【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】 作:LN58
――――――鳶一 折紙 在住のマンション
士道「………………」ピンポーン!
グラハム『……緊張しているな、少年』
士道「当然だろう? 最初から その線で〈フラクシナス〉が捜索していて、幸い 身近な場所にあるのがわかったけどさ……」
――――――
折紙「誰?」
――――――
士道「俺だ。五河 士道――――――」 ――――――エントランスホールの自動扉が開く!
士道「………………」
グラハム『きみの声を聞いた瞬間には開閉ボタンを押していたようだな』
士道「さすがはAST。反射神経や判断力がずば抜けているだろうことはわかっていたけど、これは何かなぁ…………」
士道「しかし まさか、鳶一のところにあるだなんて……」
――――――
琴里「解析結果から間違いないわ」
琴里「消失直前の四糸乃にもっとも迫った鳶一 折紙が真っ先によしのんに気づいて回収していったわ」
琴里「けど、ASTの打倒“精霊”の筆頭格の彼女が基地に持ち帰らずに、自宅に持ち帰ったのには何か不自然なものを感じるわね」
琴里「まあ、こちらとしては回収しやすくて ありがたいだけなんだけど」
――――――
グラハム『せめてもの戦果として、戦利品として パペットを回収したのか――――――、』
グラハム『はたまた、よしのんを気に入って つい持ち帰ってしまったのかな、これは?』
士道「そうだとしたら、今回のプレゼント作戦の成功率が上がりそうだよな」ハハッ
――――――
琴里「そうね。彼女の意外な一面が見られそうね、これは」
琴里「じゃあ、士道、グラハム」
琴里「打ち合わせ通り、士道が鳶一 折紙を引き付けている間に、幽霊のグラハムが部屋を見て回って よしのんを探すのよ」
琴里「ただし、幽霊は壁を通り抜けることで あらゆるセキュリティを無視して 部屋を見て回れるけれど、」
琴里「物体に触れることができないから、回収そのものは士道がするの。交渉して引き取るなり、こっそり持っていくなりは任せるわ」
琴里「さっさと よしのんを回収して、四糸乃の霊力封印をして、今回の一件を今日で終わりにしましょう」
琴里「今日の晩御飯はオムカレーにしてもらえるかしら?」
――――――
士道「はいよ。今日は霊力封印の報酬で豪勢にいくとするか」
グラハム『待ちたまえ、少年。晩餐の算段をつけるのもいいが、今は作戦に集中せんか』
グラハム『作戦通り 私の方ですぐに見つけられればいいが――――――、』
グラハム『忘れているかもしれないから、私から補足事項だ』
グラハム『いくら幽霊の私が好きに出入りして見て回れるとは言っても、肉体があった時と同じで、見えないものは覗けない』
グラハム『触れることや どかすことができないから、ベッドの下に隠してあるものやクローゼットに収納されたものなどは私には確かめようがないのだ』
グラハム『だから、ターゲットがもし真っ暗な部屋に置かれていたとしたら、私には確認できない。照明のスイッチも押せないからな』
グラハム『そういった点を忘れないでくれたまえ』
グラハム『あくまでも作戦遂行の主体はきみなのだからな、少年』
士道「ああ わかっているさ、俺の守護天使」
士道「俺も俺の方でなんとかやってみせるからさ」
グラハム『それならよし』
グラハム『では、一足先に作戦行動に入る』スゥー…
士道「ああ。たのむ」
士道「けど、大丈夫なのか、琴里?」
士道「俺、鳶一のことをよく知らないのに、いきなり女の子の家に上がり込んで、どうしたらいいのか――――――」
士道「……ちゃんとした指示を出してくれるんだよな?」
――――――
琴里「大丈夫よ。こういった時に備えて 士道と“つきあう”ことになったASTの鉄砲玉:鳶一 折紙のデータは収集済みだから」
琴里「まあ、いきなり 何の前触れもなく『家に来たい』って言って、即座に受け容れられるぐらい、彼女の方でも いつでも準備万端だったようなんだし、」
琴里「案外、士道の言うことなら 何だって聞いてくれるかもね」
琴里「だから、安心してガンガン攻めていきなさい。主導権を握るのよ――――――」ザッザッザッ・・・
琴里「――――――」ザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
――――――
士道「…………琴里?」
士道「…………圏外、か」スッ ――――――スマートフォンによる通信も遮断されていた。
士道「……なるほど、『いつでも準備万端』か」
士道「……そうだな」
士道「……俺も腹を決めないといけないな」
士道「――――――」
士道「よし」スッ
ガチャリ!
士道「なっ」ピンポーン!
士道「えっ」
士道「あ、あの……、鳶一さん……?」
折紙「何?」
士道「……なんで割烹着のメイド姿なんだ? なんで そんなマニアックなものを?」
折紙「変?」
士道「あ……、いや、すごく似合ってるよ。うん」
士道「かわいい」
折紙「………………」
士道「?」
士道「どうした、鳶一?」
折紙「ハッ」
士道「?」
折紙「おかえりなさいませ、旦那様」
折紙「ご飯にしますか? お風呂にしますか?」
――――――そ れ と も 、わ た し ?
折紙「どうぞ、旦那様」コトッ
士道「ど、どうも……」
士道「こんな時間になってから『鳶一の家に遊びに行きたい』だなんて、急なことを言って 悪かったな」
折紙「問題ない」
士道「本当は早めに来たかったんだけど――――――、」
士道「これ、京都の和菓子の名店『鶴屋吉信』の『京観世』だから、美味しく召し上がってくれ」
折紙「なら、茶が冷めないうちに旦那様と一緒に」
士道「そっか。こいつは本当に美味しいから、気に入ったらオンラインショップでまた買ってみてくれ」
士道「それじゃ、先に茶を一口いただくか――――――」ゴクッ
士道「!!?!」
士道|ゴッフェッ!
士道「あ、ああああああああ! 喉が! 喉が焼けるぅうううう!?」バタンキュー!
折紙「――――――!」ビュン!
士道「あ」
士道「鳶一、お前――――――」ウゲエエエエエ!
折紙「旦那様……」スリスリ・・・ ――――――馬乗りになってスリスリしている!
折紙「ダメ?」
士道「だ、ダメというか! そういうのは ちゃんと手順を踏んでするものであって! 女の子が濫りにそんなことをするものじゃありません!」ゴホゴホ・・・
折紙「交換条件」
折紙「ここから退く代わりに、私の要求を1つ、無条件で呑んで欲しい」
士道「?」ゼエゼエ
折紙「あなたは夜刀神 十香のことを“十香”と呼ぶ」
折紙「けれど、あなたは私のことを“鳶一”と呼ぶ」
折紙「これは非常に不平等」
士道「え?」
折紙「私のことも“折紙”と呼んで欲しい」
折紙「ダメ?」
士道「………………」
折紙「………………」
士道「わ、わかったよ、“折紙”!」
折紙「!!」
士道「これでいいんだろう? 水を! 水をくれ!」ゴホゴホ・・・
折紙「――――――」スタスタスタ・・・
士道「あ、あれ? 折紙?」
士道「あ、足取りがすごく軽やか……」
折紙「士道……」クルッ
士道「ど、どこへ行くんだよ?」
折紙「お風呂」
バタン!
士道「なんで またいきなり……」ゴホゴホ・・・
士道「と言うか、水! 水ぅうううううう!」ダッダッダッダ!
士道|ゴクゴク・・・
士道「さすがに冷蔵庫の中を勝手に漁るわけにはいかないから、流し台の蛇口からガブガブ飲んじゃったけど、大丈夫だよな?」プハァー!
士道「さっきの茶があたったのか、身体が妙に火照ってるし、なんか頭が回らない……」クラクラ・・・
士道「あ?」ヨロヨロ・・・
士道「――――――『黒マムシ』のエナジードリンク? 見ないブランドだけど、まあ ASTだし、体調管理は徹底しているだろうし、変じゃないかぁ」クラクラ・・・
士道「それよりも、パペット――――――」フラァ・・・
士道「なあ、グラハム? よしのんは見つかったぁ?」
グラハム『ああ。寝室のクローゼットの上に置いてあったぞ』
士道「よし! 本当は黙って持っていくつもりじゃなかったけど、今の頭じゃ まともな会話ができそうにないから、今のうちにぃ!」ダダッ
グラハム『……一服盛られたな、少年』
グラハム『しかし、恐るべき要塞だな、ここは』
グラハム『ただのアパートの貸し部屋かと思えば、監視部屋なんかがあったぞ』
グラハム『パネルに移された監視カメラの映像の明かりでしか見渡すことができなかったが、他にも何かしらありそうだな』
グラハム『いったい何なのだろうな、彼女は?』
――――――
琴里「ホント、何なのかしら、彼女は……?」
琴里「世界最高峰のいかなる通信妨害を寄せ付けないという触れ込みの〈ラタトスク〉の通信回線をこうも遮るだなんて……」
琴里「おかげで、こっちはグラハムを通してでしか状況を知ることができないじゃない!」
神無月「ASTの本部でも これほどのジャミングは――――――」
神無月「他にも、グラハム氏からの情報によれば、セントリーガンや監視カメラに盗聴器を部屋のみならず、アパートやその近辺にも配置しているようです」
琴里「じゃあ、私たちとの通信が『一切合切 全部 筒抜けだった』ってこと?」
神無月「はい。相手を侮りすぎていましたね……」
琴里「いくらトップエースでも、ASTの一隊員でしかないわよね、彼女は?」
神無月「はい」
琴里「…………何が彼女をそこまで駆り立てているのかしら?」
令音「………………」
――――――
士道「これから話をするから服を着なさい。湯冷めして風邪を引くから」
折紙「はい、旦那様」ホカホカ
折紙「ですが、旦那様――――――」
折紙「士道、私もあなたに訊きたいことがある」
士道「……答えは着替えてくるまでに用意しておく」
折紙「私は 作戦遂行中 たしかにあなたを――――――」
士道「――――――撃った時のことか?」
折紙「そう」コクリ
折紙「あなたはいったい何者?」
スタスタスタ・・・
士道「――――――だとさ? どうする? どう答えればいい?」
グラハム『ここだけの秘密として『少年の養親が世界最高の
グラハム『最高レベルの医療用
グラハム『これなら同じ
士道「じゃあ、そういうことにしておこう」
士道「でも、俺にだって どうしてなのかはわからないんだよな」
士道「……グラハムは知っているんだよな?」
グラハム『ああ。きみの驚異的な回復能力の由来について熟知している』
グラハム『だが、その真相を伝えるのは今ではないことは確かだ』
折紙「そう、あなたも“
折紙「それなら、これまでのあなたの行動に合点がいく」
士道「ああ。もっとも、俺は“
士道「御守り代わりに肌身離さず持つように渡されていたものが、あの時 俺の命を繋ぎ止めていたらしいんだ」
折紙「………………」
士道「これで納得してくれたか?」
折紙「今はそういうことにしておく」 ※ASTはCR-ユニットを使うために 頭部に 直接 脳波増幅器を埋め込んでいる。
士道「まだ何かあるのか?」
折紙「あなたは デウス・エクス・マキナ・インダストリーとは別の
折紙「それなら、アスガルド・エレクトロニクスはあなたを利用して何をしようとしているの?」
士道「特殊災害指定生命体“精霊”との対話だ」
折紙「――――――『精霊との対話』?」ピクッ
士道「折紙が所属する日本のASTをはじめとして 世界各国のASTがDEM社の
士道「アスガルド社はDEM社とは別のアプローチで精霊との問題の解決を図ろうとしている」
士道「それが『対話』だ」
士道「精霊という存在について詳しいことがわかっていないのなら、直接 精霊と対話して解決手段を模索しようとしているわけなんだ」
士道「俺は養親がアスガルド社の人間ということで『その交渉人の一人に選ばれた』ってことらしいんだ」
グラハム『ここまでの内容は、〈フラクシナス〉で即興で創り上げたストーリーを復唱しつつ、少年の言葉で話している』
折紙「非常に危険。止めるべき」
士道「危険なのは 毎回 精霊と真正面から戦う 折紙だって同じだろう!」
折紙「精霊との対話など無意味。不必要」
士道「精霊はテロリストじゃない!」
士道「テロリストとは交渉しないのは世界の常識かもしれないけれど、対話が不必要かどうかを決めつけるのは早いんじゃないのか?」
折紙「士道の言う通り。精霊はテロリストじゃない」
士道「なら――――――」
折紙「何の前触れもなく 空間震と共に現れて 人々の生命や日常を無慈悲に奪い取っていく害獣が精霊なのだから」
折紙「対話を望んだところで すでに被害が出た後――――――」
士道「…………っ!」
グラハム『少年。これが世界の声だ。彼女の言うことはもっともだ』
グラハム『たとえ、〈プリンセス〉や〈ハーミット〉に害意がなくとも、現界する際に空間震を誘発してしまう特性を何とかしないことには、』
グラハム『存在を許すだけで同胞や祖国に甚大な被害をもたらす災厄でしかないのだからな』
士道「だから! だからこそ!」
士道「俺は精霊のことを助けたいんだ! 俺は精霊と呼ばれているあいつらの素性や身の上を知ったから!」
士道「あいつらはただの被害者なんだ!」
士道「自分でもどうすることもできない力に振り回されて、何も知らないまま、この世界に迷い込んできているだけなんだ!」
折紙「士道。あなたは騙されている。精霊との対話には何の意味もない。ただイタズラに犠牲を増やすだけ」
折紙「たとえ、極一部に好戦的ではない個体がいたとしても、精霊である以上は空間震の発生源として駆除すべき」
折紙「そうすることが、今を生きる多くの人々の平穏な日常を守ることになる」
士道「そうやって問答無用で襲いかかるから、精霊が人間に対して敵意を抱くようになっているんだぞ」
士道「結果として、回避できたはずの戦闘を繰り返して、被害の拡大と敵意の助長を招いているのはASTだ」
士道「戦争は外交の失敗――――――、次善の手段として選択されるべきものであって、」
士道「真っ向から勝てない相手に戦いを挑み続ける愚を繰り返すな! 武力で相手を制圧するだけが戦争じゃない!」
士道「俺にとっての戦争は 武力による解決では行き詰まった状況を 対話で切り拓くことにあるんだ!」
折紙「それはつまり――――――」
折紙「…………っ」
グラハム『ほう、言葉に詰まったか。先程の言葉に鳶一 折紙の急所を衝くものがあったと見える』
士道「最初から武力でもって殲滅することを目的にしていたら引っ込みがつかなくなるのは当然じゃないか!」
士道「選択肢を狭めるな! 戦う以外に道がないと思い込まされているんじゃないのか!?」
折紙「士道、言ったはず」ギリッ
折紙「私は5年前に精霊に両親を――――――」
士道「だからって、勝ち目のない戦いにこのまま送り出して お前をみすみす死なせてなるものか!」ギュッ
士道「俺は折紙にだって死んで欲しくないんだよ!」
折紙「あ……」ドキッ
士道「両親を殺された恨み辛みがあるのはわかってる。だから、ASTなんだろう、今 折紙は?」
士道「でも、それだけが人生の全てじゃないんだ」
士道「俺とつきあうことにしたんだよな、折紙は?」
折紙「…………士道」
士道「だったら、お前のことを知って放っておけなくなった人間の忠告を聞いてくれないか?」
折紙「………………」
グラハム『――――――“惚れた弱み”というやつなのだろうな』
グラハム『ここまでは見事な対応だったぞ、少年。その調子だ。今の少年の言葉を鳶一 折紙は拒むことはできない』
折紙「…………空間震の可能性は無視できない」
士道「なら、空間震を起こさないようにすれば『ASTの駆除の対象にはならない』ってことだよな?」
折紙「それは精霊〈プリンセス〉によく似ている“夜刀神 十香”のこと?」
折紙「……私としては本意ではない」
折紙「しかし、上層部の方針に背いて独断で行動することはできない」
士道「その言葉に嘘偽りはないんだな? あの時、俺が撃たれたのは上からの命令だったのか? それとも――――――」
折紙「………………」
士道「………………」
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
折紙「――――――『出動命令』」
士道「!」
グラハム『少年! たった今 入った情報だが、我々が鳶一 折紙の部屋に突入した直後に〈ハーミット〉が消失して、今この時に空間震と共に現界した!』
士道「なんだって!?」
折紙「………………」ジー
折紙「あなたは早くシェルターへ」スッ
折紙「これ以上の介入を許すことになれば、今度は誤射ではすまされなくなる可能性がある」
士道「折紙!」
折紙「?」
士道「これは俺がこれまでやってきた精霊との対話で得られた情報が入ったストレージだ」
士道「今はあまり情報がないけど、必ず容量いっぱいまで情報を集めてみせるから、俺の頑張りを無駄にさせないでくれよ!」
折紙「あとで必ず目を通しておく」
士道「あ、それと、あえて言わせてもらう!」
折紙「?」
士道「手土産に持ってきた『京観世』! 食べないと絶対に後悔するからな!」
士道「だから、死ぬな! 今度は一緒にのんびりとお茶にしような! 割烹着、最高に似合ってたから!」
折紙「その時を楽しみにしている」フフッ
グラハム『行くぞ、少年!』
士道「ああ!」
士道「待ってろよ、四糸乃! 今 行く!」
――――――だから、絶対に『大丈夫』だからな!
コォオオオオオオオオオオオオオオオオ!
士道「よかった。状況は動いていない。四糸乃も折紙も無事ってことだよな」
士道「さて、こうして目の前にすると、街を跡形もなく消し去る空間震もヤバかったけど、ブリザードっていうのも迫力満点だよな?」
グラハム『化石燃料が枯渇した24世紀の科学力をもってしても竜巻に突っ込んで無事でいられる機動兵器など存在しないのだから、』
グラハム『識別名〈ハーミット〉と侮られている精霊であっても、十分に人類にとって脅威と言えるな』
士道「けど、その実態は心優しくて 本当の強い心を持った 普通の女の子なんだ」
士道「四糸乃! 今からよしのんと俺がお前のところに行くからな!」
――――――
琴里「士道! 待ちなさい!」
琴里「生身で【氷の結界】に入ったらどうなるか わかっているの!?」
琴里「無謀すぎるわ! やめなさい!」
――――――
士道「お前、俺が撃たれた時は 全然 動揺してなかったじゃないか」
士道「俺の方から志願したからって、撃たれたばかりの俺を躊躇いなく上空から自由落下させておいてさ」
士道「あの時も一度死ぬほど命懸け。今回も命懸けなのはまったく変わらない話だろう?」
――――――
琴里「あの時とは状況がちがうわ!」
琴里「あんなの、1発切りの弾丸じゃない! けど、これは散弾銃を四方八方から撃たれながら進むようなものよ!」
琴里「しかも、霊力を感知されたら凍らされるわ! それで受けた傷を治すことなんてできないのよ!」
――――――
士道「!」
グラハム『………………』
士道「そうか。そういうことだったのか」
士道「自分でもずっと疑問に思っていたんだ」
士道「神無月さんたちの指導があったとはいえ、どうして俺なんかがASTと渡り合えるぐらい強くなれたか、わかった気がする」
――――――
琴里「…………っ!」
――――――
士道「俺の回復能力ってのは精霊の力なんだな」
士道「そもそも、俺が精霊の霊力封印をやったことがあるから〈デート・ア・ライブ〉は始まったってわけだ」
グラハム『………………』
士道「神無月さんも、だから 俺なんかのために鍛錬を施してくれたわけなんですね」
士道「つまり、『今日という日のために全てが最初から仕組まれていた』ってわけなんですよね?」
――――――
神無月「…………私からは何も言えません」
琴里「止まりなさい、士道!」
琴里「やめなさい! 本当にやめなさい! おねがい、聞いて! ねえ!」
琴里「とまって、おにーちゃん!」
琴里「兄貴も 何 黙って見ているのよ!? 一緒に心中するつもりなの!?」
――――――
グラハム『すまないな、琴里。こうなってしまっては 私でも止められんのだよ』
グラハム『そして、この際 はっきり言わせてもらおう』
グラハム『私はすでに己が役目を果たして一生を終えたところを どういったわけか未来からタイムスリップしてきた 彷徨える幽魂だ』
グラハム『よって、私にとっては この世界のことなど 本当はどうでもいいのだよ』
グラハム『しかし、何の因果か、少年と私は運命共同体となった――――――』
グラハム『ならば、少年がやると決めた以上、私は未来の勇者として只今を生きる勇者を極みへと導くのみ!』
――――――
琴里「この馬鹿兄貴ッ!」
――――――
グラハム『さあ、少年! この先 踏み込めば 一寸先は白い闇に包まれることになるが、』
グラハム『未来への水先案内人は、このグラハム・エーカーが引き受けた!』
グラハム『白い闇の中であっても、心眼を研ぎ澄まし、きみを必ずや孤独な少女の許に送り届けよう!』
士道「ああ! 俺はもう迷わない!」
士道「どれほど大きな力の壁や世界の闇が立ち塞がろうとも!」
士道「もう何人でもどんとこいや! 俺が精霊を一人残らず霊力を封印してまとめて面倒を見てやる!」
士道「誰かを助けようとすることが間違いであるはずがないんだから!」
グラハム『そうだとも! 今日からの“五河 士道”は! 阿修羅すら凌駕する存在だ!!』
――――――【グラハム・スペシャル】!
四糸乃「よしのん……、よしのん……、よしのん……」シクシク・・・
四糸乃「ハッ」
士道「泣くなよ。もう大丈夫だぞ……」
士道「――――――ヒーロー見参!」フラフラ・・・
四糸乃「士道さん!」パァ
士道「約束通り、よしのんは見つけてきたぞ、四糸乃……」ニコー
士道「だから、ほら、もう大丈夫……」ドサッ
グラハム『少年! 少年!』
四糸乃「士道さん!」
士道「ここに来る前に折紙のところでお茶を飲んでよかったぜ………………じゃなかったら、四糸乃の声がするところまで来れなかったな、これは」ハハッ
士道「四糸乃……? 居るんだろう……? 悪いんだけど、もう目が霞んで よく見えないんだ……」
四糸乃「ここです! 私はここにいます、士道さん!」ギュッ
士道「あ、ホントだ。四糸乃の小さくて温かい手が握ってくれている……」
四糸乃「よしのんを助けてくれて……、ありがとうございます……!」ヒッグ
士道「ああ 良かったな……」ゴホゴホ・・・
士道「次は四糸乃、お前を助ける番だ…………」ゼエゼエ
士道「あ、ごめんな。そうするためには信じ合う者同士でキスをしないといけないんだけど……」ゼエゼエ
士道「そう。一度はしていたけど、あの時はちょっと足りなかったから、もう一度なんだけど…………」ゼエゼエ
士道「ああ 何も見えない……。熱いのか、寒いのかさえも、わからなくなってきたな……」ゼエゼエ
士道「俺はちゃんと言えているのかな? あと もう少しなのに、四糸乃を助けることができないまま、俺は終わるのか?」ポタポタ・・・
士道「みっともないなぁ……」ポタポタ・・・
士道「四糸乃に『大丈夫』って言ってあげたいところなのに…………」ポタポタ・・・
士道「なあ、グラハム? 俺の守護天使? 居るのか? 四糸乃はどうなったんだ?」ポタポタ・・・
――――――安心したまえ。少年の想いはたしかに伝わったぞ。
チュッ
士道「ああ……」
士道「今、温かいものが唇から伝わって…………」
士道「!!?!」ジュウウウウウウウウウウ!
士道「あちちちちち!?」ガバッ
士道「ハッ」
士道「あ」
四糸乃「士道さん! 士道さん! 士道さん!」ムギュッ! ――――――全裸の幼女に抱きしめられる!
士道「あ、四糸乃! よかったぁ!」ホッ
士道「もう大丈夫だからな」ナデナデ
四糸乃「はい。士道さんも大丈夫です」
グラハム『〈ハーミット〉の霊力はまったく感じられなくなったな』
グラハム『よくやったな、少年。今回も見事に成し遂げたぞ』
士道「そうだな。四糸乃の天使に起因する 季節外れのブリザードも これで晴れて 空には虹が――――――」
士道「――――――って、うわあああああ!?」
士道「これはマズイって! 吹雪が晴れたら周りにはASTが! いや、それ以前に色んな意味で――――――」
グラハム『〈
グラハム『任務完了!』
――――――人類は再び精霊との戦争〈デート〉に勝利したぞ!
――――――空中戦艦〈フラクシナス〉
神無月「今回もお手柄でしたね、士道くん」
士道「今回も何とかやれましたよ、神無月さん」ニコー
令音「シン、これはしばらく安静にしていた方がいい」
士道「そうしておきます…………もう身体がダルくてしかたがないです」ゴホゴホ・・・
四糸乃「士道さん……」
士道「ごめんな、四糸乃……」
士道「これからは一緒に暮らしていくことになるのに、当の俺が風邪で寝込むことになっちまったよ……」ゴホゴホ・・・
士道「でも、もう四糸乃は大丈夫だから。よしのん以外にも俺やみんなが『大丈夫』って言ってくれるからさ」ニコッ
四糸乃「はい……」ニコッ
士道「ところで、琴里は――――――」
神無月「ああ 司令なら、〈ハーミット〉の霊力封印に成功したことを〈ラタトスク〉上層部に報告しているところですよ」
士道「そっか。イマイチ あの席に座っている以外 何をしているのかイメージがつかないけど、琴里も琴里で立派に仕事をやっているんだなぁ……」
神無月「ええ。そうですよ。今日一日のことを振り返ってみても、司令は士道くんの身を常に案じていましたから――――――」
琴里「このアホ兄ッ!」ドン!
士道「グハッ」
四糸乃「し、士道さん!?」
神無月「かぁー! 羨ましいです、士道くん! 司令、私にもぜひ!」
琴里「うっさい!」ゲシッ
神無月「あ、ありがとうございます……!」ドゴォ
士道「こ、琴里?」
琴里「馬鹿な真似をしてぇ!」
琴里「あなたは私の言うことを聞いていればいいのよ!」ムギュッ
琴里「ちゃんと回復限界も計算してるからぁ!」ポタポタ・・・
琴里「私の言う通りにしていれば、絶対に安全だからぁ……」ポタポタ・・・
士道「………………」
士道「……すまん。無茶した」ギュッ
グラハム『黒リボンでも 白リボンでも 本質というものは何も変わらないな、妹君は。なあ、少年』
琴里「聞こえているわよ、馬鹿兄貴!」
グラハム『おっと』
琴里「今日のようなことが起きたからには、これからは私もインカムで士道の守護天使とは常に会話できるようにしたからね」
琴里「それよりも、グラハム! あんたは士道のことを煽りに煽っておいて、自分は死んでいるからって卑怯よ!」
琴里「あんたの無茶につきあわされる士道のことも考えてよ!」
グラハム『それは無理な相談というものだ、琴里』
グラハム『多少 強引でなければ、
グラハム『精霊が特殊災害指定生命体として完全武装の特殊部隊に対処をまかされるのもそれ故だ』
グラハム『武力でもって殲滅する道にしても、愛をもって語らう道にしても、どちらにしても同程度の危険が伴うのは避けようがない現実だ』
琴里「それは…………」
グラハム『だが、善処はする』
グラハム『私自身、私がこの手で少年の道を切り拓くことができれば、この戦争〈デート〉がどれほど楽になるのかを考えれば、歯痒い思いでいっぱいなのだ』
グラハム『その歯痒さは、きみとて同じことだろう、琴里?』
琴里「………………っ」
士道「グラハム…………、琴里…………」
グラハム『それよりも、早く十香をここに呼んで 共に勝利を分かち合おうではないか』
士道「そうだな。今日は俺が晩飯を作ることができないから、出前を頼むしかないな……」
士道「ちゃんと家で待っていてくれたようだから、しっかりと褒めてあげないと……」
琴里「そうね……」
グラハム『少年。戦いは戦場での目的を達成した後も続く』
グラハム『生きること、それ自体が戦いなのだから』
グラハム『戦後処理もしっかりとこなしていくぞ』
士道「ああ」
四糸乃「………………」
士道「四糸乃」
四糸乃「あ、はい……」
士道「もう大丈夫だからな。俺やみんながよしのんと一緒に『大丈夫』って言ってあげるから」ナデナデ
士道「これからもっともっと強くなっていこう」
四糸乃「はい」エヘヘ・・・
四糸乃「士道さんも『大丈夫』です……」ナデナデ
士道「ありがとう」
琴里「………………」ジー
グラハム『きみもやってもらったらいいのではないか、琴里?』
琴里「う、うるさい! 私は〈フラクシナス〉の司令って立場があるの!」
グラハム『まあ、今はそうでなくとも、きみの番はいずれ回ってくるだろうがな』
琴里「……ええ」
士道「令音さん、お願いしていたスフレチーズケーキは取り寄せることができましたか?」
令音「ああ。顕現装置でできたてホヤホヤの状態で保管してある」
士道「じゃあ、みんな、祝勝会にしよう! 俺はちょっと顔を出すだけで勘弁してもらいたいけど」
士道「四糸乃、それから よしのん」
――――――ようこそ、俺たちの世界へ!
●第4の精霊:四糸乃のスペックデータ
名前:四糸乃
識別名:〈ハーミット〉
総合危険度:B
空間震規模:C
霊装 :B
天使 :AA
霊装 :神威霊装・四番〈エル〉
天使 :氷結傀儡〈ザドキエル〉