【デート・ア・ライブ】 デート・ア・ガンダム -武×士道×グラハム- 【機動戦士ガンダム00】 作:LN58
――――――“最悪の精霊”時崎 狂三との戦いから数日、
士道「あれから数日が経った……」
士道「あの後、狂三の【時喰みの城】で意識を失っていた学校のみんなは ASTによって全員が地下シェルターに送り届けられ、」
士道「空間震発生に伴って その日は地下シェルターで一日の大半を過ごすことになった――――――」
士道「最悪の精霊〈ナイトメア〉が顕現したというあの日のことを“なかったこと”にされていた」
士道「そんな中で勇猛果敢に〈ナイトメア〉と戦って負傷した折紙と真那は 交戦データの解析もあって そのままASTに回収されていった」
士道「自衛隊基地にある病院に搬送されたのだと思う」
士道「俺は学校の上空からそんな様子を見ている他なかった……」
士道「そして――――――」
――――――空中戦艦〈フラクシナス〉/ 精霊隔離室
琴里「あら、士道じゃない」
琴里「十香たちの様子はどう?」
士道「ああ。問題ないよ」
士道「ただ、折紙と狂三がいなくなったわけだから、いなくなって清々していたようでもあり、」
士道「少し張り合いがなくなったようで寂しさを覚えていたようだったけどな」
琴里「あれだけ嫌い合っていた相手に そんな感情を抱けるようになっただなんて、十香も成長したものね」
琴里「これも士道の情操教育の賜物かしらね?」
士道「ちがうって。俺はそこまで躾けてなんかいないさ」
――――――今の十香にとって『あの状態こそが日常』なんだって自然に思えるようになった。
士道「そういう話だろう?」
琴里「そう。――――――『十香にとっての日常が変わった』、か」
士道「………………」
琴里「じゃあ、私が人間から精霊になった存在だって知ってから、士道の日常はどう変わってくるのかしらね?」
士道「そう思っているなら、こんなところにいないで さっさと家に帰ってこいよ。四糸乃が寂しがっているぞ」
琴里「もちろん、そうしたいのはやまやまなんだけどね……」
琴里「でも、正直なところ、どう思っているわけ?」
琴里「答えて」
士道「別に。精霊の方から封印された霊力を引き出すことができるのはわかったけど、」
士道「霊結晶〈セフィラ〉から生成された霊力が俺の中で蓄積されて、それを蛇口をひねってコップに移すわけなんだから、」
士道「コップに移された霊力を飲み干して派手な運動をして喉がカラカラになれば、元の人間に戻るだけだろう?」
士道「現に、琴里は十香と四糸乃と同じ状態だ。それを5年前からやっていたんだから、何の問題もないだろう」
士道「要は、蛇口の固さとコップの大きさが問題なのであって」
琴里「蛇口とコップって………………そんなふうに考えているだなんて、もっと、こう、驚いているものだと思ってた」
琴里「あ、そっか。私が説明するよりも兄貴が説明した方が手っ取り早いか、全部……」
士道「どうしたんだよ? 5年前みたいに大火災を引き起こしたわけじゃないんだしさ?」
琴里「……ホント、あっさりしているわね」
琴里「私から聞きたいことは何もないの?」
士道「え」
琴里「ほら、私は精霊の力を持った人間なのよ?」
士道「いや、別に」
士道「むしろ、
琴里「…………っ」
士道「だって、そうだろう?」
士道「十香も四糸乃も自分がどういった経緯で誕生してきたのかもわかっていないんだ」
士道「なら、精霊になった前後の記憶をお前が持ってなくてもしかたないじゃないか」
士道「誰がどうやって精霊となったお前のことを止めたのか――――――、たぶん、俺の守護天使がなんとかしてくれたんだろうけれど、」
士道「俺も5年前の大火災の後しばらくの記憶がないんだし」
琴里「そ、それはたしかにそうだけれど……」
士道「それよりも、俺のように
士道「これが よくある異能バトル漫画とかだったら、同じ精霊の力を使って悪の精霊を倒すストーリーになっているはずだ」
士道「じゃあ、俺はいったい何者なんだ?」
琴里「…………士道」
士道「俺の生き別れの妹はDEM社でトップクラスの“魔術師”になっていた――――――」
士道「じゃあ、俺と真那を生んだ、俺の、実の両親はいったい何者だったんだ!?」ギリッ
士道「そうだ。何も憶えてなかったんだ…………気づいたら2週間も経っていたんだ。そのことははっきり憶えてる」
士道「そして、俺の守護天使はいなくなっていた…………最初からそんなものはいなかったかのように」
士道「だから、俺は“武士道”を――――――」
琴里「………………」
――――――空中戦艦〈フラクシナス〉/ 艦橋
士道「これって、どういうことですか、令音さん!?」
士道「――――――琴里の霊波反応がなくならないのは!?」
神無月「お、落ち着いてください、士道くん」
士道「だって、おかしいじゃないですか! 霊力を取り戻した十香はすぐに元の普通の女の子に戻っていますよ!」
士道「なのに、琴里は今も精霊の判定が出続けています!」
士道「このままじゃ、ASTに――――――、普通の女の子としての暮らしが――――――」
令音「シン、今の琴里の【感情値】を見て欲しい」
士道「えっと、これは――――――」
令音「今の琴里は不安感が極度に高くなっている状態だ。これが恒常的なストレス源となって霊力の封印を弱めているようだ」
士道「――――――『極度の不安感』」
士道「思い当たることが多すぎますよ、そんなの!」
神無月「そうですね。我々〈ラタトスク〉の活動は士道くん無くしては成し得ないものですが、」
神無月「毎回 丸腰の状態で 士道くんを死地に送り込むような目に遭わせていることに 後ろめたい気持ちがないわけではありません」
神無月「特に、つい最近の〈ナイトメア〉時崎 狂三の時といい――――――」
神無月「五河司令としても、できるのであれば 精霊の力を全開にして 自分が士道くんを 直接 守ってあげたいと、常日頃から思っていたのです」
神無月「しかし、士道くんが知っての通り、それをすることができませんでした」
士道「…………精霊の力に“五河 琴里”が溺れるからか」
令音「有り体に言えば、そういうことになる」
令音「炎の精霊〈イフリート〉は 燃え盛る炎のごとく 感情を昂ぶらせる特性があるらしい」
令音「そして、それは殺人衝動や破壊衝動と言った形で 人に害を為すことになる」
神無月「ですから、五河司令が5年ぶりに精霊の力を解放するのには相当な覚悟が必要でして、」
神無月「実は、あの日は司令は真那さんと会っていたわけなのですが、真那さんのように すぐには救援に駆けつけることができなかったのです」
士道「…………わかるような気がします」
士道「俺も刀を握っていると、頭の中で誰かを試し斬りしている自分がどこかにいるんです」
士道「――――――俺のせいなのか? 俺が琴里をあんなふうにしたのか?」
神無月「……士道くん?」
士道「俺が 毎日 模造刀で素振りをしているから、琴里も 心のどこかで そういうのに憧れていたんじゃ――――――」
士道「なら、俺は、俺は――――――」
神無月「士道くん!」
士道「は、はいっ」
神無月「たしかに司令は精霊と戦える力を有しています。“現代のサムライ”を目指す士道くんの妹として少なからず影響を受けているのは否定できません」
神無月「しかし、士道くんの心を知らないわけではないじゃありませんか、五河 琴里が!」
士道「!」
士道「……神無月さん」
神無月「士道くん、今の“五河 琴里”は 自分ではどうにもならないような力に抗う日々を送っています」
士道「……蛇口をひねりすぎて物凄い勢いで水が出てきてホースが暴れているような感じですよね」
神無月「そうです。戦闘データをシミュレートしたところ、〈ナイトメア〉時崎 狂三を制圧するのには40%の解放で十分だったところを、」
神無月「司令は炎の精霊〈イフリート〉の力を90%以上解放してしまいました」
神無月「もちろん、士道くんなら言わなくてもわかるとは思いますが、そうなったのは〈ナイトメア〉が空間震を起こそうとしたのが原因です」
令音「これはもう再封印する他ないレベルで、自然経過で完全封印されるのには1ヶ月以上はかかる計算だ」
令音「けれど、これはストレス源が何もない状態での仮定であって、今の琴里は極度の不安感に包まれている――――――」
神無月「士道くんとっては辛すぎる現実だとは思いますが、それでも――――――」
士道「わかってます」
士道「だから、大丈夫ですよ、みなさん」
――――――今の俺は阿修羅すら凌駕する存在ですから。
士道「――――――だなんて、みんなの前で言ってはみたけれどさ?」
グラハム『……そうか』
士道「なあ、俺の守護天使? このまま行くと、本当に琴里は――――――」
グラハム『残念ながら、いずれこうなることはわかっていた』
士道「……そうか」
士道「まあ いいさ。俺は元々“みなしご”だったんだ」
士道「それに、来年には卒業して、あの家からは離れていくつもりでいたんだ」
士道「それが少し早まっただけなんだし、何の問題もないよな?」
グラハム『少年』
士道「何だ、俺の守護天使?」
グラハム『私から聞きたいことはないのか?』
士道「?」
士道「いや、別に。俺の守護天使が話したい時に話してくれれば それで」
士道「あれ? 琴里にも同じ質問をされた気が――――――」
グラハム『少年。私のことを誰よりも信頼するのは悪くはないが、その態度を五河 琴里に対しても向けるのはやめたまえ』
士道「どうして琴里の名前が出てくるんだ?」
グラハム『少年、きみは本当に私にそっくりだな。そっくりに育ってしまったな……』
士道「え」
グラハム『以前にも話したことがあると思うが――――――、』
グラハム『私は上官のご令嬢と交際をしていた頃がある』
グラハム『それも、上官から交際を進められていて、私も彼女のことを好ましい女性だと思ってはいた』
士道「でも、グラハムは子供の頃からの夢の方を選んだんだよな」
グラハム『そうだ。いや、今でも私は空への憧れを抱き続けている。幽霊となった身であってもだ』
グラハム『だが、そこまで私のことを買ってくれていた 私に本当の空を教えてくれた 偉大な男――――――、』
グラハム『航空戦術飛行隊勤続30年、総飛行時間8000時間を超える“生きる伝説”“不動のトップガン”等と呼ばれていた――――――、』
グラハム『そんな男を 私は次期主力機選定の模擬戦で“上官殺し”してしまったのだ』
士道「え!?」
グラハム『真相としては、私が袖にした娘さんが嫁いだ先の婿殿が事業失敗で多額の借金を負ったのに端を発する――――――』
士道「?」
士道「あ」
士道「まさか――――――」
グラハム『そう。自身に多額の保険金をかけ、もし自分が敗けて報酬金が得られなくとも 保険金で家族が助かるよう仕向けていたのだ』
グラハム『つまり、わざと墜落して死んだということになる』
グラハム『実に、姑息な人だ……』
グラハム『全てを独り占めだ。家族を守る為と言いながら、そんな理由で戦う自分を自ら律し、更には空戦で私に黒星をつけさせないまま逝ってしまった……』
グラハム『そして、“上官殺し”の私は葬儀には参加しなかったが、代わりに参加してくれた私の盟友から娘さんの話を聞かされたよ』
――――――俺の跡を継ぐのはあの若造しかいない。グラハム・エーカーしかいない。
士道「!!」
グラハム『私のことは常日頃“若造”と呼んでいた 私の倍以上の年齢の“生きる伝説”――――――、』
グラハム『私はその男から空を託されていたことに気づき、恨むこともできんかったよ……』
グラハム『だからこそ、私はユニオンのトップガンとして、フラッグファイターの誇りを胸に生きる決心をすることができたのだ』
士道「………………」
グラハム『こう考えると、
士道「…………5年前のあの日から俺が俺の守護天使がいた証として“武士道”に邁進するようになったのと?」
グラハム『ああ。私は あの時のきみに 私が果たせなかった“武士道”を託していたのだ』
グラハム『よもや、私があの時の上官と同じ想いを抱いて託すことになるとは思いもしなかったがな』
グラハム『いや、そんなことになっていたのにも、こうして後々になってから理解できたぐらいだ』
グラハム『だから、その誇りを守らんがために、かつての私と同じ過ちを繰り返さないか、心配ではあったのだ』
士道「………………」
グラハム『少年、今の時期だからこそ、あえて問おう』
グラハム『今回の〈デート・ア・ライブ〉に限らず、こうした事態の解決に必要な素養とは何だと思う?』
士道「――――――『冷静沈着な状況判断と自らの力量に見合った戦術や作戦を遂行できること』だと俺は思ってる」
グラハム『なら、作戦の成功は事前準備が絶対ということかな、その回答は?』
士道「いや、『それは成功するために必要な前提条件でしかない』と俺は思う」
グラハム『ほう?』
士道「予測不可能な状況に陥った時、どういう形であれ 目標を達成できるアドリブ力とか運の良さがあるやつが最強だと俺は考えます」
士道「結局のところ、勝敗は兵家の常で 出たとこ勝負だから、最後まであきらめずに足掻き続けられる心が最強の武器なんだと」
士道「実際、“最悪の精霊”時崎 狂三との戦争も 最後の最後まで足掻いた結果 なんとか乗り切ったようなものだし…………」
グラハム『……なるほど』
士道「ど、どうだ? これが俺なりの“武士道”の研究成果だけど……」
グラハム『いやはや、見事であるな、少年』
グラハム『その歳で あの時の私と同じ考えに至っていたとは感服するばかりだ。私も同じ質問をされた時にはそう答えていた記憶がある』
士道「まあ、まだまだなんだけどさ……」ハハッ
グラハム『ならば、少年。今から自衛隊病院に行きたまえ』
士道「え、今すぐに? まあ、折紙や真那の見舞いには いずれ行くつもりだったけど――――――」
グラハム『予測不可能な事態に対応したまえ。口ではなくて、態度でな』
士道「わかったぜ、俺の守護天使!」
グラハム『………………』