【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】 作:LN58
●踏んだり蹴ったり -時崎 狂三の悪夢-
今作は【-武×士道×グラハム-】と題して、悪霊に取り憑かれた主人公:五河 士道の性格改変二次創作となるので、
独自性を発揮するためのリソースが足りていない序盤はあまり独自色が出ていないが、
今作では〈ナイトメア〉時崎 狂三との戦争〈デート〉あたりから独自の展開をし始める。
その原因となってくるのが『〈ナイトメア〉時崎 狂三 以上に“現代のサムライ”五河 士道が歪んでいたから』である。
その歪みを助長させた要素が、未来人の幽霊:グラハム・エーカーと、実は精霊だった妹:五河 琴里であり、
この2つの要素が相乗効果を発揮したことで、最悪の精霊〈ナイトメア〉ですらタジタジになる 狂気を孕んだ展開となっている。
というより、“最悪の精霊”時崎 狂三にとって相性最悪となる要素ばかりが知らぬ間に集まってしまっていた。
なにしろ、この五河 士道は グラハム・エーカーと同じく『空気を読まない』我を押し通す性質の持ち主であり、
憧れのサムライ:織田 信長に学んだ 合理性と革新性を得て、ただでは転ばない性格になっているのだ。
その最たる例が『空間震を能動的に起こせる精霊と協力関係を結ぶ』構想であり、
その相手が“最悪の精霊”時崎 狂三であっても味方に引き入れようとする大胆な発想とずば抜けた度胸を見せつけている。
おまけに、基本的に相手の所業を否定せずに肯定的な部分を強調して説得をしてくるため、清濁併せ呑むドッシリとした度量も見せている。
何より、この“五河 士道”には最高の抗不安剤・精神安定剤・心のブレーキを担う守護天使:グラハム・エーカーが常に側にいて導いてくれるため、
常人とはまるで異なる精神構造となっており、『自分以上に相手が狂っている』という発想ができなかった時崎 狂三には精神面でも勝ち目はなかった。
そして、道理を無理でこじ開けることができる【グラハム・スペシャル】と炎の精霊〈イフリート〉の再生能力の相乗効果で、
普通の人間なら死んでいるような状況すらも対話に組み込む強かさが発揮されており、
戦闘能力が低いからこそ謀略を用いて相手を翻弄するタイプの〈ナイトメア〉時崎 狂三の戦略を真っ向から叩いて砕いている。
更に、守護天使:グラハム・エーカーにしろ、炎の精霊〈イフリート〉にしろ、
〈ナイトメア〉時崎 狂三にとって戦闘面での相性はどちらも天敵と呼べるレベルで最悪であり、
炎の精霊〈イフリート〉に対しては持ち前の再生能力の壁に阻まれて火力が追いつかないことから真っ当な意味で殺しきれず、
しかも、一対多に長けた戦闘能力を持つため、【八の弾】による数の暴力がかえって自身の損失を拡大させることになる。
守護天使:グラハム・エーカーに対しては、相手が“未来人の幽霊”という存在自体が矛盾した存在であるため、
“幽霊”ということは、そもそも“死者”であるため、『寿命』が尽きていることから、
『影』=『時間』=『寿命』という解釈で成り立つ〈ナイトメア〉の天使ではまったく対応できない。
そして、【一〇の弾】を使って その正体を知ろうとしても、現在から見てグラハム・エーカーが西暦24世紀を生きた“未来人”であるために、
過去の時間軸に起きた事象を取り扱う 偶数の弾の性質と照らし合わせて 対象の過去を垣間見る【一○の弾】の原理と矛盾することから、
“未来人の幽霊”という複合属性の耐性に阻まれて、何の情報も得ることができない。
その上、霊力を乗せた物理攻撃しかできないために攻撃力はそう変わらないはずの守護天使は精霊の霊装すら斬り裂く特効武器を持つため、
真向勝負をしても 影の精霊〈ナイトメア〉では 一切 勝ち目がない。
炎の精霊〈イフリート〉が圧倒的なステータス差で影の精霊〈ナイトメア〉を蹂躙するなら、
守護天使:グラハム・エーカーは能力メタで影の精霊〈ナイトメア〉の持ち味を尽く無効化して丸裸にして打ちのめす感じである。
そして、“現代のサムライ”五河 士道は“最悪の精霊”時崎 狂三 以上の歪みで相手の狂気を呑み込んだ――――――。
一方、炎の精霊〈イフリート〉の介入があったからこそ、最悪の精霊〈ナイトメア〉に殺されずにすんだわけであって、
今作では炎の精霊〈イフリート〉の登場が原作より遅れたことで徹底抗戦に発展した場合のIF展開を描写してみたが、いかがであっただろうか?
最悪の精霊〈ナイトメア〉がスペック上の戦闘能力は低い方に分類されていても、
精霊の基本能力として物理防御を無視して連射可能な2丁銃と肉体を簡単に貫く貫手を標準装備した分身体を無尽蔵に出してくる絶望感が伝わってきただろうか?
しかも、これとまともに戦って確実に殲滅できる精霊が一人しかいないあたり、〈ナイトメア〉時崎 狂三のチート具合がはっきりくっきりと浮かび上がることだろう。
ただし、『チート』=『完全無欠』というわけでもないため、時崎 狂三の方も徹底抗戦によって原作以上に甚大な被害を受ける羽目となった。
おまけに、過去の再現体である分身体に反抗される危険性や 天使の能力は展開してから銃を通してでしか発揮されないなどの弱点を露呈させることになり、
時崎 狂三もトップクラスにチートだが、その弱点を突いて徹底抗戦してみせた五河 士道たちもチートであり、
次に〈ナイトメア〉時崎 狂三と徹底抗戦となった場合、それ自体はでかい時計盤でしかない天使〈刻々帝〉を真っ先に破壊して分身体の供給をストップさせてから分身体を殲滅する戦術を確実に実行してくるようになるため、
今回の戦争はAST、〈ラタトスク〉、時崎狂三 の三勢力痛み分けという見方がなされているが、
大局的に見れば 情報アドバンテージを完全に奪われ、自身の能力を過信しすぎた時崎 狂三の一人負けとなっている。
これは【機動戦士ガンダム00】が対策に次ぐ対策とフィードバックに次ぐフィードバックが敵味方で著しい作風であることに準えた展開でもある。
余談ながら、今作の時崎 狂三の行動目的と趣旨が変更されており、『自分の手で〈始原の精霊〉を倒す』ことをあきらめているかのような心境を暴露されている。
●炎の精霊〈イフリート〉の介入が遅れた原因 -武力介入できない天使-
本作では崇宮 真那に会っていた〈イフリート〉五河 琴里の救援が遅れに遅れて、増援に来たASTに多大な被害を出すほどの消耗戦に陥ったのだが、
その原因はもちろん炎の精霊〈イフリート〉の暴走の危険性が第一であった。
これを踏まえて どのような状況判断と意思決定があって最後の最後に琴里が救援に現れたのかを 順を追って解説する。
0,炎の精霊〈イフリート〉の暴走
霊装顕現は5年ぶりと言いつつ 自身の自己再生能力を前提にした戦闘スタイルや空間震を起こせるほどの霊力制御を実現していながら、
霊力を使えば使うほどに破壊衝動が強くなり、最終的には人間としての自我が崩壊してしまう恐れがあるという致命的な欠点を持つ。
この欠点さえなければ、攻撃力・防御力・回復力の三拍子揃った人間側の精霊として、
五河 士道による精霊との戦争〈デート・ア・ライブ〉の遂行がはるかに楽になっていたのは想像に難くない。
事実、一定範囲内の消耗で抑える運用を前提にして空中戦艦〈フラクシナス〉には精霊霊力砲〈グングニル〉が実装されていることから、
元々 後方支援に徹することによって暴走のリスクを回避して性能を発揮しようという運用面での努力が見られる。
1,天使〈灼爛殲鬼〉は味方の救援にはまったく向かない!
→ 巨大すぎる戦斧や熱線砲では一対多に向いても、味方を巻き込む危険性が大きすぎる!
単体での相性では〈ナイトメア〉時崎 狂三とは高威力かつ広範囲の攻撃性能と抜群の回復力で圧倒的有利がつくものの、
しかし、〈ナイトメア〉の分身体にすでに襲われている味方の救援となると話は別で、
その攻撃性能の高さが仇となってフレンドリーファイアの危険性がつきまとってしまう。
事実、圧倒的な戦力差とはなってはいたものの、本作では〈ナイトメア〉時崎 狂三に対して集団戦による徹底抗戦のIF展開となっていたので、
途中から駆けつけても 小回りが利く武装がないために、かえって何の助けにもならないどころか、味方ごと敵を討ちかねない。
状況としても、来禅高校という民間人が多数いる場所であったため、屋上のような射線上に誤射する対象がまったくいない場所じゃないと【砲】が撃てない。
そして、唯一【砲】をぶっ放しても問題ない屋上から士道たちが脱出して離脱を図っていた場面でもあるため、
どうあっても【砲】をぶっ放していいような場所には居なかったことは想像に難くないはずである。
安全性重視であれば、能力差を活かして素手で〈ナイトメア〉の分身体を1体ずつ殴り殺していくしかなくなる。それでは意味がない。
2,〈ナイトメア〉時崎 狂三との相性は驚異的な自己再生能力があってこそ!
→ それが中途半端にしか機能しないなら、他の精霊と同じように〈ナイトメア〉の天使に手玉に取られるだけである!
そもそも、〈イフリート〉五河 琴里は暴走の危険性から前線で戦ってはいけないのだ。
つまり、自分から前線に立って戦わなくてはならない状況というのは〈デート・ア・ライブ〉が致命的な危機を迎えたことを意味している。
それだけに、禁断の予備戦力という扱いの〈イフリート〉五河 琴里としても非常に危うい状況にあった。
実は、戦闘スタイルだけを見るなら典型的なパワーファイターである〈イフリート〉はトリッキースタイルの〈ナイトメア〉とは相性最悪であり、
そこから一転して〈ナイトメア〉に対して〈イフリート〉が大幅有利を付けられるのは自己再生能力という特性があるからに他ならない。
つまり、自己再生能力がなければ、他の精霊同様、〈イフリート〉は〈ナイトメア〉の数の暴力や時間を操作するチート能力に為す術もないのだ。
だからこそ、限定解除した状態で発揮される自己再生能力が不十分であった時の可能性から慎重にならざるを得なかった。
しかも、自身が精霊の霊力を取り戻している間は、五河 士道の命綱である自己再生能力が取り上げることになるため、
すでに〈ナイトメア〉の分身体と揉み合うほどの乱戦になっている最中であることから、
下手なタイミングで霊力封印を解除した時に五河 士道が致命傷を負った場合は取り返しがつかない事態になってしまう。
3,空間震の制御は完全な状態でないと危険極まりない!
→ 限定解除した状態で空間震を起こす実験なんてしたことがないんだからしかたないだろう!
最後に、いよいよ進退窮まったタイミングで五河 琴里が炎の精霊〈イフリート〉となって救援に駆けつけた最大の理由が空間震である。
〈ナイトメア〉の分身体を倒すだけならスペック上では半分程度の霊力解放で一蹴できるものの(しかし、自己再生能力が中途半端にしか働かない恐れがある)、
最悪なことに〈ナイトメア〉は本気で空間震を起こしかけたので、今すぐにでも空間震を相殺するために形振り構っていられなくなってしまった。
そのため、再封印の必要を迫られることが明らかな完全解除の状態で〈イフリート〉五河 琴里は再び精霊の力を行使せざるを得なくなった。
しかし、それによって〈イフリート〉の最大の強みである自己再生能力が保証されたことから、
ここでも〈ナイトメア〉時崎 狂三は調子に乗った結果、自身の敗因となるものを招き入れてしまっている。
暴走する危険性があるために内心では一刻も早く勝負をつけたい〈イフリート〉の強者の余裕の裏の逸る気持ちを利用できれば逆転の目はあったかもしれない。
だが、すでに徹底抗戦の末に全軍疲弊した状況であったので、〈ナイトメア〉に霊力全開の新手の精霊の相手をする余裕は完全になかった。
もちろん、〈イフリート〉が完全に暴走してしまった場合はまったく別なIF展開に派生することになり、
その場合は更に〈ナイトメア〉が痛手を被ることになったので、あれ以上の抵抗はせずに撤退したことは結果としてそれ以上の損失の拡大を抑えたことになる。