【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】   作:LN58

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【あとがき】第8話 世界の歪み

●“もうひとりのグラハム・エーカー”五河 士道の歪み

【デート・ア・ライブ】主人公:五河 士道と【機動戦士ガンダム00】作中屈指の人気キャラ:グラハム・エーカーとのコラボレーションが今作の趣旨なのだが、

未来人の幽霊として登場するグラハム・エーカーの影響で 今作の五河 士道は“もうひとりのグラハム・エーカー”となりつつある。

グラハム自身、そうなっていることをはっきりと認識しているわけではないが、

【機動戦士ガンダム00 第1期】におけるグラハムの行動や内面の変化を辿っていくと読者には理解してもらえるだろう。

 

実は、その頃のグラハム・エーカーが勇気ある少年:五河 士道だとするなら、その頃のビリー・カタギリの役割を未来人の幽霊:グラハム・エーカーが担っているのだ。

 

それが意味するところは『五河 士道が“もうひとりのミスター・ブシドー”になりつつある』ということであり、

周りから指摘されるように、守護天使に導かれて“現代のサムライ”を目指してきた少年は〈デート・ア・ライブ〉を遂行していくうちに着実に歪んでいっている。

元々 自分よりも他人を助けることに真っ先に動く心優しい人格だったが、

武士道とサムライの在り方を追究して実践していくうちに得た合理性と判断力に加え、他人にはない能力や特技の数々を持ち、

常人にはどうにもならないような非情な現実を突きつけられ、特殊災害指定生命体“精霊”をどうにかできる可能性を与えられた結果である。

 

冷静に考えてみても、〈デート・ア・ライブ〉が一人の少年に与える負荷は尋常ではなく、

正体不明の特殊災害指定生命体“精霊”に容赦なく殺される覚悟で丸腰で説得に向かわされ、

正規の対策班であるASTの妨害を潜り抜けつつ、相手のゴキゲンをうかがいながらデートしてデレさせ、

目的である霊力封印まで漕ぎ着けた後も 霊力が逆流しないようにアフターケアも欠かせない 心労の絶えない毎日なのだ。

 

 

 

0,正式名称【グラハム・マニューバ】として 2360年頃になっても軍事教本に載っているほどのMSの腕前を持つ“ユニオンのトップガン”

→ 守護天使に導かれて 若くして“武士道”を極めんと精進に明け暮れる 巷で話題の将来有望な“現代のサムライ”

 

この前提が非常に重要であり、非凡な実力者であることが強大な存在の出現に際しての行動指針の分かれ目となっている。

何の力も持たない平凡な存在であるのなら戦いから遠ざかる道を選ぶものだが、

力ある者の責任を自覚してくると 好む好まざるに関わらず 戦いに臨まなくてはならなくなる。

 

そのため、今作の“五河 士道”は相手の力が理解できるほどの強さであることを表現するために、

先手を取ることができればASTのエース:鳶一 折紙を拘束できるぐらいに描写している。

が、後述のように、そんな程度の強さなど何の意味も持たない領域の戦争〈デート〉の日々に身を投じていくことになる。

 

 

 

1,AEUの新型モビルスーツ完成披露演習を視察に来た その日、最初の武力介入に現れたCBの機動兵器〈ガンダム〉の圧倒的な性能に魅了され 心を奪われた

→ 四月一○日の空間震を間近に体験した際に ビルを破壊し ASTすら単独で相手取る 特殊災害指定生命体“精霊”の圧倒的な力に畏怖する

 

そして、運命の日を迎えて、世界は変わり始めた。

偶然か、必然か、世界に混乱をもたらす強大な存在の到来を目撃することになり、その存在に心を奪われることになった。

それは自分も世界さえも変えてしまうほどの出来事であり、世界の命運を左右することとなる。

 

今作の“五河 士道”もまた、特殊災害指定生命体“精霊”の途方も無い強さを目の当たりにして恐れ慄く。

これまで磨き上げた武芸など子供のお遊びに思えるような圧倒的な力の差を最初に認識させられたのだ。

しかし、それだけの力をもっていながら 哀しみを湛える“精霊”の表情に真っ先に違和感を覚えるのが“五河 士道”という少年であった。

 

 

 

2,〈ソレスタルビーイング〉の武力介入を受けて 対ガンダム調査隊に真っ先に転属させられる

→ 精霊とデートしてデレさせることで平和的解決を図る秘密結社〈ラタトスク〉のエージェントになる

 

周囲が強大な存在の到来に強く関心を寄せることになる中、自身も強い興味を惹かれていたところに 対策部署へと回されることになる。

このことに因縁めいたものを感じたことで、より深く興味関心を抱くようになり、その存在を特別視するようになる。

 

今作の“五河 士道”も 原作通りに 秘密結社〈ラタトスク〉に拉致同然に連れてこられ、

精霊とデートしてデレさせるエージェントに仕立て上げられて 丸腰で精霊との対話に向かわされるものの、

武の極みを探求してきたサムライ少年ならでは観点から、特殊災害指定生命体“精霊”の謎に迫る決意を抱く。

 

 

 

3,〈ガンダム〉と交戦を繰り返すうちに 己の闘争心を満たす好敵手として それを倒すことが目標になっていく

→ 〈プリンセス〉〈ハーミット〉の霊力封印に成功して、〈デート・ア・ライブ〉の日々に手応えを感じていく

 

あらゆる点で現行技術の数十年先を行く圧倒的な性能も然ることながら、

『戦争をなくすために武力を行使する』という存在自体が矛盾しているものが確実に世界を変えていくのを感じ、

『そんな世界を相手に戦いを挑む存在を超えてみたい』という戦士の性と欲求が徐々に表に現れてくる。

 

今作の“五河 士道”も 当初は人品に悖る前代未聞の解決方法に疑問を抱いて納得しきれていなかったが、

ASTでも対処できない特殊災害指定生命体“精霊”を対話という誰もが成し得なかった平和的手段で無害化させたことに自信と誇りを持つようになる。

一方で、そのために一般的な常識と倫理観をかなぐり捨てることになり、自身が抱く“武士道”の理想を体現するために対話という手段に固執し始めていく。

 

 

 

4,過激化した〈ガンダム〉の武力介入によって、同胞や恩師の命が奪われ、ついに堪忍袋の緒が切れる

→ 対話に応じる気がない最悪の精霊〈ナイトメア〉と それを殺し続ける生き別れの妹:崇宮 真那との衝撃的な出会いで世界の悪意を知る

 

いかに強大な存在が相手であろうと、阿修羅すら凌駕する存在となって道理を無理で抉じ開けてみせる。

しかし、真っ当な 人としての怒りを顕にして 迫りくる敵に挑みかかるのだが、

同胞と恩師を失った直後の台詞が『嘆きや悲しみ』ではなく、『自身のプライドを傷つけられた屈辱』というところに、既に狂気に犯されつつあるのが伺える。

 

存在することが想定されていた“最悪の精霊”を相手にデートしてデレさせるという今までにない困難に加え、

“みなしご”であったことを思い出させる自身のアイデンティティに触れる忌々しい過去との遭遇と衝突により、

ただでさえ 自分の力だけではどうしようもない 精霊とは別の意味での現実の理不尽さに 精神的に追い詰められていってしまう。

 

 

 

5,戦死した部下の墓前で「愛機の〈フラッグ〉で〈ガンダム〉を倒す」と誓ったことを契機として 合理性を無視した〈フラッグ〉への拘泥を見せ始める

→ ASTですらどうしようもできない最悪の精霊〈ナイトメア〉の対処を迫られ、逃げることもできず『自分にできることはただ対話しかない』と開き直ってしまう

 

良識的な軍人で、命令は忠実に守り、姑息で卑劣な行いを酷く嫌い、部下には的確な指示を与え、

強大な敵と戦うことを楽しみつつも軍人としての職務を果たしていたが、度重なる敗戦による屈辱と同胞や恩師の死により、静かに狂気に囚われてしまう。

部下の死を悼んでいたのは本当ではあったが、宣誓自体は『戦う為の建前でしかなかった』と小説版では告白している。

 

精霊とデートしてデレさせることで人類を空間震の脅威から救うという 一見してお気楽に思える対話の道〈デート・ア・ライブ〉であったが、

人類をはるかに凌駕する能力を持つ特殊災害指定生命体“精霊”の中で残虐非道で対話の余地がない個体には成す術がないという問題点が露呈し、

『それでもやるしかない』と強制され続けた結果、対話のためなら 非常に悪い意味で 物事を前向きに考えて 何でも実行してしまうようになる。

 

 

 

6,テストパイロット時代からグラハムの無茶に困らされては それでも応えてみせる長年の親友であり 最高の盟友:ビリー・カタギリの存在

→ “五河 士道”となった時から少年と共に在り続け 絶対的な安心感を与え 守り導いてくる 守護天使:グラハム・エーカーの存在

 

歴史に名を残すほどの操縦者と技術者の黄金コンビであり、二人が揃っていたからこそ 人類全体の革新に繋がった。

逆に言えば、グラハム・エーカーがここまで歪むことができたのも、〈ガンダム〉に手が届く可能性を与えられ続けていたからでもあり、

ビリー・カタギリがいなければ、〈ガンダム〉と戦える条件が整わないので、

間接的にグラハムの歪みを誰よりも側にいて看過して助長させた存在がビリー・カタギリであった。

余談だが、ビリーは【1stシーズン小説版】でグラハムのことを「侍」と評している。

 

今作の“五河 士道”は素直に秘密結社〈ラタトスク〉の指示を聞くつもりはなく、

誰よりも側にいて 自分のことを思って 人生を導いてくれる 守護天使:グラハム・エーカーが言うから秘密結社〈ラタトスク〉に協力しているところがあり、

家族である五河 琴里ですら踏み込めない関係であることから、無自覚に自分と守護天使以外の他人の意見を軽視する傾向がある。

また、実際に一心同体の運命共同体であるだけに、守護天使の存在が絶対的であるが故に、

その存在が失われていた5年間は 客観的に見て 勇気と履き違えた若気の至りの無謀の日々を繰り返していた。

 

 

 

結果:子供の頃からの夢である空を汚され、同胞や恩師を奪われ、フラッグファイターとしての矜持すら打ち砕かれ、全てを失ってしまった。

→ 五河 士道もまた“武士道”に縋り付く他なくなっていき、〈デート・ア・ライブ〉の遂行のために人間性を喪失しつつあった。

 

実際にどうなるかは未知数なものの――――――、

最終的には両軍が相討ちとなって全滅した第1期最後の〈ソレスタルビーイング〉と国連軍の総力戦において、

作中トップクラスのグラハム・エーカーが断固辞退せずに国連軍のMS部隊指揮官を拝命していたとすれば、

機体性能がソレスタルビーイングの〈ガンダム〉と互角の〈GN-X〉を駆って ガンダムマイスターたちを技量差で圧倒することができ、

国連軍に集結した三大国家陣営のエースたちとの連携と数的優位によって、容易く〈ソレスタルビーイング〉を殲滅させられた可能性があり、

ダリル・ダッジたち元部下は生存できたかもしれず、失うものが多かったものの 守り抜けたものをこの手に掴み取れたかもしれない――――――。

 

しかし、現実にはグラハムは指揮官を辞退し、「〈フラッグ〉の力を証明する為にも〈ガンダム〉に勝つ」という部下であり旧来の友だったハワードとの誓いや意地を優先。

“〈フラッグ〉である意味がまるでない”〈GNフラッグ〉の開発に着手したことで最終決戦には完全に間に合わず、

同じ国連軍兵士となって味方となった三大国家陣営のエースパイロットたちや元部下が尽く戦死するのを黙認する結果になり、

自身もまた 消耗した〈ガンダム〉1機に襲いかかるものの、相討ちとなって深い傷を負うことになってしまった。

基本設計を完全に無視して強引な改造を行ったせいで 機体バランスが非常に悪かったことが勝利を掴めなかった原因であった。

 

ある意味、自らの選択によって守れた可能性があった全てを捨ててしまったグラハムに残ったのは、

“全ての原因であり 未だ挑み甲斐のある好敵手として存在し続けてくれる”「〈ガンダム〉と“あの少年”」のみ。

自らの選択によって帰属する対象を失い、壁に挑んで戦う以外に生きる意味を見出せなくなってしまった点は、グラハムが追い求めた刹那の人生にも似ている。

“ミスター・ブシドー”という修羅は、かつての刹那・F・セイエイが生み出した自分の影法師のような存在だったと言える。

 

 

今作においては、リボンズ・アルマークから刹那・F・セイエイに受け継がれ――――――、

〈ガンダム〉の幻想を追い続けたグラハム・エーカーに絶対の憧れを抱いた“五河 士道”が同じ過ちを繰り返すことになる。

否、すでに5年前のあの日から守護天使がいなくなってからの日々は、

まさに“自分をグラハム・エーカーというサムライだと思いこんでいる”中二病の日々であった。

しかし、我武者羅な武者修行の日々で出会えた その道の達人である師匠たちの薫陶を受けることで 自身の歪みが その都度 正されていくことになり、

もしも〈デート・ア・ライブ〉が始動していなかったのならば、ここまで歪みが大きくなりすぎることなく、“現代のサムライ”として 真っ当に成長していったかもしれない。

 

 

リボンズ・アルマーク → 刹那・F・セイエイ → グラハム・エーカー → 五河 士道

 

 

ところが、“現代のサムライ”なんかではどうしようもできない事態〈デート・ア・ライブ〉に身を投じていくことになったことで、

なまじ常人よりも胆力と才覚があるがゆえに、自身が絶対とする“武士道”という価値観だけで乗り切ろうとしてしまっている。

しかし、ここで少年は“武士道”と“サムライ”に対する根本的な誤解をしていることに気づいていない。

一方、一度は誤った“武士道”を実践していた元“ミスター・ブシドー”としては、

本当の“武士道”というものを 長年に渡る生活と実践の中で少年と体験を共有することで 少しずつ理解し始めていた。

 

ヒント:少年が一番憧れているサムライは織田 信長、守護天使が一番だと評しているサムライは山岡 鉄舟

ヒント:少年が目指す“武士道の究極”という理想とは新渡戸 稲造『武士道』からの引用である

ヒント:当時のグラハム・エーカーと比較すれば 正しい“サムライ”の認識を持っているが、“サムライ”=“武士道”という誤解が事態を深刻にさせている

 

 

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