【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】   作:LN58

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第8話 世界の歪み Bpart

――――――翌日(来禅高校 開校記念日):全方位交際

 

士道「………………」

 

グラハム『少年』

 

士道「…………ああ」

 

グラハム『もう間もなくだぞ』

 

士道「…………そうだな」ムスッ

 

――――――

琴里「聞こえてる? 大事なデートの日に 三股をかけた このミラクルスケベ野郎」

――――――

 

士道「十香を説得せず、しかも 折紙とのデートも面白半分に組み込んでおいて、よくそんなことが言えたもんだな……」

 

――――――

琴里「一度した約束を破ったりしたら 十香の【好感度】が下がるし、鳶一 折紙にも余計に怪しまれるでしょう?」

 

琴里「安心なさい」

 

琴里「こうなった以上は全力でサポートしてあげるわよ」

 

琴里「士道はタイムテーブル通りに動くのよ」

――――――

 

士道「なあ、グラハム? 俺の守護天使?」

 

グラハム『なんだね、少年?』

 

士道「人の心ってのは理性や計算で計り知れるものじゃないよな?」

 

グラハム『そのとおりだ。人の心は複雑怪奇で、天使にも悪魔にもなれる素養があるものだ』

 

士道「だったらさ? 人の心と心がぶつかりあう戦争〈デート〉で、計算通りに盤面が進むわけないよな?」

 

グラハム『……そのとおりだとも』

 

 

士道「正直に言って、今日の戦争〈デート〉は無理ゲー」

 

 

士道「一番最初の十香との水族館を30分以内に切り上げて、狂三とのデートを30分やったら、今度は折紙とデートを開始する――――――」

 

士道「頭オカシイだろう、これ!? 30分単位のローテーションで3人とデートしろだと!?」

 

士道「俺は休む間もなく別の場所にいる女の子の許へ、30分毎に次の女の子の所に時間厳守で駆け込んで、」

 

士道「その間 1時間 女の子が独りで待たされるのが これから繰り返されるというわけだ――――――」

 

士道「こんなの、不誠実の極みだろうが! これなら最初からみんなで一緒に街を歩いた方が万倍マシだろう!?」

 

グラハム『なら、今すぐ その方針に切り替えるかね?』

 

士道「いや、いい」

 

 

士道「ここは本気で盛大に失敗した方がいい」

 

 

士道「その方が後学のためになるだろうよ」

 

グラハム『……それもそうだな』

 

士道「琴里のやつ、ホント 他人事のように扱ってくれてさぁ?」

 

グラハム『…………少年、そろそろ 十香が来る頃だぞ』

 

士道「ああ わかってる。誰も悪くない。みんな 必死なんだ」

 

 

――――――ただ、間が悪かっただけで。

 

 

グラハム『その後、少年は全力で天宮駅前の市街地を駆け巡った。――――――その様子は『概ね【アニメ版】のとおり』とだけ言っておこう』メメタァ

 

グラハム『その姿は疾風怒濤であり、全身全霊で タイムテーブル通りに この戦争〈デート〉を遂行していった』

 

グラハム『私も力を惜しみなく貸し、この短時間に【グラハム・スペシャル】を何度も行うことになった』

 

グラハム『もちろん、〈フラクシナス〉の回収と転送を駆使して、これである』

 

グラハム『30分ごとに目まぐるしく状況が切り替わるのに対応しなければならない戦況は過酷であり、』

 

グラハム『途中から移動中は私が少年の身体を使って、少しでも少年の精神を休ませるようになった』

 

グラハム『その甲斐あって、30分刻みのタイムテーブルに寸分の狂いなく この三正面作戦を遂行していくことができてはいたが――――――』

 

グラハム『少年が懸念していたとおり、30分しか少年と一緒にいられず 1時間も待たされる状況に 十香が耐えきれず、』

 

グラハム『当然、同じ目に遭わされている鳶一 折紙と時崎 狂三も、抱く感情は様々で それを表に出すことはなかったが、【ご機嫌】は例外なく低下していた』

 

グラハム『しかも、少年自身もまた 始まる前から自分の【ご機嫌】が低いことを自覚していたせいか、』

 

グラハム『自身の苛立ちを表にしないよう 努めて平静を装っていたのだが、相手に与える印象は違和感が拭えないものであった』

 

グラハム『事実、珍しく〈フラクシナス〉からの指示には忠実ではあったが、それはストレスを感じないように思考停止した状態でもあった』

 

グラハム『言うなれば、ストレス状態を抑えようとして何も思わないようにした反面の投げやりな状態であり、所謂“少年らしさ”を欠いた状態であった』

 

グラハム『その上、“サムライ”を目指している 普段の少年らしからぬ選択肢が選ばれるせいで、』

 

グラハム『少年は 内心 多大なストレスを募らせながら それを淡々と実行して、そこに言葉になっていない威圧感を相手が感じ取るためか、』

 

グラハム『今のところ、【ご機嫌】が例外なく低下して【精神状態】も小刻みに変動していながらも、』

 

グラハム『彼女たちが少年を信頼しているおかげで、何かしらの事情を少年が抱えながら自分たちとつきあってくれていると察して、』

 

グラハム『一定水準を超えた【好感度】が上がることもなければ、逆に下がることもなかった』

 

グラハム『ある意味、この破綻しきった状況を維持できるだけの人徳を少年が発揮した場面と言えた』

 

グラハム『しかし 一方では、確実に〈フラクシナス〉との信頼関係にヒビが入りつつあった……』

 

 

 

――――――そして、その時が来た。

 

士道「……狂三?」キョロキョロ

 

士道「なあ、狂三はどこへ行ったんだ?」ゼエゼエ

 

士道「手荷物がベンチに置きっぱなしじゃないか。ダメだろう、ランジェリーショップで買ってきたものを置きっぱなしにするだなんて――――――」ゼエゼエ

 

士道「ハッ」

 

士道「まさか、狂三に何かあったんじゃ――――――」ビクッ

 

グラハム『いや、時崎 狂三なら すぐ近くに――――――』

 

士道「なんだ。びっくりさせやがって」フゥ

 

 

グラハム『……ようやく理解した』

 

 

グラハム『なるほど。掴めたぞ、天使(ガンダム)。きみの力の一端を』

 

士道「……グラハム?」

 

グラハム『少年、私と意識を合わせろ。そうすれば わかる』

 

士道「……わかった」

 

 

――――――【グラハム・スペシャル】!

 

 

士道「――――――!」

 

士道「……狂三?」

 

狂三?「――――――」ササッ

 

士道「あ、まてよ! どうしてそんなところから見ているんだよ! こっちにこいよ! 俺とデートしているんじゃなかったのか!?」

 

士道「――――――!」ザワッ

 

士道「いや、こっちにも?」クルッ

 

狂三?「――――――!」ササッ

 

士道「どうしたんだよ! かくれんぼのつもりか! おい!」

 

士道「……どういうことなんだ?」

 

士道「これじゃ、まるで――――――」

 

グラハム『少年。時崎 狂三の精霊としての能力の実態を掴むことができたな』

 

士道「!」

 

士道「もしかして狂三の能力は 十香の剣とか 四糸乃の氷みたいな 単純なものじゃない――――――」

 

士道「ハッ」

 

士道「じゃあ、()()()()()()()()()()()()()――――――」

 

グラハム『――――――()()()()()()()()()

 

士道「それなら、どこかに――――――」

 

 

グラハム『そうだ。それを見つけ出さなければ、〈ハーミット〉の時のように 霊力封印は必ず失敗することになる』

 

 

士道「どこだ、狂三! 出てこい!」

 

士道「……くそっ! 言いように弄ばれてるな!」

 

士道「だったら、そっちがその気なら、やってやろうじゃないか!」

 

士道「絶対に見つけ出してやるぞ、本当のお前を!」

 

――――――

琴里「――――――霊波反応よ!」

 

琴里「士道! 狂三は公園東出口付近の林よ! しかも、霊装を顕現しているわ!」

 

神無月「直前までの監視映像から 小動物を相手にエアーガンで動物虐待していた若者たちに絡んでいった模様です」

 

神無月「現在、ターゲットの追尾カメラが故障中。復旧を急がせていますが、このままでは取り返しのつかない事態に発展しそうです!」

――――――

 

士道「ちがう! それは狂三であって“狂三”じゃない!」ダダッ

 

――――――

琴里「それ、どういう意味よ!?」

 

神無月「士道くん、そっちはちがう道です――――――」

 

琴里「士道! もしかして、あなたはこのまま無関係の民間人が精霊に殺されるのを黙って見ているつもりなの!?」

――――――

 

士道「………………っ」ピタッ

 

士道「くそっ!」クルッ

 

グラハム『少年、私の方でも探っておく』

 

グラハム『もっとも強い霊波反応を出している時崎 狂三はあの方角にいる』

 

士道「わかった!」

 

 

ダッダッダッダ!

 

 

士道「うっ」

 

士道「風に乗って漂う この臭いは…………」

 

士道「!」

 

グラハム『これは酷いな……』

 

士道「………………うぅ」ドクンドクン・・・

 

士道「………………あぁ」ウップ!

 

グラハム『少年! 私の意識に合わせろ! そうすれば 少しは落ち着く!』

 

士道「あ、ああ!」

 

 

――――――【グラハム・スペシャル】!

 

 

士道「うぅううううう……」ゼエゼエ

 

士道「ああああああ……」ゼエゼエ

 

士道「………………」ゼエゼエ

 

グラハム『落ち着いたか』

 

士道「あ、ああ…………」ゼエゼエ

 

士道「これが戦場(いくさば)というやつなんだな……」ゼエゼエ

 

士道「俺たち日本人は 400年ほど前までは こんなことを当たり前のように…………」ゼエゼエ

 

グラハム『そして、24世紀ともなれば 巨大な人型兵器に乗って それに乗っている相手の姿を 直接 見ないまま 殺し合いをしてきているわけだから――――――、』

 

グラハム『時代の変化というものは 時として優しくもあり 残酷でもあるな……』

 

士道「けど、何なんだ? こんなバラバラ殺人を本当に狂三が一人でやったっていうのか?」

 

士道「いや、霊力封印状態の十香でさえ壁に軽く穴を空けるぐらいなんだから、そもそも 精霊の腕力は計り知れないレベルか」

 

士道「それでも、狂三が一人一人を千切っては投げてバラバラにしている様子だなんて想像できないぞ……」

 

 

バキューーン! バキューーン! バキューーン!

 

 

士道「!」

 

士道「狂三!」

 

狂三「あら、士道さん? もう来てしまいましたの?」’

 

グラハム『手遅れだったか……』

 

士道「あれが狂三の霊装――――――」

 

グラハム『そして、あの手にした銃が天使というわけなのか?』

 

グラハム『しかし、死体の欠損の具合を見るに、口径からは想像もつかない破壊力を秘めているが、』

 

グラハム『発射音から推測できる あの連射性能からしても、一帯を血の海に変えるほどの制圧力はないはずだ……』

 

士道「いや、それよりも!」

 

 

――――――何だ、あの()()は!?

 

 

狂三「士道さん」’フフッ

 

士道「――――――『時計の眼』?」

 

グラハム『見惚れている場合ではないぞ、少年!』

 

――――――

琴里「士道! 逃げなさい!」

――――――

 

士道「そうは言っても、だな――――――」

 

士道「なあ? 全力を出せば逃げ切れると思うか?」

 

グラハム『そうだな……』

 

グラハム『あの発射間隔なら十分に回避できる自信はあるが、おそらく もっと恐ろしい何かを隠し持っているにちがいない』

 

グラハム『それに、あの時崎 狂三から逃れることができても――――――』

 

士道「――――――万事休す、か」

 

――――――

琴里「――――――作戦中止!」

 

琴里「士道! 何をしているの! 今すぐにその場から離脱して!」

 

琴里「グラハムも何をしているのよ!?」

 

琴里「おねがい! 開けた場所にまで行けば すぐにでも回収するから、そこまで全力で逃げて!」

――――――

 

士道「まあ、お互い腹を括るしかないよな」ドカッ ――――――その場に座り込む。

 

グラハム『…………そうだな』

 

グラハム『よもや、生き恥を晒し続けていた頃の私がやろうとして踏み止まったアレをすることになろうとは――――――』

 

狂三「ああ! ああ! 失敗しましたわ! 失敗しましたわ!」’

 

狂三「もう少し士道さんとのデートを楽しみたかったのですけど、」’

 

狂三「でも、しかたありませんわね」’

 

士道「ああ。是非もないな、狂三」

 

狂三「まあ 士道さんったら、サムライらしく潔くていいですわね。ますます美味しそうですわ」’ペロリ

 

グラハム『――――――『美味しそう』、か』

 

士道「なら、最期に聴かせてくれないか?」

 

狂三「何ですの、士道さん? そうですわねぇ、特別に士道さんの質問になら 1つだけ 何だって答えてあげましてよ?」’

 

狂三「その方が心残りがなくて、味が損なわれないでしょうからね!」’

 

 

士道「じゃあ、狂三にとっての幸せが何なのかを教えてくれ」

 

 

狂三「……どういうことですの?」’

 

士道「初めて会ったその日、『俺に会うのをずっと楽しみにして 一緒にいられることが幸せ』だって言ってたじゃないか」

 

士道「だから、ここで俺を殺すことが狂三の幸せに繋がっているのかと思って」

 

士道「もし そうだとするなら、俺が納得できる説明をしてくれたら、お前にこの身を委ねてもいいと思っている」

 

狂三「……そうですの」’

 

士道「どうだ? お前の言う『幸せ』って何なんだ? それを教えてくれ」

 

士道「もし説明できないなら、食べることだけが幸福じゃないってことを、俺がこれからのデートで狂三に教えてやる」

 

狂三「この状況で『次がある』と本気でお思いですの? 士道さんは本当に冗談がお上手で」’

 

 

士道「なら、俺の本気を証明してやる」

 

 

狂三「?」’

 

士道「………………」スチャッ ――――――脚の裏に隠していた短刀を抜いた。

 

狂三「まあまあ、何ですの、その小刀は? 今までそんなところに隠し持ってデートしていただなんて、士道さんも隅に置けませんわね」’

 

狂三「でも まさか、この土壇場で わたくしをそれで刺す おつもりで?」’

 

狂三「残念ですけど、士道さん? 霊力のこもらない一撃はいくらやっても精霊には通じませんのよ?」’

 

狂三「それに、士道さんがその小刀でわたくしの身体を滅多刺しにするよりも、この銃で士道さんの身体のあちこちに風穴が開く方がずっとずっと速いですわよ?」’

 

狂三「――――――試してみます、士道さん?」’ジャキ!

 

士道「……行くぞ」アセタラー

 

グラハム『覚悟はできている。きみもできたな?』

 

 

――――――【グラハム・スペシャル】!

 

 

士道「うおああああ!」

 

狂三「あらあら、士道さんったら、潔いと見せかけて 意外と往生際が悪い――――――」’

 

狂三「ハッ」’

 

狂三「!!?!!!」’

 

 

士道「うぐっ」ドスッ ――――――【GNハラキリ】!

 

 

狂三「なっ」’

 

狂三「何をやっておりますの、あなたは!?」’ドン!

 

士道「ああっ!」ドテン!

 

狂三「し、信じられませんわ! こんなところで切腹だなんて時代錯誤もいいところですわ!」’

 

士道「なんだよ? せっかく自分から食べやすいように腹を割っているところなのに邪魔するのか……?」ゴホゴホ・・・

 

士道「あ、あれか? ステーキのカットは給仕にやってもらうより自分でやりたい派だったか? だったら、少し余計なことをしたな……」ゴホゴホ・・・

 

狂三「は」’

 

狂三「あ、あなた、何を言って――――――」アセタラー

 

士道「グアハッ」ゴホゴホ・・・

 

士道「アア・・・・・・」ゴホゴホ・・・

 

狂三「………………」’ギリギリ・・・

 

狂三「ああもう! わかりましたわよ、〈わたくし〉!」’

 

 

――――――【四の弾(ダレット)】!

 

 

士道「アア・・・」ニヤリ

 

狂三「――――――」’バキューーン!

 

士道「うあっ」

 

士道「………………」

 

士道「………………?」

 

士道「あれ? 傷がふさがって……」

 

士道「狂三? どうして――――――」

 

狂三「まったく呆れますわ! 『食べる』とは言っても『カニバリズム』じゃありませんのよ!」’プンプン!

 

狂三「士道さんのせいで、しばらくの間、ステーキを見るのも食べるのも嫌になりましたわ!」’

 

士道「狂三……」

 

グラハム『ギリギリまで きみの自己再生を抑えて 仮死状態になって相手をやり過ごすつもりだったが、相手の方が先に折れてしまったようだな』

 

グラハム『少年。目の前の時崎 狂三がきみに放った弾はブラフだ。きみの傷を癒やした弾は別の方角から飛んできた』

 

 

グラハム『その時、はっきりと〈プリンセス〉〈ハーミット〉を超える強大な天使の顕現を感じ取ることができた』

 

 

グラハム『そして、私はその気配を完全に憶えた』

 

グラハム『これで当面の目的を達成することができた。よくぞ耐え抜いたぞ、少年』

 

士道「あ、ああ…………」ゼエゼエ

 

士道「何度も死にかけているせいで、自分が生きているのか 死んでいるのか 曖昧になってきている感があるけど……」ゼエゼエ

 

 

――――――兄様!

 

 

士道「!」

 

士道「この声――――――」

 

狂三「あらあら、もうお開きのつもりでしたけど、わたくしと士道さんの逢瀬を邪魔するなんてマナー違反が過ぎませんこと?」’

 

士道「真那!」

 

真那「話は後です、兄様」

 

真那「すぐに終わらせやがります!」ジャキ!

 

真那「よくも兄様を! 時崎 狂三ぃ!」

 

士道「よ、よせえええ!」

 

真那「――――――」

 

狂三「くっ! この攻撃、避け――――――」’

 

狂三「あ」’

 

狂三「!!!?!!」’ ――――――操作レーザーの直撃を受ける!

 

狂三「うぅ…………」’ドタッ

 

士道「狂三!」ガバッ

 

真那「兄様!? 動かないでください! その血の量! 失血死しますよ!」ガシッ

 

真那「…………!」

 

真那「――――――“義姉様”がこれを持たせてくれた意味がわかりました」

 

士道「放せ、真那! 俺は――――――」

 

士道「あ」ガクン!

 

士道「か、身体の力が――――――」ドサッ

 

真那「兄様のことは“義姉様”から聞いています。“義姉様”のためにも 兄様にはおとなしくしてもらいますよ」

 

士道「か、身体が動かない――――――、そういう顕現装置(リアライザ)か!?」ググググ・・・

 

士道「真那! ダメだ! 殺しちゃ! 俺はまだ狂三に何も――――――」

 

狂三「やっぱり、士道さんはお優しい――――――」’フフッ

 

真那「――――――」ブン! ――――――とどめを刺す!

 

 

ビチャ!

 

 

士道「くそっ! くそぉおおおおおおおおおおお!」ガン!

 

士道「狂三も! 真那も! どうしてなんだあああああああああああああああああああああ!」ポタポタ・・・

 

真那「兄様……」

 

真那「兄様、どうして特殊災害指定生命体“精霊”に そこまで――――――?」

 

 

――――――“本物”だからだよ!

 

 

士道「くっ……」ヒッグ

 

真那「――――――“本物”?」

 

士道「たしかに、殺されて当然だったかもしれない――――――」

 

士道「それでも、毎回 真那に斬り捨てられるような 殺られ役みたい精霊であっても、たしかに人間らしい心の揺れ動きはあったんだ!」

 

士道「なら、少しでも良い方向に変わるように 辛抱強く 心を尽くすのが“導く”ってことじゃないのか?」

 

真那「……それは無理な話ってやつですよ、兄様」

 

真那「〈ナイトメア〉時崎 狂三は特別な精霊です」

 

真那「これまでに 何度 殺しても、どんな方法でも、この女は何事もなかったかのように、また どこかに現れて 人を殺しやがるんです」

 

真那「だから、殺し続けているんです」

 

真那「執拗に追いかけて、何度も何度も何度も何度も…………」

 

真那「もう慣れましたけどね」

 

士道「…………殺すことが特技だなんて言うもんじゃない!」

 

真那「兄様?」

 

 

士道「お前が生き別れの兄が幸せに過ごして欲しいと願うように、俺も生き別れの妹には幸せな人生であって欲しいって思っているんだぞ!」

 

 

真那「………………っ」

 

士道「他に好きなことや得意なこと、やりたいことはないのか?」

 

士道「俺が目指している“サムライ”っていうのは殺すことだけが特技の連中じゃない」

 

士道「人を殺すことが役割という業を背負いながらも、人々の精神や生活を豊かにする文化や教養をもたらす存在なんだ」

 

士道「もし時崎 狂三を殺すだけが自分の人生の全てだなんて思っているようなら、」

 

士道「そんなの、心が磨り減って 本来 持ち合わせている人間の感情を失っているだけだぞ」

 

士道「俺から言わせれば、そんなのは人間の心を持った武士の在り方じゃない」

 

士道「だから、この場を借りて もう一度 言わせてもらう!」

 

 

士道「もし嫌になったら、いつでも俺のところに来い。また一緒に住もう、俺のかわいい妹よ」ポタポタ・・・

 

 

真那「兄様……」

 

士道「じゃあな……」クルッ

 

士道「くっそおおおおおおおおおおおおおおお!」ダッダッダッダ!

 

真那「兄様……」

 

真那「……はい、いつかは必ずそうします、兄様」

 

真那「でも、今は、今だけは――――――」

 

真那「うっ」フラッ

 

真那「兄様…のためにも、〈ナイトメア〉時崎 狂三は 必ず殺し尽くす!」

 

 

 

 

 

 

 

チャリーン! バタン!

 

士道G「少年、遺留品はこのロッカーに入れておくぞ」パシャ

 

 

prrr...

 

士道G「聞こえるか、夜刀神 十香?」ガチャ

 

士道G「すまない。噴水前まで来てくれ」ピッ

 

 

prrr...

 

士道G「鳶一 折紙――――――」ガチャ

 

士道G「そうか。夜刀神 十香と一緒だったのか。なら、話は早い」

 

士道G「一緒に噴水前まで来てくれ。今日のことについて説明をしておく」ピッ

 

 

タッタッタッタッタ!

 

 

十香「シドー、どこへ行っていたのだ?」

 

折紙「いったいどういうこと?」

 

士道G「すまないな、二人共。今日のことについてなのだが――――――」

 

折紙「!」

 

折紙「士道、その服の血は何?」

 

十香「シドー! シドーから血の臭いがするぞ!? いったい何があったのだ?」

 

士道G「では、一言で説明しよう」

 

 

――――――精霊“時崎 狂三”がまたしても殺害された。目の前でな。

 

 

十香「!!?!」

 

折紙「!!!!」

 

士道G「つまり、今日の戦争〈デート〉はそういうことだったのだ」

 

士道G「穏便にすませられると楽観視していた結果がこれだ」

 

士道G「そういうわけで、すまないが、二人共。今日のデートはここまでとしよう」

 

士道G「正直に言って、これ以上は精神が保たない……」

 

士道G「後日、あらためてデートをし直すと約束しよう」

 

十香「あ、ああ。わかったのだ、シドー……」

 

折紙「士道。だから、私は言ったのに…………」

 

士道G「ああ。きみのいうとおりだったな、鳶一 折紙」

 

士道G「ではな。しばし冷静になる時間を与えてくれたまえ」

 

十香「…………シドー」

 

折紙「………………」

 

 

 

 

 

――――――空中戦艦〈フラクシナス〉

 

琴里「本当に馬鹿よね、士道ってば」

 

士道「………………」

 

琴里「あんなものを見せられるこっちの身にもなりなさいよ」

 

士道「悪い……」

 

琴里「――――――!」ギリッ

 

士道「うっ」バチン!

 

琴里「嘘ばっかり! 狂三も真那も頭のネジが外れているけど、あんたも相当にイカれてるわ!」

 

琴里「何よ、あれ!? 自己再生があるからって、切腹して相手をやり過ごそうだなんて、狂三ですらドン引きしていたじゃない!?」

 

士道「……あれしか あの場を乗り切る方法がなかったんだ」

 

士道「けど、あれのおかげで俺の守護天使が狂三の天使を感知することができたから、これで今度からは――――――」

 

琴里「――――――!」ギリッ

 

士道「ぐふっ」バチン!

 

 

琴里「そんなことのために ()()()()()()()()()()()()()()()()()っていうのが なんでわからないのよ!?」ポタポタ・・・

 

 

士道「………………」

 

琴里「私だって ()()()()()()()()()()() そうしてるわ!」

 

琴里「家族なんだもの! 誰だって そうしたいに決まっているわ!」

 

 

琴里「あなたには 私がどういう気持ちで毎日〈フラクシナス〉の艦長席に座っているか これっぽっちも理解する気がないわよね!?」

 

 

琴里「何度も何度もこっちの命令を無視してぇ!」

 

士道「琴里……」イラッ

 

士道「」カチン

 

 

士道「ああ! そうだとも! そんなの、わかるわけないだろう!」

 

 

琴里「!!?!」

 

士道「そんなこと、具体的には何も言ってこなかったじゃないか! 何も言わなかったら伝わらない! そんなんで信じられるものか!」

 

士道「琴里がどういった経緯で〈フラクシナス〉司令なのかなんて知らないし、どういった苦労があったのかも想像の域を出ない!」

 

士道「俺は ()()()()()使()()()()()()()()()() お前のことを信用しているのであって、」

 

士道「俺にとっては 司令官モードだなんてカッコつけてるつもりのお前なんか 怖くもなんともないんだからな」

 

琴里「」カチン

 

琴里「くぅうううう!」

 

 

琴里「そうやって! いつもいつもあなたは私を除け者にして! あなたにとって私は本当は邪魔な家族なの!?」

 

 

士道「はあ? なんで〈ラタトスク〉でのお前と 俺のかわいい妹の話になるわけ?」

 

士道「いつ 俺がかわいい妹のことを邪魔だなんて言ったんだよ?」

 

琴里「うっさい! 本当は最初から私のことは家族だとすら思ってなかったんでしょう!?」

 

琴里「だから、私の気持ちなんか ずっと頭に入ってこなかったんでしょうが!」

 

士道「おい、落ち着けよ! いったい何なんだよ! こういう時こそ対話だろうが!」

 

琴里「そんなつもりもないくせに! 不愉快だわ!」

 

琴里「このッ! おにーちゃんの 馬鹿ああああああああああああ!」

 

士道「!?」ゾクッ

 

士道「危なっ――――――」ヒョイ

 

 

ドッゴーーーーーーーーーーーン!

 

 

琴里「え……」

 

士道「壁に大穴が…………」

 

グラハム『何事か!?』

 

琴里「あ、兄貴、これは、その――――――」

 

琴里「ああもう! あんたたちが悪いんだからああああああああああ!」

 

 

ダッダッダッダ!

 

 

士道「琴里…………」

 

士道「そうか。そうだよな。()()()()()()ような気がする……」

 

グラハム『少年……』

 

士道「いや、いいんだ」

 

士道「今は〈ナイトメア〉時崎 狂三の対処が最優先目標だ」

 

士道「何か進展はあったか?」

 

グラハム『いや、時崎 狂三がどういった習性の精霊かは判明していったが、肝腎のところは――――――』

 

士道「わかった」スッ

 

グラハム『……少年?』

 

士道「――――――!」ズバッ ――――――鋭く尖った破片でリストカット!

 

士道「ぐぅううううううううううう!」ブシュウウウ! ――――――激しく血が飛び出る!

 

士道「熱っ……!」ジュウウウウウウウ! ――――――灼けるような痛みと共にリストカットの痕が塞がる!

 

グラハム『……少年』

 

士道「…………フゥ」

 

士道「……異常無しだ」ハハッ

 

グラハム『……そうか』

 

グラハム『おそらく、翌日もまた 何事もなかったかのように 〈ナイトメア〉時崎 狂三は姿を現すであろう』

 

グラハム『そうなった時、高確率で強硬手段に出るはずだ』

 

士道「それでも、やるしかないんだろう?」

 

グラハム『そうではあるのだが…………』

 

士道「何だよ? 言いたいことがあるなら はっきり言ってくれよ。俺とお前の仲だろう」

 

 

グラハム『いや、これも私という存在がきみという存在に与えた悪影響だと思ってな。反省していたところなのだ』

 

 

士道「え」

 

グラハム『今のきみは私に心のブレーキを全て預けて突っ走っている暴走特急のように思える』

 

グラハム『もちろん、常人には耐え難い無理難題をやらされ続けて、少しずつタガが外れていっているところがあるように思っていたが、』

 

グラハム『さすがに大量殺戮犯の精霊すらも血の気が引くような作戦も平気で行えるようになったのには、』

 

グラハム『私もきみがどこか遠くに行ってしまったような感覚に見舞われていた』

 

士道「…………!」

 

士道「………………」

 

士道「俺はただ みんなを助けるために必要なことを…………」

 

グラハム『わかっている。だからこそ、きみは〈プリンセス〉〈ハーミット〉の霊力封印を成功に導くことができた』

 

グラハム『だが、一度 見せた手は二度は通用しない』

 

グラハム『更に非情な現実を〈ナイトメア〉時崎 狂三は突きつけてくることだろう――――――』

 

士道「どうだっていいさ、もう」

 

士道「元から この計画〈デート・ア・ライブ〉は 対話に応じる気がない精霊をどうするのかについては何の議論もなかったことだし」

 

士道「だったら、俺は 自分が正しいと思えた この道を突き進むだけだ」

 

 

――――――それが俺が目指している“武士道の究極”なのだから。

 

 

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