴!?」
琴里「う、うっさいわね! そんなこと、些細なことじゃないの! わざわざ声に出して言わないでよ、バカ!」
士道「…………へえ」
琴里「ど、どうしたのよ、士道?」
士道「いや、俺だけの守護天使が俺以外の誰かと仲良くしているところを見たことがなくってさ……」
琴里「そう? 士道が寝ている間、〈フラクシナス〉のクルーと 結構 おしゃべりしているわよ」
――――――
グラハム「ああ。私は幽霊だからな。肉体がないから疲労というものがなく、」
グラハム「起きようと思っていれば いつまでも起きていられるし、眠ろうと思えば 今すぐにでも眠れる――――――」
グラハム「だから、言葉通り 寝る間を削って 少年が眠りに就いている間は〈フラクシナス〉で情報収集をしているというわけさ」
グラハム「藤堂師が言っていたように、私も きみの頑張りを見習って あらん限りのことを努力して きみのためになることをしようとしている最中なのだ」
――――――
士道「何だろうな……」
士道「俺だけの守護天使の存在が知れ渡ることが嬉しく感じたんだけど、」
士道「それでいて、なぜか嬉しくない気持ちも湧き上がったんだ」
――――――そっか、もう“俺だけの守護天使”じゃなくなったのか。
琴里「?」
士道「いや、なんでもない」
士道「琴里のおかげで、俺はこうしていつでも
琴里「…………士道」
――――――
グラハム「嫉妬しているのかね?」
――――――
士道「え」
琴里「はあ!?」
琴里「ちょっと、兄貴!? 何を言っているのよ!?」
琴里「そもそも、誰が誰の何に嫉妬しているっていうのよ!?」
――――――
グラハム「無論、我が家に住まう私を含めた一人一人に対して」
グラハム「思っていたよりも、五河家の人間関係に〈デート・ア・ライブ〉が割り込んでくる割合が大きくて、兄妹そろって戸惑いを隠せていないようだがね」
グラハム「これはこれで、少年が1年後に高校を卒業して この家を出る時までの心の準備になるのではないかな?」
――――――
士道「あ…………」
琴里「兄貴……、おにーちゃん………」
――――――
グラハム「少年。これからの人間関係は“夜刀神 十香”をはじめとする特殊災害指定生命体“精霊”やそれに関係してくる者たちが否が応でも介入してくる」
グラハム「そうして、今までの5年間で築き上げられてきた きみと妹君の穏やかな日常は 変革せざるを得ない時がきたのだ」
グラハム「だが、それは時間と共に より大きな世界への一歩を踏み出していることに他ならない」
グラハム「そのことを恐れてはならない」
グラハム「雛鳥はやがていつかは成鳥となって大空へと巣立っていくものなのだからな」
――――――
士道「……わかったよ、グラハム。俺の守護天使」
琴里「……わかっているわよ、そんなこと。兄貴に言われなくたって」
士道「でも、変わっていくことにストレスを感じるのは当然だよな、琴里?」ナデナデ
琴里「あ……」
士道「当然だよな、『ストレスを感じることが変わっていくこと』でもあるわけだから、」
士道「ずっと変わらないストレスのない日々が終わりを告げたら、当分は久しく忘れていたストレスでイライラするよな?」
士道「俺、俺の守護天使が
士道「これからは俺だけじゃなくて他のみんなのためにも声を聞かせてくれるんだよな?」
琴里「士道……」
琴里「ごめん。私も兄貴が“私だけの兄貴”だとずっと思ってたところがあったかも……」
琴里「ちがうの。今までは“おにーちゃん”も“兄貴”も“五河 士道”だって思っていたから…………」
士道「前々から訊こうとは思ってたけど、琴里が俺の守護天使のことを知ったのって、やっぱり――――――」
琴里「うん。
士道「そうか」
琴里「逆に訊くけど、士道が兄貴と一緒になったのって、やっぱり――――――」
士道「ああ。俺が家出して ちゃんとした“五河 士道”になってからだ」
琴里「思ったとおりね。だから、あの日から 突然 人が変わったみたいになったわけね」
琴里「そりゃそうか。兄貴みたいなのが 四六時中 一緒にいなかったら、突然“武士道”なんて目指すわけないものね」
士道「?」
士道「なあ、琴里とグラハムは思ったよりも話し合っていなかったのか?」
琴里「ええ。そうね。私たちには時間がなかったの」
士道「――――――『時間がなかった』?」
――――――
グラハム「少年、十香が風呂から上がったようだぞ」
グラハム「ドライヤーをかけて髪を梳いてあげるといい」
グラハム「私と妹君の関係についてはいずれ話す」
グラハム「今は 新しい関係から始まる これからの日々を日常に変える努力をしていきたまえ」
――――――
士道「あ、そんなに時間が経っていたのか……」
士道「そっか。俺と同じように琴里も俺の守護天使と再会するのに5年も待っていたんだな」
士道「ごめんな。気づかなくて」
琴里「気にしないで、士道」
琴里「士道も士道の守護天使に“現代のサムライ”として成長している姿を見せようと張り切っていたのに、」
琴里「私も私で こうやって いつでも兄貴と――――――、士道の守護天使とコンタクトがとれるようになったことで浮かれてた」
士道「わかってるよ。俺の身体を俺の守護天使が使っている状態を、いつからか 琴里が“兄貴”と呼ぶようになっていたことだしさ」
琴里「うん……」
――――――
グラハム「…………すまないな、少年、琴里」
――――――
グラハム『よもや、この私が“トライアングラー”になるとは思いもしなかったよ』
グラハム『はて? “トライアングラー”とはどういう意味だったかな?』
グラハム『そんな歌があったような気がするが、歌詞からして男女間の三角関係のことか?』
グラハム『しかし、これから我々が立ち向かう世界――――――』
グラハム『総合危険度:AAAの〈プリンセス〉を最初に霊力封印に成功したことで〈ラタトスク〉は沸き立ってはいるが、』
グラハム『〈ラタトスク〉が確認しているだけでも、まだまだ精霊は他に――――――』
グラハム『…………むぅ』
グラハム『私はてっきり十香みたいに〈エール・シュヴァリアー〉や〈ガナドゥール〉みたいな霊装をまとった存在が“精霊”だと思っていたのだが……』
グラハム『どう見ても戦闘服とは思えないものばかりを着込んだのが“精霊”だと言うのか…………』
グラハム『それこそ、空間震を誘引している特殊災害指定生命体とは にわかには信じられないものばかりだな』
グラハム『そういう意味では、私にとっての最初の精霊〈イフリート〉の雄々しくも可憐で血をたぎらせる姿に思わず心を奪われてしまったよ』
グラハム『そう、“あの少年”の〈ガンダム〉のように!』
グラハム『そして、少年にとっては〈プリンセス〉の存在がこれからの〈デート・ア・ライブ〉の全てとなっていくのだろう』
グラハム『そういう意味では、すでに少年の中では〈プリンセス〉は 私にとっての〈ガンダム〉と同じ存在になりつつある――――――』
グラハム『だからこそ、私と同じ過ちを犯して欲しくはないものだな……』
――――――きみは私とはちがう道を歩む“もうひとりのグラハム・エーカー”なのだからな。
今作における五河 士道と五河 琴里とグラハム・エーカーの関係性や背景あるいはクロスオーバーの方向性を端的に示した回であり、
そこに精霊との戦争〈デート・ア・ライブ〉が介入してくることで変わらざるを得なくなった戸惑いが描かれる。
また、原作では手段のちがいから敵対とまではいかなくとも非協力的なASTとの関係改善を試みる姿勢もあって、
ここから段々と徐々に原作の大筋に沿ったものから掛け離れた展開を見せ始めるようになっていく。